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今さら聞けないSAP ERPのモジュール群を知ろう

1. 今さら聞けないSAP ERPのモジュール群を知ろう

SAP ERPといえば、モジュールと呼ばれる業務領域ごとの機能群が特徴ですよね。

代表的なモジュールといえば、ロジスティクス系(SD,MM)や会計系(FI,CO)などがあります。

モジュールが少しずつ増えているせいか、自分が担当するモジュール以外の知識をほとんど知らない方もいるようです。

 

そこで今回は、SAP ERPのモジュール群を改めて把握しておきましょう。

 

 

1-1. 販売管理(SD)

販売管理(SD)モジュールは、見積もり・受注・出荷のプロセスまでをカバーするモジュールです。

販売管理モジュールでは取引先への見積もりを提出する、発注を受け取る、倉庫から商品を発送する、請求書を送って支払いを受け取るなど、一連の販売業務を一括して管理することができます。

 

販売管理モジュールで取得した売り上げデータは、自動的に会計管理モジュール(FI)へ送信されるため、会計業務の効率化にも寄与します。

売上データの二重入力やヒューマンエラーのリスクを軽減し、正確な経理処理を実現するために欠かせない機能です。

 

ビジネスインテリジェンス(BI)ツールと連携させることで売上予測や分析などに役立つ機能でもあります。

 

 

1-2. 在庫購買調達・在庫管理(MM)

在庫購買調達・在庫管理(MM)モジュールでは、在庫レベルを最適化する機能を提供します。

需要予測や受注状況などを考慮し、必要な在庫量を適切に設定することで、在庫不足や過剰在庫を防止します。

 

また、在庫品目の追跡や管理も在庫管理モジュールの重要な機能です。

商品の入荷、出荷、移動などの在庫の動向をリアルタイムで把握し、ロット管理やシリアル番号の追跡など、詳細な在庫情報を管理します。

在庫管理モジュールは、在庫の入出荷プロセスを効率化し、発注の作成から納品書の作成、入庫処理から出庫処理まで在庫の流れをシームレスに管理できます。

 

さらに、在庫の評価と会計処理もサポートし、正確な在庫評価と会計データを提供します。

 

 

1-3. 財務会計(FI)

財務会計(FI)モジュールでは、社外に向けて自社の会計状況を公表するための各種レポート作成を目的としています。

また、社内に点在する会計に必要なデータを吸い上げ、一元化することも重要な役割のひとつです。

サブモジュールとしては、総勘定元帳や売掛金、買掛金などがあります。

 

財務会計モジュールは、SAP ERPの顔と言っても過言ではないモジュールです。

なぜなら、販売管理や在庫購買調達・在庫管理、生産管理といった業務領域とリアルタイムでデータを連携させ、企業内資源の一元化をもっともわかりやすく体現しているからです。

 

財務会計モジュール以外で行われた処理は、財務会計モジュール内に転記され、「会計伝票(FI document)」として転記・記録されます。

これにより、損益計算書や貸借対照表、財務諸表などを作成するための仕訳情報がまとめられます。

 

また、貸借一致の原則に基づく計上処理や不正な取引を防止するための権限分割など、企業会計にもとめられる厳格な要件を満たすことも特徴です。

 

 

1-4. 原価管理(CO)

原価管理(CO)モジュールは、社内向けの管理会計を目的としたモジュールであり、原価や費用・収益を分析し、報告する機能で成り立っています。

主なサブモジュールとして間接費管理、製品原価管理、収益性分析などがありますね。

これにより、間接費や直接費を計算し、事業や製品別の収益性を分析することや、集計した間接費を関連する製造部門に予算として配分する役割も果たしています。

 

 

1-5. 生産管理(PP)

生産管理(PP)モジュールは、企業の生産プロセスに関わる管理機能を包括的に備えており、資材所要量計画に基づく生産指示や生産工程の管理、生産実績の計上と原価モジュールへの連携などを行います。

一般的な製造業で行われる、生産量の計算や計画手配、製造支持などが主な機能です。

 

また、使用した原材料の実際の量や生産量、作業工程の実行時間などは製造実績として登録され、前述の原価管理モジュールで利用されます。

 

 

1-6. 品質管理(QM)

品質管理(QM)モジュールは、購買や生産によって入庫された在庫全般に対して品質検査を計画・実施します。

品質管理は品質計画、品質検査、使用決定の3つのプロセスで構成されており、事前に検査項目や検査日を登録することで、自動的に検査計画が実行されます。

 

また、品質検査が完了していない在庫はSAP ERP内で使用できない在庫(ブロック状態)にすることも可能です。

これにより、品質検査と在庫ステータスを連動させた高度な在庫管理が行われます。

 

 

1-7. 拡張倉庫管理(EWM)

