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S/4 HANAで活用が進む「SAP SuccessFactors」の概要と特徴
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コラム監修:佐京正則
大学卒業後、新卒で国内のベンチャー企業に入社。
その後、約11年間、外資系企業や国内のインフラ関連企業にてSAP ERPの導入、開発、運用までを経験。
経験モジュールはSD、MM、FI。
2015年よりライターとして活動を開始。
IT製品の導入にまつわる企業課題、エンタープライズIT製品に関するコンテンツの執筆、ホワイトペーパー作成などを手掛ける。
また、CRM/ERPベンダーに対して顧客導入事例の作成支援なども提供。
ビジネス課題と企業向けITが結びついたコンテンツを得意とする。
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はじめに
SAP ERPはS/4 HANA世代に入り、外部システムとの連携によって機能を強化する方向性に向かっています。
例えばデータ分析を強化する「SAP Analytics Cloud」、データウェアハウス機能を担う「SAP BW/4HANA」、購買・調達プロセスが強化される「SAP Ariba」などがその代表例です。
今回はその中のひとつ「SAP Success Factors」を紹介します。
SAP Success Factorsは従来のHR(人事給与)機能だけではなく、人材管理に関するさまざまな機能が付与されており、日本国内でも導入が進んでいます。
1.「SAP Success Factors」とは
SAP SuccessFactorsは、SAPのクラウドベースの人材管理ソリューションです。
もともとは、SAP社と何ら関係のない企業の製品でしたが、2011年にSAP社による買収が行われ、現在はSAPの主要製品のひとつになっています。
1-1.SAP Success Factorsの歴史
SuccessFactorsは、2001年にラーシュ・ダルガード(Lars Dalgaard)によって設立されました。
SuccessFactorsは主にパフォーマンス管理ソフトウェアの提供に焦点を当てており、従業員の評価と目標設定、スキル開発などのプロセスを支援していました。
その後、クラウドコンピューティングの台頭とともに、SuccessFactorsはクラウドベースの人材管理プラットフォームに成長しました。
2007年には従業員パフォーマンス管理ソリューションを提供する競合企業であるPlateau Systemsを買収し、製品ラインを拡大。
さらに、2011年にはSuccessFactors社自体がSAPに買収され、SAP SuccessFactorsとして提供されることとなりました。
ちなみに買収額は約34億ドルで、この買収によりSAPは従来のオンプレミス型ERPに搭載されていたHRソリューションに加え、クラウドベースの人材管理ソリューションも手に入れたというわけです。
2.なぜSuccess Factorsの導入が進んでいるのか
2021年に旭化成がSAP Success Factorsの導入を決定したという発表が為されました。
国内の大手企業がこうしたクラウドベースの人材管理ソリューションを導入するのは、珍しいことのように思えます。
しかし、近年SAP Success Factorsは徐々に注目を集めており、導入を検討する企業が増えているようです。
その背景には、「リスキリング」や「終身成長」など、これまでの日本企業には存在しなかった「中堅やベテラン従業員の成長を促す施策」が必要とされているという事情があります。
日本企業はビジネスモデルの変遷や技術トレンドの変化についていくために、従業員に対して「退職するまで成長し続けること」を求め始めているのです。
こうした事情から従来の「配属、勤怠、給与」だけを管理するHRモジュールでは機能的に不足感が出てきたのでしょう。
その他にも、次のような理由があると考えられます。
2-1.クラウドベースの柔軟性と迅速な導入
SuccessFactorsはクラウドベースのソリューションであり、オンプレミスのSAP ERPよりも柔軟性が高く、導入が迅速に行えます。
新しい機能やアップデートはクラウド環境で容易に導入でき、カスタマイズも柔軟に行えます。
従来のオンプレミスシステムに比べて導入プロジェクトの時間とリソースを削減できるという点が強みのひとつです。
ただし、クラウド化が当たり前になった近年のエンタープライズITでは、特段珍しいことではありません。
どちらかといえば、クラウドベースのS/4 HANAと連携できるという点において評価されている気がします。
2-2.エンゲージメント向上とタレントマネジメント
SuccessFactorsは、エンゲージメント向上やタレントマネジメントに特化した機能を提供します。
こうした機能は、従業員のモチベーションを高め、スキルの開発やキャリアプランニングを効果的にサポートできるとされています。
