「SAP Basis概要の教科書」No.12 標準ジョブについて
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1.はじめに
以前のコラムで、SAPのジョブについて概要を説明しました。
SAPの処理には大きく、ユーザが手動で実行するダイアログ処理と人の手を介さないバックグラウンドで実行される処理があり、ジョブは後者の処理として実行されます。
今回はそのジョブの中でも、SAP標準で搭載されている、ハウスキープに関連するジョブを中心に説明していきたいと思います。
普段意識せずとも実行されているジョブですが、その詳細を知ることによりベーシスジョブの重要性を理解頂ければ幸いです。
2. 様々なSAP標準ジョブ
ご利用のSAPシステムのベーシスリリース(SAPKB640XXX、SAPKB701XXなど)により、
用意されているジョブの数や名前は変わります。
それらの情報はSAPのサービスマーケットプレイスにアクセスし、下記ノート番号を参照してみてください。(随時番号は更新される可能性あります)
16083 – Standard jobs, reorganization jobs
1411877 – 新規標準ジョブ
1440439 – 新規標準ジョブ (2)
この中で重要かつベーシスとして仕組みを理解しておいた方がよいジョブは
以下になります。
■SAP_REORG_JOBS(プログラム名:RSBTCDEL2)
古いバックグラウンドジョブ情報を削除します。こちらはトランザクションコード:SM37で参照するジョブログ情報のハウスキープジョブです。例えば、過去一か月間のジョブログをいつでも参照できるようにしたいという場合は、このジョブの削除周期を変更する必要があります。格納期間によりディスクやメモリリソースを消費することになるため、参照期間を延ばす場合は事前にテストを行い、リソース消費量を確認するようにして下さい。
■SAP_REORG_ABAPDUMPS(プログラム名:RSSNAPDL)
こちらは古いショートダンプ情報を削除します。ショートダンプとは、何らかのプログラムが異常終了した際にシステムログのような概要情報ではなく、プログラムのどこでどんなエラーが発生したかなどの詳細情報が記録されたもので、トランザクションコード:ST22で確認できます。このジョブはその蓄積された過去のダンプをハウスキープするものです。「1.」と同様、どれだけの期間のダンプを残すのか実行前に検討が必要です。
■SAP_COLLECTOR_FOR_PERFMONITOR(プログラム名:RSCOLL00)
こちらはハウスキープ系ではなく、SAPシステムのパフォーマンスデータを蓄積するために動くジョブになります。これを15分間隔など一定間隔で実行し、実行時点でのメモリやCPUの使用状況などをDBのテーブルデータとして保存。この保存データをパフォーマンス分析系トランザクション:ST03Nなどで参照し、ボトルネック解析などに使用します。パフォーマンス分析は奥が深いので、機会があれば別コラムでご紹介したいと思います。
■SAP_REORG_XMILOG(プログラム名:RSXMILOGREORG)
こちらはSAPのシステムログをハウスキープするジョブになります。トランザクションコード:SM21で見ることができるログのハウスキープなので、こちらも保存期間要件によって残す期間を設定する必要があります。
■SAP_REORG_SPOOL(プログラム名:RSPO0041/1041)
こちらは古いスプール依頼を削除するためにジョブになります。スプール依頼とは印刷データと捉えて下さい。プリンタに出力した印刷データは、何もしなければDBのテーブルに蓄積されていきます。そのため、印刷済の不要なデータは定期的に削除する必要があります。これも期間を設定して一定期間以上経過したものは削除するようにします。
■RSPO1043(プログラム名:RSPO1043)
こちらはスプールのハウスキープではなく、スプールとそれを管理する領域(TemSeと呼ばれれる)の整合性チェックを行います。このジョブでエラーになった場合はTemSE領域の再編成が必要になることがあります。印刷環境の正常性を維持するため、このジョブが日々正常終了することを確認します。
【留意点】
以前のコラムでもお話しましたが、ジョブによってはクライアント依存で動作するものがあります。ただし、ベーシス系の標準ジョブは基本的にクライアント非依存のため、クライアントコピー後などに、新規クライアント用に新たに設定する必要はありません。逆に複数設定することでシステム負荷を上げてしまう可能性もあるため、ご注意下さい。
また、標準ジョブもシステムのアップグレードやサポートパッケージの適用により、新たに追加される場合があります。システムの更改が発生した際は、サービスマーケットプレイスにて最新の情報を確認するように心がけて下さい。「標準ジョブ」というキーワードで検索すると、関連ノートがすぐ見つかると思います。
3. おわりに
いかがでしたでしょうか。今回はSAP標準ジョブの中でもベーシスで最低限理解しておく必要があるジョブを紹介しました。まずそれぞれのジョブの用途を理解頂き、それぞれのジョブの実行周期等を変えられるようにして下さい。環境によっては、SAPシステムカットオーバー後、保存データ要件が変わりハウスキープ周期を変える必要性も出てきますので、どのジョブのどのパラメータを変える必要があるのか、事前に理解しておくとスピーディな環境変更にも対応できると思います。