SAPの品目グルーピングに役立つ「ファントム品」について
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はじめに
SAP ERPには複数の部品をひとつの部品として管理する「BOM」の機能があります。
しかし、BOMに含めることができない原材料や部品については、個別で管理する必要がでてきます。
この時、役立つのが「ファントム品」です。
PPを触ったことがない方にはなじみがない言葉かもしれませんが、覚えておくとさまざまなシーンで役に立ちます。
今回は、あまり使われることのない仮想的な品目の定義「ファントム品」について解説します。
1.ファントム品とは?なぜ必要?
ファントム品の説明に入る前に、まずBOMについて確認しておきましょう。
1-1.BOMとは?
BOM(部品表、Bill of Materials)とは、製品の製造に必要なすべての部品や材料、それらの数量、仕様、構成を詳細に記載したリストのことです。
BOMは製造業において非常に重要な役割を果たし、以下のような目的で使用されます。
・製品の構造把握
製品を構成するすべての部品や材料を明確に示すことで、製品の全体像を把握できます。
・製造計画の策定
製造に必要な材料や部品の調達計画を立てやすくなり、生産プロセスを効率化します。
・在庫管理
必要な部品や材料の数量が把握できるため、在庫の過不足を防ぐことができます。
・コスト管理
各部品や材料のコストを集計することで、製品全体のコストを正確に見積もることができます。
・品質管理
部品や材料の仕様が明確になるため、品質の維持や管理がしやすくなります。
BOMは通常、階層構造になっており、上位のアセンブリ(組立品)とそれに含まれる下位の部品や材料の関係が明確に示されています。
例えば、自動車のBOMであれば、エンジンや車体、電装品などの大きなサブアセンブリがあり、それぞれのサブアセンブリにさらに細かい部品や材料がリストアップされます。
1-2.BOMを補完するファントム品
ではファントム品は何かというと、端的に言うと「BOMに含めることができない部品や材料を仮想的に定義する品目」ですね。
厳密にいえば少し違うのですが、大枠としてはこの理解で問題ないかと思います。
本来のファントム品は、製造業において一時的に存在する製品や部品を指し、最終製品の一部として明示的に組み立てられるわけではないものを指します。
特徴としては以下が挙げられますね。
・組立簡素化
複数の部品をひとまとめにして、製造や組立の工程を簡素化するために使用されます。
これにより、個別に部品を管理する必要がなくなり、工程が効率化されます。
・在庫管理の簡略化
ファントム品は在庫として実際に保管されないため、在庫管理の手間を省くことができます。
製造が進むにつれて消費されるため、最終的な在庫には影響を与えません。
・設計の柔軟性
設計変更が発生した場合に、ファントム品を使用することで影響範囲を限定することができます。
例えば、特定のサブアセンブリに変更があった場合、その変更はファントム品に反映されるだけで済み、他の部分には影響を及ぼしません。
・生産計画の効率化
生産計画を立てる際に、ファントム品を利用することで、計画の複雑さを軽減し、より効率的に進行させることができます。
例えば、自動車の製造プロセスにおいて、エンジンのサブアセンブリがあるとします。
このエンジンのサブアセンブリは、実際にはファントム品として扱われることがあります。
エンジンは多くの部品から構成されていますが、製造プロセス中は一時的にひとつの「完成品」として扱われます。
しかし、最終製品としての自動車が完成する際には、このエンジンが個別の部品としてではなく、一つの「半製品」として組み込まれます。
この半製品状態のエンジンを車に組み付けていくためには、一時的に消費するパーツなどが必要です。
こうした雑多なパーツは完成品にも半製品にも組み入れにくいので、「ファントム品」として定義しておくことになります。
2.SAPでも使用されるファントム品
SAPでもPPなどの分野でファントム品が使われることが多いですね。
一時的に消費するようなパーツや材料は、それらがグループとなって半製品を構成するわけではありません。
したがってBOMのようにまとめられないのです。
一方で、別々に管理しておくと雑多になり、管理や製造の面から非効率になります。
そこで仮想的な品目としてファントム品を設置し、まとめて管理しておくわけです。
便宜上はBOMとして登録しますが、実際にはBOMのように「複数の品目が集まって大きな品目になる」わけではありません。
SAP上では、品目マスタの「特殊調達タイプ」として定義されることが多いようですね。
特殊調達タイプは調達タイプの保管項目で、「内製」や「外部調達」など調達の方法を記載する項目です。
この中にファントム品を表す値(一般的には50)を設定することで、ファントム品として登録することになります。
まとめ
今回は、製造業で使われる「ファントム品」について解説しました。
あまり意識されることがない言葉ですが、製造業のプロジェクトではたまに目にする概念です。
標準モジュールの知識としてはややマイナーですが、これを機に調べてみてはいかがでしょうか。