従来のSAP ERPに内包されていたHR機能とは一線を画す機能で、従業員のパフォーマンス評価や目標管理、リーダーシップ開発など、戦略的な人材管理プロセスを統合的に実行できる点が魅力です。
2-3.グローバル展開への対応
多国籍企業やグローバル展開を行う企業にとって、SuccessFactorsは国際的な人材管理のニーズに対応できる重要なツールです。
多言語対応、異なる法的要件への適合、地域別の労働基準への対応など、国際的な環境に適した機能を提供します。
2-4.アナリティクスとデータ駆動の意思決定
SuccessFactorsは高度なデータ分析とレポート機能を備えており、人材データを活用して戦略的な意思決定をサポートします。
従業員のパフォーマンスデータ、トレーニングの進捗状況、人材のスキルセットなどを可視化し、データ駆動の戦略を展開できます。
2-5.モバイル対応とユーザーエクスペリエンス
SuccessFactorsはモバイルデバイスに対応しており、従業員はどこからでもアクセスできます。
ユーザーフレンドリーなインターフェースとモバイルアプリケーションは、従業員が簡単に情報を入力し、利用できることを保証します。
ユーザーエクスペリエンスの向上は、従業員満足度の向上にも寄与します。
2-6.給与計算の専門化
SuccessFactorsのSF-ECP(SuccessFactors Employee Central Payroll)は、給与計算に特化したサービスを提供します。
従来のSAP HRモジュールと比べて給与計算プロセスをより効率的に管理できます。
また、法制度や業務プロセスを考慮した給与計算業務をサポートし、日本企業などでの利用価値が高まります。
2-7.日本企業の人事領域の弱点を補完
Success Factorsは従来のSAP ERPのHRモジュールを補完し、より高度な人材管理機能を提供していることがわかりますね。
人事領域は「労務管理、配属、給与計算」という3点がカバーされていましたが、今後はエンゲージメントやタレントマネジメントもシステムで管理し、「終身成長」や「リスキリング」をサポートしていかなくてはなりません。
こうした需要と、クラウドベースの柔軟性や効率性が評価されているのだと思います。
3.Success factorsの機能概要
では実際にSuccess Factorsの機能を見ていきましょう。
Success factorsの機能は大きく以下6つに分類されます。
・人事管理:Employee Central, Core HR
・給与管理:Employee Central Payroll
・目標管理/評価管理:Performance & Goals
・後継者管理/キャリア開発:Succession & Development
・学習管理:Learning
・報酬管理:Compensation
3-1. 人事管理:Employee Central(コア人事)
Employee Centralは、人事情報をクラウドで一元管理するためのモジュールです。
従業員情報、組織構造、職位などを包括的に管理でき、グローバルな多国籍企業にも対応しています。
従来のSAP HCMモジュールとの連携を前提としており、APIを介して給与計算システムや勤怠管理システムと接続される仕様です。
システム的には、Employee CentralがSuccessFactors全体のデータハブとして機能し、他のモジュールとのデータ連携を確保します。
3-2. 給与管理:Employee Central Payroll
Employee Central Payrollはクラウド型の給与計算エンジンで、従来のSAP HCM給与計算モジュールのクラウド版にあたります。
40カ国以上の給与計算に標準対応しており、法令順守、税計算、社会保険や控除といった要件を満たしている優れものです。
前述のEmployee Centralとリアルタイムに同期することでデータの一貫性を維持します。
既存のSAP HCM給与計算からクラウド移行を検討する企業も少なくないようです。
3-3. 目標管理/評価管理:Performance & Goals
Performance & Goalsは、目標設定や評価プロセスを設定し、改善するためのモジュールです。
AIによる支援機能を備え、OKR(目標と成果指標)管理や継続的なフィードバック、360度評価、目標の組織階層への展開が可能です。
評価をもとにスキル育成計画や報酬と連携でき、タレントマネジメントの基盤として重要な役割を果たします。
3-4. 後継者管理/キャリア開発:Succession & Development
Succession & Developmentは、後継者計画や従業員のキャリア開発を支援するモジュールです。
重要なポジションに対する候補者リストの作成やタレントプールの管理、能力評価に基づいた育成計画の策定などを担います。
さらに、従業員個々のキャリアパスを可視化し、計画的な育成によって離職リスクを低減し、エンゲージメント向上につなげる機能も。
