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「シリーズCOPC」1.CO(管理会計)とは

はじめに

「管理会計」とは、組織内で利用するためにまとめられる会計の手法を指します。このアプローチは、株主や取引金融機関など外部の利害関係者に提供する「財務会計」とは異なり、経営判断や内部の意思決定を支援するために用いられます。この記事では、管理会計の重要性に焦点を当て、その役割やメリットについて詳しく説明します。

経営において最も重要なのは、「現在、自社がどのような状況に置かれているか」という情報です。組織は常に変化し、市場の競争も激化しているため、迅速な意思決定が不可欠です。したがって、管理会計は組織の現状をタイムリーに把握する手段として不可欠です。現在のデータや情報を基に意思決定を行うことで、問題の早期発見や機会の最大化が可能となります。

管理会計において求められる要素は、情報の可視化だけでなく、スピーディーさも非常に重要です。経営陣や部門リーダーは、データやレポートを待たずに、リアルタイムで組織のパフォーマンスを把握できることが求められます。スピーディーな情報提供は、迅速な対策の立案や適切な方針の策定につながり、競争力の維持や向上に貢献します。

以下に、管理会計を行う際のメリットを整理します。

 

 

1.会社の経営状態が明確になり目標や成長戦略が立てやすくなる

会社の経営状態が明確になると、目標の設定や成長戦略の策定が容易になります。事業が成長し、規模が拡大するにつれて、部門別の財務状況、収益のバランス、人員や資本、経営資源の適切な配分などの要因を検討する必要が増してきます。しかし、通常の財務会計は主に「決算報告書の開示」を目的としており、このような情報を経営課題の指標として直接活用するのは難しい場合があります。

管理会計を導入することで、経営状況を社内のルールに従って月単位や週単位で詳細に把握できます。この「見える化」された情報を、具体的な施策に活用することによって、業務効率の向上や的確な経営判断の実施が容易になります。

たとえば、月次決算のような短期間での業績確認のルールを導入することで、経営の意思決定を迅速かつタイムリーに行えるようになります。このようなアプローチを採用することで、適切な時期に適切な施策を立案し、実行することができます。

 

 

2.部門ごとの業績・評価・改善が管理しやすくなる

部門別の管理会計を導入することによって、企業はさまざまなメリットを享受することができます。具体的に、「どの部門が利益を上げているか」「どの部門が苦戦しているか」といった詳細な情報が入手可能になります。この情報を部門別に分析することで、各部門に合った時間利益目標やコスト削減目標を設定することが容易になり、業績の評価と管理が効果的に行えます。

さらに、管理会計のデータを現場に提供することで、現場担当者の指針に客観性がもたらされます。これにより、経営陣はチームの事業戦略を見直す機会を得ます。予算計画、事業計画、人員計画などを策定する際にも、より的確な意思決定が可能になります。根拠に基づいた指示は説得力があり、効率的なコスト削減策の実行につながります。同時に、現場から経営改善に自発的に取り組む姿勢が醸成され、結果として効率的な作業が期待できます。コスト削減と生産性向上を通じて、追加の利益を生み出す可能性も高まります。

一方、「財務会計」は法律に基づいて規定され、損益計算書や貸借対照表などの書式が明確に指定されています。これに対して、「管理会計」は法的には任意であり、書類のフォーマットやまとめ方、期間などは企業ごとに異なります。実際には、財務会計だけを重視し、「財務会計を見れば十分だ」という考えを持つ企業も存在します。

しかし、管理会計を導入することで、部門ごとや企業全体の事業戦略を明確にし、目標の設定と達成に向けて全社で協力して課題解決に取り組むことができます。管理会計は、法的な拘束が少なく、自社のニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできるため、スピード感のある経営判断に貢献します。それだけでなく、競争力の強化や長期的な成長に向けた取り組みの強化も可能です。

 

 

