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「SAP Basis概要の教科書」No.5 移送について

■はじめに

前回はSAPシステムのクライアントコピーの種類と仕組についてご紹介しました。今回はクライアントコピー中の「クライアントエクスポート」の仕組みでも利用されている、「移送」の仕組みについてご説明いたします。

■移送とは

SAPシステムも他の様々なシステムと同様、業務要件に応じて、プログラムやテーブル定義などのシステムを構成するオブジェクトの改修、新規オブジェクトの追加が発生します。その際に改修オブジェクトを案件の単位(移送依頼単位)でまとめて開発環境から品質保証環境、本番環境へ運ぶ仕組みを“移送”と呼びます。

【移送の考え方】

■移送依頼と改修オブジェクトのロック

上述のように、オブジェクトを改修した際は移送依頼を作成して各環境へ移送で運びます。

オブジェクト改修開始時に、改修オブジェクトをその移送依頼に割り当てる作業が発生します。例えばプログラムを改修する際、移送依頼の生成または作成済移送依頼への割り当てが促されます。このタイミングで該当プログラムは移送依頼取得者によって“ロック”された状態なり、オブジェクトを割り当てた移送依頼がリリースされるまでの間は他のメンバーが同オブジェクトを修正することはできなくなります。これにより、オブジェクトの修正の競合を防ぐことが可能になっています。

■オブジェクトのバージョン管理と移送依頼の関係

上述のようにオブジェクトを修正する際に移送依頼を取得し、その際に“移送依頼番号”が割り当てられます。この移送依頼番号でバージョン管理ができるようになっています。

例えばプログラムの改修にバグがあり、前バージョンに戻したいという場合は、前バージョン修正時の取得した移送依頼番号を有効化することで、プログラムの状態をその時点に戻すことが可能です。

■移送ファイルについて

上述の移送依頼はリリース時にOS上から認識できる物理ファイルとして出力されます。移送トランザクションSTMSにて“インポートキュー調整”という処理を実施すると、その物理ファイルが開発環境→品質保証環境→本番環境と、環境をまたいでコピーされます。キュー調整にて物理ファイルがコピーされた後、実際にインポート処理を行い、それぞれの環境に移送依頼を適用してオブジェクトの修正を反映させることになります。

 

移送依頼の物理ファイルは以下のような構成になっています。

 

・変更情報ファイル(cofile):KXXXXXX<SID※>

移送タイプ、移送するオブジェクトのクラスなど、変更依頼に関する情報が保存されます。

・データファイル(data):DXXXXXX<SID※>またはRXXXXXX<SID※>

変更依頼名と修正コード文字から構成されます。

 

※システムID。3文字で構成され、RD1(開発)、RQ1(品質保証)、RP1(本番)などの名前を付けます

 

これら移送依頼物理ファイルをキュー調整し、インポートするまでのイメージは以下のようになります。

■移送先クライアントについて

以前のコラムにてクライアント依存オブジェクトと非依存オブジェクトがあることお伝えしました。移送依頼でも、プログラムのような非依存オブジェクトとテーブルデータのようなクライアント毎に保持する依存オブジェクトが存在します。

非依存オブジェクトはマスターとなるクライアント1つに移送することで、修正が全クライアントに反映されます(非依存つまり全クライアント共通のオブジェクトのため)。一方、依存オブジェクトは修正を反映させたい全クライアントに同じ移送をそれぞれ適用する必要があります。そのため、依存オブジェクトは対象クライアントへの移送漏れが発生しないよう注意が必要です。通常はSAPプロジェクトの中で移送管理台帳を用意し、移送依頼者(開発者)が依存か非依存か記載し、それを見てBasis移送担当者が対象のクライアントに漏れなく移送することがルール化されています。

■開発システム内での移送の反映

これまで環境をまたいでオブジェクトの修正を反映させる移送についてご説明しました。

たとえば開発システム内で修正元クライアントとは別のクライアントに修正を反映させたいケースもあると思います。その場合は、移送のトランザクション:STMSとは別に、システム内移送反映用のトランザクション:SCC1が用意されています。開発途中で、まだ別環境に修正を運ぶ前に開発環境テストクライアントで修正の動作確認を行いたい場合などに、このトランザクションを使用します。

■おわりに

いかがでしたでしょうか。今回はBasisの主要タスクとなる移送の概要について説明しました。

プログラムの改修、テーブル定義変更、SAP修正ノートの適用などSAPシステム上で発生するほとんどの改修はこの移送の仕組みを使って各環境へ適用していきます。インポートキュー調整、依存・非依存オブジェクトの考え方、環境内外移送の違いなど理解深めて頂けると幸いです。

次回はノートやサポートパッケージ等のSAP修正管理の考え方について紹介したいと思います。

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