「SAP Basis概要の教科書」No.2 システム起動編
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■はじめに
SAP Freelance Jobs運営事務局です。
前回はSAPシステムの概要について、各コンポーネントの名称や機能について詳しくご説明いたしました。今回はそのSAPシステムの起動の流れについて「プロファイル」という概念を中心に説明したいと思います。
■SAPシステムの起動
SAPシステムはデータベースとSAPインスタンスから構成されています。データベースにはSAPのプログラムやデータが格納されているため、まずはここから起動します。その後、負荷分散なども受け持つセントラルインスタンスが起動し、その後他のダイアログインスタンスが起動するという流れになります。
■SAPインスタンスとプロファイル
上述したインスタンスの起動時に様々なパラメータ情報が読み込まれます。
読み込まれる順に説明していきます。
1.OS環境変数、SAPカーネル
はじめにSAPシステムがインストールされているOSの環境情報を読み込みます。レジストリの設定や、各種パス情報などの環境変数を読み込みます。その後SAPカーネルの情報が読み込まれます。SAPカーネルとはSAPを起動するためのプログラム情報と考えて下さい。例えば、SAP側からOSの性能情報を取得するためのSAPOSCOLというプログラムや、データベースと接続するためのインタフェースプログラムなどが最初に読み込まれます。
2.スタートプロファイル
SAPインスタンス起動時に真っ先に読み込まれるプロファイルで、起動プロファイルとも呼ばれます。SAPのインスタンスには様々な種類があり、まずこのインスタンスをどの役割で起動するのか、スタートプロファイルの中で指定します。負荷分散を目的としたメッセージサーバとして起動するのか、それとも単純なダイアログインスタンスとして起動するのか、その他にも外部システムとの連携用のゲートウェイとして構成・指定することも可能です。また、このプロファイルはSAPシステムを構築後、運用フェーズに入ってからは変更することはほとんどありません。その理由は上述のように起動するSAPインスタンスの役割を決めるためで、役割が確定した後運用中に変更することは少ないためです。
3.デフォルトプロファイル
こちらはインスタンスの種類によらず、SAPシステムを構成している全てのインスタンスで共通のパラメータを指定したい場合に記述するプロファイルになります。例えば、利用者がSAPシステムにログオンした際にデフォルトでどこのクライアントにログオンするか、同じくログオン時にどの国の言語で表示するかなどのSAPシステム共通の設定をこのプロファイルに記述します。
4.インスタンスプロファイル
こちらは上述のデフォルトプロファイルとは逆で、インスタンス毎の詳細なパラメータを指定したい場合に使用します。例えば、ワークプロセスタイプ別の実装数やSAPで使用する内部メモリサイズなどを指定します。ユーザからのアクセス要求を主に処理するインスタンスの場合はダイアログワークプロセス数を増やし、主にバッチ処理などのジョブ実行を担うインスタンスの場合は、バックグラウンドワークプロセスを増やすというような用途に応じた柔軟な設定を行うのがこのプロファイルになります。
■プロファイルの更新方法
上に説明した各プロファイルは、OS上のファイルとして存在します(メモ帳などで開けます)。そのため、直接そのファイルをエディタで開いて編集しSAPシステム起動時にその変更内容を読み込ませることは可能です。ただし、その場合バージョン管理ができないため、パラメータを修正したことによって、システムの挙動が不安定になる。あるいは起動しない障害が発生した場合などに、誰がいつどんな修正を行ったかの原因究明が困難なります。そのためSAPではプロファイルを直接修正することは推奨しておらず、SAPシステム内にプロファイルをインポートし、SAPシステムのトランザクションから編集できるようになっています。SAPシステムから実行することで、バージョン管理が可能になり不具合が生じた場合は前バージョンに戻す機能や、バージョン間の差異を比較し問題の切り分けを容易にする機能も備えています。
(インポートはSAPシステム構築後の初回のみで、以降はSAPシステムから常に修正可能になります。)
■おわりに
今回はプロファイルをメインにSAPの起動についてご説明しました。特にデフォルトプロファイルとインスタンスプロファイルの違いについてはしっかり理解頂き、設定したいパラメータをどちらのプロファイルに書くべきかを常に意識するようにして下さい。
次回はSAPシステムの内部構造の概念となる「クライアント」の考え方について紹介したいと思います。