トップ > 技術コラムNews > SAP技術情報 > レガシーシステムとは何を指す?レガシーシステムの種類とSAP ERPの違い

更新日 

レガシーシステムとは何を指す?レガシーシステムの種類とSAP ERPの違い

はじめに

SAP ERPに関わっていると「レガシーシステム」という言葉をよく耳にしますよね。

漠然と「レガシーシステム=旧システム」という認識を持つ方が多いと思います。

もちろんこの認識は間違っていません。

 

しかし、近年はレガシーシステムの定義が色々あり、ひとつではありません。また、レガシーシステムにもいくつかの種類があります。

 

今回は、レガシーシステムの概念と種類、SAP ERPとの違いを明らかにしていきます。

 

 

 

1.そもそもレガシーシステムとは何か

「レガシー」は、直訳すると「遺産」「遺物」という日本語で表現されます。

これが転じてレガシーシステムは、「技術的には時代遅れであるが、現在でもビジネス運営のために使用されているシステム」を表すときに使われているようです。

 

レガシーシステムは、新しい技術が普及する前に開発され、特定の目的や業務のために設計されたものが大半です。

一般的には企業活動の核となる業務や重要なデータを管理しており、長年にわたって継続的に使用されています。

もう少し詳しくみていくと、以下のような特徴を持っています。

 

 

1-1.レガシーシステムの特徴

・古い技術やプラットフォームの使用

レガシーシステムは、現在では一般的ではない古い技術、プログラミング言語、またはハードウェアプラットフォームを使用しています。

例えば、COBOLやFORTRANといった古いプログラミング言語で書かれたシステムや古いオペレーティングシステム上でのみ動作するシステムなどがあります。

 

・独自の設計

多くのレガシーシステムは、特定の企業の独自の要件に合わせてカスタマイズされています。

企業が持つ固有要件に対応するため、汎用品ではなく独自性の強いシステムであることがレガシーシステムの特徴となっています。

 

・統合と相互運用が困難

レガシーシステムの持つマイナスの特徴のひとつに「ほかのシステムとの併存が難しい」ということが挙げられます。

レガシーシステムは、その古さや独自性ゆえに、他のシステムや最新の技術との統合が困難です。

古い言語やプロトコルを使用しているため、新しいシステムやアプリケーションとの互換性が低いことに起因します。

 

・メンテナンスとサポートの問題

旧式の技術に依存しているため、レガシーシステムのメンテナンスは困難でコストが高くなりがちです。

また、古い技術の専門知識を持つ人材の不足や、オリジナルの開発者が退職してしまったことによる知識の喪失も問題です。

数年前にCOBOLの技術者が不足しているというニュースが流れましたよね。

COBOLは「枯れた技術」のひとつですが、一方でレガシーの中に根強く存在しており、システムの寿命よりも技術者が減るスピードのほうが速くなってしまい、需給のバランスが崩れたわけです。

レガシーシステムでは往々にしてこうした「技術的リソースの需給バランスが崩れる」という事態が起こりがちです。

 

・セキュリティリスク

古い技術を使用しているため、レガシーシステムは現代のセキュリティ基準に準拠していない可能性があります。

したがって、サイバーセキュリティの脅威に対して脆弱になるリスクがあります。

ただし、レガシーシステムはオフラインかつスタンドアロンで動いていることも多く、その古さゆえにマルウェアなどへの感染リスクが小さいこともあります。

 

・効率性と拡張性の欠如

レガシーシステムは、「1点もの」として筑われていることが多く、拡張性はあまり考慮されていないことが多いですね。

また、現代のシステムに比べて処理効率が低いことも特徴です。

このことが、ビジネスの成長を妨げる要因にもなっています。

 

・コストの問題

古いシステムの維持には通常、高い運用コストがかかります。

これは、レガシーシステムが特殊なハードウェアやソフトウェアのメンテナンス、および専門的なサポートを必要とするためです。

前述したメンテナンスとサポートの問題にもあるとおり、技術的リソースが不足してくると、どんなシステムも運用コストが高騰してきます。

処理能力と運用コストのバランスが崩れることでビジネスの成長を阻害し、ひいては企業の業績にまで悪影響を与える可能性があるわけです。

 

 

 

2.レガシーシステムの種類

ここまでレガシーシステムの概要と特徴を紹介してきました。

ここからは具体的な種類について見ていきましょう。

一口に「レガシーシステム」と言っても、その内容は実に様々です。

そこで、日本で一般的にレガシーシスムと呼ばれる仕組みを種類別に整理してみました。

 

・レガシーハードウェア

具体例:

IBMのメインフレームコンピューター(例:IBM System/360)

DEC(デジタル・イクイップメント・コーポレーション)のミニコンピューター(例:PDP-11、VAXシリーズ)

 

・レガシーソフトウェア

具体例:

プログラミング言語:COBOL、Fortran

オペレーティングシステム:UNIX(特に初期バージョン)、Windows XP

 

・データベースシステム

具体例:

データベース管理システム:IBMのDB2(初期バージョン)、Oracle Database(8i以前のバージョン)

ヒエラルキカルデータベース:IBM IMS

 

・レガシー通信システム

具体例:

交換システム:アナログ交換システム

通信プロトコル:X.25、フレームリレー

 

・組み込みシステム

具体例:

