SAP S4 HANAへの移行で読んでおくべきドキュメント
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はじめに
SAP S/4HANAへの移行は、今後ますます増えていくことが予想されます。
SAP界隈で仕事をするコンサルタント/エンジニアも、S/4 HANAの知識習得に勤しんでいることでしょう。
特にSAP ERP Central Component(ECC)6.0からSAP S/4HANAへの移行は、日本のいたるところで進行中です。
しかし、移行にはさまざまな制約条件があります。
そこで今回は、SAPの公式ヘルプであるHelp portalに記載されている移行関連のドキュメントをおさらいしておきましょう。
1.Conversion Guide for SAP S/4HANA
「Conversion Guide for SAP S/4HANA 2022」は、SAP S/4HANAへのコンバージョンに関する詳細な情報が記載されています。
内容的には、S/4 HANAへの移行に向けて準備すべきこと、読むべき文書、ツール、ノート適用などが含まれていて、いわゆるガイドライン的な資料ですね。
資料の後半になると、各フェーズでやるべき作業内容がかなり詳しく書かれています。
具体的な作業内容も詳細に解説されており、ベーシスだけでなく業務コンサルタントやエンジニアレベルでも十分に役立つ内容です。
忙しい方はとりあえずこのマニュアルだけでも目を通しておくと、ECC6.0からS/4 HANAへの移行に関するタスクの大枠がつかめるのではないかと思います。
2.Conversion to SAP S/4HANA using SUM
「Conversion to SAP S/4HANA using SUM」は、アップデートツールであるSUM(Software Update Manager)を使用したSAP S/4HANAへの移行マニュアルですね。
SUMは、SAPシステムのアップデートや、SAP S/4HANAへの移行を行うための標準ツールです。
いわゆる標準の移行ツールともいえるべきもので、移行プロジェクトに特化した機能を提供します。
当マニュアルでは、SUMを実施するための準備作業や計画、SUMの実行、後処理などが章ごとに記載されているので、
移行チームの仕事にかかわりそうな方はひととおり読んでおくとよいでしょう。
ちなみにSUMの使用で発生したエラーに関するトラブルシューティングなども含まれています。
3.SAP S/4HANA Cookbook Customer/Vendor Integration
「SAP S/4HANA Cookbook Customer/Vendor Integration」は、簡単に言えばECC6.0とS/4 HANA間のマスタの差異を埋めるためのマニュアルです。
ECC6.0までの得意先/仕入先マスタは、ご存じのようにSAP S/4HANAで「BPマスタ(Business partnerマスタ)」として統合されました。
また、BPロールと呼ばれる属性情報の塊を付与することで、詳細な管理が可能になりました。
ECC6.0からS/4 HANAへの移行ではBPマスタに対し、旧来の得意先/仕入先マスタを紐づける必要があり、これを「BP-CVI」と呼んでいます。
このマニュアルには、得意先マスタと仕入先マスタをBPマスタに統合する手順が記載されていて、処理によって影響を及ぼすアドオンコード、
外部システム連携についての情報も含まれています。
かなり現実的なマニュアルなので、こちらも読んでおいて損はないと思います。
4.Custom Code Migration Guide
「Custom Code Migration Guide」は、簡単に言えばECC6.0環境のアドオンプログラムをS/4 HANA環境で動かすための手順をまとめたものです。
ECC6.0までは、アプリケーションごとに複数のテーブルが用意されていましたが、S/4 HANAでは高スループットを実現するために、索引や履歴テーブルが廃止されました。
その一方で、オンザフライ集計(切り口を自由に変更しながらのリアルタイム集計)が導入されたため、これに伴ってアドオンプログラムも変更する必要があります。
当資料では、修正すべき機能を洗い出すツール「ATC(ABAP TEST COCKPIT)」の環境構築方法や、ADT(ABAP Development Tools)を使用したプログラム修正の手順、QuickFixなど、具体的な手法をまとめています。
開発者向けの資料ですので、ABAPerやSEは必ず読んでおいたほうが良いと思います。
5.Help Portalは定期的にチェックしよう
SAP S/4HANAへの移行プロジェクトでは、これらHelp portalに掲載されているマニュアルをしっかり活用していきましょう。
どの資料も英語ですが、現在はフリーの優秀な翻訳ツールがあるので、英語が苦手な方でも理解できると思います。
ちなみに今回紹介した資料はSAP Help Portalの”SAP S/4HANA”セクションにまとめて掲載してあります。
このセクションをチェックするだけでもS/4 HANAでの移行で必要なことが把握できるでしょう。
ぜひ参考にしてみてください。