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「S4 HANAでクラウド化」No.3 SAP HANAへの移行前にアセスメントに時間をかけるべし

■はじめに

SAP Freelance Jobs運営事務局です。

SAPの移行を考えている場合、移行前にアセスメントをしなければなりません。アセスメントとは「評価・分析」などを意味する言葉で、IT業界以外でも頻繁に利用されます。

アセスメントは非常に重要な作業ですが、その内容や重要性を理解できていない人が多く見受けられます。そのような状況ではSAPの移行に失敗しかねないため、今回はSAP移行のアセスメントについてご説明します。

■S/4 HANAの移行前にはアセスメントが必要

冒頭でもご説明したとおりS/4 HANAへの移行を考えているならばアセスメントが必要です。まずは移行前に実施されるSAPの移行アセスメントとはどのような作業であるのかご説明します。

システム移行のアセスメントとは

システム移行におけるアセスメントとは、移行に関連する影響範囲を評価する行為を指します。現状と移行要件をすべて整理して、どの程度のリソースやコストが必要になるか、移行は現実的であるかなどを評価します。

一般的にアセスメントを実施する背景には、システム移行に関するリスクの洗い出しがあります。アセスメントを実施せずいきなり移行プロジェクトを進めてしまうと、失敗につながりかねません。ある程度のコストやリソースをかけてしまうと後戻りはできなくなるため、八方塞がりを防ぐためにも事前に実施します。

アセスメントをしない場合のリスク

アセスメントを実施しない場合には、以下のようなリスクを抱えかねません。

  • 既存業務の洗い出しができず移行後に業務を継続できない
  • 想定よりも多くのコストがかかり予算が枯渇してしまう
  • 移行プロジェクトにアサインしたことで人手不足になる
  • スケジュールの見積もりが甘く移行が遅延して利用者に迷惑がかかる

これらのリスクは一例ですが、アセスメントを実施しなければ多くのリスクを抱えたままです。そのような状況でS/4 HANAのような大規模なシステムを導入するのは避けた方が良いでしょう。

■S/4 HANAの移行アセスメントで評価したい5つのポイント

S/4 HANAへの移行アセスメント実施するにあたっては、必ず評価してもらいたいポイントがあります。たとえば以下のポイントに注目した評価をしなければなりません。

  1. アプリケーションへの影響
  2. 移行先
  3. 移行手法
  4. 期間
  5. コスト

それぞれのポイントについて、具体的にどのような評価をすべきであるのかご説明します。

1.アプリケーションへの影響

S/4 HANAへの移行がアプリケーション面でどのような影響を与えるのか評価しなければなりません。専門的なシステムの知識が必要となるため、ユーザー部門だけではなくIT部門と協力する必要があります。また、社内だけでアセスメントが難しければ、専門的な業者に依頼してアセスメントに臨まなければなりません。

まず、影響として考えるのは、既存の業務を続けられるかです。現在のSAPからS/4 HANAへと移行すると、トランザクションコードが廃止されたり変更されたりする場合があります。このようなものを利用した業務があるならば、S/4 HANAへの移行は大きなインパクトを与えかねません。

また、SAPと併用している他のシステムへの影響も確認すべきです。特にSAPは他のシステムからデータを連携しているケースが多くあります。そのようなデータ連携があると、S/4 HANAへの移行でインターフェースの改修や他システムの改修まで必要となってしまいます。

2.移行先

新しく構築するS/4 HANAは「オンプレミス」「パブリッククラウド」「SAP社のクラウドサービス」の選択肢があります。どの環境に構築するかによって、SAPを構築する負担が大きく変化します。

それぞれの移行先がどのような環境であるかについては、コラムの第1回で細かく説明しているためここでは割愛します。意識してもらいたいのは、移行先によって「機能」「コスト」「プロジェクト期間」などが大きく変化してくることです。移行先のアセスメント結果は周りに与えるインパクトが大きいと認識しておきましょう。

