SAP ERPの実機環境を手に入れる方法
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はじめに
SAP ERPに関する技術的なスキルを高めるには、実機の操作が欠かせません。しかし、SAP ERPの実機環境は手軽に入手できるものではありませんよね。かつては、企業内の専用端末からのみアクセスできることが大半で、プロジェクトに参画したタイミングで始めて触ったという人もいたほどです。
しかし、現在は少し事情が変わってきておりSAP ERPの実機環境を個人で用意することも可能です。ここでは、SAP ERPの実機環境を👍に入れる方法について紹介します。
1. MICHAEL MANAGEMENT社のサービスを利用する
まず、海外の企業が提供しているサービスを見ていきましょう。MICHAEL MANAGEMENT社では、SAP ERPの環境にアクセスできるサービスを提供しています。
MICHAEL MANAGEMENT社のサービスは、SAP ERPの学習やトレーニングに特化しており、以下のような特徴があります。
・SAP ERPの実機環境
MICHAEL MANAGEMENT社が用意した実機環境にアクセスできるサービスで、実際のビジネスシナリオやトランザクションを操作しながらSAP ERPの知識を深めることができます。
・ハンズオンコース
いわゆるオンライン学習コースですね。実際のSAP ERPシステムで演習や課題をこなしながら学習を進めることができます。実際のビジネスシナリオに基づいた演習や課題を通じて、実践的なスキルを身に付けることができるようです。ただし、日本国内の事例が取り入れられているかは不明で、主に海外の事例に基づいた演習や課題であることに注意しましょう。
・豊富な学習コンテンツ
MICHAEL MANAGEMENT社のサービスには、ビデオチュートリアル、オンラインコース、マニュアルなどが含まれます。自己学習が苦手な方でなければ、こうした資料を活用しながら自分のペースで学習を進めることができるでしょう。コンテンツは実際のビジネスシナリオに基づいており、エンジニアが実践的なスキルを身に付けるのに役立つそうです。
・専門家のサポート
MICHAEL MANAGEMENT社では、専門家によるサポートも提供しており、エンジニアは質問や疑問点を専門家に相談することができます。また、フォーラムやコミュニティを通じて他のエンジニアと交流することも可能です。チュータやメンターのような制度ですね。最近は日本のオンラインスクールでも同様の制度がありますが、SAP ERPに関するものはまだまだ少ないので一度は利用してみても良いのではないかと思います。
2. Cloud Aliance Library(CAL)を利用する
SAP ERP環境の実機環境は、Cloud Aliance Library(CAL)を利用することでも構築できます。CALは自分のAWSの環境上にSAP環境を構築するためのツールです。
https://www.sapjp.com/blog/archives/14560
・クラウドベースのSAP ERP環境
CALは、クラウド上でSAP ERPを実行するための環境を提供しています。AWSベースなので当然なのですが、物理的なサーバー構築・メンテナンスは一切必要ありません。比較的短期間でSAP ERPシステムを利用でき、スケールイン/アウトしやすいのも特徴のひとつです。
・柔軟なアクセスと管理
CALのサービスは、AWS環境にアクセスすることさえできれば、どこでも利用可能です。また、簡単に新しい環境を作成したり、既存の環境をクローンしたりすることができます。
・テンプレートと予め設定されたシナリオ
CALには、MICHAEL MANAGEMENT社のサービスと同様に、SAP ERPのテンプレート・シナリオが用意されています。特にテンプレートを利用することで、すぐにSAP ERP環境をセットアップできるのは便利ですね。また、シナリオでは一般的なビジネスプロセスをカバーしており、実際の業務プロセスをイメージしながら開発やテストを行うことができます。
・サポートとコミュニティ
CALでは、学習者が問題や疑問を解決するためのサポートを提供しています。また、CALコミュニティに参加することで、他のエンジニアとの知識共有やベストプラクティスの交換が可能です。
ちなみにCALには無料期間がありますが、無料期間の終了後は正式に契約をしなければ使い続けることができません。
3. SAP S/4HANA Cloud Trialを利用する
