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    鍋野敬一郎のSAPソリューション最新動向#03

    こんにちは!SAP Freelance Jobs運営事務局です。

    弊社では、SAPジャパン株式会社出身で、ERP研究推進フォーラム講師でもある株式会社フロンティアワン 代表取締役 鍋野敬一郎氏をコラムニストとして迎え、「鍋野敬一郎のSAPソリューション最新動向」と題し、SAPのERP製品情報や最新技術情報を全12回にわたってお届けしています。

    第3回目である今回は、「SAPの2025年問題」について取り上げます!

    これからSAPに携わるお仕事をしたい方も、最前線で戦うフリーランスSAPコンサルタントの方も、ぜひ一度読み進めてみてください!

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    鍋野 敬一郎 プロフィール
    株式会社フロンティアワン 代表取締役
    ERP研究推進フォーラム講師
    1989年 同志社大学工学部化学工学科(生化学研究室)卒業
    1989年 米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。農業用製品事業部に所属し事業部のマーケティング・広報を担当。
    1998年 ERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職し、マーケティング担当、広報担当、プリセールスコンサルタントを経験。アライアンス本部にて戦略担当マネージャーとしてSAP Business All-in-One(ERP導入テンプレート)立ち上げを行った。
    2003年 SAPジャパンを退社し、コンサルタントとしてERPの導入支援・提案活動に従事。
    2005年 独立し株式会社フロンティアワン設立。現在はERP研究推進フォーラムでERP提案の研修講師、ITベンダーのERP/SOA/SaaS事業企画や提案活動の支援、ユーザー企業のシステム導入支援など、おもに業務アプリケーションに関わるビジネスを行っている。
    2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI):サポート会員(ビジネス連携委員会委員、パブリシティ委員会委員エバンジェリスト)

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    ■はじめに

    SAPの関係者が避けて通れない課題が、『SAP ERPの保守期限切れに起因する「SAPの2025年問題」』です。SAPに全く馴染みがない人から見ると、なぜバージョンアップと5年以上も先の保守期限切れがそんなに大変な問題なのかと思われるのではないでしょうか。

    現行製品SAP ERPの保守サポート期限が2025年に来ると言っても、まだ5年以上も先の話です。これまでも、SAP ERPでは何度もバージョンアップを経験しているわけですから“今回もいつものやり方ではだめなの?”という声もあります。

    実際に、この課題はこれまでより状況は遥かに厳しいと言えます。その理由は、①製品が変わる、②システム移行の難易度が高い、③SAPコンサルタント不足、この3つが複雑に絡み合うためです。今回は、SAPに関わったことが無い人向けに「SAPの2025年問題」その要点と課題について説明します。

     

    ■「SAPの2025年問題」の3つの課題とは?

     

    課題1、製品が変わる:SAP ERPからSAP S/4HANAへの移行とは

    SAP ERPの現行バージョンは6.0です。この元の製品が登場したのは1992年で、当時はSAP R/3という名称でした。日本に対応したのは、SAP R/3のリリース2.0からで、その後バージョンアップを重ねてSAP ERPという呼び方になったのは5.0あたりからです。(2.0→3.0/3.1→4.0B→4.6C→5.0→6.0というような状況、図表1:SAP社ERPの変遷)

     
    図表1:SAP社ERPの変遷
     

    つまり、現行製品SAP ERPはその登場から25年以上バージョンアップをしてきた安定した製品です。全世界では40,000社以上、国内では2,000社以上が導入しています。

     

    しかし、今回の移行はこれまでのバージョンアップとは2つの大きな違いがあります。それは、データベースにSAP独自開発の「SAP HANA」を採用したことと、アプリケーションのソースコードが全面的に書き直されて全く新しい機能構成になったことです。テーブル構成や機能も大幅に見直されていて全く別のアプリケーションとして刷新されています。

     

    このSAP S/4HANAは、新しい別のERPアプリケーションですがSAP ERPの上位互換があります。SAP ERPの機能と、そのデータを引き継ぐことが可能です。SAPより、ソフトウェア・アップグレード・マネージャー(略称:SUM)のDMO(Database Migration Option)とnZMD(near-Zero Downtime Maintenance)という2種類の移行オプションが提供されています。

     

    これまでのSAPバージョンアップは、「テクニカル・アップグレード」というやり方が一般的でした。このやり方は、機能はそのまま変えずにERPアプリケーションのバージョンを上げる手法です。今回も同様に、ユーザー企業の大半は移行作業の期間と費用の負担が軽い「システム・コンバージョン」を選ぶと予想されています。

     

     

    課題2、システム移行の難易度が高い:日本固有の特殊事情による問題について

     

    SAP S/4HANAはユニコード対応が必須となるのですが、国内ユーザーで現在稼働している2,000社以上のSAP ERPの多くはユニコード対応出来ていないと言われています。欧米企業では、IT部門に多くのSAP技術者が居てSAPの作業は自前で対処するケースも多いのですが、日本企業のIT部門は、SAPの運用やアップグレードに必要な技術者をベンダに頼るケースが多いのです。

     

    また、企業固有のこだわりや商習慣によって独自開発したシステムとSAPの連係が複雑に絡み合っています。日本企業のSAP ERPは、アドオンやカスタマイズが多く、移行作業も欧米企業より多くの手間と費用が掛かります。

     

     

    課題3、SAPコンサルタント不足:システム移行のみならず保守・運用に課題あり

     

