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鍋野敬一郎のSAPソリューション最新動向#14

こんにちは!SAP Freelance Jobs運営事務局です。

弊社では、SAPジャパン株式会社出身で、ERP研究推進フォーラム講師でもある株式会社フロンティアワン 代表取締役 鍋野敬一郎氏をコラムニストとして迎え、「鍋野敬一郎のSAPソリューション最新動向」と題し、SAPのERP製品情報や最新技術情報をお届けしています。

第14回目である今回は、「SAPで実現する調達DX、アフターコロナ時代のサプライチェーン再編築計画(その2)」について取り上げます!

これからSAPに携わるお仕事をしたい方も、最前線で戦うフリーランスSAPコンサルタントの方も、ぜひ一度読み進めてみてください!

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鍋野 敬一郎 プロフィール

株式会社フロンティアワン 代表取締役
ERP研究推進フォーラム講師

  • 1989年 同志社大学工学部化学工学科(生化学研究室)卒業
  • 1989年 米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。農業用製品事業部に所属し事業部のマーケティング・広報を担当。
  • 1998年 ERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職し、マーケティング担当、広報担当、プリセールスコンサルタントを経験。アライアンス本部にて戦略担当マネージャーとしてSAP Business All-in-One(ERP導入テンプレート)立ち上げを行った。
  • 2003年 SAPジャパンを退社し、コンサルタントとしてERPの導入支援・提案活動に従事。
  • 2005年 独立し株式会社フロンティアワン設立。現在はERP研究推進フォーラムでERP提案の研修講師、ITベンダーのERP/SOA/SaaS事業企画や提案活動の支援、ユーザー企業のシステム導入支援など、おもに業務アプリケーションに関わるビジネスを行っている。
  • 2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI):サポート会員(ビジネス連携委員会委員、パブリシティ委員会委員エバンジェリスト)

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はじめに

2020年8月現在新型コロナウイルスによる感染者は依然増加中で、国内の感染者も4月の緊急事態宣言を超える状況が続いています。約2ヶ月間にわたる活動自粛によって一旦収まったかに見えた感染者数の減少から、経済活動再開を拙速進めた結果、第二波による感染者増加に歯止めが掛からない状況です。
これは国内のみならず世界各国で同様で、米国や欧州では、再度の行動制限も含めて混乱が続いています。
こうした状況によって、世界的に景気は後退局面に入り既に多くの企業業績が悪化して、この先2年間はリーマンショックを遥かに超えるマイナス成長が予想されています。

日本経済新聞の記事(2020年6月9日記事、「どこでも製造業」は夢物語か コロナ時代の供給網探れ)に、今回の新型コロナウイルスについて実施した社長100人アンケートの結果が公表されていて、社長の回答の7割が供給網(サプライチェーン)の見直しがいると回答している。その内容には、調達先の柔軟な変更、リスク回避を目的とした生産拠点を複数国へ分散させるなど、サプライチェーン再構築をまず取り組むべき課題にあげています。大きくビジネス環境が変わったことで、複雑化しているサプライチェーンをシンプルに見直す必要があるという回答が明確に出ています。
前回に続いて、アフターコロナ時代のサプライチェーン再構築計画(その2)では、主に製造業の購買・調達業務にフォーカスしたSAPのソリューションについてご説明いたします。SAP S/4HANA(またはSAP ERP)の在庫購買管理モジュール(MM)を導入している企業であれば、仕入先マスタや品目マスタは既に統合されているはずですから、この仕組みを生かしてSAP Aribaによるクラウド調達サービスを利用したサプライチェーン再構築を素早く行うことが出来ます。
今回は、購買・調達業務におけるSAPソリューションの優位性についてご説明いたします。

サプライチェーン再構築を即効性と柔軟性に優れたSAPのクラウドサービスの活用

サプライチェーンマネジメントシステム(以下、SCMシステム)の構築や再編には、長い時間をかけて業務の見直しと複雑な基幹システム構築が必要となります。当然のことながら多くのリソースが必要となります。しかし、新型コロナウイルスによるサプラチェーンの分断を再構築して、悪化した業績を立て直す時間とお金を極力抑える必要があります。
勝負所は、スピードにあります。そうすると、現行SCMシステムをベースに最小限の時間と費用でサプライチェーンを再構築する必要があります。前回(その1)でご説明した通り再構築のポイントは、リスク回避型SCMの構築にあります。

 

製造業において生産に必要な資材は、「直接材」と「間接材」に分けることができますが、資材(材料費)はその使い道によって、

  1. 主要材料費:製品を生産するために直接必要な原材料の費用
  2. 購入部品費:製品を生産するために直接必要な構成部品の費用
  3. 補助材料費:生産設備に必要な燃料や包装材などの費用
  4. 工場消耗品費:生産する設備に関わる機械油やサンドペーパーなど消耗品の費用
  5. 消耗工具器具備品費:生産に必要な台車やドライバーなど工具や器具などの備品の費用(但し、耐用年数が1年未満のもの)

