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「SAP PPの教科書」No.6 PP領域におけるマスタ構造_詳細

はじめに

ここではマスタ構造がSAPERP上でどのように反映されるかについて説明します。

 

 

1.生産管理で使用する主要マスタ

・品目マスタ

販売、生産、調達、保管するすべての品目を一元管理するマスタです。

部品表(BOM)、作業手順を登録するうえで、前提となります。

 

・BOM

製品、半製品等の自社内製品の親品目と、それを構成する子品目との構成情報を管理します。

 

・作業区

プラント内において製造作業や活動が行われる場所を管理します。

作業手順の各作業に割当てます。

作業の日程計画、能力計画、原価計算の属性情報、計算方法を定義しています。

 

・作業手順

製品、半製品等の自社内製品の製造工程情報を管理します。

作業内容、作業順序、処理時間(標準時間)、実行する作業区等が定義されます。

 

・製造バージョン

プロセス管理向けのマスタとして製造バージョンが用意されています。

これはBOMと作業手順を組み合わせたマスタになります。

製造バージョンには、その資源で生産するための作業を定義します。作業はフェーズに細分化された詳細な作業手順および作業の順序等の定義が可能です。

 

 

2.品目マスタ

SAPの品目マスタは、SAPシステムにおける製品やサービスなどのアイテムの情報を管理するためのデータベースです。品目マスタにはMM01トランザクションコードで登録を行い、アイテムの基本的な情報や属性、価格、在庫情報などが含まれています。以下に、品目マスタの主要な情報項目を説明します。

 

品目コード:品目を一意に識別するためのコードであり、一般にユーザーによって設定されます。品目コードは、内部的に使用されることが多く、企業内での品目の識別に使用されます。

 

品目の説明:品目の名称や説明を記録します。一般的に、品目の説明はユーザーによって設定され、品目を特定するための情報を提供します。

 

品目の分類:品目を特定のカテゴリやグループに分類するための情報を含みます。品目の分類は、品目を組織化し、検索やレポートの作成などで使用されることがあります。

 

単位:品目の数量を表す単位を指定します。例えば、個、箱、リットルなどの単位があります。

 

価格:品目の価格情報を記録します。価格は、通常の価格や割引価格、特別価格などの情報を含むことがあります。

 

在庫情報:品目の在庫に関する情報を含みます。在庫の数量や場所、リードタイムなどの情報があり、在庫管理や需要予測などの業務プロセスに使用されます。

 

製造情報:製造業の場合には、品目の製造に関する情報を含みます。製品の生産時間、製造コスト、リードタイムなどの情報があり、生産計画や生産管理などの業務プロセスに使用されます。

 

サプライヤ情報:品目を供給するサプライヤに関する情報を含みます。サプライヤの名称、連絡先、契約条件などの情報があり、調達やサプライヤ管理などの業務プロセスに使用されます。

 

 

以上のように、品目マスタには品目に関する基本的な情報や属性、価格、在庫情報、製造情報、サプライヤ情報などを管理されております。

目マスタには複数のビューがあり、それぞれが異なる情報を保持しています。

 

 

基本ビュー:品目の基本的な情報を保持するビューです。品目の名称、説明、基本単位、課税区分、購買グループなどの情報が含まれます。また、品目の分類や特性値なども基本ビューに登録されます。

 

販売ビュー:品目の販売に関する情報を保持するビューです。価格設定や売上計算方法、顧客グループ、販売組織などの情報が含まれます。また、販売価格や価格条件などの情報も販売ビューに登録されます。

 

購買ビュー:品目の購買に関する情報を保持するビューです。購買価格や調達先、購買グループ、最小発注量などの情報が含まれます。また、リードタイムや発注サイクルなどの情報も購買ビューに登録されます。

 

在庫管理ビュー:品目の在庫管理に関する情報を保持するビューです。在庫単位や保管場所、在庫管理ポリシー、再発注ポイントなどの情報が含まれます。また、在庫の最大在庫量や最小在庫量などの情報も在庫管理ビューに登録されます。

 

会計ビュー:品目の会計に関する情報を保持するビューです。会計科目や会計方法、税コード、原価会計などの情報が含まれます。また、品目の原価計算方法や販売原価などの情報も会計ビューに登録されます。

 

製造ビュー:品目の製造に関する情報を保持するビューです。製造手順や製造方法、作業センター、工程管理などの情報が含まれます。また、生産ロットサイズや製造コストなどの情報も製造ビューに登録されます。

 

 

これらのビューは、品目に関する異なる情報を効果的に管理し、異なる部門やビジネスプロセス間で情報を共有するためのものです。

SAPの品目マスタにあるMRPビューは、品目の生産計画(MRP: Material Requirements Planning)に関する情報を保持するビューです。MRPビューは、製造業において生産計画を効果的に管理するために使用されます。

