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    鍋野敬一郎のSAPソリューション最新動向#19

    こんにちは!SAP Freelance Jobs運営事務局です。

    弊社では、SAPジャパン株式会社出身で、ERP研究推進フォーラム講師でもある株式会社フロンティアワン 代表取締役 鍋野敬一郎氏をコラムニストとして迎え、「鍋野敬一郎のSAPソリューション最新動向」と題し、SAPのERP製品情報や最新技術情報をお届けしています。

    第19回目である今回は、「SAPのインダストリー・クラウドとは?~SAPインダストリー・クラウドがレガシーERPから失敗しないDXに導く~」について取り上げます!

    これからSAPに携わるお仕事をしたい方も、最前線で戦うフリーランスSAPコンサルタントの方も、ぜひ一度読み進めてみてください!

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    鍋野 敬一郎 プロフィール
    株式会社フロンティアワン 代表取締役
    ERP研究推進フォーラム講師
    1989年 同志社大学工学部化学工学科(生化学研究室)卒業
    1989年 米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。農業用製品事業部に所属し事業部のマーケティング・広報を担当。
    1998年 ERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職し、マーケティング担当、広報担当、プリセールスコンサルタントを経験。アライアンス本部にて戦略担当マネージャーとしてSAP Business All-in-One(ERP導入テンプレート)立ち上げを行った。
    2003年 SAPジャパンを退社し、コンサルタントとしてERPの導入支援・提案活動に従事。
    2005年 独立し株式会社フロンティアワン設立。現在はERP研究推進フォーラムでERP提案の研修講師、ITベンダーのERP/SOA/SaaS事業企画や提案活動の支援、ユーザー企業のシステム導入支援など、おもに業務アプリケーションに関わるビジネスを行っている。
    2015年よりインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI):サポート会員(総合企画委員会委員、IVI公式エバンジェリスト)

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    ■はじめに
     SAPの新しいビジネス戦略“RISE with SAP”は、レガシーERPからクラウドERPへ移行して、クラウドERPを中心としたクラウドサービス連携を実現するソリューションのコンセプトが説明されています。(つまりSAP S/4HANA Cloudが中心です)今回は、このコンセプトをもう少し具体的に説明するとともに、そのソリューション構築とシステム構成について分かりやすく説明しようと思います。まず全体イメージですが、RISE with SAPは、全体を3つの階層“テクノロジー”、“アプリケーション”、“ビジネスプロセス”で構成しています。第1層は、クラウド基盤として、SAP HANA Enterprise Cloud(SCP)ベースのSAP BTP(Business Technology Platform)があります。第2層は、次の4つの部分“インテリジェント・スイート”、“インダストリー・クラウド”。“サステナビリティ・マネジメント”、“エクスペリエンス・マネジメント”があります。この1つ「インダストリー・クラウド」は、業種ごとに必要な機能を整理したソリューションで、SAPが提供するソリューションとパートナーより提供されるソリューションの連携で実現します。第3層は、他社との協業を促進する協業するビジネスネットワークとして、B2BのEC(SAP Customer Experienceなど)やSAP Aribaなどによるマーケットプレイスなどの連携サービスが実現できます。今回は、インダストリー・クラウドについてご説明いたします。

    ■インダストリー・クラウドは、S/4HANA Cloudとクラウド製品サービスの連携で実現
     SAPでは、25の業種ごとにソリューションを整理、開発しています。SAPのソリューションは、会計や販売、調達など業務による業務の区分と、自動車や機械、化学・素材など業種の区分で分類されています。これまで日本企業は、会計や販売、調達など業務の区分でERPの機能を導入するケースが多かったのですが、これは日本企業の業務がまだ十分に標準化されていないためです。会計や販売、購買などバックオフィス系の業務は、標準化するとどの企業でも業種ごとに必要な機能が標準化、共通化していきます。例えると、バスに乗って乗車賃を払う方法は、バス会社によって前払い、後払い、全路線同じ料金などいろいろな方法があってバス会社や路線によって異なります。毎日同じ路線だけを使う場合は良いのですが、異なるバス会社や路線をまたがって利用する場合は、乗り換えるごとにバラバラで手順も処理も異なります。鉄道では交通系カードを利用することで、利用者は手順や支払いなどを全く意識すること無く利用することが出来ます。バスも今後は鉄道同様に同じ手順の処理になると思いますが、まだしばらく時間が掛かりそうです。この運賃の支払い方のように、標準化された業務システムが企業システムとして幅広く普及しています。欧米では、この業務システムを標準システム(スタンダートシステム)と呼びます。SAPがRISE with SAPで、あえてクラウドERPのSAP S/4HANA Cloudを中心に置いているのは、会計や販売、購買などの業務処理は業種による違いはまだあるものの、同じ業界で企業毎に業務処理が異なるのは非効率だからです。ライセンス版だと、バージョンによってギャップが生じる可能性などもあるため、利用する企業が全て同じバージョンとなるクラウドERPをベースにしています。もちろん、不足する機能は追加設定やAPI連携などで機能を補完することも出来ます。(SAPでは、この考え方を“FIT to Standard”と呼ぶ)業界ごとに企業の主要な業務処理プロセスに違いが無く、バックオフィス業務を標準化した方が効率化できるため欧米では基幹システムは標準化が進んでいます。さらにSAPは、このクラウドERPシステムを中心として業種ごとにエンド・トゥー・エンドの業務プロセスに対応するソリューションをインダストリー・クラウドとしてリリースしています。当然SAPだけで全ての機能を提供出来ないため、パートナーのサービスなどと連携して全てのソリューション提供を目指すとしています。SAPでは、その対応・開発ロードマップをネット上で公開しています。製品や業種で機能詳細を見ることができますので、一度見ることをおすすめします。注意)SAP IDの登録が必要です。
    (参考“SAP Road Maps”、URL:https://roadmaps.sap.com/welcome#/ )

