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「S/4 HANAでクラウド化」No.14 S/4 HANAのクラウド化で失敗しないための知識まとめ

1.はじめに

S/4 HANAをクラウド環境に構築するにあたって必要な知識をまとめてきました。これらについて、連載内容を通じて皆さんにご理解いただけたのではないでしょうか。

今回は今までご説明してきた知識を踏まえて、S/4 HANAのクラウド化で失敗しないために押さえておきたいポイントをまとめ形式でご説明します。

2.S/4 HANAのIT担当者が押さえる観点

まずはS/4 HANAを運用するIT部門の担当者が押さえるべき観点についてご説明します。

2-1.IT部門とビジネス部門で協力

IT部門の担当者はビジネス部門と協力することを意識しましょう。特にビジネス部門が積極的に協力してくれない時でも、働きかけて協力してもらわなければなりません。

 

一般的にシステム移行は「IT部門が主体的にやること」だと認識されています。確かにIT部門が担当する範囲は広いですが、S/4 HANAのような基幹システムを移行する際はビジネス部門の協力が不可欠です。協力なしに移行を成功させることは不可能だといっても過言ではないでしょう。

 

そのため、可能な限りIT部門の担当者からビジネス部門の担当者へ働きかけなくてはなりません。また、問い合わせ先の担当者をアサインしてもらうなど、プロジェクトに積極的に参画してもらうべきです。

2-2.システム移行のリスクを認識

どのようなシステム移行でもリスクが生じてしまいます。IT担当者としてどのようなリスクがあるのかを認識し、必要に応じてリスクヘッジしなければなりません。

 

具体的にどのようなリスクが生じるかは以前の記事でご説明しています。そちらの内容を参考にIT担当者としてシステム移行のリスクを認識しておきましょう。

 

また、重要となるのは必要に応じて関係者に周知することです。IT担当者だけが認識しておけば良いリスクもありますが、ステークホルダーやビジネス部門が認識すべきものもあります。そのようなものはIT担当者から周知して内容によっては合意まで得ておくべきです。

2-3.クラウド技術の担当者を確保

S/4 HANAをクラウド環境に構築する場合は、クラウド技術の担当者を確保しましょう。今までのSAPはオンプレミスに構築するのが基本でしたが、S/4 HANAはクラウドに運用できます。オンプレミスとクラウドはアーキテクチャに違いが生じるため、専門知識を持つ担当者が必要です。

 

ただ、クラウド技術の担当者についてはS/4 HANAの専任ではなくても良いでしょう。インフラ環境は複数のシステムで共通だと考えられるため、それらを操作できるエンジニアがいれば良いのです。

 

なお、求められるクラウド技術は利用するクラウドサービスによって異なります。代表的なクラウドサービスであるAWSを始め、Azureなど様々なクラウドサービスがあるため、必要なスキルを持つエンジニアを確保するようにしましょう。

2-4.将来的な運用についても考慮

S/4 HANAだけではなくクラウドサービスも含め、将来的な運用についても考慮しておきましょう。新しいシステムの導入に力を入れる人は多いですが、運用については考慮が漏れているケースがあります。運用を含めてシステム導入であるため、導入してからの失敗を避けるべく事前に検討しておきましょう。

 

例えば、インフラ環境であるクラウドサービスのバージョンアップについて考えるべきです。クラウドサービスは細かなスパンでバージョンアップされたり機能が統廃合されたりします。それらへの対応方針について考えなければなりません。

 

また、S/4 HANAも新しい機能が提供されたり、ノートが配信されると考えられます。これらについてIT部門の誰が担当するのか、どのようなルールで適用するのかなど細かく決めておきましょう。

3.S/4 HANAのビジネス部門が押さえる観点

続いてはS/4 HANAを実際に利用することとなるビジネス部門が押さえるべき観点についてご説明します。

3-1.S/4 HANAへの切り替えでシステムが大きく変化

現在利用しているSAPをS/4 HANAに切り替えることによってシステムが大きく変化します。ユーザーインターフェースや搭載されている機能に影響が出るため、この点は必ず認識しなければなりません。

