「SAP FI概要の教科書」No.6 GL_伝票入力機能編
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■様々な伝票入力画面
現在、SAPの画面は、クライアントPCにインストールされたSAP LogonからSAP専用画面を起動する画面(カスタマイズのためにログインしている画面)と、WebブラウザでSAP画面を表示する2つの方法があります。
1.SAPGUI画面(従来画面 vs Enjoy画面)
SAP専用画面のFI伝票入力のトランザクションは、T-cd:FB01やFB50等です。
FB50やトランザクションコードの末尾にNがついている画面は、2000年ごろSAP社が「入力しやすい画面」を目指して登場してきた画面で「Enjoy画面」と呼ばれています。
FIの伝票入力のEnjoy画面は末尾にNがついていませんが、FI-GLはT-cd:FB50、FI-ARはT-cd:FB70、FI-APはT-cd:FB60です。
これに対し、それ以前から存在している画面を区別のために「従来画面」と呼びます。FB01は従来画面です。
まずT-cd:FB01のFI伝票入力画面をご説明します。
FB01では画面下部で、「転記キー」、「勘定コード」を入力した後Enterを押し次画面で金額等を入力し、また画面下で「転記キー」「勘定コード」を入力し、Enterし金額等を入力します。これで借方と貸方の入力が出来たことになります。
つまりFB01はEnterキーを2回押し、3つの画面を使ってやっと貸借2明細のFI伝票を1つ入力する、という画面設計になっています。
このFB01に伝票タイプと転記キーを初期値として設定した画面が、FI-GLはT-cd:F-02、FI-ARはT-cd:F-22、FI-APはT-cd:F-43です。
続けてT-cd:FB50のFI伝票入力画面をご説明します。
FB50は、画面下半分の横1行で1明細が入力できますので、貸借2明細の伝票入力であれば、横2行の入力を終えればFI伝票を1つ入力出来たことになります。
1画面で1伝票の入力が出来る画面(判断要素はタブがある画面かどうか)をEnjoy画面と呼びます。
2.ブラウザ画面 WebGUI vs Fiori
Webブラウザで表示するSAP画面には2種類あります。1つ目はSAPGUIの画面がブラウザ表示される画面です。これをWebGUIと呼びます。
2つ目はS/4HANAで登場してきたFiori(フィオーリ)と呼ばれるブラウザからアプリを起動する新しい画面です。FI伝票入力はGL、AP、ARそれぞれにアプリ(画面上の四角いタイルがアプリの単位)があります。
GLの伝票入力アプリは、「一般仕訳転記」、APは「仕入先請求書入力」と「サプライヤ請求書登録」、ARは「得意先請求書入力」というアプリです。※注意 S/4HANA 1809でのアプリの日本語名称。
仕入先請求書入力アプリと得意先請求書入力アプリは起動するとFB60やFB70がブラウザで表示されてくるので、Fioriアプリとして新規開発された画面ではなくWebGUIと分かります。
このように現在SAPシステムの「画面」はSAP GUIの従来画面、Enjoy画面、SAP GUIのブラウザ版のWebGUI、S/4HANAで登場してきたFioriの4種類があります。どの画面でFI伝票を入力しても、基本的な考え方は同じです。システムの挙動を最も理解しやすいのはFB01(一番古い画面)と思いますので、FB01の伝票入力手順とカスタマイズ設定を学習されることをお勧めいたします。
■FI伝票の重要な項目
FB01での伝票入力に従って説明をさせていただきます。
※Fioriアプリの場合は、日本語翻訳がFB01の項目名と一致しないものもありますが、英語ログインすれば同じ項目名であることが確認できます。若干の翻訳の誤差は想像で読み替えつつ、Fioriアプリでの入力画面をご確認ください。
伝票日付と転記日付
転記日付とは、勘定残高が更新される日付のことです。例えば4/1に3/31(前年度末日)の取引を入力する場合、伝票日付は4/1、転記日付は3/31と入力するという使い方になります。伝票日付と転記日付は多くの場合同じ日付を入力します。
会計期間は転記日付から算出され、自動入力されます。
1会計期間を1か月とし、4月からを新年度とする日本企業が多いですが、この場合は4月の日付が転記日付の場合、会計期間は自動的に1と決定され、3月の転記日付の場合、12と決定されます。3月には決算仕訳もありますので3月の通常の発生と区別する目的で、会計期間13を使う、という使い方が出来ます。会計期間は16まであり、13から16を指定したい場合は手入力します。