拡張倉庫管理(EWM)モジュールは、分散・複合倉庫における多品目の在庫管理やロケーション管理、人員計画などに対応した高度な倉庫管理機能を提供します。

元々は独立した外部機能として提供されていましたが、SAP S/4 HANA内のモジュールとして統合されました。

EWMモジュールは、SAP S/4 HANAの主要モジュールとシームレスに連携し、製造指示や購買発注を受けて、リアルタイムな在庫状況を提供します。

さらに、SAP S/4 HANAでは、在庫同期機能が新たに追加され、PPモジュールやMMモジュールとの完全な在庫連携が可能になりました。

 

 

1-8. 生産計画/詳細計画(PPDS)

生産計画/詳細計画(PPDS)モジュールは、詳細な生産日程計画や作業順序計画を策定・管理します。

このモジュールは、前述のEWMモジュールと同様に、SAP S/4 HANA内で統合された機能の一部です。

時間制約や部材の供給状況などを考慮しながら、詳細な生産日程計画を策定することが可能です。

 

また、オーダーごとの優先順位や生産ラインの切り替えなども考慮し、具体的な作業順序計画を策定します。

 

 

1-9. 人事管理(HR)</h3>

人事管理(HR)モジュールは、企業内の人事業務や人材管理業務全般をカバーします。

給与計算や福利厚生の管理、勤務時間の追跡、組織内の配置など、一般的な人事業務を効率化し、ERP内でデータとして保存します。

 

また、人的資本管理(HCM)に対応する機能として、タレントマネジメントやパフォーマンス管理なども提供されています。

近年は、外部機能として「SAP SuccessFactors」が導入され、従業員の満足度向上や人的資源の効果的な活用を促進するためのヒューマンエクスペリエンス管理(HXM)をサポートする機能も追加されました。

SAP S/4 HANA環境では、既存のHRモジュールからSAP SuccessFactorsへの移行も可能です。

 

 

1-10. プロジェクト管理(PS)

プロジェクト管理モジュール(PS)は、SAP ERP内のツールで、プロジェクト全体の計画・実行・完了までのライフサイクルを効率的に管理します。

プロジェクト管理モジュールでは、プロジェクトの構造化、工期と予算の最適化、作業順序の計画、実績の一元化などの機能が提供されます。

主に建設業界や製造業界などで利用され、長大なプロジェクトの把握と最適化を支援します。

PSモジュールを使用することで、プロジェクトの進捗状況や予算の管理が容易になり、プロジェクトの成功に向けた意思決定をサポートします。

 

また、リソースの割り当てやタスクのスケジューリング、リアルタイムなデータ連携によるプロジェクトの可視化も可能です。

プロジェクトの効率化と管理の強化に貢献する重要なモジュールです。

 

 

1-11. プラント保全(PM)

プラント保全(PM)モジュールは、プラント(設備・機械)の保守運用を効率的に行うための機能群です。

プラント保全モジュールでは、保全作業の特定・プランニング・スケジューリング・実施・完了確認・実績管理などのフェーズをカバーしています。

主な機能には、作業指示書の作成や保全計画の立案、スケジュールの管理、予防保全の実施、故障の修理手配などがあり、適切なタイミングで予防保全や修理を行えることが強みです。

他のモジュール同様にリアルタイムなデータ連携により、プラントの稼働状況や保守作業の進捗を把握することが可能です。

 

 

1-12. サービス管理(CS)

製品納品後のアフターサービス業務を効率的に管理するためのツールです。

主な機能は契約管理、サービスオーダー管理、保証とクレーム管理、部品と在庫管理、請求と収益管理、レポートと分析です。

顧客との契約情報を管理し、サービスオーダーを作成・管理し、保証やクレーム処理を行います。

また、部品や在庫の管理や請求書作成、収益の追跡も可能です。

さらに、サービス業績や顧客満足度などのデータを分析し、改善策を立案します。

CSモジュールは、アフターサービスの効率化と顧客満足度向上に貢献します。

 

 

 

2. SAP ERPのモジュールは今後も増え続ける?

販売管理や在庫管理、財務会計などは知らない人がいないほど有名なモジュールですが、

生産計画/詳細計画(PP/DS)やサービス管理(CS)などは、存在自体を知らない方もいるのではないでしょうか。

また、拡張倉庫管理(EWM)についてはもともとSAP ERPの機能ではなく、外部機能がS/4 HANAで統合された形になるため、ECC6.0までの知識では追いつけない部分もあります。

 

今後、SAP ERPのモジュールが増えていくかはわかりません。

しかし、少しずつ機能が変わりつつ、統合や廃止によって名称が変わっていく可能性は大いにあります。

完璧に追いかけ続けることは難しいのですが、随時情報をアップデートしていきたいですね。

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