標準のHCMには全くと言って良いほど実装されておらず、Success Factorsの目玉とも言える機能です。
3-5. 学習管理:Learning(学習管理システム)
Learningは、研修や学習管理に使われるモジュールです。
eラーニングの配信、社内研修管理、スキル習得状況の追跡、法定研修の実施状況管理などに対応しています。
また、資格管理やモバイル学習にも対応しており、従業員のスキル向上を組織的にサポートできる仕組みを提供します。
3-6. 報酬管理:Compensation
Compensationは、評価結果に基づく給与や賞与の設計、予算管理を行うモジュールです。
市場データ、いわゆる「給与相場」との統合や、報酬パッケージの設計、シミュレーション機能を備えています。
実務では、パフォーマンスデータと連動させて公平な報酬管理を行う際に有効です。
4.SAPのHRモジュールとSuccess factorsの違い
Success Factorsの機能を見ていくと、「標準のHCMと何が違うのか?」という疑問を持たれる方も多いでしょう。
この疑問はもっともで、SAP RRP標準のHCMとSuccess Factorsは大枠としてみれば、よく似ています。
しかし以下のように明確に異なる点もあります。
・SAP ERP標準のHCM
オンプレミス型、ABAPカスタマイズ中心、導入企業ごとの固有要件に応じた個別開発が前提
・SuccessFactors
クラウド型(SaaS)、設定ベースの運用、四半期アップデートによる標準強化
4-1.標準のHCMとSuccess Factorsは「得意分野が異なる」
また、Success Factorsでは、標準機能の弱い部分である「人材開発」や「採用」「教育」の機能が充実しています。
SAP ERPのHCMは、ECC6.0時代までの中核モジュールとして、人事管理、組織管理、勤怠、給与などを支えてきました。
一方のSuccessFactorsは目標管理や後継者育成、学習管理などのタレントマネジメント領域に強みを持っています。
機能面から見たHCMとSuccess Factorsの違い
はじめに
SAP ERPはS/4 HANA世代に入り、外部システムとの連携によって機能を強化する方向性に向かっています。
例えばデータ分析を強化する「SAP Analytics Cloud」、データウェアハウス機能を担う「SAP BW/4HANA」、購買・調達プロセスが強化される「SAP Ariba」などがその代表例です。
今回はその中のひとつ「SAP Success Factors」を紹介します。
SAP Success Factorsは従来のHR(人事給与)機能だけではなく、人材管理に関するさまざまな機能が付与されており、日本国内でも導入が進んでいます。
1.「SAP Success Factors」とは
SAP SuccessFactorsは、SAPのクラウドベースの人材管理ソリューションです。
もともとは、SAP社と何ら関係のない企業の製品でしたが、2011年にSAP社による買収が行われ、現在はSAPの主要製品のひとつになっています。
1-1.SAP Success Factorsの歴史
SuccessFactorsは、2001年にラーシュ・ダルガード(Lars Dalgaard)によって設立されました。
SuccessFactorsは主にパフォーマンス管理ソフトウェアの提供に焦点を当てており、従業員の評価と目標設定、スキル開発などのプロセスを支援していました。
その後、クラウドコンピューティングの台頭とともに、SuccessFactorsはクラウドベースの人材管理プラットフォームに成長しました。
2007年には従業員パフォーマンス管理ソリューションを提供する競合企業であるPlateau Systemsを買収し、製品ラインを拡大。
さらに、2011年にはSuccessFactors社自体がSAPに買収され、SAP SuccessFactorsとして提供されることとなりました。
ちなみに買収額は約34億ドルで、この買収によりSAPは従来のオンプレミス型ERPに搭載されていたHRソリューションに加え、クラウドベースの人材管理ソリューションも手に入れたというわけです。
2.なぜSuccess Factorsの導入が進んでいるのか
2021年に旭化成がSAP Success Factorsの導入を決定したという発表が為されました。
国内の大手企業がこうしたクラウドベースの人材管理ソリューションを導入するのは、珍しいことのように思えます。
しかし、近年SAP Success Factorsは徐々に注目を集めており、導入を検討する企業が増えているようです。
その背景には、「リスキリング」や「終身成長」など、これまでの日本企業には存在しなかった「中堅やベテラン従業員の成長を促す施策」が必要とされているという事情があります。
日本企業はビジネスモデルの変遷や技術トレンドの変化についていくために、従業員に対して「退職するまで成長し続けること」を求め始めているのです。
こうした事情から従来の「配属、勤怠、給与」だけを管理するHRモジュールでは機能的に不足感が出てきたのでしょう。
