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「シリーズCOPC」3.製品原価管理COPC概要

1.はじめに

 

製造業において、製造原価を効果的に管理および分析することは、経営戦略を策定する上で非常に重要です。特に、製造業のSAPユーザーにとって、SAP ERP(Enterprise Resource Planning)は製造原価を管理および分析するための多くの機能を提供しています。以下では、SAP ERPにおける主要な製造原価管理機能について、それぞれの利用目的や特徴を解説します。

 

 

【製品原価計画(①製品原価計画)】

この機能は、標準原価を設定するために使用されます。標準原価は、製品の製造原価を計画し、予測するための重要な要素です。標準原価の設定により、企業は将来の製造コストを予測し、経営計画を立案するのに役立ちます。

 

【指図別製品原価(②指図別製品原価)】

この機能は、標準原価を基に、製造実績や購買/入出庫実績などのデータを収集し、製造指図ごとに発生原価を計算するために使用されます。これにより、各製造指図の原価を把握し、実際のコストと比較することができます。製造指図別の原価情報は、生産プロセスの最適化や品質向上に役立ちます。

 

【品目元帳/実際原価計算(③品目元帳/実際原価計算)】

この機能は、指図別製品原価の結果を元に、品目別の実際原価を積み上げて計算するために使用されます。品目別の実際原価計算は、製品のコスト分析や利益率の評価に役立ちます。

SAP ERPを活用することで、製造業は製造原価の効果的な管理と分析を実施でき、経営戦略の策定や業績の最適化に貢献します。各機能は企業のニーズに合わせてカスタマイズでき、経営者は製造プロセス全体のトランスペアレンシーを確保し、戦略的な意思決定を行う支援を受けることができます。

SAP製造原価管理機能の一環である「① 製品原価計画」について、その機能や利用方法を詳細に説明いたします。

 

【品目原価見積】

品目原価見積は、標準原価の積上計算機能で、以下の情報を参照します。

1.品目(製品や部品など)

2.BOM(製品の製造に必要な部品や原材料のリスト)

3.作業手順(製品の製造に必要な工程や手順)

 

【購買情報(購入品や外注品の価格情報)】

品目原価見積は、BOMを参照し、下位の部品や原材料から原価を積み上げます。購入品の場合、品目マスタや購買情報マスタから購入価格を取得し、半製品や製品の場合、作業手順を参照して製造に必要な原価を収集します。これにより、すべての品目の原価が算出されます。算出された原価見積は、品目マスタの「標準原価」として設定され、標準原価として使用できます。また、シミュレーション用としても利用可能です。

 

【受注BOM原価見積】

受注BOM原価見積は、品目原価見積と機能はほぼ同じですが、最上位品目の受注/明細番号に紐づきます。この原価見積は、同じ品目の「1. 品目原価見積」とは別に管理され、品目マスタの標準原価には設定されません。受注/明細ごとに品目の仕様が異なる場合などに使用され、受注/明細ごとに個別仕様を反映させることができます。

見込製番別原価見積: 見込製番別原価見積は、受注BOM原価見積と同様の機能で、WBS要素ごとの原価見積を作成するための機能です。WBS要素に紐づけたBOM/作業手順を使用して、個別仕様を反映させることが可能です。

 

 

次はSAPの「②指図別製品原価」(SAP製造原価管理機能の一部)について詳しく説明いたします。

SAP PP(Production Planning)モジュールで生成される製造指図には、以下のような実績値が含まれます。

・子品目の消費量

・機械の稼働時間や作業員の作業時間など

・外注品の購買量

 

「指図別製品原価」は、これらの実績値と、事前にマスタに設定された標準原価や標準賃率を使用して、製造指図ごとに材料費、機械費、労務費などを都度算出し、製造指図に収集する機能です。また、外注品についても同様に実績価格を計算し、製造指図に記録します。これにより、製造指図ごとに正確な製品原価が蓄積されます。

期末(月末)時点で、製造指図の製造が完了している場合、「決済」処理によって標準原価との原価差異が財務会計上に転記されます。原価差異は、指図別製品原価においては、以下のように評価されます。

