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SAP R/3について

SAPの主要なバージョンであるSAP R/3について詳しく解説します。

SAP R/3

SAPの主要なバージョンにSAP R/3があります。現在利用されているSAPはこのバージョンに該当することが多く、エンジニアならば必ず押さえておかなければなりません。現在、新しく導入されるバージョンではありませんが、主要なバージョンであるため理解しておくに越したことはありません。バージョン移行など重要な内容にも絡んでくるため、この機会にSAP R/3について正しい理解を持ちましょう。

SAPとはなにか

最初にSAPとはどのような製品であるのか理解を深めておきましょう。

データ処理を効率化するソリューション

SAPはビジネスプロセス管理において世界有数のソフトウェアやソフトウェアメーカーです。企業には様々なデータがありますが、データが多すぎてうまく活用されていないケースがあります。また、無駄なデータを管理しているケースも散見されます。

そのような状況を改善するために、SAPが開発・提供されています。複数の機能から構成されていて、必要に応じて使い分けしなければなりません。

SAPの利用目的

SAPのソフトウェアを導入する目的は、データを一元管理することです。また、このようにデータを一元管理することで、全社的に正確な情報を提供するようにします。データベースを各部門が持つのではなく省略できるようにすれば、参照先が明確になるからです。

また、データの集約が実現できれば、企業はビジネスプロセスの管理が容易になります。部門を超えて情報を把握できるようになるため、部門を超えるためのボトルネックは最小限に抑えられます。このような、ワークフローの高速化やシステム運用の負荷軽減、最終的には全社的な生産性向上のためにSAPが利用されます。

SAPを利用しないビジネスモデルでは、データが一元管理されていないケースが多くある状況です。それぞれの業務部門が専用のシステムやデータベースを保有して、そこに情報を保存しています。皆さんの環境でもこのような仕組みが採用されているかもしれません。

しかし、このような状況では部門を超えて業務データの参照はできないでしょう。基本的にはそれぞれの部門にしか権限が付与されないからです。これはスムーズな業務遂行にあたって大きな支障となるため、SAPの導入が求められています。

SAPでできること

SAPができることは多岐に渡り、中小企業から大企業までどのような企業や組織でも利用可能です。SAPは大企業が利用するイメージを持たれがちですが、実際には中小企業でも問題なく活用できます。

SAPでできることを一言で表すと「収益の改善」です。上記でも触れたとおり、一般的なシステム構成ではデータの相互連携ができないなど無駄なコストが生じてしまいます。これにより無駄な業務が生じてしまい、収益を悪化させてしまうのです。

しかし、SAPを導入すれば、それぞれの業務についてビジネスプロセスの見直しができます。ビジネスの開始から終了までSAPに集約可能であり、システム運用やデータ活用に無駄なコストが生じません。結果、人件費が下がり収益の向上が期待できます。

また、情報を一元管理できるようになるため「不要なものを購入した」「在庫があるのに製造した」「必要以上に廃棄が出てしまった」などの問題を解決しやすくなります。それぞれの部門が情報を管理していると生じやすい無駄はSAPによって生じなくなるのです。これも原価や経費の低減につながり、収益の改善に役立ちます。

なお、SAPは現在の状況について分析するだけではなく、将来についての分析も可能です。例えば今のペースで収益が改善すれば、四半期後にどのような状態になっているのか予想できます。今までは専用のソフトウェアに情報を取り込んでいたような作業も、SAPのデータベースを利用すれば、SAP内で完結できるのです。

SAP R/3はSAPの主要なバージョン

SAP R/3は上記でご説明したSAPの主要なバージョンです。SAPはソフトウェア全体を指した言葉で、実際にはいくつものバージョンやモジュールが存在しています。続いてはSAP R/3がどのようなバージョンであるのかご説明します。

1992年から2014年まで発売

SAP R/3は1992年から2014年まで発売されたSAPの主要なバージョンです。現在利用されているSAPの中でもまだまだ現役のバージョンに分類されます。新規での発売は終了していますが、すでに導入している企業が多く残っているため、現役のバージョンといえるのです。

SAP R/3が発売される前はR/2と呼ばれるバージョンが利用されていました。こちらはメインフレームベースで作成されたビジネスアプリケーションソフトウェアで、SAP R/3が発売される少し前まで人気だったものです。そこから、クライアント・サーバーの考え方が世の中に普及しSAP R/3が開発されました。新しいバージョンではありますが、メインフレームからの変更であり、根本的な部分が修正されていると考えてよいでしょう。

