今後の開発はBTPに集約?SAP business Technology Platformについて知ろう
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はじめに
企業がデジタルトランスフォーメーションを進める上で、統合的なアプローチは不可欠です。
SAP Business Technology Platform(SAP BTP)は、このニーズに応える統合プラットフォームとして注目を集めています。
しかし、なぜSAP BTPがこれほど重要なのでしょうか?
今回は、SAP BTPの概要と、今後の開発でどのように役立つかを掘り下げていきます。
1.SAP BTP(Business Technology Platform)とは
SAP BTPは、企業がデータを管理し、ビジネスプロセスを統合し、強力なアプリケーションを構築するための包括的なプラットフォームです。
クラウドベースのサービスコレクションとして構成されており、データベース管理、アプリケーション開発、高度な分析機能、および統合ツールを提供します。
このプラットフォームは、企業がデジタル変革を加速し、より迅速にイノベーションを実現するための支援を目的としています。
SAPが展開するプラットフォーム・アズ・ア・サービス(PaaS)であるSAP BTPは、アプリケーションの開発、自動化、統合、
データ管理と分析、AIなどの多岐にわたるサービスを一つの統一された環境内で提供しています。
これは、単独のシステムでは対応が不可能な機能を一元的にまとめておくものです。
よく勘違いされがちなのですが、「SAP BTPはSAP ERPの拡張を目的とした開発基盤」ではありません。
確かに開発基盤としての側面も持ちますが、その本質はSAPを活用したビジネスを支えるプラットフォームです。
さらに言うと、SAPが提唱する「クリーンコア」を達成するための手段でもあります。
クリーンコア戦略とは、SAP ERP本体を可能な限り標準状態に保ちつつ、ビジネス上の目的を達成するという方法論です。
近年のSAPが大々的に掲げているテーマであり、SAP BTPはこのクリーンコア戦略を具体化するための戦術的なソリューションと言えるでしょう。
2.SAP BTPの主要な機能
次にSAP BTPの主要機能について解説します。
SAP BTPは常にアップデートし続けており、機能については今後変更される可能性があります。
そのため、以下の情報はあくまでも2024年時点のものとして考えてください。
2-1.アプリ開発機能
SAP BTPの目玉とも言えるのが、アプリ開発機能です。
開発機能といっても、EPRのSE80のように特定のトランザクションを指すものではありません。
開発のための「機能群」と言ったほうが正しいでしょうね。
具体的には、
SAP Business Application Studio(BAS)
SAP BTP ABAP Environment
SAP Build Apps
SAP Build Work Zone
の4つが該当します。
SAP Business Application Studio(BAS)は、SAPソリューション全体の開発に特化していて、簡単に言えばFioriベースで開発ツールを集約した統合開発環境です。
また、SAP BTP ABAP Environmentは、従来のABAPによる拡張開発をERPコアから離れたところで実施する機能、
SAP Build AppsはRPAやワークフロー用のローコード/ノーコード開発環境です。
こうした開発環境/ツールがひとつのプラットフォームに集約されていて、ERPの外で開発できることもBTPの強みですね。
本格的な開発ならばBASかABAP Environmentを、簡易なアプリ開発ならばBuild Appsと、選択肢の幅が広いことも魅力です。
2-2.自動化機能
BTPが持つ2つ目の機能は自動化に関するものです。
自動化に関しては主に以下2つのツールが用意されています。
SAP Build Process Automation
SAP Build Process Automationは、ドラッグ&ドロップの操作でワークフローを構築できる自動化ツールで、主に以下のような機能を提供します。
・ローコード開発に適したユーザーフレンドリーなインターフェース
・ビジネスユーザー(専任のエンジニアではない開発者)向け
・強力なワークフロー管理機能と、プロセスの監視・管理が可能なダッシュボード
・RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)機能
SAP Build Process AutomationではRPAを内蔵しており、自動化Botとワークフローを統合することが可能です。
また、特定の業種や業務に合わせたテンプレートと再利用可能な標準コンポーネントが用意されており、効率的な開発を支援します。
さらに、開発されたアプリケーションやワークフローへのアクセスを提供するポータルと、共通の認証機能を持つため、自動化アプリ開発後のリリースや運用もスムーズに進むでしょう。
一般的な自動化ツールと違うところは、リリースから運用までスムーズに行えることでしょうか。
SAP Intelligent Robotic Process Automation(iRPA)
SAPが開発した独自のRPAで、AIや機械学習との組み合わせを得意としています。
また、SAPが蓄積しているビジネスシナリオに対応したRPAであることから、ビジネスへの適合性も高いとされています。
2-3.統合に関する機能
統合に関する機能とは、端的に言えば連携に関する機能ですね。以下2つの種類に分類できます。
プロセス連携
・SAP BTP Integration Suite(Cloud)
・SAP Process Orchestration(On-Premise)
データ連携
・SAP Data Interigence Cloud(Cloud)
・SAP HANA SDI/SDA(Cloud/On-Premise)
・SAP Data Service(On-Premise)
これら連携機能によって他システムとの連携や、社内でのデータ収集・連携を効率化することができます。
2-4.データ分析に関する機能
データ分析に関する機能としては、クラウド型DWHの「SAP Datasphere」と、クラウド型BIの「SAP Analytics Cloud」の2種類が用意されています。
特に注目したいのはSAP Datasphereですね。
SAP BTPのデータ蓄積と管理を行う機能で、単なるデータウェアハウスとしてではなくデータレイクとしての機能も持っています。
DWHとは銘打っているものの、機能的には一回り上のものが搭載されていると考えてよいでしょう。
2-5.人工知能に関する機能
人工知能に関する機能としては、
・SAP AI Business Services
・SAP AI Core
・SAP AI Launchpad
・SAP Conversational AI
の4つが提供されています。
SAP AI Business Servicesは、ビジネス関連データに基づきトレーニングされたAIモデルを用いて、アプリケーションにスマート機能を組み込むサービスです。
また、SAP AI Coreは、オープンソースの機械学習によってSAP BTP上でAI機能を提供。
SAP AI Launchpadでは、SAP AI Coreで構築されたAIシナリオの管理を担当し、SAP Conversational AIは、チャットボットの開発と管理を行うためのプラットフォームを提供するといったイメージです。
SAPでは、Analytics Cloud(SAC)でも機械学習エンジンを活用した予測分析機能を提供していますから、機械学習を本格的にERPに取り込む企業にとっては良い選択肢になるのかもしれません。
3.SAP BTPの現状
現在、SAP BTPは、グローバルで15,500以上の顧客を持ち、急速に受け入れられているようです。
また、この顧客基盤は1500以上のパートナーによって支えられています。
ある顧客は、SAP BTPを「最も統一されたアプローチを提供するプラットフォーム」と見なしていて、そこそこ好評を得ている模様。
さらに、SAP BTPを利用する企業は、3,300を超えるAPI、260以上のデータと分析パッケージ、2,600以上の事前構築された統合環境、300以上のSAPプロセスオートメーションパッケージなど、事業を迅速にイノベーションするためのサービスを受けることができます。
SAPはBTPにかなり注力しているようで、日本でも採用が進むことは間違いないでしょうね。
そもそも2015年から地道に顧客を開拓してきたサービスであり、クリーンコア戦略の中核でもありますから、S/4 HANAとBTPがメジャーな組み合わせになる日も近いでしょう。
今後はSAP ERP人材もBTPについての知見を深めていく必要がありそうです。