SAP Aribaは使いにくい?ERPと比較した場合のメリットと弱点とは?
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はじめに
SAP ERPはECC6.0までの「全部入り」から脱却し、コア機能をERPで、それ以外の拡張機能を外部システムで実現する方式に移行しつつあります。
この外部システムでは、ERPが備える各種機能の専門性を高め、より細かくスピーディーに処理を進めることが可能です。
今回紹介するSAP Aribaも、こうした外部システムのひとつです。
日本国内ではまだそれほど普及していないSAP Aribaについて、使い勝手やメリット、弱点などをまとめてみたいと思います。
1.SAP Aribaとは?
SAP Aribaは、電子調達、契約管理、電子購買などデジタルな購買管理を行うためのWebシステムです。
元は「Ariba」という名称でSAPとは別の会社が提供していましたが、2012年にSAPの子会社となったことから「SAP Ariba」と名称を変更。
現在はSAP ERPを拡張するシステムのひとつとして位置づけられています。
SAP ERPとのデータ連携を行うことができることから、SAP導入時には電子購買の部分をSAP Aribaで賄い、
通常の購買はERPの機能を利用する、といった使い方も想定できます。
2.SAP Aribaの特徴
次にSAP Aribaの特徴です。
SAP Aribaの特徴は何といっても「Ariba Network」でしょう。
Ariba Networkは、サプライヤーとバイヤーをつなぐBtoBネットワークで、現在190カ国、410万を超える企業が参加しています。
電子購買の分野では世界一のシェアを持っており、今後も拡大が予想されているネットワークです。
このAriba Networkのほかにも、以下のような特徴を持っています。
2-1.新たな取引先の開拓が可能
前述した通り、Ariba Networkには410万を超える企業が参加しており、このネットワーク内で新たな取引先と出会うことも可能です。
AribaではAriba Networkを通じて見積依頼などを出すことができることから、海外の企業とのファーストコンタクトを促進します。
日本国内では、馴染みの取引先との取引が優先されますが、それゆえに価格交渉や品質交渉が難しい側面があります。
一方、Ariba Networkではしがらみのない中で新しい出会いが生まれるため、新規ビジネスを開始する土壌としては適しているのではないかと考えられます。
もちろん、取引先を指定しての取引も可能です。
2-2.Web上で購買業務を完結させられる
SAP Aribaは購買の前段階である見積や契約処理、購買後の請求処理までをWeb上で完結させることが可能です。
また、基本的にAriba Networkを通じてさまざまな連絡が可能であり、
電子署名システムと併用することで契約なども行えるため、オンラインで購買業務が完結するわけです。
2-3.扱いやすいUI
AribaはUIが簡素で使いやすく、SAPの購買関連よりも優れていると感じます。
SAPの購買関連機能は、古いタイプのERPの設計思想を受け継いでいるがゆえに、精密で多機能ですがパっと見で使えるような代物ではありません。
これに対して、AribaはECサイトのような使い勝手を重視しているのか、初見でもあまり迷うことがないのです。
まるでBtoCの通販サイトのような使い勝手で、見積もりや契約、購買、請求が完了するために、使い勝手の点ではSAP ERPのかなり上を行っていると感じます。
また、見積依頼なら「Ariba Guided Sourcing」、購買依頼であれば「Ariba Guided Buying」といった
新しい機能を活用することで簡単に処理を完結させることができる点も魅力です。
SAP ERPのように専門用語だらけのオンラインhelpを読み解く必要がないのです。
2-4.SAP ERPシステムとの連携に強い
SAP AribaはCIG(Cloud Integration Gateway )という仕組みを通してSAP ERPとの連携が可能です。
このCIGを活用して、通常の購買業務はSAP Aribaで行い、複雑な業務や独自の業務をSAP ERPで行うといった棲み分けが可能になりました。
また、Aribaにおける承認プロセスをERP側から行うことも可能です。
Ariba CIG側に「汎用モジュールARBCIG_DIRECT_CONNECT」でデータファイルを送信し、
レシートやサプライヤーデータ、請求書などのドキュメントに対して、Ariba側で承認するというイメージです。