なお、SAP R/3が開発されたタイミングでWindowsやUNIXなど複数のプラットフォームに対応しました。今までとは異なった製品になったことで、SAP R/3を導入する企業が急増し、現在のようにビジネスアプリケーションの代表格のような扱いになったのです。

SAP R/3の導入形態

SAP R/3は発売期間が2014年までということもあり、基本的にはオンプレミスで導入されました。現在はシステムをクラウド化するケースが多いですが、SAP R/3は今でもオンプレミスで運用されています。クラウド化している事例も存在しますが、SAP R/3は「今までと変わらずオンプレミスのまま」というケースも多いのです。

製品もオンプレミスを前提として開発されているため、現在のアプリケーションとは異なる側面があります。SAP R/3を新しい製品に移行する際は、そのような設計思想の違いを考慮しなければなりません。時代背景が異なるため、新しいシステムで同じようなアーキテクチャにする必要はないのです。

R/3に搭載されたモジュール

SAP R/3には「モジュール」と呼ばれる機能が搭載されています。業務はモジュールごとに分割されていて、それぞれのモジュールを関係する部門が利用する仕組みです。多くのモジュールがありますが例えば以下が存在します。

FI:財務会計モジュール

SAPは会計システムから生まれたといわれるぐらい、SAP R/3の導入企業は財務会計のモジュールを導入しています。販売や購買の数値は企業経営において非常に重要な基準となるため、SAP R/3の中心となるモジュールと表現しても差し支えないでしょう。

FIはいくつもの情報を管理しなければならないため、サブモジュールと呼ばれるものが備わっています。例えば総勘定元帳や債権・債務管理、固定資産会計などに対応しています。社内向け資料と社外向け資料のそれぞれに対応できる点は特徴です。

CO:管理会計

管理会計は簡単に説明すると原価管理に利用するモジュールです。SAP R/3では調達から生産、販売まで一連の情報を管理できるため、これらに対して標準原価の計算が可能です。また、他のモジュールと情報を共有すれば実原価の計算もできるため、ビジネスを進めやすくなるメリットがあります。

これらの原価計算においては、部門ごとに情報を共有する必要があります。しかし、部門ごとにシステムを保有していては情報共有が難しく、スムーズに原価計算ができません。その点、SAP R/3は一元管理されたデータベースに情報が登録されるため、システム内ですべて計算可能です。

なお、COには原価計算をサポートするためのサブモジュールが存在しています。また、計算した結果を財務レポートに出力することも可能であり、レポート内容を踏まえて原価の状況を分析することも可能です。

SD:販売管理

受注から出荷指示、そして出荷が完了して請求までの業務フローを担当するモジュールです。見積もりの作成から製品の出荷、取引先への請求までを一元管理します。上記でご説明したFIへ情報連携できるようになっていて、請求情報から売上の計上が可能です。

また、単純な製品の流れを管理するだけではなく、キャンセルなどの消し込みも可能です。また、返品による在庫や売上の増減についても標準で対応できるようになっていて、企業における製品の流れはほとんどカバーできるといっても差し支えありません。

他にも、販売管理には必ず必要となる各種帳票の出力にも対応しています。請求書など通常業務に利用するものはもちろん、取引にあたって添付が必要な資料の出力も可能です。SAP R/3とは別のシステムを利用して調書を作成する必要がないため、業務効率が高まります。

MM:購買管理

購買管理は発注準備や購買発注、取引先からの入庫や請求書確認までの業務を担当するモジュールです。購買管理だけではなく在庫管理も含まれているモジュールだと考えておきましょう。

商品を発注するためには、取引先発注作業が必要です。また、納品してもらう場所を指定して納品してもらい、発注内容と納品内容、請求書の内容が一致しているかの確認を求められます。このモジュールはこれら一連の作業をまとめて担うものです。

また、発注に関する情報をFIに連携できるようになっているため、お金の管理や取引先への支払いなどがスムーズにできます。他のシステムを利用する必要がないため、ボトルネックが発生しません。

他にも在庫管理の機能があるため、倉庫などにそれぞれ在庫がどの程度あるのか把握できます。在庫の出荷や製品への利用、また調達先からの納品などに応じてそれぞれの数値を変更したり、倉庫から倉庫への移動についても管理可能です。

