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WMS(倉庫管理システム)とは?SAP EWMとWMSの違いも解説

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コラム監修:佐京正則

 

大学卒業後、新卒で国内のベンチャー企業に入社。

その後、約11年間、外資系企業や国内のインフラ関連企業にてSAP ERPの導入、開発、運用までを経験。

経験モジュールはSD、MM、FI。

2015年よりライターとして活動を開始。

IT製品の導入にまつわる企業課題、エンタープライズIT製品に関するコンテンツの執筆、ホワイトペーパー作成などを手掛ける。

また、CRM/ERPベンダーに対して顧客導入事例の作成支援なども提供。

ビジネス課題と企業向けITが結びついたコンテンツを得意とする。

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0.はじめに

倉庫管理は、製造・流通・小売のいずれにおいても欠かせない業務領域です。

かつては入出庫や在庫管理を経験に頼っていましたが、現代ではシステムを活用して精度とスピードを高める時代へと移行しました。

 

その中心となるのがWMS(倉庫管理システム)です。

SAP環境においては、従来のWMから進化したEWM(Extended Warehouse Management)が提供されています。

 

本記事では、WMSの基本からSAP EWMとの違い、そしてSAP人材が学ぶべき理由までを整理して解説します。

 

 

 

1.WMS(倉庫管理システム)とは

WMS(Warehouse Management System)は、倉庫の入出庫や在庫を一元管理する仕組みです。

入庫から棚入れ、在庫保管、ピッキング、梱包、出庫といった倉庫業務に関するプロセスをデータで管理します。

WMSの最も大きな役割は、在庫の状況把握を高精度に行うことです。

どの棚に何がいくつあるかを即時に把握し、欠品や過剰在庫といったトラブルを防ぎます。

さらに、倉庫作業の効率化も重要です。

入庫から出庫までをシステムが指示するため、経験の浅い作業者でも正確に業務を進められます。

作業記録はすべてデータとして残るため、トレーサビリティの確保にもつながり、食品や医薬品のように品質保証が求められる分野では、特に大きな効果を発揮します。

 

 

1-1.WMSの歴史

WMSの歴史は1980年代に遡ります。

当初は在庫数量を管理する補助的な仕組みに過ぎませんでした。

 

しかし流通量の増加や多品種少量化の進展により、入出庫指示や進捗管理まで担うように進化しました。

1990年代にはバーコードやハンディターミナルと連携し、2000年代には自動倉庫やマテハン機器と統合するなど、倉庫業務の中核へと位置づけが高まりました。

 

近年はクラウド型のWMSも登場し、複数拠点をまたいだ在庫状況の管理やサプライチェーン全体での在庫共有・可視化が可能になっています。

 

 

1-2.WMSのメリット

WMS導入のメリットは、人件費や作業時間の削減のみならず「サービス品質」にも及びます。

特に「納期」が重要な製造、医薬品業界などでは、精緻な在庫管理によってサービス品質を高めています。

こうした流れから、WMSは単なる「在庫台帳」ではなく、物流全体を支えるインフラに成長しました。

EC市場の拡大、さらには省人化・短納期対応の要請が高まるなか、正確で効率的な倉庫管理を実現するWMSは企業にとって重要度の高いシステムなのです。

 

 

 

2.WMSの基本機能

WMSは倉庫業務を支える多様な機能を備えています。

ここでは特に利用頻度が高く、導入効果が大きい基本機能を見ていきましょう。

 

 

2-1.入出庫管理機能

入庫管理では、納品データと入庫予定を突き合わせ、数量や品質の確認を行います。

 

システムはロケーションを自動提案し、作業者は指示に従って棚入れを進めます。

検品やラベル発行も同時に記録され、受け入れ作業が標準化されます。

出庫管理では受注データに基づき対象商品を指示し、ピッキングから搬出までの流れを制御します。

 