MRPビューは、生産計画に関する情報を効果的に管理し、生産計画と調達計画を連動させるために使用されます。これにより、生産計画を正確に実行し、生産の効率性や顧客対応性を向上させることができます。

SAPの品目マスタにあるMRP1ビュー、MRP2ビュー、MRP3ビュー、MRP4ビューは、それぞれ異なる生産計画(MRP: Material Requirements Planning)に関連する情報を保持するビューです。以下にそれぞれのビューの概要を説明します。

 

 

MRP1ビュー:品目の基本的な生産計画情報を保持します。主に、品目のプロクリュメントデータ(調達ロットサイズ、リードタイム、調達先など)や生産スケジュール(生産ロットサイズ、最小生産ロット、製造リードタイムなど)を設定します。これにより、品目の製造計画を効果的に管理し、生産計画を最適化することができます。

 

MRP2ビュー:品目の在庫管理に関する情報を保持します。主に、最大在庫量、最小在庫量、再発注ポイントなどの在庫管理ポリシーを設定します。また、品目の特性値や仕様情報も含まれます。これにより、在庫レベルを最適化し、品目の特性や仕様を生産計画に反映させることができます。

 

MRP3ビュー:品目の生産リソースに関する情報を保持します。主に、製造工程や製造リソース(マシン、工場、作業センターなど)に関する情報を設定します。これにより、生産リソースの効率的な利用を考慮した生産計画を立案することができます。

 

MRP4ビュー:品目の計画価格に関する情報を保持します。主に、計画価格の設定や計画価格の更新に関する情報を設定します。これにより、生産計画の価格評価を行い、適切な計画価格を考慮した生産計画を実施することができます。

 

 

これらのMRPビューは、品目の生産計画に関連する情報を包括的に管理することで、生産計画を最適化し、製造業務を効率化するために使用されます。各ビューは異なる情報を保持しており、それぞれのビューが連動して生産計画を適切に実施することができます

 

 

3.BOM

BOM(Bill of Materials)は、製品を構成する部品や材料、その数量、および製品の構成を記述する文書です。BOMは、製品の設計、製造、品質管理、在庫管理などのさまざまな目的に使用されます。

 

E-BOMとM-BOMは、BOMの2つの主要なタイプです。E-BOMは、「Engineering Bill of Materials」の略で、設計部門が使用するBOMです。E-BOMには、製品の機能や形状、材料などの設計情報が含まれています。一方、M-BOMは、「Manufacturing Bill of Materials」の略で、製造部門が使用するBOMです。M-BOMには、実際に製造するために必要な部品、数量、手順などの詳細が含まれます。

その他のBOMの種類には、以下があります。

 

S-BOM:「Service Bill of Materials」の略で、製品の修理やメンテナンスに必要な部品や材料、その数量、および製品の構成を記述するBOMです。

 

A-BOM:「Assembly Bill of Materials」の略で、サブアセンブリやサブグループの構成を記述するBOMです。

 

P-BOM:「Purchasing Bill of Materials」の略で、製品を製造するために外部のサプライヤから購入する必要がある部品や材料、その数量、および製品の構成を記述するBOMです。

 

T-BOM:「Tooling Bill of Materials」の略で、製品を製造するために必要な専用工具や治具の構成を記述するBOMです。

 

 

これらのBOMの種類は、企業や業界によって異なる場合がありますが、上記のような一般的な分類があります。

BOMを設定するには、CS01トランザクションコードを使用します。以下にCS01で設定する項目や詳細を説明します。

 

 

項目データ:BOMの基本情報を設定します。項目番号や項目のタイプ(製品、部品、サブアセンブリなど)を指定します。

 

構成データ:BOMの構成情報を設定します。主に、製品に含まれる部品やサブアセンブリの項目番号、数量、単位、作業センター、リードタイムなどを指定します。

 

プラントデータ:BOMを使用するプラントに関する情報を設定します。製品の製造に使用するプラントや工場、作業場などを指定します。

 

作業スケジュール:BOMの製造に関するスケジュール情報を設定します。主に、製品の生産開始日、製品の製造時間、製品の生産終了日などを指定します。

 

システム条件:BOMの管理に関するシステム条件を設定します。主に、BOMの有効/無効の設定や、代替BOMの設定などが含まれます。

 

製品構成のパラメータ:BOMの製造に関するパラメータを設定します。主に、BOMの製造方式(自動、手動など)や、自動調達の設定、在庫管理の設定などが含まれます。

 

 

製品構成の顧客/供給先情報:BOMの顧客や供給先に関する情報を設定します。主に、製品を顧客別に変更する場合の設定や、供給先ごとの異なるBOMの設定などが含まれます。

