SAP ERPの将来性とトレンド
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はじめに
SAP ERPが日本に上陸したのは1992年のこと。ドイツで現在のSAP ERPの原型である「R/1」がリリースされてから20年後でした。日本に上陸してから30年以上が経過したSAP ERPは、現在でも導入・リプレイスが続いています。
しかし、近年は国内製のERPパッケージがシェアを伸ばしていることもあり、将来性について疑問を感じる方も少なくないようです。そこで、SAP ERPの将来性と今後のトレンドなどをまとめてみました。
1. SAP ERPの将来性
Gartner社が提唱するポストモダンERPの考え方によれば、次世代のERPパッケージは「連携」が肝になるようです。つまり、ERPパッケージのみで基幹業務のすべてを包括していたR/3までの流れとは異なり、複数の業務アプリケーションとERPを連携させる手法が次世代ERPの活用方法になるわけです。このトレンドを踏まえると、SAPも多様な業務アプリケーションとの連携を強化し、柔軟性と拡張性を提供する方向性が期待されます。
1-1. 「デジタルコア」なS/4 HANAで複数のシステムをまとめる
実際に、S/4 HANAは、さまざまな業務用システムの「核」として設計されていますよね。これまでSAP社はERPを中心にソリューションを提供してきましたが、現在はカスタマーエクスペリエンスを提供するSAP Customer Experienceや、購買管理のAriba、経費精算のConcur、HR管理のSuccessFactorsなど、業務領域ごとにSAP ERP以外の選択肢を用意しています。
これらは企業活動を丸ごとデジタライゼーションする「インテリジェントエンタープライズ」のコンセプトとして位置づけられているようです。また、SAP S/4HANAはこれら複数のシステムの中心に位置する「デジタルコア」として定義されています。
すでにS/4 HANAは次世代ERPを高い次元で具現化したソリューションであり、将来性についてはそれほど心配がないとも言えます。というよりも、国産のERPパッケージに比べると一歩以上先を行っているイメージです。
1-2. クラウド時代への突入で中小企業からも需要増
ここ5年程で、クラウドサービスに抵抗をもたない企業が非常に増えました。そもそもクラウド化はランニングコストの面のみで言えば、オンプレミスとあまり差がありません。しかし、リプレイスや運用保守の労力が著しく減ることから、情シスを持たない(もしくは十分なリソースがない)企業を中心に採用が続いています。
ERP市場も同様の傾向にあり、エンジニアリソースを持たない中小企業がSaaS型ERPを利用しているようです、SaaS型ERPは初期投資が少なく、柔軟なスケーラビリティを備えているため、中小企業にとって利用しやすい選択肢となっています。SAPはクラウド戦略をかなり強力に推進していて、クラウド市場の成長に対応して競争力を維持しつづけていくように思えます。
1-3. ERP市場は成長し続けている
2000年代後半から2010年代前半にかけて、ERP市場は「一巡した」と言われていました。つまり、大企業の大半はすでにERPを導入し終わっていて、これ以上の伸びは期待できないという風潮があったのです。しかし、この流れはクラウドの台頭によって変わりました。
現在、ERP市場はオンプレミス、IaaS型、SaaS型を合わせた全体で毎年約10%の成長率が予想されています。特にSaaS型の成長率は20~25%とかなり高く、誤解を恐れなければ「絶好調」と言える状態です。SAPは、オンプレミス/クラウド双方に対応する製品やサービスを提供することで市場の需要に応えているため、これからも市場の中で影響力を発揮し続けるでしょう。
特に中小企業におけるSaaS型ERPの導入が増えており、その需要は今後も続くと予想されます。デロイト トーマツ ミック経済研究所が2022年8月に発表したレポートによれば、年商5億円未満の中小企業向けERP市場は、2021年度出荷金額381.1億円で前年対比123.7%を記録したとのこと。大企業向けというイメージが強いSAPですが、実際には顧客の8割が中小企業というデータもあるほど。2016年頃からは、「SAP Business One」など中小企業に特化したERPも積極的に展開しています。
SAPは今後も中小企業向けのERPソリューションを提供し、SaaS型の利点である初期投資の軽減や柔軟性を活かした提案を続けていくはずです。
2. ERPは今後どうなっていく?
次に、ERPのトレンドや市場動向について見ていきましょう。ERP市場全体のトレンドですが、以下のような特徴があるようです。
2-1. DX対応に特化
今後のERPパッケージは、DX(デジタルトランスフォーメーション)対応として、「ビジネスプロセスの自動化」「データ分析基盤の整備」「クラウドをベースとしたシステム」が標準で盛り込まれていくと考えられます。ERPは基幹業務を包括するだけに、重要なデータを大量に扱うわけですが、この点がクラウド化を遅らせる原因になっていました。しかしここ3~4年ほどで、クラウドのメリットや堅牢性が知れ渡り、クラウドソリューションへの需要が増加しています。
2-2. クラウド化はこれからも進む
クラウドは柔軟性、スケーラビリティ、セキュリティの向上などさまざまなメリットを持ち、オンプレミスよりも少ない人手で維持することが可能です。DXは、端的に言えば「デジタル化をベースとしながら、革新的なビジネスを生み出す環境を作る」ことがゴールですから、クラウド化による自動化・省力化は非常に重要なわけです。SAPはSAP S/4HANA CloudなどのクラウドベースのERPソリューションを提供しており、このトレンドに対応しています。
3. フリーランスが力をつけるチャンス
SAPを含めERP市場は全体的に右肩あがりです。コロナによる制限が解除されたことで、今後活発に動きはじめたプロジェクトも出てきました。
さらにSaaS型ERPの普及や中小企業向けの需要増加に伴い、フリーランスERPコンサルタントへの案件需要も増える可能性があります。ただし、従来のオンプレミス型ERPだけではなく、SaaSやクラウドの知識を持つことが求められることに注意していきましょう。ベテランのコンサルタント/エンジニアも、クラウド関連のスキル習得が必須になってくるかもしれません。
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