伝票タイプはFI伝票の番号範囲と、この伝票で使えるマスタコードの種類を制御しています。例えば伝票タイプSAは伝票番号範囲が01(0100000000~0199999999)で、使えるマスタコードは二次原価要素以外の勘定コード、仕入先コード、得意先コード、資産マスタ、品目コードと定義されています。
通貨は、会計取引を行った通貨を入力します。
通貨レートは外貨取引の場合に使われる項目です。換算レートテーブルに通貨同士のレートが登録されている場合、転記日付から該当のレートが決定され自動入力されます。また手入力も出来、手入力した場合は手入力値が採用されます。
転記キーは、貸借の識別と使えるマスタコードを制御しています。例えば転記キー40は勘定コードの借方発生、転記キー31仕入先コードの貸方発生、転記キー01は得意先コードの借方発生を表します。また、転記キーは項目ステータス(伝票項目の非表示、表示、任意、必須入力)を制御しています。
勘定コード(得意先コード、仕入先コードの場合はその統制勘定)で設定した項目ステータスが参照されます。転記キーと勘定の項目ステータスの両方から、入力画面の表示項目や入力必須項目が決まる、という仕組みです。
例えば転記キー40、勘定交通費(勘定コードマスタの項目ステータスグループがG069)の場合のFB01の2画面目(金額を入力する画面)では、金額以外に原価センタ項目等が表示されます。
転記キー31、仕入先コード(買掛金勘定コードマスタの項目ステータスグループがG067)の場合のFB01の2画面目(金額を入力する画面)では、金額以外に支払条件等支払いに関連する項目が表示されます。
特殊仕訳コードは、前受金、前払金、手形等の仕訳入力の場合に使います。
取引タイプは、固定資産取引の場合に使います。
■FI伝票を転記できる期間の制御
会計伝票の入力締めを制御している設定している機能を、会計期間オープン/クローズと言います。SAPシステムでは会計伝票の転記期間の制御は会計期間単位で定義します。オープンは転記可能、クローズは転記不可能を意味し、設定では転記可能な会計期間を定義します(T-cd:OB52)。
この設定例では、転記できる期間は、期間1の2100年第1会計期間から2100年第12会計期間まで、と期間2の2100年第13会計期間から2100年第16会計期間まで、です。
通常、経理ユーザは一般ユーザに比べ、前月分の会計伝票の入力が出来る期間が長く設けられています。修正伝票や調整伝票などの計上のためです。会計期間オープン/クローズでは権限を使い、経理ユーザと一般ユーザの転記可能期間を分けることが出来ます。
以下の設定例では、権限を持つ(経理)ユーザは2100年第11会計期間と第12会計期間への転記が可能ですが、権限を持たない(一般)ユーザは2100年第12会計期間しか会計転記することができません。
AuGr(権限グループ)を使った制御の対象となるのは期間1のみです。
勘定タイプごとに設定を細かく分けたり、勘定ごとに細かく設定を分けたりすることは可能です。要件に合わせ設定を行います。
会計期間オープン/クローズは会計期間バリアントに対して定義します。会計期間バリアントは会社コードに割り当てるため、企業グループ各社が同じタイミングでの会計伝票の入力締め制御を行いたい場合、各社ごとにオープン/クローズの設定を毎月行うことは煩雑な手続きになります。複数の会社コードを1つの会計期間バリアントに割り当てれば、1回の設定で全社の入力締めを制御できる点がメリットとなります。
ご参考までに、SAPシステム全体としては、締め関連機能としてもう一つ、MMモジュールの「品目の締め処理」があります。品目の締め処理では品目の受払(入出庫伝票)の入力を制御します。
■おわりに
今回は会計伝票の入力画面のFB01、Enjoy画面のFB50、WebGUI、Fioriについて、その違いをご紹介しながら、会計伝票入力の基本をご説明させていただきました。画面は色々ありますが、伝票入力のためのカスタマイズ設定やその制御内容は同じです。権限制御についても、SAP GUI、Enjoy画面、WebGUI、Fioriは基本的に同じと考えて構いません。ただしFioriの権限についてだけは念のため確認された方が安全と考えます。
次回も引き続き伝票入力機能です。会計伝票と承認について、「未転記伝票」という機能を紹介いたします。