3.移行手法

移行方法についても第2回のコラムで解説しています。主に「コンバージョン」と「リビルト」が存在するため、どちらを選択するか検討しなければなりません。この選択もS/4 HANAへの移行プロジェクトへ大きなインパクトを与えます。

また、移行方法のアセスメントは移行先のアセスメントとセットで実施しなければなりません。希望する移行方法によっては移行先が限られてしまいます。また、先行して移行先を決定すると、移行方法が限られる場合があります。

移行先と移行手法はコストやプロジェクト期間など多くの部分にインパクトを与えると認識すべきです。プロジェクトの難易度を大きく左右する部分でもあり、時間をかけてでも丁寧なアセスメントを心がけます。

4.期間

SAPの移行は長期間にわたって実施するものです。余裕を持ったスケジュールを引いておかなければ、プロジェクトの失敗につながりかねません。アセスメントを踏まえ余裕のあるスケジュールを組み、担当者をアサインできるようにします。

この時に認識してもらいたいのは、稼働日を決めてスケジュールを組まないことです。先に稼働日を決めてしまうと、無理やりスケジュールを押し込むことになってしまいます。これではアセスメントの意味がありませんし、無理やり押し込んだことで失敗した事例は数多く見受けられます。

アセスメントする意味は「希望するS/4 HANAを構築するために必要な期間を把握すること」です。まずは要望に対してアセスメントを実施して、どうしてもスケジュール面で噛み合わない場合に、改めてアプリケーションの妥協などを検討します。

5.コスト

システムの移行において特に重要となるのがコストです。コストは無尽蔵にあるわけではなく、事前に定められた予算内にしなければなりません。アセスメント結果と予算を比べて、現在考えているS/4 HANAへの移行が現実的なものであるのかの評価が必要です。

コストに関するアセスメントの結果について、「思った以上にコストがかかる」「こんなにも高額になると思わなかった」などの感想が多々見受けられます。システムの移行には予想以上にコストがかかり、予算オーバーになるケースは多々あるのです。コスト不足でS/4 HANAへの移行が根本的に見直されてしまう例もあります。

なお、アセスメントの結果、予算を超えるならば移行手法や移行先の検討が必要になるでしょう。どこかしらを妥協する必要が出てくるため、アセスメントの結果を踏まえて決定し、改めてアセスメントすることになります。

■S/4 HANAの移行アセスメントフローの例

アセスメントの進め方は状況によって変化します。今回は専門ベンダーがアセスメントに協力してくれると仮定して、フローの具体例を紹介します。

  1. 社内のアセスメント対応メンバーの決定
  2. アセスメントベンダーの決定
  3. ベンダーによるワークショップ
  4. 事前準備と必要な情報提供
  5. アセスメント用環境の設定協力
  6. ベンダーによるツールの実行や結果の取得
  7. ベンダーによる分析とレポート作成
  8. 8.提供されたレポートを踏まえた方針決定

利用しているSAPの規模によるものの、S/4 HANAへの移行ではこれらの作業を2ヶ月程度かけて進めます。もし、社内だけでアセスメントをするとこれよりも長い時間が必要になると考えられるため、まとまったお金は必要となりますが、ベンダーに依頼した方が良いでしょう。

■まとめ

S/4 HANAへの移行のように大規模なシステム移行の前にはアセスメントが必要です。移行に関する情報を集め状況を評価し、S/4 HANAへの移行が現実的であるかどうかを判断します。コスト面や期間面で実現が難しいケースも多々見受けられるため、アセスメントを実施して状況を把握した方が良いでしょう。

アセスメントは社内だけで実施することも可能ですが、専門ベンダーに依頼するのが理想的です。専門知識や経験が必要となるため、プロを交えた方がスムーズかつ正確にアセスメントできます。まとまった費用は必要となりますが、アセスメントは非常に重要な工程であるため、コストカットしすぎないことが重要です。

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