第1回:SAP S/4HANAとは?移行が求められる理由と背景を解説
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【コラム監修者 プロフィール】
薮内貴之
SAPベーシスを中心に、SAP導入やインフラ・インタフェース設計を担当。
大手企業のベーシスから出荷まで幅広く支えつつ、周辺システムの設計や運用サポートを経験。
現在は単純なSAPのみならずAWSなどクラウドのインフラを含めてサポート。
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はじめに
近年、世界中の企業でSAP S/4HANA への移行が急速に進んでいます。
従来のSAP ERP(ECC 6.0)は2027年にメインストリームサポートが終了予定であることが、その大きな要因です。
今後もSAPを安定運用するためには、早期に移行を検討しなければなりません。
しかし、「S/4HANA とはそもそも何か?」「なぜ今、移行が必要なのか?」と疑問を抱く担当者も多いでしょう。
今回は、SAP S/4HANA の基本的な仕組みや従来版との違い、移行が求められる背景などをわかりやすく解説します。
1.SAP S/4HANAの基本概要

最初に、SAP S/4HANAとはどのような製品であるのか、概要を解説します。
1-1.S/4HANAとは何か
SAP S/4HANAとは、SAP社が提供する次世代ERP(Enterprise Resource Planning)ソリューションです。
従来のSAP ERPを基盤から刷新し、インメモリデータベース「SAP HANA」を標準採用しました。
高速なデータ処理基盤により、リアルタイム処理や高速分析を実現しています。
これまでのECCでは、大量データ処理時に性能面での制約がありました。
そのため、データ分析に時間がかかる、集計レポートが重いといった課題が見られたのです。
一方、S/4HANAではデータをメモリ上で処理するため、大量データの集計や分析を瞬時に実行できます。
さらに、Webベースの操作画面「Fiori(フィオリ)」を採用しました。
これにより、直感的なUI/UXで操作できるようになっています。
従来のSAP GUIから大きく進化し、より使いやすい操作性が魅力的です。
1-2.旧SAP ERP(ECC)との違い
SAP S/4HANAと従来のECC(SAP ERP Central Component)には、根本的な構造の違いがあります。
たとえば、S/4HANAでは、従来必要だった「集計テーブル」や「二重管理」が不要となり、シンプルなデータモデルを実現しています。
これにより、リアルタイム分析や高速レポート作成が可能になりました。
また、クラウド版・オンプレミス版・ハイブリッド型など、柔軟な導入形態を選べる点も大きな特徴です。
2.SAP ECC(SAP ERP Central Component)のサポート終了
従来多くの企業ではSAP ECC(SAP ERP Central Component)が利用されてきました。
こちらはサポートが終了するため正しい認識を持つことが重要です。
2-1.SAPの2027年問題とは
SAP社は、旧ERP(SAP ECC 6.0)に対するメインストリームサポートを2027年末で終了すると発表しています。
つまり、2028年以降は重大なセキュリティ修正や法改正対応が受けられなくなるのです。
これは、システム維持のリスクが急速に高まることを意味します。
なお、延長サポートは2030年まで提供予定ではあるものの、追加費用が発生する見込みです。
また、アドオンやミドルウェアの互換性問題が顕在化する懸念があります。
そのため、基本的には延長サポートに依存することはおすすめされていません。
「早期にS/4HANAへ移行し、運用の安定と将来性を確保する」という考え方が一般的です。
また、日本国内では税制改正、電子帳簿保存法対応、インボイス制度など、システムに影響を与える制度変更が頻発しています。
旧ECC環境のままでは、これらの対応に多大なコストが発生し、運用負荷も増大しがちです。
このため、企業の多くが積極的に移行を進める方向へシフトしている状況です。
3.S/4HANA移行が求められる3つの理由
これまで多くの企業で利用されてきたSAP ECC(SAP ERP Central Component)はサポート終了が迫っており、早期に移行方針を検討する必要があります。
ここでは、特に重要な3つの理由を解説します。
3-1.デジタル変革(DX)対応
SAPからSAP S/4HANAへ移行する最大の理由のひとつがデジタル変革(DX)への対応です。
近年のビジネス環境では、データドリブン経営、AI活用、クラウドとの連携など、IT基盤の高度化が不可欠になっています。