 

S/4 HANAのような基幹システムは毎日利用するユーザーが多いでしょう。そのため、システム移行によって使い勝手が変化すると、業務に影響が出てしまう可能性があります。

 

システムが大きく変化する点については、事前の検証で必ず評価しなければなりません。評価作業の必要性については以前の記事で解説しているため、そちらをご参照ください。

3-2.業務フローの見直しが発生

社内で利用する基幹システムをS/4 HANAに変化させることで業務フローの見直しが発生するかもしれません。特に既存のSAPでアドオンによるカスタマイズを含んでいるならば、影響を受けてしまう可能性が高いでしょう。

 

S/4 HANAもシステムのカスタマイズが可能ですが、今までのSAPとは内容が大きく異なります。今までと同じカスタマイズは実装できないといっても過言ではありません。アドオンの種類が多ければ多いほどS/4 HANAでクラウド化した際に影響を受ける可能性が高まります。

 

業務フローの変化については事前に確認しておかないと大きなトラブルになりかねません。IT部門と協力してどのような変化が生じるのか必ず把握しておきましょう。

3-3.IT部門にすべてを押し付けない

システムの移行作業について全てを押し付けてはなりません。ビジネス部門の担当者も協力してスムーズなシステム移行を目指すべきです。

 

システムの管理はIT部門が主体となって行いますが、IT部門は業務のすべてを把握しているとは限りません。どうしてもIT部門だけではシステム移行をスムーズに進められないのです。

 

ビジネス部門はそのようなシステム移行の特性を理解しなければなりません。IT部門に全てを押し付けて任せきりになることは絶対に避けましょう。

4.S/4 HANA導入企業の管理部門が押さえる観点

最後にこれからS/4 HANAを導入する企業の管理部門に向けて、管理部門として把握しておくべき事項についてご説明します。

4-1.導入にあって初期コストが必要

一般的に大規模な基幹システムを導入したり移行したりするためには多くのコストがかかります。金銭的コストだけではなく、人的コストやそれらに関連するコストが必要となってしまうのです。

 

S/4 HANAの導入においても例外ではなく、クラウドへのSAP移行には多くのコストがかかります。会社の規模が大きかったり業務が複雑であったりすると、管理部門の想定をはるかに超えるコストがかかることもあるくらいです。

 

管理部門としてはコスト低減を意識する必要があるものの、ある程度はコストを受け入れなければなりません。無理なコストカットを要求するとプロジェクト自体が失敗する可能性があるからです。IT部門から必要なコストについて打診があると考えられるため、それを踏まえて初期コストを確保しましょう。

4-2.適切なリソースの割当が求められる

クラウドへ移行するプロジェクトが始まるにあたって、適切なリソース割り当てを心がけましょう。「IT部門だけでどうにかしてくれる」と考えるのではなく、ビジネス部門や管理部門から担当者をアサインしなければなりません。

 

例えば、上記でご説明したとおりビジネス部門の担当者を必ずアサインしなければなりません。細かな業務はIT部門ではなくビジネス部門でないと把握できない内容です。認識齟齬があると移行プロジェクトが失敗するため、プロジェクトの初期からアサインしましょう。

 

また、SAPを移行するとなるとベンダーなどに多くの業務を依頼しなければなりません。調達業務が多発するため、管理部門の担当者をアサインしてスムーズな手続きに取り組むべきです。

 

残念ながら管理部門が積極的にシステム移行へ関わるケースは限られています。IT部門がスムーズにS/4 HANAへの移行を成功させるためにも、社内リソースの調節や調達業務への協力など、支援ができるようにリソースの割り当てを心がけましょう。

5.まとめ

S/4 HANAのクラウド化で失敗しないための知識についてご説明してきました。細かなテーマについてはそれぞれの記事で解説しているため、気になる方はそちらをご覧下さい。

 

基幹システムの移行は長期間かつ負担のかかるものであるため、事前の準備が重要となります。どのような流れで移行するのか、どのようなポイントに注意すれば良いのかを必ず把握してから移行に取り掛かりましょう。

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