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SAP ERPの導入失敗を防ぐためのポイント

SAP ERPは経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を一元的に管理し、可視化できるという強みがあります。しかし、導入プロジェクトの規模が大きく、失敗のリスクが大きいという弱点もありました。入念に計画されたSAP ERPの導入がなぜ失敗してしまうのか、また失敗を防ぐためには何が必要なのかを改めて整理してみます。

SAP ERP導入が失敗する要因

SAP ERPには世界各国から集められた経営のベストプラクティスが集約されています。そのため、本来であれば標準機能を適切に配置するだけで基幹システムとしての役割は十分に果たせるはずなのです。では、なぜ失敗が多発してしまうのか。まずはSAP ERP導入が失敗に終わる要因についてみていきましょう。

失敗要因①:アドオン開発の負荷が高い

本国内では商慣習の独自性や「システムを業務に合わせる」という意識が強いことが相まって、アドオン開発が多用されるという実情があります。

アドオンの割合が大きすぎると、工期の増大や不具合の頻発などさまざまなリスクが高まります。また、アドオンによって過剰な造りこみを続けると、最終的にはスクラッチ開発と大差のない工数になっていきます。その結果、TCO(システム総保有コスト)が肥大化し、「失敗」と判断される可能性も否定できません。

一般的にITシステムの不具合は、機能と機能の境界線で頻発します。アドオン開発は標準機能に連結させる形で進められることが多く、どうしても「継ぎ目」に不具合が発生してしまうのです。

具体的には、アドオン汎用モジュールを多用した結果、呼び出しに失敗したり、内部テーブルの値が正常に渡されなかったりといった不具合が想定されます。

Dynproでアドオン画面を開発する場合であっても、エンターを押したタイミングで標準機能からのエラーが発せられるなど、アドオン開発を原因とする不具合は意外と大きいのです。

また、こうした不具合を回避するためのテスト工数も無視できません。アドオン開発の機能は、ゼロベースでテストシナリオを構築する必要があるからです。SAP業界での経験を有するエンジニアであればご存じかと思いますが、アドオン部分はベンダーのサポート対象外です。また、標準機能を流用している場合であっても、アドオンとの境界線についてはサポートが受けられないことがほとんどです。そのため、運用負荷の増大も懸念されます。

失敗要因②:標準モジュールと機能に対する知識が不足している

SAP ERPは20以上の標準モジュール群で構成されおり、すべての標準機能を把握するのは至難の業です。しかし、導入対象となるモジュールについては一定以上の理解が必須です。前述のようにアドオン開発を多用する場合でも、その根底には標準機能が組み込まれていることが多いため、標準モジュール・機能への理解が不足していると、非効率なシステムが出来上がってしまうからです。

例えば「以前よりも作業効率が低下した」「入力画面がわかりにくくなった」「タイムアウトが頻発する」といったシステム品質の低下は、ERPの標準仕様に対する知識が乏しい場合に発生しやすいと考えられます。

標準モジュール・機能で何ができるかを把握していないと、顧客要求とSAP ERPの機能をマッチングさせることができず、せっかくの機能を有効活用することができません。その結果、無理にアドオンで開発を進めることになり、品質の低下を招くことがあるのです。

失敗要因③:現場の意見が実装に反映されていない

また、業務担当者が開発に全く関与しないことも、導入失敗を招く要因です。SAP ERPを実際に扱うのは部門・部署の担当者であり、現場の業務プロセスを最もよく知る方々の意見が反映されなければなりません。SAP ERPはグローバルスタンダードを意識した機能群であるため、日本独自の商慣習が考慮されていないこともあります。こうした場合は、実際に業務の現場を仕切る担当者から要求を吸い上げたり、レビューに参画してもらったりして、独自の機能を作り上げていく必要があるでしょう。