その他にも、次のような理由があると考えられます。
2-1.クラウドベースの柔軟性と迅速な導入
SuccessFactorsはクラウドベースのソリューションであり、オンプレミスのSAP ERPよりも柔軟性が高く、導入が迅速に行えます。
新しい機能やアップデートはクラウド環境で容易に導入でき、カスタマイズも柔軟に行えます。
従来のオンプレミスシステムに比べて導入プロジェクトの時間とリソースを削減できるという点が強みのひとつです。
ただし、クラウド化が当たり前になった近年のエンタープライズITでは、特段珍しいことではありません。
どちらかといえば、クラウドベースのS/4 HANAと連携できるという点において評価されている気がします。
2-2.エンゲージメント向上とタレントマネジメント
SuccessFactorsは、エンゲージメント向上やタレントマネジメントに特化した機能を提供します。
こうした機能は、従業員のモチベーションを高め、スキルの開発やキャリアプランニングを効果的にサポートできるとされています。
従来のSAP ERPに内包されていたHR機能とは一線を画す機能で、従業員のパフォーマンス評価や目標管理、リーダーシップ開発など、戦略的な人材管理プロセスを統合的に実行できる点が魅力です。
2-3.グローバル展開への対応
多国籍企業やグローバル展開を行う企業にとって、SuccessFactorsは国際的な人材管理のニーズに対応できる重要なツールです。
多言語対応、異なる法的要件への適合、地域別の労働基準への対応など、国際的な環境に適した機能を提供します。
2-4.アナリティクスとデータ駆動の意思決定
SuccessFactorsは高度なデータ分析とレポート機能を備えており、人材データを活用して戦略的な意思決定をサポートします。
従業員のパフォーマンスデータ、トレーニングの進捗状況、人材のスキルセットなどを可視化し、データ駆動の戦略を展開できます。
2-5.モバイル対応とユーザーエクスペリエンス
SuccessFactorsはモバイルデバイスに対応しており、従業員はどこからでもアクセスできます。
ユーザーフレンドリーなインターフェースとモバイルアプリケーションは、従業員が簡単に情報を入力し、利用できることを保証します。
ユーザーエクスペリエンスの向上は、従業員満足度の向上にも寄与します。
2-6.給与計算の専門化
SuccessFactorsのSF-ECP(SuccessFactors Employee Central Payroll)は、給与計算に特化したサービスを提供します。
従来のSAP HRモジュールと比べて給与計算プロセスをより効率的に管理できます。
また、法制度や業務プロセスを考慮した給与計算業務をサポートし、日本企業などでの利用価値が高まります。
2-7.日本企業の人事領域の弱点を補完
Success Factorsは従来のSAP ERPのHRモジュールを補完し、より高度な人材管理機能を提供していることがわかりますね。
人事領域は「労務管理、配属、給与計算」という3点がカバーされていましたが、今後はエンゲージメントやタレントマネジメントもシステムで管理し、「終身成長」や「リスキリング」をサポートしていかなくてはなりません。
こうした需要と、クラウドベースの柔軟性や効率性が評価されているのだと思います。
3.Success factorsの機能概要
では実際にSuccess Factorsの機能を見ていきましょう。
Success factorsの機能は大きく以下6つに分類されます。
・人事管理:Employee Central, Core HR
・給与管理:Employee Central Payroll
・目標管理/評価管理:Performance & Goals
・後継者管理/キャリア開発:Succession & Development
・学習管理:Learning
・報酬管理:Compensation
3-1. 人事管理:Employee Central(コア人事)
Employee Centralは、人事情報をクラウドで一元管理するためのモジュールです。
従業員情報、組織構造、職位などを包括的に管理でき、グローバルな多国籍企業にも対応しています。
従来のSAP HCMモジュールとの連携を前提としており、APIを介して給与計算システムや勤怠管理システムと接続される仕様です。
システム的には、Employee CentralがSuccessFactors全体のデータハブとして機能し、他のモジュールとのデータ連携を確保します。
3-2. 給与管理:Employee Central Payroll
Employee Central Payrollはクラウド型の給与計算エンジンで、従来のSAP HCM給与計算モジュールのクラウド版にあたります。
40カ国以上の給与計算に標準対応しており、法令順守、税計算、社会保険や控除といった要件を満たしている優れものです。
前述のEmployee Centralとリアルタイムに同期することでデータの一貫性を維持します。
既存のSAP HCM給与計算からクラウド移行を検討する企業も少なくないようです。
