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「S4 HANAでクラウド化」No.5 SAP HANAへではジョブを単純移行せず吟味することが重要

■はじめに

S/4 HANAを構築したり、構成するにあたってはジョブ運用を考えなければなりません。SAPには数多くのジョブが存在しているため、移行のタイミングでこれらを整理することが重要です。ジョブ設計や運用についてはS/4 HANAへの移行にあたって見落とされがちであるため、クラウドへ移行することを見据えてジョブの見直しを意識してみましょう。

1.S/4 HANAの構築時にジョブ運用も見直すべき

クラウドにS/4 HANAを構築するにあたってはジョブ運用を見直すべきです。まずはどのような理由からジョブ運用を見直すべきであるのかご説明します。

1-1.管理対象のジョブが増え移行の工数が増えかねない

ジョブ運用を見直すべき大きな理由は、ジョブの数が多いと移行の負担が増えかねないからです。移行にあたってはジョブをひとつずつ設定する必要があるため、数が多いとどうしても作業工数が増えてしまいます。また、ジョブを管理するための定義書などを作成する必要があり、文書を管理する工数も増えてしまいかねません。

もちろん、S/4 HANAの移行を工夫すればジョブの数が多くともスムーズな移行を実現可能です。自動化などを駆使すると大量のジョブ移行もできるでしょう。ただ、効率化にはある程度の専門知識が求められるため、ジョブの数を減らしてしまうに越したことはありません。

1-2.移行後のトラブル対応が複雑になる

S/4 HANAをジョブの数が多いまま運用するとトラブルの原因になりかねません。ジョブは定期的に動作する仕組みであるため、起動させるものが多いと何かしらのトラブルが起きる可能性も高まるのです。

また、ジョブの数が多いと相互関係が複雑になってしまい、トラブルがより複雑になる可能性があります。ジョブの仕組みを単純化するためにも、S/4 HANAへの移行時にジョブの簡略化を考えるべきなのです。

ただ、「とにかくジョブの数を減らそう」とは考えないように注意しましょう。S/4 HANAを運用するにあたって効率よくジョブが構成されている可能性もあるため、まずは見直す機会を持ってみましょう。

1-3.移行後もジョブの管理に多くの工数を要す

多くのジョブを残したままS/4 HANAを移行すると、移行してからジョブ管理に工数をとられてしまいます。最新のシステムに移行して新機能を手に入れても、管理工数が増えると意味が薄れてしまうでしょう。管理工数を削減するという観点からも、可能な限りジョブは見直すべきです。

ただ、ジョブ管理の方法はSAPに限らず他のシステム運用にも左右されてしまいます。全社的なルールを守らなければならない場合もあるため、そのようなルールに則っている場合はルールを優先しましょう。

2.S/4 HANAの運用で必要となるジョブ例

S/4 HANAでジョブが運用されているといわれても、具体的なイメージができないかもしれません。例えば、以下のようなジョブがS/4 HANAには存在します。

  • マスタ連携ジョブ
  • 日次での情報集計ジョブ
  • 日次での出荷指示ジョブ
  • 月次での帳票作成ジョブ
  • 月次での財務系ジョブ

定期的なS/4 HANAの利用にはジョブが関わっていると考えて差し支えありません。ジョブは毎日・毎月・毎年など定期的に実施する作業を定義したものだからです。言い換えると、定期的に実施しない作業は基本的にジョブとして定義しません。

3.S/4 HANAをクラウドに移行してからのジョブ運用方法

SAPをクラウドに移行してS/4 HANAを構築するならば、ジョブ管理の方法はいくつもあります。今回は皆さんに検討してもらいたい方法を3種類ご紹介します。

3-1.クラウドサービスのジョブシステムを利用

クラウドサービスでジョブを運用するならば、最初に考えてもらいたいのは各クラウドサービスのジョブ管理ツールです。S/4 HANAの導入に対応しているAWSやAzureなどのパブリッククラウドは、それぞれがジョブ管理ツールを提供しています。S/4 HANAとの連携も公式サイトで解説されているため、最初に検討してみると良いでしょう。

このような管理ツールを利用すれば、ジョブの実行やログの管理をクラウドに集約できます。クラウド上でS/4 HANAを構築するならば、情報はクラウドに集約しておくのが無難です。特別な理由が無いならば、まずはクラウドサービスのジョブ管理ツールから検討しましょう。

3-2.JP1などの専用ソフトウェアをインストール

全社的にジョブ管理のミドルウェアを導入しているならば、S/4 HANAもそちらを導入しても良いでしょう。有名なソフトウェアには「JP1」が挙げられ、すでに導入しているならば低いハードルで導入できるはずです。

ただ、このようなミドルウェアを導入するのは、既存のシステムに導入されている場合に限った方が良いでしょう。単独でソフトウェアを購入すると、ライセンス費用が高額になってしまう可能性があります。全社的に導入していて、ボリュームディスカウントを受けられる際に検討するのがおすすめです。

3-3.cronやタスクスケジューラなどの標準機能の活用

非常に小規模なS/4 HANAを導入するのであれば、cronやタスクスケジューラを利用する選択肢もあります。ただ、これらのジョブ管理ツールは複雑なジョブ設計に対応していないため、基本的にはおすすめできません。

もし、このようなツールでジョブ管理したいならば、管理対象のジョブは10種類や20種類程度にしておきましょう。あまり数が増えるとこれらのジョブ管理ツールでは管理しきれなくなってしまいます。

4.まとめ

S/4 HANAへの移行にあたってジョブ運用を見直す重要性についてご説明しました。一般的にSAPを運用するためには多くのジョブが組まれているため、移行のタイミングで見直すべきです。特に後からジョブを追加していると効率の悪いジョブが存在することもあり、見直しの対象となります。

 

また、管理するジョブの内容を厳選するだけではなく、ジョブの管理方法も見直しましょう。クラウドサービスでS/4 HANAを構築するならば、クラウドで管理するのが無難です。現状、オンプレミスで構築しているならば、移行タイミングで根本的に見直してみましょう。

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