「SAP PPの教科書」No.7 PP領域における組織構造_詳細
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はじめに
ここでは会社の組織構造がSAPERP上でどのように反映されるかについて説明します。さらに、この組織構造がマスタデータ構造と更新プロセスにどのように影響するかについても示します。
1.プラント
プラントはロジスティックスにもとづく組織要素であり、すべてのロジスティックスモジュールで使用されます。プラントは会社コードに割り当てられます。
1つの会社コードに複数のプラントを割り当てることができます。生産計画において、プラントは主要組織要素です。
通常、プラントは税関連の規則および規則との関係で、会社コードおよび評価エリアと組み合わせて設定されます。
・プラントは社内の組織ユニットです。
・プラントでは、評価済みの商品とサービスに対して以下の処理が行われます。
・生産
・保管
・消費
・配送
・以下にプラントの例を示します。
・工場
・中央倉庫
・企業の本社
・営業所
プラントは、組織におけるそのプラントの役割に応じて、さまざまな目的で定義することができます。販売管理では、プラントは最終製品の保管および配送元である場所を表すことがあります。また、サービスの提供元である場所を表すこともあります。在庫・購買管理では、プラントは品目のフローを管理する場所を表します。在庫所要量は入庫および出庫の観点から管理されます。品目在庫はプラントで消費され、計画および購入されます。生産計画/管理では、プラントは品目の生産場所である製造施設を表します。
新たにプラントを登録するときには、プラントコピー機能を使用できます。このプロセスでは、プラントテーブル、およびこのテーブルに依存するすべてのカスタマイジングテーブルとシステムテーブル(対象のプラントがキーとして入力されているテーブル)の全エントリーが考慮されます。プラントはクライアント内で一意の4桁の英数字で定義されます。
限定したプラントは、機能間の統合を確保するために、いくつかの他の組織要素に割り当てる必要があります。次に、プラントの割当先の例を示します。
・会社コード
・事業領域
・販売組織
・購買組織
プラントは、多くの場合、必要な一連の業務機能の追跡を必要とする地理上の1つの場所として設定されます。状況に応じて、地理的に近接する複数の場所を一つのプラントとしてまとめて、組織体操を最小化することもできます。また、税関連の理由から一つの場所を複数のプラントに分割する場合もあります。
例えば、一般に最終製品については、生産後、直ちに別の会社に販売されますが、配送場所は生産場所とは別の施設に属します。この場合、2つのプラントが地理上同じ場所に存在していても、それぞれのプラントは別の会社コードの監督下にある独立したプラントとして機能しています。
プラントは生産計画の中心です。マスタデータ、計画および実行に関する活動は、すべてのプラントレベルで定義され、実行されます。
以下にプラントに依存するものの例を示します。
・カレンダー
・品目マスタ
・部品表/配合表
・作業区
・作業手順
・製造バージョン
・計画手配/製造指図タイプ
・MRP設定
2.保管場所
保管場所とは、プラント内の品目在庫を区別するための組織ユニットです。プラント内の保管場所レベルでは、数量を基準とする在庫管理が実行されます。在庫・購買管理および在庫管理における実地棚卸もこのレベルで実行されます。他のあらゆる組織要素と同じく、保管場所はIMGで定義される設定です。保管場所はプラント内で一意の4桁の英数字で定義されます。
※プラント:保管場所=1:N
企業構造は、組織レベルを相互に割り当てることによって構築されます。1つのクライアントに複数の会社コードを割り当てることができます。また、1つの会社コードに複数のプラントを割り当てることもできます。しかし、逆に個々のプラントの割当先とするSAPシステム内の会社コードは、1つに限られます。
プラントキーは各クライアントで一意であり、プラントは一つの会社コードのみに属することから、プラントを指定すると同時に会社コードも指定したことになります。
1つのプラントに複数の保管場所を割り当てることができますが、個々の保管場所がいずれかのプラントに割り当てられることによって複合キーが生成されます。保管場所は特定のプラント用として定義され、そのプラントに割り当てられます。保管場所キーはそれぞれのプラント内で一意にする必要がありますが、クライアント内で一意にする必要はありません。クライアント内では複数の保管場所に同じキーを使用することができます。これは、保管場所を指定するときには、常にプラントも合わせて指定するためです。