クロスドッキングのように、入庫した商品を棚に入れずそのまま出荷に回す仕組みにも対応しており、リードタイムの短縮も狙える機能です。

入出庫記録はすべてデータ化されるため、伝票処理や監査への対応もスムーズです。

 

 

2-2.在庫管理機能

在庫管理はWMSの中核とも言える機能です。

倉庫内の在庫数量と場所をリアルタイムで把握できるため、棚卸作業の負担を大きく減らします。

 

さらに、ロット管理やシリアル番号管理にも対応し、医薬品や精密機器のように追跡性が求められる業界では特に重宝されています。

また、「有効期限」や「使用期限が」迫った在庫を抽出し、出庫優先度を自動設定できる点も特徴です。

 

システムが補充ポイントを判断してアラートを出すため、欠品や過剰在庫を防ぎます。

蓄積した在庫データを分析すれば、回転率の低い商品を特定し、仕入れや販売計画の改善にも活かせます。

 

 

2-3.進捗管理機能

倉庫では複数の工程が同時進行するため、進捗管理は不可欠です。

WMSでは各工程の進行状況をリアルタイムで確認でき、どの作業者がどの工程を担当し、どこで遅延が発生しているかを把握できます。

 

また、処理件数や作業スピードといったKPIを可視化することで、倉庫全体の生産性を継続的に改善できます。

 

繁忙期には業務負荷をシステムが自動で分散し、ピーク時の出荷対応を安定させます。

 

 

2-4.ピッキング・梱包機能

ピッキングは出荷精度を大きく左右する業務です。

WMSは注文情報からピッキングリストを自動生成し、作業者へ端末やハンディターミナルを通じて指示を出します。

ゾーンピッキングやマルチオーダーピッキングなど複数の方式に対応しており、倉庫規模や出荷特性に応じて最適化できます。

 

梱包工程では、商品に応じた資材や配送ラベルを自動提案します。

サイズや重量をもとにした最適な梱包方法を指示できるため、輸送コストの削減にもつながるでしょう。

ECのように多品種・小ロットの注文が多い業態では、ピッキング機能が業務品質に直結するといっても過言ではありません。

 

 

 

3.WMSと他システムとの違い

倉庫業務に関連するシステムは数多く存在します。

ERPや在庫管理システム、TMS(輸送管理システム)などが代表的ですね。

WMSとこれらのシステムは領域が重なり合う部分もありますが、目的や得意分野は異なります。

これら関連システムとの違いも整理しておきましょう。

 

 

3-1.ERPとの違い

ERPは企業全体の資源を可視化する「意思決定のためのシステム」であり、会計・人事・購買・販売といった幅広い業務を統合管理することを目的としています。

ただし倉庫に関しては、在庫数量や入出庫履歴といった基本情報を管理するにとどまるケースが多いです。

一方のWMSは、倉庫内の作業を細かい単位で管理します。

棚のどの場所に商品があるか、どの作業者がピッキングを行ったかといった現場レベルの情報まで把握できる点が特徴です。

ERPはマクロ視点で最適化を図り、WMSはミクロ視点で倉庫を効率化するという住み分けになります。

 

 

3-2.在庫管理システムとの違い

ERPに搭載されている在庫管理システムは、在庫数量や移動の履歴を把握することに特化しています。

単純な入庫・出庫や棚卸には十分対応できますが、倉庫内での作業指示や進捗管理といったオペレーション面の機能は弱いですね。

 

たとえば、在庫管理システムでは「在庫がある」と表示されても、倉庫内のどの棚から出すべきか、どの順番でピッキングすべきかまでは指示できません。

 

一方のWMSでは、在庫情報を土台に、現場の作業プロセスまでを考慮し、具体的な作業指示に結び付けられます。

つまり在庫管理システムが「何が、いくつあるか、どこに動かすか」を担うのに対し、WMSは「どの場所から、どう動かすか」を指示するというわけです。

 

 

3-3.TMSとの違い

TMS(Transportation Management System)は、倉庫の外側にある輸配送プロセスを管理するシステムです。

配送ルートの最適化、運賃計算、配送状況のトラッキングなどに強みがあります。

 