SAP ERP導入の失敗を防ぐには

では、ここまでの内容を踏まえつつ、SAP ERPの導入失敗を防ぐための対策を整理してみます。

標準機能を有効活用する

SAP ERPの導入では、標準モジュールが持つ機能をできるだけ活用することで、失敗を回避することができます。具体的には、カスタマイズによる基本的な設定項目の変更、標準機能の拡張(ExitやBADI)、標準機能の書き換え(モディフィケーション)などをフル活用することで、アドオンの工数を著しく減らすことが可能です。

これらアドオン開発以外の手法をうまく使えば、「標準機能とアドオンの境界線」に発生する不具合を減らすだけではなく、ベンダーのサポートを受けられる可能性も高まります。

例えば、「サービス業だから在庫購買管理の機能は使えない」と断じるのではなく、まずは標準機能のみで実現できないかを検討してみましょう。サービスを品目として登録し、購買発注や在庫移動の機能とうまく組み合わせて、サービス業特有の業務プロセスをSAP ERPに反映させることができるかもしれません。もし成功すれば、開発・運用・保守のコストを抑えることが可能です。

クラウドを活用しながら段階的に導入する

SAP ERP導入のスコープは、大半がオンプレミス型のシステムでした。しかし、近年はクラウドファースト・クラウドネイティブへの意識が高まり、オンプレミスからクラウドへの移行を検討する企業が増えています。

オンプレミス型システムは堅牢性や信頼性が評価される一方で、モノシリック(一枚岩)かつ密結合であるために、改修や移行の難易度が高いというデメリットもありました。ある機能を改修した結果、依存関係の考慮漏れから別の機能が不具合を起こす、という失敗例は枚挙に暇がありません。

そこで、まずは汎用的な機能だけを切り出し、部分的にクラウドへ移行させることで徐々に「疎結合」な状態へとシステムを変更していくという方法を検討してみましょう。すでにSAP ERPの最新バージョンである「SAP S4 HANA」では、周辺システムとの疎結合を想定した機能がいくつも登場しています。疎結合状態に移行するためには、まずクラウドベースで部分的に機能を構築し、信頼性を高めながら徐々に導入を進めていくのが良いでしょう。SAP S/4 HANA自体は、オンプレミス/クラウドのどちらにも対応しているため、移行期におけるオンプレミス/クラウドの混在にも耐えうるものです。

業界知識を持つ人材を早期に調達する

前述した3つの失敗要因は、すべて「Fit&Gapの失敗」から発生します。Fit&Gapの失敗を防ぐためには、「プロジェクトの早い段階で、業界知識を持つコンサルタント・エンジニアを調達する」ことが重要です。Fit&Gapフェーズで調達できていることが理想ですが、もし間に合わない場合は要件定義や基本設計フェーズであっても積極的に人材を探すべきでしょう。業界特有の知識を持つゆえに、要件や設計の穴に気が付きやすく、顧客要求を満たさない仕様や無駄な開発を防ぐことができるからです。

近年は業界別の導入テンプレートを活用するケースが増えていますが、テンプレートを理解してうまくフィットさせるためにも、業界知識を持つ人材の力は欠かせません。

プロジェクトの性質に合わせて適切な人材調達を

ここまでの内容を総括すると、SAP ERPの導入失敗を防ぐためには、まず「人材の量と質」を最適化させる必要があるとわかります。

SAP ERP業界において、十分な知識と経験を持った人材を調達できているプロジェクトはそれほど多くありません。一方、ECC6.0世代のメインストリームが2025/2027にかけて終了することから、SAP ERP人材に対する需要は増加傾向にあります。

SAP ERP導入のプロジェクトが立ち上げる気配があるのであれば、まずは、

・業界知識を持つコンサルタント、エンジニア

・各モジュールの標準機能を理解した人材

の2点にフォーカスし、人材調達を始めていきましょう。

弊社では、SAP ERP業界に特化し、人材とプロジェクトのマッチングを支援しています。経験豊富なフリーランスの方であれば、これまで蓄積した知見を活かせる高単価プロジェクトとの出会いを支援させていただきます。また、人材調達を進めている企業様に対しては、できるだけプロジェクトの性質に合うような人材の紹介を行います。是非お気軽にお問い合わせください。

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