医療機器:初期のMRIスキャナー、旧式のパシュレスモニター

制御システム:PLC(Programmable Logic Controller)の初期モデル

 

・エンタープライズIT製品

具体例:

ERPシステム:SAP R/2、初期のOracle E-Business Suite

CRMシステム:初期のSalesforce.com、SAP CRM(初期バージョン)

 

 

 

3.レガシーシステムとSAP ERPの違い

最後にレガシーシステムとSAP ERPの違いを簡単にまとめておきます。

 

レガシーシステムは、特定の時代の技術や製品に依存しています。

例えば、IBMのメインフレームシステムやCOBOL言語は、過去のビジネスコンピューティングにおいて広く用いられていました。

同様に、IBMのDB2やOracle Databaseの古いバージョンは、データ管理における初期の選択肢でした。

これらのシステムは、現代の技術基準と比較して更新や維持が困難であり、セキュリティやパフォーマンスの面で課題を抱えています。

そのため、多くの組織ではこれらの旧式のシステムを現代の技術に置き換えるか、適切に管理する必要があります。

 

SAP ERPは、これらレガシーシステムと共存しつつ、新しい基幹業務システムへ移行するための「橋」として機能してきました。

もっとも、最近はSAP S/4 hanaへ移行するためにECC6.0をレガシーとみなすこともあるので、SAP ERPもレガシーのひとつになってきています。

 

それでも、多くのレガシーシステムとSAP ERPシステムには大きな違いがあります。

テクノロジカルアーキテクチャ、機能性、メンテナンスとアップグレードの手順、そしてビジネスへの適応性などにおいて、SAP ERPは革新的な存在だったからです。

 

レガシーシステムとSAP ERPの違いとしては以下が挙げられます。

 

 

3-1.テクノロジカルアーキテクチャ

・レガシーシステム

具体的技術例: IBMのメインフレーム(System/360)、COBOL言語で記述されたアプリケーション。

 

実務的問題: 新しいAPIやサービスとの統合が非常に困難であり、例えば、クラウドベースのサービスやモバイルアプリケーションとの連携が制限されます。

 

・SAP ERP

具体的技術例: HANAデータベース、SAP Fioriユーザーインターフェース。

 

実務的利点: モダンなAPI、オープンスタンダード(OData、SOAPなど)をサポートし、外部システムとの統合が容易になります。

 

 

3-2.機能性とビジネスプロセス

・レガシーシステム

具体的例: 古い財務管理システム、固定資産管理が限定的。

実務的問題: 現代の財務規制や会計基準に対応するための機能が不足している可能性があります。

 

・SAP ERP

具体的機能例: 統合された財務管理、リアルタイムのレポーティング。

実務的利点: 国際会計基準(IFRS)などの最新の規制に対応し、経営意思決定を支援する詳細なデータ分析を提供します。

 

 

3-3.メンテナンスとアップグレード

・レガシーシステム

具体的例: 独自のデータベースメンテナンス手順、古いバージョンのWindows OSを使用。

実務的問題: システムの更新に専門的なスキルが必要で、適切なサポートが得られないことがあります。

 

・SAP ERP

具体的機能例: クラウドベースのSAP S/4HANA、自動アップデート機能。

実務的利点: システムの更新が容易で、継続的なサポートとセキュリティパッチが提供されます。

 

 

3-4.ビジネスへの適応性

・レガシーシステム

具体的例: カスタマイズされた注文管理システム。

実務的問題: ビジネスモデルの変更や新しい顧客要求に迅速に対応するための変更が困難です。

 

・SAP ERP

具体的機能例: モジュール式構造、カスタマイズ可能なワークフロー。

実務的利点: 企業の成長に合わせた拡張やカスタマイズが容易で、市場の変化に迅速に対応できます。

 

 

 

まとめ

レガシーシステムは、多くの企業にとって避けられない「現実」です。

古いとは言ってもミッションクリティカルな業務を下支えしており、容易に手を加えられるものではありません。

 

一方で、古い技術の使用、カスタマイズされた設計、相互運用性の欠如、メンテナンスの困難、セキュリティリスク、効率と拡張性の問題、高コストなど、多くの課題を抱えています。

企業は、これらのレガシーシステムを現代の技術に移行させるための第一歩としてSAP ERPを選ぶことがあるようです。

 

さらに最近は、オンプレミスからクラウドへの移行というトレンドのもとで、「オンプレ=レガシー」という見方も一般的になってきました。

オンプレミスやクラウドは古い・新しいとは関係がなく、単なる技術的な方針の違いなのですが、現実としてはやはりオンプレは古いと見なされるようです。

 

SAP ERPの人材は、これらレガシーシステムが支えていた技術や業務を、クラウドへ移し替える役目を担っています。

歴史の長い企業のプロジェクトなどでは、意外とレガシーの知識が役立ったりするので、もし興味があれば学んでみるもの良いかもしれません。

 

LINEで送る
Pocket

SAP案件紹介や独立前相談

ほとんどのSAPコンサルタントの方は、独立すると、まずは当社へご登録いただいております。

60秒で無料登録

案件情報やSAP技術情報を
気軽に受け取る

メルマガ登録

つの情報を送るだけで案件紹介へ

    御氏名
    メールアドレス
    電話番号
    生年月日

    つの情報を送るだけで案件紹介へ

      御氏名
      メールアドレス
      電話番号
      生年月日