3-3. 目標管理/評価管理:Performance & Goals
Performance & Goalsは、目標設定や評価プロセスを設定し、改善するためのモジュールです。
AIによる支援機能を備え、OKR(目標と成果指標)管理や継続的なフィードバック、360度評価、目標の組織階層への展開が可能です。
評価をもとにスキル育成計画や報酬と連携でき、タレントマネジメントの基盤として重要な役割を果たします。
3-4. 後継者管理/キャリア開発:Succession & Development
Succession & Developmentは、後継者計画や従業員のキャリア開発を支援するモジュールです。
重要なポジションに対する候補者リストの作成やタレントプールの管理、能力評価に基づいた育成計画の策定などを担います。
さらに、従業員個々のキャリアパスを可視化し、計画的な育成によって離職リスクを低減し、エンゲージメント向上につなげる機能も。
標準のHCMには全くと言って良いほど実装されておらず、Success Factorsの目玉とも言える機能です。
3-5. 学習管理:Learning(学習管理システム)
Learningは、研修や学習管理に使われるモジュールです。
eラーニングの配信、社内研修管理、スキル習得状況の追跡、法定研修の実施状況管理などに対応しています。
また、資格管理やモバイル学習にも対応しており、従業員のスキル向上を組織的にサポートできる仕組みを提供します。
3-6. 報酬管理:Compensation
Compensationは、評価結果に基づく給与や賞与の設計、予算管理を行うモジュールです。
市場データ、いわゆる「給与相場」との統合や、報酬パッケージの設計、シミュレーション機能を備えています。
実務では、パフォーマンスデータと連動させて公平な報酬管理を行う際に有効です。
4.SAPのHRモジュールとSuccess factorsの違い
Success Factorsの機能を見ていくと、「標準のHCMと何が違うのか?」という疑問を持たれる方も多いでしょう。
この疑問はもっともで、SAP RRP標準のHCMとSuccess Factorsは大枠としてみれば、よく似ています。
しかし以下のように明確に異なる点もあります。
・SAP ERP標準のHCM
オンプレミス型、ABAPカスタマイズ中心、導入企業ごとの固有要件に応じた個別開発が前提
・SuccessFactors
クラウド型(SaaS)、設定ベースの運用、四半期アップデートによる標準強化
4-1.標準のHCMとSuccess Factorsは「得意分野が異なる」
また、Success Factorsでは、標準機能の弱い部分である「人材開発」や「採用」「教育」の機能が充実しています。
SAP ERPのHCMは、ECC6.0時代までの中核モジュールとして、人事管理、組織管理、勤怠、給与などを支えてきました。
一方のSuccessFactorsは目標管理や後継者育成、学習管理などのタレントマネジメント領域に強みを持っています。
機能面から見たHCMとSuccess Factorsの違い
| 項目 | SAP HCM | SuccessFactors |
| 人事管理
(Personnel Administration) |
標準搭載 | Employee Central (EC)で提供(クラウド) |
| 組織管理
(Organizational Management) |
標準搭載 | ECで提供(クラウド) |
| 勤怠管理
(Time Management) |
標準搭載
(高度な勤怠管理機能あり) |
EC Time Offとして提供(簡易機能)、本格的な勤怠管理は外部連携推奨 |
| 給与計算
(Payroll) |
標準搭載
(国別ローカライズ対応が充実) |
Payroll自体は外部SAP Payrollとの連携、EC Payroll(SAP Payrollベースのクラウド型)で提供 |
| 人材開発
(Talent Management) |
標準搭載
(機能は限定的) |
SFの最も得意とする領域(目標管理、後継者計画、パフォーマンス管理、ラーニング、キャリア開発など) |
| 採用管理
(Recruitment) |
標準搭載
(限定的) |
Recruiting Management、Recruiting Marketingとして強力な機能を提供 |
| 研修・教育管理
(Learning) |
標準搭載
(シンプルな管理機能のみ) |
SF Learningで非常に高度な管理機能を提供(オンラインラーニング、資格管理、コンテンツ作成など) |
標準のHCMが「勤怠・給与管理中心のコアHR業務」に強いのに対し、SuccessFactorsは「コアHR業務+タレントマネジメントの統合」に強みを持っています。
4-2.HCM経験者がSuccessFactorsをキャッチアップするためのステップ
「SAP ERP標準のHCMを長らく扱ってきたが、Success Factorsは経験がない」という人材は意外と多いです。