2004年以降はSAP ECCと表現されることも

2004年以降はSAPの名称が変わり、SAP R/3から「ECC」と名称が変更されるようになりました。これはSAPの製品群が更新されたタイミングでSAP R/3という名称が適さなくなったからです。他の製品と合わせる形で名称が変更されました。

ただ、公式には名称が変更されたものの、当時の名残でSAP R/3と呼ばれるケースが多くあります。特にSAPを昔から導入している企業ではSAP R/3と呼ぶ傾向にあるため注意しておきましょう。

また、名称が異なるものの実体としてはほぼ同じものです。SAPを扱う立場の人間として会話に差し支えがないよう、キーワードとしてSAP R/3とECCを押さえておくと良いでしょう。

現在はSAP R/3からSAP HANAへ

現在はSAP R/3の販売が終了し、SAP S/4 HANAと呼ばれる製品が発売されています。SAPを取り巻く状況は大きく変化しているため、これについてご説明します。

2015年より新バージョンがリリース

2015年よりSAP社から新バージョンであるSAP S/4 HANAが発売されています。1992年にSAP R/3が発売されているため、23年の月日を経て、ついに新バージョンが発売されたのです。

世の中の状況が大きく変化したということもあり、SAP R/3とSAP S/4 HANAにも大きな違いがあります。根本的な仕組みから搭載されている機能まで変化しているため気をつけておきましょう。具体的な変化やメリットについては後ほどご説明します。

新しいバージョンが発売されるようになったため、現在はSAP R/3ではなくSAP S/4 HANAが導入されています。ただ、上記でもご説明したとおりSAP R/3の利用が終了しただけではなく、世界中で平行稼働している状況です。「SAP R/3は過去のアプリケーション」と認識するのではなく、それぞれが存在している状況だと認識してください。

SAP R/3は2027年末までサポート

SAP R/3ですが、2027年末までのサポートが予定されています。SAP S/4 HANAが発売されてからすでにある程度の期間が経過していますが、まだまだサポートされている状況です。サポート期限に余裕があるため、現時点でSAP R/3を利用し続けている企業が一定数あります。

一般的にアプリケーションはサポート期限を過ぎて利用することは望ましくありません。トラブルが発生しても対応してもらえませんし、脆弱性などが見つかっても対処する術がなくなるからです。公式のサポート期限がアプリケーションを利用できる期限だと考えられます。

SAP R/3は世界的に利用されているアプリケーションです。サポートを打ち切ると影響を受ける企業が多いことは想像に難くありません。SAP社はアプリケーションの需要やシェアを鑑みて、余裕を持ったサポート期限を設定していると考えられます。

SAP R/3からSAP HANAへの移行が課題

2027年まではSAP R/3を利用できますが、それ以降はサポートが終了してしまいます。そのため、SAP R/3からSAP S/4 HANAへシステムを移行しなければなりません。このシステム移行には手間がかかってしまい、SAPを運用している企業の課題となっています。

SAP HANAへの移行状況

事実、日本国内のSAPユーザー会である「ジャパンSAPユーザーグループ」の調査を参照してみると、SAP R/3からSAP S/4 HANAへと移行しているユーザーは2割程度しかいません。多くのユーザーはまだまだSAP R/3を利用し続けている状況です。

上記のとおりこのように移行はあまり進んでいませんが、その理由には以下が考えられます。

  • 対応してくれるエンジニアが見つからない
  • 社内のリソースが確保できない
  • 新型コロナウイルスの影響でプロジェクトが組めない
  • 移行にかかるコストが確保できていない
  • SAP R/3の新機能に興味がない

「SAP S/4 HANAへバージョンアップしたいが何かしらの理由で難しい」というケースと「そもそもバージョンアップに興味がない」というケースがあります。企業によって考え方が大きく異なっているのです。

SAP HANAへの移行は求められる

SAPを利用する以上は将来的にSAP R/3からSAP S/4 HANAへ移行しなければなりません。2027年末以降もアプリケーションが利用できなくなるわけではありませんが、リスクが増えてしまいます。SAPのような基幹システムでリスクを抱えることは間違いなく望ましいことではありません。実質的にはバージョンアップが強いられていると考えてよいでしょう。

バージョンアップが必要となる事を踏まえると、これから移行作業が集中すると考えられます。ただ、SAPの移行に強いエンジニアは限られるため、ギリギリからスタートしても思うように進まない可能性があります。現時点でエンジニアを確保して、計画的に進めなければなりません。

