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S/4 HANAで活用が進む「SAP SuccessFactors」の概要と特徴

はじめに

SAP ERPはS/4 HANA世代に入り、外部システムとの連携によって機能を強化する方向性に向かっています。

例えばデータ分析を強化する「SAP Analytics Cloud」、データウェアハウス機能を担う「SAP BW/4HANA」、

購買・調達プロセスが強化される「SAP Ariba」などがその代表例です。

今回はその中のひとつ「SAP Success Factors」を紹介します。

SAP Success Factorsは従来のHR(人事給与)機能だけではなく、

人材管理に関するさまざまな機能が付与されており、日本国内でも導入が進んでいます。

 

 

 

1.「SAP Success Factors」とは

SAP SuccessFactorsは、SAPのクラウドベースの人材管理ソリューションです。

もともとは、SAP社と何ら関係のない企業の製品でしたが、2011年にSAP社による買収が行われ、現在はSAPの主要製品のひとつになっています。

 

 

1-1.SAP Success Factorsの歴史

SuccessFactorsは、2001年にラーシュ・ダルガード(Lars Dalgaard)によって設立されました。

SuccessFactorsは主にパフォーマンス管理ソフトウェアの提供に焦点を当てており、

従業員の評価と目標設定、スキル開発などのプロセスを支援していました。

その後、クラウドコンピューティングの台頭とともに、SuccessFactorsはクラウドベースの人材管理プラットフォームに成長しました。

 

2007年には従業員パフォーマンス管理ソリューションを提供する競合企業であるPlateau Systemsを買収し、製品ラインを拡大。

さらに、2011年にはSuccessFactors社自体がSAPに買収され、SAP SuccessFactorsとして提供されることとなりました。

ちなみに買収額は約34億ドルで、この買収によりSAPは従来のオンプレミス型ERPに搭載されていたHRソリューションに加え、

クラウドベースの人材管理ソリューションも手に入れたというわけです。

 

 

 

2.なぜSuccess Factorsの導入が進んでいるのか

2021年に旭化成がSAP Success Foctorsの導入を決定したという発表が為されました。

国内の大手企業がこうしたクラウドベースの人材管理ソリューションを導入するのは、珍しいことのように思えます。

しかし、近年SAP Success Foctorsは徐々に注目を集めており、導入を検討する企業が増えているようです。

 

その背景には、「リスキリング」や「終身成長」など、これまでの日本企業には存在しなかった

「中堅やベテラン従業員の成長を促す施策」が必要とされているという事情があります。

日本企業はビジネスモデルの変遷や技術トレンドの変化についていくために、

従業員に対して「退職するまで成長し続けること」を求め始めているのです。

 

こうした事情から従来の「配属、勤怠、給与」だけを管理するHRモジュールでは機能的に不足感が出てきたのでしょう。

 

その他にも、次のような理由があると考えられます。

 

 

2-1.クラウドベースの柔軟性と迅速な導入

SuccessFactorsはクラウドベースのソリューションであり、オンプレミスのSAP ERPよりも柔軟性が高く、導入が迅速に行えます。

新しい機能やアップデートはクラウド環境で容易に導入でき、カスタマイズも柔軟に行えます。

従来のオンプレミスシステムに比べて導入プロジェクトの時間とリソースを削減できるという点が強みのひとつです。

ただし、クラウド化が当たり前になった近年のエンタープライズITでは、特段珍しいことではありません。

どちらかといえば、クラウドベースのS/4 HANAと連携できるという点において評価されている気がします。

 

 

2-2.エンゲージメント向上とタレントマネジメント

SuccessFactorsは、エンゲージメント向上やタレントマネジメントに特化した機能を提供します。

こうした機能は、従業員のモチベーションを高め、スキルの開発やキャリアプランニングを効果的にサポートできるとされています。

従来のSAP ERPに内包されていたHR機能とは一線を画す機能で、従業員のパフォーマンス評価や目標管理、

リーダーシップ開発など、戦略的な人材管理プロセスを統合的に実行できる点が魅力です。

 

 

2-3.グローバル展開への対応

多国籍企業やグローバル展開を行う企業にとって、SuccessFactorsは国際的な人材管理のニーズに対応できる重要なツールです。

多言語対応、異なる法的要件への適合、地域別の労働基準への対応など、国際的な環境に適した機能を提供します。

 

 

2-4.アナリティクスとデータ駆動の意思決定

SuccessFactorsは高度なデータ分析とレポート機能を備えており、人材データを活用して戦略的な意思決定をサポートします。

従業員のパフォーマンスデータ、トレーニングの進捗状況、人材のスキルセットなどを可視化し、データ駆動の戦略を展開できます。

 

 

2-5.モバイル対応とユーザーエクスペリエンス

SuccessFactorsはモバイルデバイスに対応しており、従業員はどこからでもアクセスできます。

ユーザーフレンドリーなインターフェースとモバイルアプリケーションは、従業員が簡単に情報を入力し、利用できることを保証します。

ユーザーエクスペリエンスの向上は、従業員満足度の向上にも寄与します。

 

 

2-6.給与計算の専門化

SuccessFactorsのSF-ECP(SuccessFactors Employee Central Payroll)は、給与計算に特化したサービスを提供します。

従来のSAP HRモジュールと比べて給与計算プロセスをより効率的に管理できます。

また、法制度や業務プロセスを考慮した給与計算業務をサポートし、日本企業などでの利用価値が高まります。

 

 

2-7.日本企業の人事領域の弱点を補完

Success Factorsは従来のSAP ERPのHRモジュールを補完し、より高度な人材管理機能を提供していることがわかりますね。

人事領域は「労務管理、配属、給与計算」という3点がカバーされていましたが、

今後はエンゲージメントやタレントマネジメントもシステムで管理し、

「終身成長」や「リスキリング」をサポートしていかなくてはなりません。

こうした需要と、クラウドベースの柔軟性や効率性が評価されているのだと思います。

 

 

 

まとめ

ECC6.0時代までは、どちらかといえばHRモジュールはマイナーな存在でした。

その背景には、給与計算や勤怠管理はすでに自前のシステムを持っている企業が多く、

わざわざSAPに頼るまでもない、という事情があったのかもしれません。

一方で、グローバル化への対応や従業員の成長を促す戦略などは、古いシステムでは実現しえないものです。

 

ECC6.0からS/4 HANAへの移行に合わせて、Success Factorsを導入する企業が増えているのは、

日本企業に残る人材管理の課題を解決しようとする動きの表れなのかもしれません。

 

国内でも徐々にSuccess Factorsに関する案件が増えてくると考えられます。

今後、SAPコンサルタント/エンジニアとして成長したいのであれば、

できるだけ早いうちにSuccess Factorsに関するプロジェクトを経験しておくべきなのかもしれません。

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