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「SAP PPの教科書」No.11 製造実績概要

はじめに

この記事では、SAP S/4 HANAにおける生産管理 (PP: Production Planning) モジュールの製造実績について、製造指図登録、製造実績計上、製造指図クローズという3つのプロセスに分かれていることを紹介します。これらのプロセスを正確に理解することで、製造実績を効果的に管理することができます。

 

 

 

1. 製造指図登録

製造指図とは、生産担当者に対して、いつ、どの品目を、どこで、いくら生産するかという指示情報が載った伝票のことです。一方、製造実績とは、製造指図に対して、実際にどの材料をいくら使ったか、どの生産品をいくら作ったか、作業にいくら時間がかかったかという実績情報を計上することです。製造指図クローズは、これ以上の指図に対する実績計上をストップする、実際原価計算に使う指図を明示する処理のことです。

 

製造指図登録には、計画手配変換とマニュアル登録の2つの方法があります。計画手配変換は、生産計画を元に変換するパターンで、生産計画プロセスのうちの「MPS・MRP(所要量計算)」によって、「計画手配」という伝票が登録されます。この計画手配を、T-code:CO41で製造指図に変換することで、製造指図が登録されます。製造指図登録は、マニュアルで製造指図を登録する方法で、ほとんどの企業では生産計画を立てた後に使用されます。マニュアル登録には、受注紐づき製造指図登録(T-code:CO08)と通常の製造指図登録(T-code:CO01)があります。

受注紐づき製造指図登録(T-code:CO08)は、受注生産の場合に使用され、生産品目・プラント・指図タイプに加え、受注伝票番号・明細番号をキーに製造指図を登録します。受注紐づき製造指図の場合、生産品入庫をした品目・ロットが「受注在庫」となり、指定した受注伝票に約束された在庫になります。これにより、受注に対して在庫を確保することができます。

 

製造指図リリースは、製造指図が登録されたら、指図ステータスをCRTD(作成済)からREL(リリース)に変更する必要があります。REL(リリース)にすることで、製造指図に対して実績計上が可能な状態になります。指図リリース方法は、T-code:CO02(製造指図変更)で画面上部にある「旗マーク」をクリックし、保存することで指図ステータスをREL(リリース)に変更することができます。ただし、製造指図登録時にリリースすることが確定している場合には、CO01 / CO08上でリリースにして保存することもできます。

 

 

2. 製造実績計上

製造実績計上は、製造指図に対して、実際にどの材料をいくら使ったか、どの生産品をいくら作ったか、作業にいくら時間がかかったかという実績情報を計上することです。製造実績計上には、以下の2つの方法があります。

 

・製造実績計上(T-code:CO11N)

製造実績計上(T-code:CO11N)は、製造指図に対する実績情報を手動で登録する方法です。材料の消費量、作業時間、生産数量などを手動で入力して、製造実績を計上します。

 

・製造実績計上(T-code:COR6N)

製造実績計上(T-code:COR6N)は、生産実績をバーコードリーダーやRFIDリーダーなどで読み取って、自動で実績を計上する方法です。製造実績を手動で入力するよりも、より正確かつ迅速に実績を計上することができます。

 

 

3. 製造指図クローズ

製造指図クローズは、これ以上の指図に対する実績計上をストップする、実際原価計算に使う指図を明示する処理のことです。製造指図クローズを行うことで、製造指図に対して実績計上ができなくなり、実績が確定したことを示します。製造指図クローズは、T-code:CO02で行います。指図ステータスがREL(リリース)になっている製造指図に対して、製造実績がすべて計上された場合に製造指図クローズを行います。

 

製造指図クローズを行うと、以下のような効果があります。

– 製造実績の確定

– 原価計算の実行

– 製造指図に対する在庫評価の開始

製造指図クローズは、T-code:CO02で行います。指図ステータスをTECO(技術的リリース)に変更することで、製造指図クローズを行います。ただし、製造指図クローズは一度行うと取り消すことができないため、慎重に行う必要があります。

以上が、SAP S/4 HANAにおける生産管理(PP: Production Planning)モジュールの製造実績と、生産計画ごとのトランザクションについての詳細な解説でした。製造指図登録、製造実績計上、製造指図クローズなど、製造実績プロセスの基本的な流れを理解することで、生産管理コンサルタントとして、SAP S/4 HANAを使った製造実績管理に必要なスキルを身に付けることができます。

 