3.管理会計の主な業務

管理会計は、企業によって必要な情報をカスタマイズできるものですが、概ね「予実管理」「原価管理」「経営分析」「資金繰り管理」の4要素で行われます。

 

3-1.予実管理

予算管理は、企業の持続的な成功を支えるために極めて重要です。このプロセスは、年度ごとに設定されるだけでなく、中長期的な期間にわたります。その主な目的は、予算の策定とその情報を経営に活用して、企業の戦略的な方向性を確立し、効果的な意思決定をサポートすることです。

企業全体で共有する目標を設定し、各部門に適切に割り当て、それを実績と比較することによって、部門の業績を監視し管理します。定期的に予算と実績を比較することで、計画の進捗状況を評価できます。進行が遅れ、苦戦している部門に対して、適切な対策を講じるなど、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを通じて絶えず改善するプロセスも実行可能です。また、月次決算と組み合わせて用いることで、営業成績や経費状況などを迅速に比較し、次月の施策に反映させることで、意思決定の速度を向上させることができます。

予実管理は、多くの企業でExcelを用いて集計、分析、管理が行われていますが、情報の収集と処理に手間と時間がかかることがあります。特に、会計システムの情報をExcelで手動加工したり、各部門から手作業で情報を収集し独自のフォーマットに入力したりすることは、遅滞が生じる要因です。こうした問題に対処するために、ERP(Enterprise Resource Planning)を活用し、会計システムの情報をそのまま管理会計帳票のフォーマットで出力できるシステムを導入することがおすすめです。これにより、手軽に予実管理を行い、タイムリーな管理会計を実現することができます。

 

3-2. 原価管理

利益の最大化は、製品やサービスの価値とその製造にかかるコストを正確に理解することに密接に関連しています。このため、原価管理は非常に重要です。原価管理は、原材料や部品のコストを算出するだけでなく、人件費、設備費なども考慮して総合的なコストを計算します。正確な原価情報を把握することで、適切な価格設定を行い、損益や経営状況を把握するために利用できます。

原価管理の過程では、通常、基準となる標準原価を予め設定し、製品が完成する際に実際にかかった原価を計算し、標準原価との差異を詳細に分析します。標準原価と実際の原価を比較することで、どの工程や材料においてコストがかさむのかを特定し、対策を練りやすくなります。この情報は製品の価格設定や利益の適正化に役立ちます。

ただし、原価管理は非常に正確性を要求されるプロセスであり、手作業で行うには限界があります。より効果的かつ効率的に原価管理を行うためには、ERP(Enterprise Resource Planning)を活用し、システムによる原価管理を導入することが有用です。これにより、手間のかかる間接費の配賦なども自動化され、正確な原価管理が簡単に実現できます。企業はこの方法を活用して、競争力を高め、効率的な経営判断を行うことができます。

 

3-3.経営分析

業績を分析し評価することは、管理会計において最も重要な業務の一つと言えます。企業規模や業種、業態によって必要な経営分析が異なりますが、収益性(損益)と安全性(資産)は、どの企業でも最低限把握しておきたい要点です。

現在の業績の評価において、成長率や営業利益率などの収益性の指標は、企業の健全性を確認する上で重要です。同時に、自己資本比率や当座比率などの資産関連の指標も、企業の経済的な安全性を示す重要な要素です。

特に収益性については、財務会計では売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益などが一般的な指標となりますが、管理会計においては「限界利益」が重要視されます。限界利益は、売上高と変動費用との差を示す指標であり、損益分岐点の分析時に重要な情報を提供します。

例えば、ある商品を200円で仕入れ、250円で販売する場合を考えてみましょう。初めは50円の利益と考えるかもしれませんが、この中には人件費や広告宣伝費などの変動費用も含まれています。変動費用が高額であれば、限界利益は低くなり、その後に固定費用を引くと、損益がマイナスになる可能性が出てきます。これは「利益で固定費を賄っていない」という状況を示します。