SAP R/3からSAP HANAへ移行する変更点とメリット

SAP R/3からSAP HANAへと移行するとどのような変更があり、それがどのようなメリットにつながるのかご説明します。

データベースがSAP HANA固定

SAP R/3からSAP S/4 HANAに移行することでデータベースがSAP HANAに固定されました。こちらはカラム型のインメモリデータベースで、今まで利用されていたリレーショナルデータベースとは大きく異なります。

現時点でSAP R/3を運用している企業では、「Oracle Database」や「SQLServer」などがデータベースに採用されているはずです。SAP R/3は複数のデータベースに対応しているため、使い慣れているものを選択するなど、企業の方針によって利用するものが異なっています。SAP S/4 HANAへ移行してしまうとデータベース選択の自由がなくなり、SAP HANAを利用するしかありません。

これはデメリットのように見えますが、実際にはいくつものメリットを生み出します。

処理の高速化

インメモリデータベースであるため、SAPの処理を高速化できます。今までのデータベースはSSDやHDDなどのストレージで管理されていたため、どうしても読み書きに時間を要してしまいました。プログラムを高速化してもデータの読み書きは高速化に限界があり、ボトルネックになってしまったのです。

しかし、SAP S/4 HANAではインメモリデータベースが採用されているため、ストレージへの読み書きが発生しません。ボトルネックが解消されるため、全体として処理の高速化が期待できます。

テーブルの追加

データベースには「BPマスター」と呼ばれるものが新しく追加されました。これまで仕入先マスターと得意先マスターに分割されていたものが、ひとつのマスターに統合されたのです。データ移行にあたってはマスターを統合する作業が必要ですが、移行してしまえば一つのテーブルで管理できるため、運用負荷の低減が期待できます。

ユーザーインターフェースの追加

SAP S/4 HANAでは新しいユーザーインターフェースとしてSAP Fioriが追加されました。これはWebアプリケーションベースで利用できるユーザーインターフェースです。Web画面であるため専用のソフトウェアをインストールする必要がなく、パソコン以外のスマートフォンからなどでも簡単にアクセスできます。

SAP R/3ではWeb画面に対応しておらず、基本的にSAP GUIを利用してSAPにアクセスしていました。パソコンでの利用が前提であり、加えてそのパソコンにソフトウェアインストールが必要だったのです。利用について少々ハードルがあったことは否めないでしょう。その点、SAP S/4 HANAでSAP Fioriがリリースされた事は状況を大きく好転させました。

また、SAP Fioriは全体的に直感的に操作できるデザインが採用されています。SAPの操作を「なんとなく使いにくい」と感じる人が一定数見受けられますが、SAP Fioriならばそのような印象はなく、方向性の変化に驚いてしまうでしょう。

システムのクラウド対応

SAP R/3からSAP S/4 HANAへ移行することによってクラウドでの提供ができるようになっています。ここでのクラウドとはSaaSのことを指し、パブリッククラウド環境上にサーバーを立て、オンプレミスのように導入することとは意味合いが異なります。クラウドはSAP S/4HANA Cloudと呼ばれるサービスが提供されています。

SAP S/4HANA Cloudはクラウド上で提供されるサービスであるため、使い方に若干の制限があります。標準的な業務に沿ってSAPが構築されていて、基本的にはカスタマイズできません。ただ、SAP社はSAP S/4HANA Cloudについても部分的なカスタマイズを認める方針を打ち出していて、使い勝手は大きく変化するかもしれません。

現時点では、SAPの内容をカスタマイズするためにはオンプレミスを選択する必要があります。業務プロセスが複雑な場合はSAP S/4HANA Cloudでは対応しきれない可能性が高く、クラウドは選択できないでしょう。逆に中小企業など標準的な業務プロセスのみならば、SAP S/4HANA Cloudを選択することで運用負荷を軽減できます。

まとめ

SAP R/3についてご説明しました。SAPの主要なバージョンであり、現在利用されているSAPの中でも非常に大きなシェアを持っているものです。ただ、現在は販売されておらず、新バージョンであるSAP S/4 HANAに切り替えられています。

とはいえ、シェアの高いバージョンであり現在も利用されているため、SAP R/3を知らないという状況は避けたいところです。SAPに何かしら携わる立場であるならば、今回ご説明した基本知識は頭に入れておいてください。

なお、これからはSAP R/3ではなくSAP S/4 HANAが中心となり利用されます。システム移行などが盛んになっていくため、どの立場であってもSAP S/4 HANAの情報をキャッチアップしておくべきです。

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