物流全体で見ると、WMSが倉庫内の効率を高め、TMSが倉庫外の輸送を効率化するという役割分担になるでしょう。

両者を連携させれば、倉庫内の出荷データを即時に輸送計画へ反映でき、リードタイム短縮やコスト削減につながります。

 

WMS単独では輸送計画を立てられず、TMS単独では倉庫内の在庫を制御できません。

2者が連携して初めて、サプライチェーン全体を最適化できるというわけです。

 

 

3-4.「在庫」という資源に対するアプローチの違い

このように、WMSはERPや在庫管理システム、TMSと重複する部分を持ちながらも、それぞれの得意分野と役割が明確に異なります。

ERPが全社視点で基盤を整え、在庫管理システムが数量を管理し、TMSが輸送を制御する。

その中でWMSは倉庫内作業に特化し、現場を動かすエンジンとして機能します。

 

 

 

4.WMSとSAPのMMモジュールとの違い

SAPのMM(Materials Management)モジュールとWMSは、ともに在庫や物流を扱う仕組みですが、焦点が異なります。

 

 

4-1.MMモジュールの特徴

MMは購買管理と在庫管理を中心に設計されており、会計モジュールとの強い連携を特徴とします。

発注から検収、請求処理までを一貫して管理できるため、財務上の在庫評価や仕入先への支払業務に直結します。

扱う単位は「品目」が中心であり、在庫数量や評価額の正確性を担保することが目的です。

たとえば「品目Aが100個入庫した」「倉庫Bに在庫が200個ある」といった情報を正しく会計情報に反映する役割を果たします。

 

 

4-2.WMSの特徴

一方のWMSは、倉庫内のオペレーションに軸足を置きます。

品目単位ではなく、棚やロケーションといった空間単位での管理が得意です。

どの棚に在庫が置かれているか、どの作業者がどの商品をピッキングしたかといった現場情報まで追跡できます。

作業指示や進捗管理機能を備えているため、倉庫内の効率化や誤出荷防止に直結します。

MMが「在庫数量」を管理するのに対し、WMSは「在庫の動き」を制御するイメージですね。

 

 

4-3.MMとWMSは補完関係にある

実務では、MMとWMSを組み合わせて使うケースが一般的です。

MMで在庫購買→会計への一貫した処理を行い、WMSで現場の作業を最適化することで、財務面とオペレーション面の正確さを両立できます。

 

例えば、発注に基づいて入庫した品目をMMが記録し、その在庫をどの棚に配置するかをWMSが指示する、といった分担ですね。

こうすることで「会計的な在庫評価」と「現場での在庫配置・作業管理」がシームレスに連携します。

 

 

4-4.違いの整理

両者の違いを整理すると以下の通りです。

 

・管理対象:MMは品目単位、WMSは倉庫ロケーション単位

・目的:MMは購買・会計との連動、WMSは作業効率化と精度向上

・強み:MMは全社の在庫数量と評価の正確性、WMSは現場オペレーションの標準化

 

MM単体では倉庫内作業を最適化することはできません。

また、WMS単体では会計や購買プロセスとの連動が弱くなります。

どちらか片方だけで完結するのではなく、両者を組み合わせて活用することが重要です。

 

 

 

5.旧バージョンのWMと現行のSAP EWMの比較

SAPの倉庫管理は、ECC時代のWM(Warehouse Management)から、S/4HANA世代のEWM(Extended Warehouse Management)へと大きく進化しました。

両者は「倉庫管理」を担う点では共通します。

 

しかし、設計思想や機能の範囲に大きな違いがあります。

ここでは旧バージョンのWMとSAP EWMの違いを整理していきましょう。

 

 

5-1.システム構成の違い

WMはSAP ERP ECCの一部としてロジスティクス実行(LE-WM)に組み込まれていました。

一方のEWMは、S/4HANA上で独立したモジュールとして提供されています。(分散システムとしても運用可能)