本記事では、SAPの製造実績計上について、生産管理コンサルタント向けに詳細に解説します。製造実績計上は、製造指図に対して、構成品出庫、生産品入庫、および作業時間の3つの実績情報を計上するプロセスです。以下に、それぞれのステップについて説明します。

 

・構成品出庫(T-code:MIGO)

構成品出庫では、製造で実際に使用した品目、数量、ロット、保管場所を指定して、出庫計上を行います。製造指図を参照することで、構成品情報が自動的に画面に読み込まれます。その後、数量、ロット、出庫保管場所の情報を確認・入力し、明細(品目)ごとにOKフラグにチェックを入れて保存します。

実際の運用では、1つの指図に対して分割で出庫処理を行うことができます。また、指図で指定されていない品目を使用した場合、MIGOの画面を手動で品目・数量・ロット・保管場所を指定します。

 

・生産品入庫(T-code:MIGO)

生産品入庫では、実際に製造で生産した品目、数量、ロット、保管場所を指定して、入庫計上を行います。製造指図を参照することで、構成品情報が自動的に画面に読み込まれます。その後、数量、ロット、入庫保管場所の情報を確認・入力し、保存します。

実際の運用では、分割で入庫処理を行うことができます。2回目以降の入庫では、指図数量の差分数量がMIGO画面に提案されます。また、指図の数量に対して入庫数量が満たない場合は、指図ステータスがPDLV(一部納入)になります。指図数量以上の入庫をすれば、指図ステータスがDLV(納入済)になります。

 

・作業時間(T-code:CO11N)

作業時間では、製造指図・作業明細番号を指定し、実際に製造で作業した時間を活動タイプ単位で計上します。活動タイプは、原価計算で加工費を計上する単位で設定されることが多く、原価(経理など)の要件によって決まります。例えば、人時間・機械時間や段取時間・処理時間・片付時間、固定時間・変動時間などが挙げられます。

実際の運用では、分割で作業時間計上を行うことも可能です。指図入庫や出庫と同様に、2回目以降の作業時間計上では差分の作業時間がCO11N画面に提案されます。また、指図の作業時間に対して作業時間が満たない場合は、指図ステータスがPCNF(一部完了)になります。指図作業時間以上の作業時間計上をすれば、指図ステータスがCNF(完了済)になります。

 

・製造指図クローズ

製造指図クローズには、「これ以上製造指図に実績を上げられないように制御をかける」「実際の原価計算に使用する製造指図を明示する」という2つの意味合いがあります。指図ステータスをTECO(技術的完了)に変更することで、製造指図クローズを実現します。

T-code:CO02(製造指図変更)で1つの指図ごとに指図ステータスをTECOにすることもできますが、実際の運用では複数の製造指図を一括でステータス変更できるT-code:COHVを使用します。COHVでは、指図ステータスを変更する製造指図を指定し、指図ステータスをTECOに変更します。

実際の運用ケースでは、指図ステータスがPDLVまたはDLVであるような製造実績計上がされている指図を一括でTECOにすることができます。また、指図終了予定日が過去3日の指図を実績計上されたものや作業不要とみなされるものとして、一括でTECOにできます。

 

 

 

まとめ

本記事では、SAPの製造実績の流れについて詳細に解説しました。オペレーションや実際の運用事例を参考に、製造実績プロセスについてイメージできることでしょう。

各企業では独自の生産プロセス文化が築かれているため、SAP標準に合わせるための要件定義フェーズが重要になります。まずはSAPでどのような製造実績プロセスになるのかを理解した上で、要件定義でFit & Gapを出していくことが重要です。この解説が参考になり、効果的な生産管理プロセスを実現できることを願っています。

今後の生産管理コンサルタントとしての役割では、この基本的な製造実績プロセスを理解することが重要ですが、さらに各企業の独自のニーズや要望に応えられるよう、柔軟な対応力や課題解決能力が求められます。SAPの機能や設定に精通し、企業の業務プロセスを効率化し、競争力向上に貢献できるようなコンサルタントを目指してください。

 

また、業務知識や技術力だけでなく、コミュニケーション能力も重要な要素です。顧客との円滑なコミュニケーションを通じて、正確な要件を把握し、最適なソリューションを提案することが求められます。これらのスキルを磨くことで、より一層信頼される生産管理コンサルタントとなることができるでしょう。

最後に、SAPや他のERPシステムのアップデートや新機能の追加が頻繁に行われるため、常に最新の情報をキャッチアップし、適切な知識とスキルを持って対応できるよう努力することが大切です。業界の動向や技術革新に敏感であり続けることが、生産管理コンサルタントとしての成功への鍵となります。

 

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