保管場所の登録時には、4文字の一意の値を定義します。この値は英数字です。そのため、会社ごとに各施設の保管場所を表す番号を尽きることなく登録することができます。また、保管場所の登録時には、各保管場所について、通常とは異なる住所を定義することが出来ます。
これには、次のような理由が想定されます。
・保管場所が外注先の在庫保管場所である場合
・保管場所が異なる出荷先住所を持つ会社施設である場合。
一つの品目を複数の保管場所に分けて保管する事ができます。それぞれの保管場所固有のデータを保管するには保管場所ごとに関連する品目マスタレコードを登録する(または既存の品目マスタレコードを拡張する)必要があります。品目マスタレコードが既に存在する場合は、それを拡張して、マニュアルまたは自動処理によって、保管場所固有のデータを組み込むことができます。
品目の入庫の初回転記時に、その品目の品目マスタレコードが自動的に拡張されます。品目マスタレコード内の、該当の保管場所固有の全てのデータが更新されます。この動作はカスタマイジングで、在庫/購買管理→在庫管理/実地棚卸→入庫→登録:保管場所の順にメニューパスを選択することにより設定できます。
このステップでは、入庫時に保管場所データの自動登録を有効にするかどうか指定します。前もって品目マスタレコードの保管場所ビューを更新することなく、入庫を転記したい場合は、この設定をお勧めします。まず、プラントごとに自動登録を有効にする必要があります。
その後、各移動タイプについて、保管場所データの登録を明示的に有効にします。保管場所データが登録されるのは、入庫数量が“標準”の保管場所在庫に転記された場合に限られます。特殊在庫(受注在庫など)への入庫に対しては、登録されません。
標準システムは、あらゆるタイプの入庫(参照あり/なしの入庫、在庫転送、在庫残高の初期入力、出庫取消など)に対して保管場所データの自動登録を実行するように設定されています。
保管場所をマニュアルで登録するには、品目マスタレコードに対して保管場所を一括入力します。この方法では、保管場所ごとに個別にデータを入力する方法よりはるかに時間を節約出来ます。この動作は、アプリケーションで、ロジスティックス→生産計画/管理→マスタデータ→品目マスタ→その他→保管場所入力の順にメニューパスを選択することにより実行できます。
保管場所に品目が存在するようになると、ユーザーはその品目マスタの保管場所ビューでデータを照会することができます。
3.MRPエリア
導入の設計プロセスで組織構造について検討する際に、プロジェクトチームは、財務面の影響だけでなく、ロジスティックスの計画および実行における影響を考慮する必要があります。
顧客から、在庫と需要を他の需要の流れから切り離したいという、業務のロジスティックス面に関する特別な要望を寄せられることがよくあります。通常、このような要件は、外注先所要量や、他の保管場所から切り離した予備部品やサービスパーツの別保管に関連しています。1つの対策として、別のプラントを登録する方法がありますが、設定を考えた場合、多くの設定作業がかかるだけでなく、保守作業が必要になる可能性があり、財務面の利点は何もありません。
MRPエリアは物理的な組織構造の一部ではありませんが、この機能により、計画時にプラント内の保管場所を使用して所要量および在庫を分割することができます。
MRPエリアはMRP設定の一部として定義されます。MRPエリアにはプラント、保管場所、仕入先(外注先)の3つのタイプがあります。ここでは組織構造のモデル化に影響を与える可能性があることから、保管場所に的を絞って説明します。
IMG内のMRPエリアを検査するには、生産計画/管理→資材所要量計画→マスタデータ→MRPエリア→定義:MRPエリアの順に選択します。
MRPエリアの登録時には、MRPエリアタイプ、プラントおよびタイプ2(保管場所)の入庫保管場所を指定する必要があります。各MRPにエリアには1つ以上の保管場所を割り当てることができます。MRPエリアを定義した後は、プラントの残りの部分と切り離すMRPエリアに品目マスタを割り当てる必要があります。
保管場所レベルでの需要の入力時(受注、需要管理、または何らかの従属要素による)、その保管場所が組み込まれたMRPエリアに品目マスタが割り当てられていると、すべての需要と在庫から切り離されます。