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SAPコンサルタントとSEの違いとは?独特なSAP人材のキャリアを解説

はじめに

SAP界隈では「SE」というポジションよりも「ABAPer」や「コンサル」といった名称が浸透していて、他の分野とはポジションの認識が少し違うなと感じています。

そこでSAP業界を目指す方に向けて、SAPコンサルとSEの違いを解説します。

 

 

 

1.SAP業界におけるポジションを整理

まず、簡単に日本のSAP ERPプロジェクトにおけるポジションを整理しておきましょう。

一度でもプロジェクトに参加したことがある方ならばお馴染みの内容なので、読み飛ばしてください。

 

 

1-1.コンサル

一般的にはITコンサルタントを指しますし、SAP ERP界隈でも同じようなイメージで相違ありません。

しかし、ITコンサルタントの仕事内容とは少し違う面もあります。

 

例えば、一般的なITコンサルタントは

・経営課題に対して、ITによる解決策を具体化し、提案する

・システムの設計や構築に入る前までの議論、決定を行う

・システムの具体像を描き、Fit&Gap分析や要件定義までを担当する

・プロジェクトマネジメント

といった仕事をこなしますよね。

 

これに対してSAP ERPプロジェクトのコンサルタントは、

・SAP ERPにおける各モジュールのカスタマイズ、パラメータ設計を行う

・業務プロセス分析によって各モジュールで使える機能のピックアップとリサーチを行う

・アドオン開発における最上流工程(要求定義、要件定義、基本設計)への参画

などが含まれます。

 

お気づきの方もいると思いますが、一般的なITプロジェクトにおける「上流SE」の立場もこなすのがSAP ERPプロジェクトのコンサルです。

さらにテストフェーズでは、システムテストやUATの主導など、旗振り的な役割も任されます。

 

そのため、かなりの激務ですし、心身ともに高い水準を要求されることは間違いありません。

製品固有の知識や技術論、業務知識、ビジネススキルを兼ね備える必要がありますから、かなり多彩な能力が求められます。

 

あとはやはり、開発経験がバックボーンにある人材は評価されやすいですね。

業務知識+開発者の視点ということで、顧客に最適解を提示しやすいからです。

 

 

1-2.プログラマ(ABAPer)

一般的なITプロジェクトでは「プログラマ」と呼ばれますが、SAP ERPプロジェクトでは専用言語のABAPを用いることから「ABAPer(アバッパー)」という呼称が定着しています。

 

さて、このABAPerですが、SAP業界に参入する登竜門的なポジションとされています。

一方で、アドオン開発を一手に担う上級プログラマもABAPerと呼ばれるので、一概に「初心者向けのポジション」とは言えません。

 

筆者のイメージでは、

・純粋なプログラマとしてのABAPer

・SE兼プログラマとしてのABAPer

・一部コンサル領域にまで踏み込んだABAPer

という3パターンの人材がいて、当然のことながら下にいくほど重宝されます。

「SE」というポジションを設けないプロジェクトでは、大半が2番目か3番目ですね。

1番目の純粋な意味でのプログラマは、経験1~3年目の若手人材が担うことが多いです。

 

なぜこのようなズレが生じるかというと、SAP ERPそのものが複雑で膨大な知識体系であり、これを理解している者しかできない開発があるからです。

特に標準領域をしっかり活用したアドオン開発は、カスタマイズやパラメータ設定に加えてBAPIやexitなどの経験が必須になることもあります。

S/4 HANA世代に移行して次第にこうした要求は薄れてきていますが、それでもECC6.0までの知識・経験はまだまだ強いのです。

 

こうした事情から、プログラマでありながらSEやコンサルも兼任する人材がいることがSAP ERPプロジェクトの特異性なのかもしれません。

 

 

1-3.SE

さて、SAP ERPプロジェクトで最も分類が難しいポジションであるSEについて解説します。

これまで述べたように、SAP ERPプロジェクトではSEが行う業務をコンサルトABAPerで分担していることが多々あり、一般的なITプロジェクトにおけるSEが不在なケースがあります。

 

例えば、カスタマイズと上流(要件定義と基本設計)はコンサルが担当し、実装(詳細設計とテスト)はABAPerが行うと、SEは不要です。

実際に筆者が経験したプロジェクトでも、コンサルとABAPerがチームを組んで開発していることが多々あり、SEという呼称が登場しないことがありました。

 

ただし、

・カスタマイズはコンサル

・アドオン開発の上流はSE

・アドオン開発の下流はABAPer

という3段構えのプロジェクトも存在するので、ケースバイケースと言えるでしょう。

ちなみにSEのポジションの人材は、他のプロジェクトに移るとコンサルに変わるケースが多々ありますので、SAP ERPプロジェクトのSEは標準機能にも精通している必要があります。

 

 

 

2.「まずはABAPer」は正解か?

ABAPerとして活動する上での懸念点には、「報酬の天井が低い」「上流フェーズでの経験が積みにくい」という二つの側面があります。

 

SAP分野におけるABAPerの月収は一般に100万円未満とされるケースが多く、いくらスキルを高めたとしても、この限界を超えるのは難しいと言えます。

SAP業界では、クライアントの企業やプロジェクトのスケールが大きいため、上流フェーズの作業にコストが傾斜しやすく、Fit&Gap分析、カスタマイズ、要件定義などが高報酬の対象となるからです。

 

技術力の面から見れば、優秀なABAPerは間違いなく重宝される存在。

ただし、SAP業界では「SAP製品への理解と経験」と「顧客企業が属する業界への知見」をバランス良く持ち合わせた人材が高く評価されるのです。

これは現在でも変わらないでしょう。

 

従って、報酬を現状以上に引き上げるには、いずれABAPerという立場から一歩踏み出す必要があるかもしれません。

 

ABAPerの業務は詳細設計、コーディング、テストに重点が置かれがちで、これは他の分野のプログラマーにとっては自然なこと。

しかし、SAPの領域で求められる知識(標準仕様の理解、カスタマイズ、アクセス制御の知識など)は、習得しにくいのが現状です。

近年のSAP分野では、「標準機能を駆使して顧客の要求を満たす能力」がより重要視され、以前に比べて過度なアドオン開発を避ける動きがあります。

BTPなど新しい環境が登場しているので、アドオン開発が完全になくなるわけではありません。

しかし、広範なSAP ERPのカスタマイズやチューニング、他システムとの連携などのスキルを身につけ、進化し続ける必要があるでしょう。

 

 

 

まとめ

今回はSAP ERPプロジェクトにおけるポジションの整理について紹介しました。

SAP ERPプロジェクトではABAPだけに固執しない広範なスキルと経験を身に着けていきましょう。

クリーンコア戦略やFit to standardに対応するためにも、技術力とそれ以外をバランスよく鍛えていきたいですね。

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