詳細については、SAPコミュニティのこちらの記事(https://blogs.sap.com/2023/09/21/how-we-can-control-the-approval-process-of-ariba-from-erp-systemsap-ecc-or-s4hana/)を参照してみてください。
3.SAP AribaとERPの在庫購買機能の比較
ここで、SAP AribaとERPの在庫購買機能を簡単に比較してみたいと思います。
まったく同じ領域をカバーしているわけではないので単純比較で優劣はつけられませんが、機能のイメージを掴むためには役立つでしょう。
3-1.基本機能
・SAP Ariba
主に調達、サプライチェーンマネジメント、サプライヤーコラボレーションに焦点を当てています。
注文、入札、契約管理が主要な機能です。
・ERP 在庫購買機能
企業の全体的な経営プロセスに焦点を当て、調達だけでなく生産、在庫管理、財務などを包括的に管理します。
3-2.システム構成
・SAP Ariba
クラウドベースで提供され、オンライン上でサービスが利用可能。
業務もWeb上で完結させられる。柔軟性があり、迅速な展開が可能。
・ERP 在庫購買機能
通常、企業内に導入され、内部の業務プロセスと統合されます。オンプレミスまたはクラウドベースの展開が可能。
3-3.外部連携とネットワーク
・SAP Ariba
サプライチェーンネットワークを活用し、多様なサプライヤーとの連携が容易。
外部とのリアルタイムな情報共有が中心。
・ERP 在庫購買機能
主に企業内のプロセスに焦点を当て、外部連携は存在するものの、サプライヤーネットワークに特化していない。
3-4.データ分析と意思決定
・SAP Ariba
リアルタイムの購買アナリティクスを提供し、意思決定をサポート。データの可視性が高い。
・ERP 在庫購買機能
組織全体の統合データを利用して戦略的な意思決定を行う。
全体最適化が目指される。データの可視性は追加開発やカスタマイズの程度に左右される。
3-5.カスタマイズ性
・SAP Ariba
クラウドサービスながら柔軟性があり、必要に応じてカスタマイズ可能。ただし、標準機能の利用が強調される。
・ERP 在庫購買機能
企業の特定のニーズに合わせて高度なカスタマイズが可能。業界や企業の規模に柔軟に対応。
ECC6.0まではカスタマイズ+アドオン多様の傾向、S/4HANAからは標準殉教が強調される。
3-6.管理範囲
・SAP Ariba
通常、調達とサプライヤーコラボレーションに焦点を当て、主に外部との連携に特化。
・ERP 在庫購買機能
企業の全体的な経営プロセスを管理し、内外のプロセスを包括的に統合。
3-7.UIおよびUX
・SAP Ariba
ユーザーフレンドリーで、サプライチェーンネットワークの透明性を高めた使いやすいUIが特徴。
・ERP 在庫購買機能
組織内の広範な業務を統合するため、UI・UXよりも機能面の充実に配慮。
4.SAP AribaとERPを連携させることのメリット
最後に、AribaとSAP ERPの連携で得られるメリットをまとめてみます。
・購買プロセスの統合
ERP 在庫購買機能が企業内の広範なプロセスをカバーし、これにより企業全体のシームレスな統合が実現されます。
・データの一元管理
SAP AribaとERP 在庫購買機能を連携させることで、サプライヤーとのやり取りから得られるデータをERPで一元管理でき、
統合的な分析が可能になります。
これにより、リアルタイムな意思決定の裏付けが強化されるでしょう。
・サプライチェーン全体の可視性
SAP AribaのサプライヤーネットワークとERP 在庫購買機能を組み合わせることで、サプライチェーン全体の可視性が向上し、適切な戦略の策定が可能です。
電子購買の比率は今後高まっていくはずですから、Aribaから得られるデータは無視できません。
まとめ
今回はSAP Aribaの概要や特徴、ERPとの比較などを行いました。
Ariba自体は日本でメジャーになりきれていませんが、将来的には有望なシステムだと思います。
購買関連の機能はSAP ERPの中でも難解な部類でしたから、この点を使いやすく拡張できるシステムは重宝されるのではないでしょうか。
また、BtoBネットワークという従来のERPには存在しない概念が組み込まれるのも、次世代型ERPの実現に一役買いそうです。
Aribaとの連携開発に携わった経験は将来的なキャリアップにプラスになりそうですので、ぜひ積極的にプロジェクトを探してみてください。