 

材料費(子品目):標準単価で評価

機械/労務費(稼働/作業時間):標準単価で評価

 

したがって、原価差異の発生源は通常、数量差異となります。外注費については、実際価格で評価され、機械費や労務費については、再評価する際には実際賃率を使用することも可能です。

また、未完了製造指図の原価は、期末に「決済」処理によって仕掛品として転記されます。このように、指図別製品原価の機能を活用することで、製造指図ごとに製品の正確な原価を計算し、管理できます。これは、製造原価を逐次更新し、正確な原価情報を提供するために非常に重要です。

 

 

「③品目元帳/実際原価計算」はSAPの製造原価管理のオプション機能で、品目別の実際原価を算出し管理するためのツールです。以下にその詳細を説明します。

 

【品目元帳

品目元帳は、実際原価計算のためのデータ収集ツールです。品目の原価情報を複数の通貨で評価でき、通常の単一通貨での算出に加えて、他の通貨での計算もサポートします。

これにより、通貨の変動などに対応できます。

 

【実際原価計算

実際原価計算は、品目元帳で収集したデータを使用して実際原価を計算します。主な特徴は以下です:

標準原価と指図別製品原価を前提とします。

品目ごとに実際原価を算出し、指図別製品原価では品目の個別集計が不可です。

 

実績の購入/製造データに基づいて、下位品目から積み上げて計算します。

総平均で評価し、購入価格差異や賃率差異を反映させます。

原価差異を売上原価/消費と期末在庫に自動的に配分します。

品目ごとに算出された原価差異は期末に財務会計に転記されます。

この機能を導入する際のメリットは、MM(Material Management)やPP(Production Planning)モジュールを使用している企業にとっては、インターフェースやカスタマイズのコストが比較的低いことです。MM/PPのマスタデータを共有でき、既存のプロセスに統合しやすいため、導入が比較的スムーズに進行できます。

ただし、この機能は財務会計に直結しているため、計算ロジックの変更や調整が難しい場合があります。そのため、導入を検討する際には慎重にプロセスと要件を評価し、十分な計画と検証が必要です。

 

 

SAP ERPの製造原価管理機能は、いくつかの特徴がありますが、それに伴う検討ポイントも存在します。以下に特徴と検討すべきポイントをまとめてみましょう。

 

 

2.特徴

 

【財務会計への直結

SAP ERPの製造原価管理は、財務会計と密接に連動しています。したがって、原価データから購買や製造のトランザクションに至るまで、情報の一貫性が保たれ、問題点の追跡や分析が容易に行えます。

 

【他のモジュールのデータ利用】

SAP ERPの特徴的な点は、他のモジュール(例: MM、PP)で生成されるデータをそのまま活用できることです。これにより、生産や調達のデータを効率的に原価管理に組み込むことが可能です。

 

【問題点の追跡

データの一貫性とリアルタイム性により、問題点を追跡しやすくなります。財務面、製造プロセス、調達活動、在庫管理など、さまざまな側面から問題点を特定できます。

 

 

3.検討すべきポイント

1.評価方法の適合性

SAP ERPの標準評価方法が自社の生産形態に合っているか検討が必要です。自社のプロセスや原価計算方法との整合性を確認し、適合しない場合はカスタマイズが必要になるか、外部ツールの使用を検討することがあります。

 

2.追加開発の必要性

SAP ERPの標準レポートが多くないため、必要な分析やレポートが利用可能かどうか検討しましょう。追加のカスタムレポートや開発が必要な場合があるため、要件を明確にし、リソースとコストを考慮することが重要です。

 

3.外部の原価計算ツールの検討

SAP ERPの製造原価管理機能が要件に合わない場合、外部の原価計算ツールやサードパーティーソリューションを検討することも有益です。外部ツールは自社の特定の要件に適合させやすい場合があります。

 

SAP ERPの製造原価管理を導入する際には、これらの特徴と検討ポイントを注意深く検討し、自社のニーズに最適な解決策を見つけることが重要です。

 

 

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