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SAP業界を目指す新人がまず理解しておくこと4つ

はじめに

SAP界隈には、他のITの分野とは異なる作法・習慣がいくつかあります。

そのいずれもが、実際に触れる段階にならなければ分からないことばかりです。

つまり、事前学習が難しい分野がSAP ERPなのです。

現在はネットの発達によって情報が増えましたが、以前はあまりにもクローズな世界であるために、ベテランのIT技術者でさえ「独特だよね」程度の知識しかありませんでした。

 

今回は、その独特なSAP ERPに携わる者として、必ず理解しておくべき4つのことを紹介します。

 

 

 

1.モジュールの概念

まずモジュールの概念です。

SAP ERPにおいてモジュールとは、「ある業務分野にかかわる機能をまとめたもの」を指します。

例えば、FI(財務会計)モジュールには、企業の財務会計業務にかかわる様々な機能がまとめられ、ひとつの大きな機能となっています。

 

その他にもSD(販売管理)、MM(在庫・購買管理)、CO(管理会計)、HR(人事管理)などのモジュールが存在し、これら複数のモジュールが連携することで、企業の基幹業務全体をカバーしているわけです。

 

ちなみに基幹業務とは、「企業が活動する上で欠かせない、根幹となる業務」を指します。

「何かを売り、原料を調達し、在庫を管理し、ヒトを管理し、その結果を会計データとして残す」という動きは、およそどの企業にも存在します。

こうした汎用的かつ企業にとって不可欠な業務を基幹業務と呼ぶわけです。

 

SAPに限らずERPは、基幹業務をデジタル化し、データとして管理することでリアルタイム性を向上させています。

 

その基本となるのが業務領域ごとのモジュールであり、SAP ERPのプロジェクトもモジュールの動きが基礎となって進みます。

 

 

 

2.SAP全体の構造とアドオン、標準の絡み方について

2番目に理解しておくべきこととして、SAP ERP全体の構造や標準機能、アドオンに関する知識があります。

 

SAP ERPは端的に言えば「業務用データベース」なのですが、前述のように各業務領域における業務データを連携させ、企業活動を可視化することを念頭に作られています。

 

また、さまざまな業務処理を実現するための機能が搭載されていて、これらは「標準機能」と呼ばれます。

標準機能はSAP社が世界中の経営のベストプラクティスから抽出したノウハウをベースに作られており、極めて汎用性が高いです。

 

例えば「MM(在庫・購買管理)」では、

購買依頼→購買発注→入庫検収→請求書照合

 

という一連の業務処理を標準機能のみで行うことができます。

こうした標準機能は、一般的な「購買発注業務」のプロセスをベースとして作られています。

 

しかし、日本企業のように独自性の強い業務プロセスを持つ場合、標準機能だけでは対応しきれないケースが出てきます。

これを吸収するのが「カスタマイズ」や「アドオン開発」です。

 

カスタマイズとは、SAPの標準機能を「設定」によって調整することを指します。

一方で、アドオン開発は、SAP ERPに実装されていない機能を専用言語のABAPによって追加開発することです。

 

日本のSAP ERPプロジェクトでは、作業の大半がカスタマイズとアドオン開発で占められます。

特にアドオン開発の比重がかなり高く、標準機能と業務の差分を、アドオン開発で埋めていく作業が主体です。

 

最も、昨今のFit to Standardの流れによってアドオン開発の割合は低下していくと考えられます。

したがって、これからSAP業界を目指すのならば、SAP ERPの標準機能や新世代のカスタマイズ・開発プラットフォームであるBTP(Business Technology Platform)について理解を深めておくべきでしょう。

 

 

 

3.トランザクションの概念

3つ目に覚えておくべきことは「トランザクション」についてです。

SAP ERPは全ての操作が「トランザクション」によって行われます。

 

トランザクションという言葉は本来「取引」「執行」を表しますが、SAP業界においては「業務処理」や「業務上のタスクを実行するためのトリガー」を指します。

 

具体的には、SAP ERPで「トランザクションコード(Tr-cd)」を打ち込むことで、特定の業務処理に即した機能が起動します。

先ほど説明したMMの業務処理も、すべてトランザクションコードによって操作するわけです。

 

購買依頼(ME51N、ME54N)→購買発注(ME21N、ME29N)→入庫検収(MIGO)→請求書照合(MIRO)

 

カッコ内に記載した文字列がトランザクションコード(Tr-cd)ですね。

SAP ERP上ではトランザクションコードの連続的に打ち込むことで業務を進行させます。

 

 

 

4.ABAPについて

最後に知っておくべきこととして、専用言語の「ABAP」があります。

ABAPは他の言語のようにさまざまなプラットフォーム上で動くわけではなく、SAP ERPの中でのみ動作します。

 

 

4-1.ABAPの特徴

ABAPは高級プログラミング言語で、ビジネスアプリケーションの開発に特化しています。

言語の構文は他の高級言語に似ているため、プログラミングの基礎知識があれば学びやすいです。

 

また、ABAPはデータベースとの連携を重視する第4世代のプログラミング言語です。

これにより、データベース操作が直感的かつ効率的に行えます。

さらにABAPプログラムはイベント駆動型であり、特定のイベント(ユーザーの入力やデータベースの変更)に応じて処理が行われます。

 

このほかにも下記のような特徴があります。

 

・統合環境

ABAPはSAPシステムに完全に統合されており、データモデリング、開発、デバッグ、テストまで一貫した開発環境を提供します。

 

・データベース操作

ABAPはSAPのデータベースと密接に連携しており、データベース操作を簡素化する多くの機能を提供します。

ABAPでは、SQL文を使用せずにデータベースからデータを取得したり、データを更新することが可能です。

 

・ビジネスロジックの実装

ABAPはビジネスプロセスをサポートするために設計されており、ビジネスロジックを効率的に実装できます。

標準で用意されているビジネスロジック(BAPI)のほかに、アドオンで汎用モジュールと呼ばれるパーツを製作し、企業の要件に応じた処理を実現可能です。

 

・オブジェクト指向プログラミング

ABAPはオブジェクト指向プログラミング(OOP)をサポートしています。

これにより、再利用可能なコードの作成や、モジュール化されたプログラム構造の実現が可能になります。

 

 

 

まとめ

今回はこれからSAP業界を目指す方が知っておくべき、SAP ERPにまつわる4つの基礎知識を紹介しました。

SAP ERPは独自性が強いシステムと言われていますが、最新世代のSAP S/4 HANAではさまざまな外部システムとの連携が強化されていて、以前のように「閉じたシステム」ではなくなりました。

とはいえ、SAP専用の知識は膨大にあり、新人の間は毎日が勉強だと思います。

 

一方で、知識が身につくたびに面白さを感じることも多いはずです。

SAP ERPはそれ自体が大きな学問のような存在で、標準機能を理解していくと、企業活動や業界ごとの商慣習など、さまざまな知識を吸収できます。

 

技術畑に進むか業務知識特化に進むかは、本人の志向次第ですが、どちらに進むにせよ、今回紹介した知識は身に着けておいて損はありません。

 

まずはモジュールの全体像、主要なトランザクションコード、カスタマイズとアドオン開発の作法などを身に着け、SAP業界で活躍できる人材を目指していきましょう。

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