3つ目の方法は、SAPが提供している「SAP S/4HANA Cloudのトライアル環境」をクラウド上に構築するというものです。詳細については以下のURLを参照してください。
https://www.sap.com/cmp/oth/crm-s4hana/s4hana-cloud-erp-trial.html
・SAP S/4HANA機能を一通り使える
SAP S/4HANA Cloud Trialでは、SAP S/4HANAの主要機能の大半に触れることができます。また、主要なモジュール(財務会計、購買、販売、在庫管理、生産計画)のビジネスプロセスをカバーする標準機能が含まれるため、SAP ERP、特にS/4 HANAの知識を深めるためには非常に役立つでしょう。
・UIカスタマイズも可能
SAP S/4HANA Cloud Trialでは、ユーザーインターフェース(UI)のカスタマイズも可能です。ユーザーエクスペリエンスを向上させ、生産性を高めるための工夫を身に着けることができます。
・モバイルアプリケーションのテスト
SAP S/4HANA Cloud Trialでは、モバイルアプリケーションのテストも可能です。新しいSAP の独自UIである「SAP Fiori」に対応したアプリを試し、モバイルフレンドリーなソリューションの開発に役立てることができます。
・ガイドとドキュメント
SAP S/4HANA Cloud Trialでは、豊富なガイドとドキュメントが提供されています。SAP S/4HANAの導入や設定、カスタマイズ、開発に関する情報を入手することができます。ただし、英語のドキュメントなので翻訳ツールなどをつかいながら読み解いていきましょう。
4. SAP Learning Hubを利用する
4つ目の方法は「SAP Learning Hub」を利用することです。SAP Learning Hubは、SAPが提供する有償のオンライン学習コンテンツです。
オンライン学習なので、帰宅後の空き時間などをつかい、24時間365日、自分の好きなタイミングでSAP ERPの学習を進めることができます。9,000以上の学習コンテンツが提供されていて、さらにコンテンツの更新も頻繁にあるようです。
SAP Learning Hubは、1年間のサブスクリプション形式で提供されており、価格はEditionによって異なります。主な機能として、以下があります。
・SAP Live Access
いわゆるオンラインでのハンズオンサービスです。トレーニングのために使えるSAPのハンズオン環境を提供します。ハンズオン環境での実践的な学習を通して、SAP環境を自分で構築する難しさや設定の不安を解消することができます。
・学習コンテンツ
E-bookやE-learning、Handbookなど、多様な学習コンテンツを利用できます。キーワード検索や学習レベル、学習方法によるフィルタリングなども可能です。一部のコンテンツはダウンロードもできます。
・Learning Rooms
交流型のコンテンツで、SAP Learning Hub上で提供されるバーチャル空間で提供されます。分野ごとに分かれた部屋で他のユーザーとの交流ができ、さまざまな疑問を解決するのに役立ちます。
また、各部屋には専門家がモデレータとして在室しているので、SAP公式の明確な見解をきくこともできるでしょう。その他、関連動画の共有などを通じて情報交換を行うこともできます。
5. 自己研鑽を常態化することでスキルが身につく
今回紹介したSAP ERPの実機環境は、いずれも有償のコースに設定されています。大体、月1万円程度から使うことができるようです。
SAP ERPの実機に簡単に触れることができなかった時代から考えると、破格といって良い価格だと思います。SAP ERPは触れれば触れるほど理解が深まるシステムです。
実際のプロジェクトでは自由に触れられなかった設定に踏み込んだり、標準仕様をより深く理解したりと、数多くのメリットがあります。自宅でリラックスしつつ、SAP ERPの深い部分に触れることでスキルが強化されていくでしょう。
SAP S/4 HANAは、クラウドを前提としつつ、さまざまな周辺システムとの連携も加味した新世代のERPです。基本的な機能はR/3時代と同じですが、分析機能や連携機能が大幅に拡充されています。今後は、以前よりも知識の幅が問われる時代になるのではないでしょうか。フリーランスとして活躍していきたいのであれば、SAP ERPの実機環境は用意しておいたほうが良いかもしれません。