    SAP S/4HANAの対応データベースは、SAPが独自開発した「SAP HANA」データベースです。これまでは、マルチDB対応でMS SQLやOracle DBなどを利用することが出来ましたが、今後は「SAP HANA」データベースのみとなります。OSもLinuxのSuSEです。

     

    つまり、移行作業やその後の保守・運用に求められるスキルや知識が大きく変わることになります。こうした新しい技術が、SAPコンサルタント不足に追い討ちをかける結果となっています。こうしたシステム移行の作業を行う技術者は、SAPのベーシス・コンサルタントと言う職種ですが会計や販売管理といった業務系のコンサルタントと比べると数が少ない状況です。インフラ系の技術者ならば、比較的短期間でスキル取得が出来ると思われます。

     

     

    ■SAP S/4HANAシステム移行への3つのアプローチとは

     

    SAP S/4HANAの最大の特徴は“対応するデータベースが「SAP HANA」データベースのみとなったこと”、その上に乗る“アプリケーションの機能やテーブル構成がシンプルかつ高速に刷新されていること”の2つです。これに伴ってOSはLinuxとなり、システム連携はBAPI(SAP標準のAPI接続:Business APIの略語)による接続で、ユーザーインターフェースはHTML5のFioriが標準となります。

     

    ウェブやBtoCでは当たり前のテクノロジーですが、SAP ERPとは異なる仕様となるため保守・運用のための技術者を確保・育成する必要があります。こうしたアーキテクチャの変更が、SAP S/4HANAへの移行の難易度を高くしています。その移行手法には、3つのアプローチがあります。

    (※図表2:SAP ERPからSAP S/4HANAへの3つの移行アプローチ)

     


     
    図表2:SAP ERPからSAP S/4HANAへの3つの移行アプローチ

     

    ①「システム・コンバージョン」

    移行ツールを使ってSAP ERPをSAP S/4HANAへ移行する手法。(これをSAP用語で“ブラウン・フィールド”と呼ぶ)SAP社より提供されているソフトウェア・アップデート・マネージャーのDMO(Database Migration Option)、nZDM(near-Zero Downtime Maintenance)というツールで移行作業を行います。(図表3:SAP S/4HANAマイグレーションについて、図表4:SAP S/4HANAへの移行パスについて)

     


     
    図表3:SAP S/4HANAマイグレーションについて
     


     
    図表4:SAP S/4HANAへの移行パスについて

     

    システム移行経験のあるベンダが、移行サービスを提供していますがこれまでの「テクニカル・アップグレード」よりも手間と時間が大幅に掛かるため、全てのニーズに対応できるだけのリソースの余裕がない状況です。

     

    ②「SAP S/4HANA新規導入」

    新しい環境を用意してそこに新しいシステムを新しく構築する手法。(“グリーン・フィールド”と呼ぶ)新規システムを構築するため、要らなくなった機能を外して新しい機能を入れるなどシステムを刷新します。しかし、新規導入を同じ作業が必要となるためシステム・コンバージョンよりも人手と期間が長くなります。これに伴って費用も高くなります。

     

    ③「ランドスケープ・トランスフォーメーション」

    複数のSAP ERPを1つのSAP S/4HANAへ選択/集約してシステムを構築する手法。(“トランスフォーメーション”と呼ぶ)複数のSAP ERPの稼働状況や今後の方針などを考慮し、SAP S/4HANAの設定を全面的に見直すことになります。

     

    そのためその作業に十分な人手と期間、新しいシステム構築の投資費用が必要となります。IoTやAIと言った最新テクノロジーの最大活用を考える大企業ユーザーや新規ユーザーがこの手法を選択するケースが多いようです。AI製品のSAP Leonardo(レオナルド)や、クラウド製品のSAP Ariba(アリバ)など新しい製品を戦略的に導入する場合はこの手法を選びます。

     

    前述の通り「SAPの2025年問題」とは、現行SAP ERPから新製品のSAP S/4HANAへの移行に起因する問題です。保守サポート期限が5年以上あるにも関わらず大きな問題となっている理由は、対象となるユーザー企業数が2,000社以上と多い(2018年末時点で、国内の移行が100社を超えたとの情報あり)こと、移行作業の難易度が高いこと、そして移行作業に必要なSAPコンサルタントが不足していることによるものです。

     

     

    ■今回のまとめ

    これまでSAP ERPのバージョンアップは、「テクニカル・アップグレード」というやり方が一般的でした。このやり方は、機能はそのまま変えずにERPアプリケーションのバージョンを上げる手法です。

     

    SAP S/4HANAへの移行も基本的な考え方はこの方法と同様に、作業の期間と費用の負担が軽い「システム・コンバージョン」を選ぶケースが多いと予想されます。「システム・コンバージョン」は、これまでのアップグレードよりも多くのコンサルタントと作業期間が必要となります。これがSAPコンサルタント不足に追い討ちをかけています。この状況は、まだ続くと予想されます。

     

    この状況はビジネス面から考えると、ビジネスチャンスが増えていると考えることが出来ます。需要が更に高まるわけですから、これからSAPコンサルタントになっても仕事は十分にあります。SAPの認定資格取得は、簡単ではありませんが資格取得に挑戦する見返りは期待出来ます。この「SAPの2025年問題」は、これからSAPビジネスに参入するビッグチャンスと考えることが出来ます。