つまり、SAPEWMは拡張性と柔軟性が重視された設計思想と言えます。

 

 

5-2.対応可能な業務範囲

SAP EWMでは、インバウンド、アウトバウンド、労務管理、スロッティング、キッティング、返品処理まで幅広くカバーします。

多様化する物流ニーズを想定した機能が特徴です。

 

 

5-3.自動化サポート

WMでは自動倉庫や搬送設備を利用する際、外部ベンダーのツールを介する必要がありました。

一方のSAP EWMには統合マテリアルフローシステム(MFS)が搭載されており、コンベアやクレーン、ロボットに直接接続することで自動化設備との親和性が高まります。

外部ベンダーのツールを導入せずとも、標準機脳の範囲で自動倉庫と連動するというわけですね。

 

 

5-4.リソース管理とスロット再配置

WMのリソース管理は手作業が中心でしたが、EWMはシステムで最適化できます。

また、需要に基づいて最適なロケーションを動的に決定する「スロット再配置機能」も備えています。

 

 

5-5.ヤード管理

WMはトラックの入出庫管理に制約があり、チェックインやチェックアウトは手動対応が必要でした。

対するEWMでは、ドック予約や車両管理を含めたヤード管理を標準機能として備え、輸配送との一体化にも貢献します。

 

 

5-6.柔軟性と拡張性

WMは複雑な倉庫への拡張が困難でしたが、EWMは倉庫規模や業種を問わず対応できます。

UIも刷新され、Fioriベースの操作画面とモバイル端末への対応によってユーザビリティが大きく向上しました。

 

 

5-7.他モジュールとの統合

EWMはSAP TM(輸送管理)やSAP GTS(貿易管理)と標準の状態で連携できます。

倉庫内の在庫制御だけでなく、輸送計画や貿易規制対応まで一貫して管理できるのが強みです。

 

・ECC時代のWMとSAP EWMの違い

項目 旧WM(ECC) SAP EWM(S/4HANA) 実務への影響
システム構成 ERPに組み込み 独立モジュール、分散運用も可 移行・拡張の柔軟性が大幅に向上
業務範囲 基本的な入出庫・在庫管理 返品、労務管理、キッティングなど広範囲 複雑な物流現場に対応可能
自動化対応 外部システム経由 MFSで設備と直接連携 自動倉庫やロボット導入が容易
リソース管理 作業者・設備は限定的 稼働状況を最適化・可視化 人員配置や稼働効率が改善
UI/操作性 SAP GUI中心 Fioriベース、モバイル対応 現場作業の使いやすさ向上

 

 

 

6.SAP人材がWMS(SAP EWM)を学ぶ意義は?

SAP EWMは、これまで国内ではあまり導入されていませんでした。

その背景には、従来のWMで多くの企業が必要最低限の倉庫管理をまかなえていたこと、物流部門にシステム投資を優先しにくかったことなどがあります。

 

しかしコロナ禍や働き方改革の影響から物流の効率化が叫ばれるようになり、2023年前後から徐々に状況が変わってきています。

今や物流の効率化と精緻化は企業の競争力に直結するテーマとなったためです。

 

EWMは、従来のWMを大きく拡張した機能を持ち、複雑な物流プロセスや自動化設備との連携にも対応しています。

高度な倉庫管理が求められる場面が増えるなか、EWMのスキルは今後確実に需要を高めていくでしょう。

SAP人材にとっても、EWMを学ぶことは大きな武器になります。

既にMMやWMの経験がある人材がEWMの知識を得ることで、導入プロジェクトや保守案件で活躍の場が広がります。

 

特にフリーランスとして活動を視野に入れる場合、EWMのスキルは差別化ポイントになりえます。

EWMの知識は、ロジスティクス系のモジュールの知識が流用できますから、習得難易度はそれほど高くありません。

SAP業界でキャリアを築く人にとって、「成長分野」として取り組む意義は大きいでしょう。

 

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