     
     SAPインダストリー・クラウドは、自動車(Automotive)、エンジニアリング・建設(EC&O)、電力・公益事業(Utilities)、食品・消費財(Consumer products)、小売(Retail)、産業機械・構成部品(IM&C)、プロフェッショナルサービス(Professional Services)の7業種が2020年1月時点で対応しています。
    (SAPジャパンのインダストリー・クラウド概要の動画がご覧になれます。
     URL:https://www.youtube.com/watch?v=CpU7hMkxLA8 )

    ■工場の中に閉じないデジタル変革「INDUSTRY4.NOW」
     SAPジャパンによると、インダストリー4.0に対する取り組みについてグローバルで調査したところ68%がその重要性を認識しながらも、41%はPoC(実証実験や試用レベル)に留まっているそうです。実現の見通しが立っているのは29%で、残りの70%以上はインダストリー4.0の展開に見通しや方向性が見いだせないとのことです。SAPでは、こうした企業に対してインダストリー4.0を促進するために、”INSUSTRY4.NOW(インダストリー・フォー・ナウ)”というインダストリー4.0を促進する戦略を打ち出しています。これまで、製造業向けの取り組みは、予知保全や生産工程内の自動化と言った工場内に閉じた活動にフォーカスされていました。しかし、これでは製造業DXの取り組みとして部分最適に陥りやすく、工場間で管理要件の違いが生じて標準化とは逆行することになったり工場ごとにオペレーションがバラバラになったりするケースが見られました。工場内に閉じた部分最適のDXだと、横展開が出来ないためそこで行き詰まってしまいます。結果として、PoCが繰り返される原因にもなります。
     
     SAPが考えるのは、工場内に閉じたインダストリー4.0ではなく、「工場の中に閉じないデジタル変革」の実現です。単なる製造の効率化ではなく、ビジネス全体の業務プロセスを結び、トータルな最適化や効率化を実現するのが「Industry 4.Nowの考え方」となります。これは、工場の外(サプライヤや他工場、サプライチェーンなど)とのエンジニアリングチェーンやサービス連携によるオープンなデータ連携サービス(データ駆動型のサービスやAI技術による効率化/自動化など)を考えたものです。

     インダストリー4.0を事業レベルで実現するための計画やアクションを具体化するサービスが「Industry 4.Now推進サービス」で、「改善機会の評価」「実現シナリオの定義」「プロトタイプ実機検証」「段階的導入/継続的改善」の4プロセスを、SAPが直接関与して具体的にお客様をガイドすることで成功に導こうとするものです。

    ■今回のまとめ
     今回は「インダストリー・クラウド」について、その内容を説明しました。一見するとERPをクラウドと連携させるだけに見えますが、それでは部分最適な取り組みに陥りやすくなります。SAPの戦略は、①対象範囲をエンド・トゥー・エンドで考えること、②SAPだけのソリューションではなくパートナーのソリューションとの連携で提案すること、③4つのプロセス(改善機会の評価、実現シナリオの定義、プロトタイプ実機検証、段階的導入/継続的改善)でお客様に分かりやすく具体的にガイドすることで、着実に成功へ導く仕組みとなっています。しかし、インダストリー・クラウドはまだ未対応の業種や足りないサービスも多くあるため経験や知識を持つパートナー企業やコンサルタントの積極的な支援が求められる未開拓な領域です。つまり、ビジネスチャンスが大きい成長性のあるチャレンジ出来る市場だと言えるでしょう。