以上5つに分けることができます。


「直接材」は、①主要材料費と②購入部品費がこれに該当しますが、その購買・調達は生産する製品から自ずと決まりますので選択肢は限られています。
この調達を見直すポイントは、調達先を複数としてリスク分散するとともに、新型コロナウイルスの第二波、第三波などを想定した安全在庫を持つことです。
また、今回のケースでサプライチェーンが短く、国内サプライヤーからの調達比率が高かった企業(トヨタ自動車、ファナック、ダイキン工業など)は、影響が少なかったと言われています。また、こうしたでも全車で製品と原材料の品目マスタが統合されている企業は、全拠点で利用可能在庫を把握して生産可能な工場へ集中して原材料を送り込むことで生産活動を維持し続けることができたようです。逆に、サプライチェーンが長く調達先を国内海外に広く展開していた企業は、たった1つの原材料が無いために仕掛品が積み上がり、完成品を出荷出来ませんでした。
また、急遽代替の部品などを調達しようとした企業もありましたが、部品調達の場合はその部品がどのような原材料で作られているのか、その品質や耐久性など安全管理に必要な情報や確証が得られず、その原材料が海外由来でチェックをクリア出来ず多くの企業で行き詰まったようです。「直接材」については、製造原価に直結するため効率化やコスト削減、リードタイム短縮を本社主導で進めることが出来ます。

SAPでは、SAP S/4HANA(またはSAP ERP)の在庫購買管理(MMモジュール)、生産計画/生産管理(PPモジュール)などで機能が提供されています。

 

「間接材」は、③補助材料費、④工場消耗品費、⑤消耗工具器具備品費がこれに該当します。
生産設備に必要な燃料やエネルギーなど、設備に付属している消耗品(樹脂や金属など部品)で治具なども含まれます。「間接材」は、発注する品目や点数が多く、拠点ごとに設備や状況も異なるため管理が複雑で調達の効率化が難しい領域です。棚卸資産の把握も煩雑なため、多くの企業ではそのコストや効率化への取り組みが遅れているケースが多いようです。
SAPがクラウドサービスとして提供しているSAP Aribaは、その間接材購買という領域で強みを発揮するソリューションです。

クラウド購買・調達サービスで即効性の高いサプライチェーン再編DXを実現する

サプライチェーン再構築の手段として、SAPを導入している製造業が取り組んでいるのがクラウド購買・調達サービスのSAP Aribaです。「間接材」は、製造に直接影響しないためコスト削減で見落とされがちですが、実際のところ「間接材」の調達には問題点が多く、コスト削減の対象として取り組みが難しい領域です。しかし、製品の生産に直接関わらないことと、「間接材」の種類と用途が幅広いためそのコストや手間の全体像を把握出来てい無いことが多く、手つかずのムダが取り残されているところです。

 

【間接材の購買・調達における課題】

  1. 発注すべき品種と点数が多く在庫管理やコスト把握が難しい
  2. 拠点・部門・担当者ごとにバラバラに発注しているケースがある
  3. 仕入先が多くコストの均一化が難しい
  4. 基本となる調達計画が無く無駄なコストが生じやすい
  5. 調達業務の標準化と見える化が出来ていないとムダが生じやすい


SAP Aribaは、「間接材」のクラウド購買・調達ソリューションとして①調達側企業の調達・購買機能、②サプライヤー側企業の供給機能、③400万社以上のバイヤーとサプライヤーをマッチングするプラットフォーム「Ariba Network(アリバネットワーク)」の3つから構成されています。SAP Aribaは、クラウドサービスですから特別な機器などを用意する必要はなく、ライセンスを取得して自社システム(SAPのERPならばマスタ統合が簡単に可能です)との設定を行えば即時に利用を開始出来ます。

(参考:クラウドソリューションSAP Aribaの概要から導入事例まで)
URL:https://orange-operation.jp/business-app/16569.html

 

SAP Aribaには、サプライヤー業務プロセスとバイヤー業務プロセスが統合されたシナリオで連携出来ていて、一連の業務に関する情報を分かりやすく管理することが出来ます。つまり、単にクラウドで調達・購買管理を行うサービスを構築してコスト削減だけを狙うのではなく、調達・購買業務のDXによって調達リードタイムの短縮化、最適化が可能となります。また、自信や洪水などの災害や新型コロナウイルスによるサプライチェーン分断といった突発的な事態発生においても、クラウドサービスのメリットを最大限生かした即時対応が可能となります。

今回のまとめ

今回は、調達・購買管理業務における「直接材」と「間接材」の業務から、これに対応したSAP Aribaについてご紹介しました。ERPやSCMの再構築は時間も手間もコストも掛かるため、新型コロナウイルスの影響が収束していない現状では先送りせざるを得ません。しかし、クラウドサービスならば即効性と柔軟性があるため短期間で高い費用対効果を期待することが出来ます。
次回以降は、SAPが注力しているクラウドサービスについて紹介していきたいと思います。

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