これらの項目を適切に設定することで、製品のBOM情報を正確に管理し、製品の製造プロセスを効率化することができます。また、BOMは製品の構成情報を管理するための中心的なデータであり、製品の生産計画や在庫管理、調達などの業務プロセスに大きな影響を与えるため、正確な設定が重要です。

 

 

4.作業区

作業区は、生産計画や生産実績の管理に使用されます。作業区は、生産現場や作業場所を定義するために使用され、作業場所の特定や生産のトレーサビリティを追跡するために重要な情報を提供します。

CR01は、SAPの作業区マスタを登録するためのトランザクションコードであり、作業区の基本情報を登録する際に使用されます。CR01で登録する内容は以下の通りです。

 

作業区コード:作業区を一意に識別するためのコードです。作業区コードは一般に短い英数字の組み合わせで構成されます。

 

作業区名称:作業区の名称を入力します。作業区の特定や理解を助けるために、分かりやすい名称を付ける必要があります。

 

作業区種別:作業区の種別を指定します。例えば、生産ラインや作業センターなどの作業区種別を選択します。

 

計画工程:作業区に紐づく計画工程を指定します。作業区が所属する生産プロセスを示します。

 

生産工場:作業区が所属する生産工場を指定します。作業区が存在する生産拠点を示します。

 

作業時間:作業区の勤務時間を指定します。作業区での作業時間や稼働時間を設定します。

 

能力カテゴリ:作業区に割り当てられるリソース(例えば、人員や設備)を指定します。

 

 

これらの情報を登録することにより、SAPの作業区マスタに作業区の基本情報が登録されます。これにより、作業区の管理や生産プロセスの計画・実績のトレーサビリティが可能となります。

 

 

5.作業手順

作業手順は、製品の製造プロセスや作業手順を定義するために使用されます。作業手順は、製品の製造や加工、組立てなどの具体的な作業ステップを記述し、作業者に対する作業の指示書として機能します。

 

CA01は、SAPの作業手順マスタを設定するためのトランザクションコードであり、作業手順の基本情報を設定する際に使用されます。CA01で設定する内容は以下の通りです。

 

製品コード:作業手順を設定する製品のコードを入力します。作業手順を紐づける製品などの指定をします。

 

ルーティング:作業手順に関連する製造ルーティングを指定します。製品の製造プロセスや工程の流れを定義し、作業ステップの順序や条件を設定します。

 

作業ステップ:作業手順に含まれる具体的な作業ステップを設定します。例えば、製品の組立て、加工、検査などの作業ステップを定義し、作業ステップのタイプ、作業内容、所要時間、作業者などの情報を設定します。

 

資源:作業ステップに必要な資源(例えば、設備や人員)を指定します。作業ステップに必要なリソースを設定し、製造プロセスの管理を行います。

 

クオリティ情報:作業ステップに関連する品質情報を設定します。例えば、検査項目、検査方法、合格基準などを設定し、作業ステップの品質管理を行います。

これらの情報をCA01で入力して設定することにより、SAPの作業手順マスタに製品の作業手順の基本情報が設定されます。これにより、製品の製造プロセスの管理や作業者に対する作業の指示書としての機能が実現されます。

 

 

6.製造バージョン

製造バージョンは、製品の製造プロセスや製造仕様を定義するために使用されます。製造バージョンは、製品の異なるバリエーションや仕様を区別するために使用され、製品の生産を管理する際に重要な情報を提供します。

C223は、SAPの製造バージョンマスタを設定するためのトランザクションコードであり、製造バージョンの基本情報を設定する際に使用されます。C223で設定する内容は以下の通りです。

 

製品コード:製造バージョンを設定する製品のコードを入力します。製品を一意に識別するためのコードであり、製造バージョンを紐づける製品の指定をします。

 

製造バージョン:製品の異なるバリエーションや仕様を識別するための製造バージョンを指定します。例えば、製品のサイズ、色、仕様の違いなどを識別するために使用されます。

 

有効期間:製造バージョンの有効期間を設定します。製品の製造バージョンの有効期間を指定し、期間内のみ有効な製造バージョンを定義することができます。

 

製造場所:製造バージョンが製造される場所を指定します。例えば、製品の生産工場や生産ラインを指定します。

 

製造リソース:製造バージョンに割り当てられるリソース(例えば、設備や人員)を指定します。製品の製造に必要なリソースを設定し、製造プロセスの管理を行います。

 

製造情報:製造バージョンに関連する製造情報を設定します。例えば、製品の製造時間、製造ロット数、品質情報などを設定します。

 

 

これらの情報を設定することにより、SAPの製造バージョンマスタに製品の製造バージョンの基本情報が設定されます。これにより、製品の製造プロセスの管理や製品の異なる仕様の識別が可能となります。

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