限界利益を計算し、損益分岐点を求めることによって、利益を確保するために必要な売上高を明確にすることができます。損益分岐点と収益性分析を通じて、企業の健全性を確実に確認し、効果的な経営戦略の策定に役立てることが非常に重要です。

 

3-4.資金繰り管理

損益計算書において利益が上昇している場合でも、キャッシュフロー計算書では収入が現金化されていないことがあるため、利益が増えても現金が不足する状況が発生することがあります。このような資金不足の問題に対処するために、資金繰り管理が非常に重要です。資金繰り管理では、日々の入出金を詳細に管理し、現金の動向を正確に把握し、必要に応じて資金の過不足を調整し、経営の健全性を維持・向上させます。

正確な入出金情報の把握は、現在の財務状況だけでなく、将来の資金ニーズを予測するためにも重要です。これにより、将来の事業展開や支出に備えるために必要な資金の準備が可能となります。

資金繰り管理は、多くの企業でExcelを使用して資金繰り表を作成していることが一般的ですが、別々のExcelデータや会計システムから情報を取得し、手動で更新する作業は煩雑で時間を要します。さらに、債権債務情報と連動して資金繰りシミュレーションを行うには、追加の手間がかかります。

資金繰り管理を効率的に行うためには、債権債務情報や会計情報と統合できる会計システムを導入することが有益です。このようなシステムを用いることで、資金繰り管理が迅速かつ正確に行え、企業の経営における資金の適切な管理が容易になります。

 

 

4.管理会計にも対応した統合的な会計システムの活用が求められる

管理会計においては、詳細な集計や分析作業が必要とされ、その結果、「経理担当者や現場スタッフへの負担が増える」という印象が一般的です。多くの管理会計に必要なデータは、通常、既存の会計システムで管理されています。しかしそれに加えて、顧客別や部門別の売上情報など、各部門が独自に管理している情報も必要となることがあります。

多くの企業では、こうした情報を取得し、管理会計用のフォーマットに手動で入力し、表計算などを用いた作業を行っています。このため、データの集計に多くの時間と労力が費やされ、経理担当者の作業負担が増大することがよくあります。また、手動入力によるエラーが発生する可能性も高まり、管理会計の精度にも悪影響を及ぼすことがあります。管理会計は外部報告用の業務ではないため、チェック機能も十分でないことが一般的です。

一方で、公認会計士や税理士による確認を受けることも考えられますが、最終的な分析と判断は企業自身が行わなければなりません。実際に、経営者が自社の要求に合致するレベルで管理会計を行っているケースは限られています。

管理会計を負担なく行うためには、経営シミュレーションを容易に実施できるシステムやクラウドサービスを利用することがおすすめです。また、企業情報を統合的に管理するERPシステムなどを採用することで、管理会計のプロセスを合理化し、経理担当者の負担を軽減できます。

 

おわりに

Excelを使用して管理会計を行う際、データ入力作業に多くの時間を費やすため、経営者は月の途中で経営状況を確認しにくいというジレンマが生じることがあります。このため、経営者はリアルタイムでビジネスの健康状態を把握したいと思っても、経理担当に頼むことが難しい状況に直面することがあります。

しかし、会計システムを活用して管理会計を実施すると、リアルタイムの情報にアクセスでき、効果的な管理会計を容易に実現できます。これにより、業務の負担を軽減し、経営者は随時、ビジネスの重要な判断を行うことができます。また、これによって企業の拡大や成長戦略にも繋げやすくなります。

経営者がリアルタイムでデータにアクセスできるようになることで、ビジネスの変化や課題に迅速に対応し、迅速な経営判断を下すことが可能になります。その結果、企業は市場変化に柔軟に対応し、競争力を維持し、成長に向けてスピードアップすることができます。管理会計の効果的な実践は、企業の成功に不可欠であり、経営者にとって強力な戦略的ツールとなります。

 

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