Success FactorsはERPから独立したシステムであり、まだまだ日本では浸透していません。
そこで、HCM経験者が、既存知識を活かしながらSuccess Factorsの知識を習得するための方法をまとめてみました。
1. コア人事領域(従業員情報管理、給与計算)を習得
ERP標準のHCMモジュールでよく利用していた人事情報管理や組織管理、給与計算の経験は、SuccessFactorsの従業員情報管理(Employee Central)や給与計算(Employee Central Payroll)にも流用できます。
データモデルやポジション管理、給与計算の仕組みは、同じ概念で作られているからです。
そのため、短期間で吸収しやすい領域と言えるでしょう。
まずは従業員情報管理と給与計算を足掛かりに、Success Factorsを理解していきましょう。
2.「設定ありき」の運用に慣れる
SuccessFactorsでは、従来のIMG設定やABAPによるカスタマイズはなく、業務設定画面やメタデータによる設定が中心です。
標準のHCMモジュールでSPRO設定に慣れていた経験が役立ちます。
3. システム統合・拡張スキルを追加
SuccessFactorsは外部の勤怠管理システムやS/4HANA、ID管理システムとの連携を前提としています。
SAP Integration Suiteを活用したAPI連携や、BTPによる拡張開発の知識が求められるでしょう。
標準のHCMモジュールでIDocやBAPIを利用した経験があるエンジニアであれば、API連携に置き換えて学んでみてください。
4. タレントマネジメント領域を段階的に習得
目標管理や評価、人材育成、学習管理といったタレントマネジメント機能は従来のHCMモジュールにはなかった領域です。
ECC6.0からの移行組が最もつまずきやすいポイントですね。
この領域は、素直に知識を吸収していく形でキャッチアップしていきましょう。
まず従業員情報管理を中心に学び、続いて評価管理や後継者育成、学習管理などのモジュールを学ぶ流れが現実的です。
5. 認定資格と実務経験で専門性を強化
SuccessFactorsを体系的に学ぶためには、やはり公式の認定資格を活用すべきです。
従業員情報管理の認定を起点に、給与計算、統合、タレントマネジメント領域の認定を順次取得していきましょう。
資格取得とプロジェクトを並行して進めていくと、理論と実務が一体化するため身に付きやすいです。
5.今後は標準のHR+Success Factorsの組合せも重要に
雇用形態や人材活用の多様化が進む中、従来のSAP HCM(オンプレミス)だけでは十分に対応できない領域が増えています。
特に、採用や人材育成、パフォーマンス管理といったタレントマネジメントの分野は変化のスピードが早く、クラウド型ソリューションならではの柔軟性が求められています。
この流れから、標準のHCMとSuccessFactorsを併用する「ハイブリッド運用」が注目を集めています。
5-1.HCMで基幹業務を安定運用しつつ、SuccessFactorsでタレント領域を強化
実務では、コア人事や給与、勤怠管理をSAP HCMで運用しつつ、採用や人材育成、評価管理といったタレントマネジメント領域をSuccessFactorsに置き換えるケースが増えています。
HCMの強みである堅牢性を保ちつつ、SuccessFactorsの最新機能を取り入れて人材活用を進める方法が定番になりそうです。
5-2.段階的なクラウド移行が現実的なシナリオ
SAP社も「コアHR業務は標準のHCMを活用しつつ、タレントマネジメントをSuccessFactorsへ移行し、最終的に全面クラウド化を目指す」というステップを推奨しています。
いきなり全面移行するのではなく、段階的にSuccessFactorsの導入範囲を広げていくことで、リスクを抑えつつクラウド活用を進められるからです。
今後はハイブリッド前提の提案力や設計スキルが重要になっていくでしょう。
6.まとめ
ECC6.0時代までは、どちらかといえばHRモジュールはマイナーな存在でした。
その背景には、給与計算や勤怠管理はすでに自前のシステムを持っている企業が多く、わざわざSAPに頼るまでもない、という事情があったのかもしれません。
一方で、グローバル化への対応や従業員の成長を促す戦略などは、古いシステムでは実現しえないものです。
ECC6.0からS/4 HANAへの移行に合わせて、Success Factorsを導入する企業が増えているのは、日本企業に残る人材管理の課題を解決しようとする動きの表れなのかもしれません。
国内でも徐々にSuccess Factorsに関する案件が増えてくると考えられます。
今後、SAPコンサルタント/エンジニアとして成長したいのであれば、できるだけ早いうちにSuccess Factorsに関するプロジェクトを経験しておくべきなのかもしれません。
標準のHCMが「勤怠・給与管理中心のコアHR業務」に強いのに対し、SuccessFactorsは「コアHR業務+タレントマネジメントの統合」に強みを持っています。