「SAP ERPエンジニアが初めてSAPを学んだら」No.7 SAPのプログラムアップデート状況の紹介
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■はじめに
SAP Freelance Jobs運営事務局です。この度、ERPエンジニアがSAPを初めて学び、資格取得するまでの学び・実施内容の第7回となります。
毎回記載しておりますが、国内にSAPエンジニアが多くいるとはいえ、どのように学び成長出来たかの記事はあまり存在しません。今まで研修内容や各モジュールの概要を紹介しておりますが、あくまで記事記載時点であり、SAPは定期的にプログラムアップデートが実施され、非常に変化しています。また、M&Aも頻繁にあり、製品も増えてきています。
本日はプログラムアップデートの状況を記載し、今後の変化を推測してみたいと思います。
これからご自身がSAPエンジニアを目指す方、また自社内にSAPエンジニアを育成したい方には有益な記事になっておりますので、是非最後までご一読頂けますと幸いです。
1.SAPホームページに記載されている製品
SAPの製品は非常に多く存在しています。SAPホームページより全製品ラインナップを確認すると、200超の製品が表示されます。ただし、SAP S/4 HANAの基本UIであるSAP Fioriも一つの製品と数えられており、どのような枠組みを製品と捉えるか非常に難しいです。
2022年9月時点でSAPホームページでは以下が注目製品として挙げられています。
SAP HANA
最新のアプリケーションと高度な分析が可能な単一インメモリデータベース基盤を提供し企業のあらゆるデータを一元管理するシステムです。
Concur Expense
経費申請から照合までの経費プロセス全体を管理するクラウドベースのモバイルシステムです。
SAP Ariba Strategic Sourcing Suite
サプライヤーと調達企業それぞれが必要な業務エリアを網羅したシステムです。
また、AribaNetworkに世界で300万社以上のサプライヤーが登録されており、調達企業は最適なサプライヤーを探すことが可能になっています。
SAP BusinessObjects Business Intelligence Suite
データ管理と分析用の統合プラットフォームです。
SAP Commerce Cloud
大企業向け e コマースプラットフォームです。
SAP SuccessFactors Employee Central
ヒトや人事関連データを一元管理するシステムです。
このように注目製品だけでも6つ挙げられていますが、今回はこの中でも、最も中心となっているSAP S/4 HANAのバージョンアップについて記載していきます。
2.SAP S4 HANAのバージョンアップの考え方
SAP S/4 HANAのバージョンですが、SAPのバージョンの考え方は中々分かりづらいです。
基本的には、以下の考え方がされています。
- メジャーバージョン
- 年1回のバージョンアップ
- 4半期に1回の機能パッケージスタック
- サポートパッケージスタック
メジャーバージョン
メジャーバージョンですが、S/4 HANAのように10年超間隔でリリースされる大規模なソリューションの変更を示します。例としては、R/2(1979年)・ R/3(1992年)・ERP(2004年)・SAP S/4 HANA(2015年)のような推移となります。
年1回のバージョンアップ
SAP S/4 HANAでは年1回にバージョンアップがされています。
例えばSAP S/4 HANA 1809、SAP S/4 HANA 1909、SAP S4/HANA 2020、SAP S/4 HANA 2021 のようにHANAの末尾に4桁の数字を付与して表現されます。
4半期に1回の機能パッケージスタック
最新のバージョンに対し、4半期に1回機能パッケージスタックがリリースされています。FPS01(FuturePackageStack01)FPS02(FuturePackageStack02)のように表現されます。
サポートパッケージスタック
次の年1回のバージョンアップがリリース後、サポートパッケージスタックが不定期にリリースされます。
各プログラム共に変更内容も大きく、これから学習される方は自身がどのバージョンを対象とするか事前に確認することが望ましいです。
4.年1回のバージョンアップ機能強化例
年1回のバージョンアップですが、非常に大きな機能追加がされます。
過去の実績では、
- S/4 HANA 1709:製造・SCM機能強化&継続的な周辺ソリューションの機能再配置
- S/4 HANA 1809:インテリジェント・エンタープライズ(以下IE)実現に向けた業務自動化・効率化
- S/4 HANA 1909:IE化(業務の自動化/効率化やユーザへの気付き)の促進&付加価値機能の拡張
- S/4 HANA 2020:IE化の加速に向け、社内外プロセスの連携強化・変化への対応スピード向上・最新技術の適用
が実施されております。
上記だけでは分かりづらいかもしれないのでS/4 HANA 2021でSD領域に追加された具体例を取り上げると、
- 受注登録のための新しいSAP Fioriアプリ追加
- 受注登録の自動化
- 代替品引当機能追加のような機能が追加されています。
このように、単純な機能追加だけでは無く、業務プロセス見直しになりうる大規模な機能追加が1年に1回実施されています。
5.SAPが重視するインテリジェント・エンタープライズ
年1回のバージョンアップでSAPが重視しているキーワードとしてインテリジェント・エンタープライズが挙げられます。
インテリジェント・エンタープライズとは、先進的なテクノロジーとベストプラクティスを一貫して適用している企業のことです。
非常に広範な考え方ですが、具体的な例は以下の通りとなります。
- ビジネスで何が起きているのか、なぜ起きているのかを理解するためのツールを採用する。
- ビジネスプロセスにAIと機械学習を導入する
- ビジネス戦略とオペレーションの中核に、持続可能な手法を組み入れる
- 柔軟なバリューチェーンを構築し、最先端の業界プラクティスを適用してビジネスを最適化する
- バリューチェーンをエンドツーエンドで実行するために、業界固有のプロセスをクラウドに導入します。
持続可能で変化への対応を容易にする為に自動化を促進する、バリューチェーン統合を目指して連携機能を強化する等、今後もこれらの具体例いずれかに当てはまるような、最新テクノロジーを駆使した機能強化が継続して実施されていくと予想されます。
6.おわりに
今回はSAPのプログラムアップデート状況を記載しました。
SAP はソリューション領域やサービスが非常に広範ですが、早いスピードで変化をしています。各ソリューション領域でも機能が非常に豊富ですが、そもそもどのようなバージョンアップの考え方が理解し、どのバージョンを学習するか非常に重要となります。
本記事のような概要を整理した記事を確認することで、より全体感を理解して学習が可能となりますので、是非参考にして頂けると幸いです。
次回以降も、各ソリューションの概要や資格取得に向けての研修受講状況や学習方法を紹介していきます。