適切にITを活用できなければ、競合他社に遅れを取るリスクが高まる時代です。
SAP S/4HANAは、DXを支える「デジタルコア」として設計されています。
つまり、外部システムやクラウドサービスとのAPI連携に非常に優れているのです。
従来のSAP以上に、データ基盤としての能力を発揮しやすくなりました。企業のデジタル化を加速するため、移行が強く求められています。
3-2.リアルタイム経営の実現
SAPS/4HANAはインメモリデータベースにより、大量データを瞬時に分析できます。
たとえば、在庫状況や販売データをリアルタイムで集計し、即座に可視化・分析が可能です。
これにより、迅速な意思決定を支援し、リアルタイム経営を実現できます。
特にグローバル企業においては、為替変動やサプライチェーンの変動に即時対応できるのです。
これは、リスク回避や利益最大化につながります。
リアルタイム経営の実現と競争力強化という観点からも、S/4HANAへの移行は大きな価値を持っています。
3-3.システム統合による効率化
従来のSAPでは、部門ごとに独自開発やアドオンを追加するケースが多くありました。
結果として、独自テーブルが乱立し、データが分断される状況が生じていたのです。
しかし、SAP S/4HANAでは統合データモデルと標準化された業務プロセスが整備されています。
これを活用することで、企業全体で共通基盤を構築できる仕組みです。
不要なアドオンによるデータ分断を防ぎ、業務効率化やプロセス統一を実現できます。
さらに、外部クラウドサービスとの連携も強化されました。
データ入力の手間削減など、日常業務の効率化にもつながる見込みです。
4.クラウド対応と「RISE with SAP」構想の登場
最後に、SAPのクラウド対応と「RISE with SAP」について解説します。
4-1.クラウドERP化の潮流
近年、ERPは「オンプレミスからクラウドへ」という潮流が急速に強まっています。
急激な事業環境の変化や、リモートワーク・在宅勤務の普及がその背景にあるでしょう。
柔軟性と拡張性に優れたシステム基盤がより求められるようになったのです。
クラウドERPでは、従来のようにサーバーを自社保有する必要がありません。
ベンダー側がシステム運用・セキュリティアップデート・バックアップまで一元管理します。
これにより、システム保守の負担が大きく軽減され、企業は日々の業務に専念しやすくなるのです。
さらにクラウド環境では、AI分析、モバイル連携、グローバル拠点間のデータ共有なども容易に実現できます。
これらは一例ですが、多くのメリットから、SAPを含め多くのERP製品がクラウド版を市場に展開する時代になりました。
4-2.SAPが提示する「RISE with SAP」とは
SAP社はクラウド化の流れを後押しするため、2021年に「RISE with SAP」という包括的な移行支援プログラムを発表しました。
これは、オンプレミスで利用しているSAPをクラウド環境へ移行するためのワンストップ支援サービスです。
単なるクラウドパッケージ導入ではなく、以下のようにビジネス全般を支援する構成要素で提供されています。
・SAP S/4HANA Cloud:最新バージョンのERP基盤
・SAP Business Technology Platform(BTP):拡張・開発・分析を行うクラウド基盤
・SAP Signavio:業務プロセスの可視化・最適化ツール
・SAP Business Network:サプライヤ・取引先とのデジタル連携ネットワーク
これにより、企業はクラウドインフラの準備だけでなく、業務変革(Business Transformation)を伴う形で移行を進められます。
また、オンプレミスからクラウド移行の際に課題となるインフラ調達やバージョン管理はSAP側が担うサービスです。
これを活用することで、企業はコア業務の改善やデータ活用に集中でき、負担を大幅に軽減できます。
5.まとめ
SAP S/4HANAは、単なるERPの更新にとどまらず、企業のデータ基盤や業務フローを再構築するためのソリューションといえます。
日本国内でも注目が高まっており、2027年のSAP ECCサポート終了を目前に、移行プロジェクトが増えてきました。
クラウドERPや「RISE with SAP」のような統合支援サービスも登場しており、自社に適した方式を選択することが重要です。
なお、現在のSAP(ECC)からSAP S/4HANAへの移行は、専門知識を要するため難しいと感じる担当者も多いでしょう。
その場合は、SAPの専門家であるSAPコンサルタントの活用を検討してください。
弊社クラウドコンサルティングでは、SAP移行に強いコンサルタントが多数在籍しています。
まずはお気軽にご相談ください。