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「SAP SDモジュールとは」No.2 出荷・請求伝票・マスタ

1.受注からの流れ

第1回の記事では、SAP SDモジュールの概要と販売伝票について説明してきました。

第2回では、SDモジュールの次以降のプロセスである出荷伝票と請求伝票、そしてFIとの連携について説明していきます。

2.出荷伝票

出荷伝票について解説します。

2-1.出荷伝票登録(受注参照あり)

受注した品目について、必要な数量が確保できると、次は得意先に向けて出荷する流れになります。

出荷は、受注伝票で指定した出荷先に対して行われます。

SAPの画面上ですと、受注伝票のメニューから「出荷伝票」を選ぶことでも登録画面に遷移できます。

出荷伝票の様々な情報は、前提となる受注伝票から自動的に引き継がれますので、特別な業務要件がなければ、ほとんどの主要項目は改めて入力する必要がありません。

・出庫確認ボタン

出荷伝票は保存しただけでは在庫の払出は起きません。出庫確認ボタンを押すことで、出荷される扱いになります。

・ロット分割

出荷ロットを出荷明細上で分割したい場合に使用します。

・貿易管理/税関タブ

税関を通すために必要な書類や条件が揃っているかを管理できるタブです。

原産国、仕向国、輸出手続きや取引のタイプ等が設定できます。

システムステータスが表示されており、条件を満たすと、赤信号から緑信号に表示が変わります。

2-2.出荷伝票登録(受注参照なし)

出荷伝票は、受注伝票を参照しなくても登録することができます。

受注伝票を参照しないため、出荷先と品目をマニュアルで入力する必要があります。

データは、適切なマスタレコードから伝票にコピーされます。データが完全であるかどうかはチェックされません。

そのため、出荷プラントや保管場所などを指定せずに出荷を登録することができます。

2-3.出荷伝票登録(無償出荷)

出荷伝票登録では、無償出荷の登録もできます。例えば、サンプル品やクレームなどの何らかの理由で無償出荷し、請求をなしとしたい場合に用います。

受注伝票を登録、出荷伝票を登録、ピッキングを管理するための転送指図を入力、出荷変更で出庫確認を行う流れになります。

まず、受注伝票の受注タイプで無償出荷というものを入力します。通常の受注伝票と同様に得意先や品目、数量、金額を入力したうえで、受注理由を入力して保存します。

保存後、出荷伝票の登録を行います。出荷伝票が登録されたら転送指図登録画面で、転送指図を登録します。この際、出荷伝票のピッキング数量が更新されます。

最後に、出荷伝票変更画面を開き、出庫確認ボタンを押下することで、出荷完了になります。(無償なので請求はありません。)

2-4.出荷伝票変更

出荷伝票変更画面では、伝票番号を直接使用して出荷概要画面にアクセスすることができます。

この画面は特に、後続処理 (例えば、別の明細の追加や明細の削除など) が開始する前に出荷伝票に変更を加える場合に使用します。

主な機能として、以下があります。

-出荷伝票のヘッダデータの変更
-明細データの変更
-出荷伝票の構造の変更

例えば、出荷伝票から個別明細を削除することや、新規の明細を追加することができます。

-明細ステータス

利用可能在庫確認や梱包、出荷や請求など、それぞれのステータスがどこまで進んでいるのか(未処理なのか、完了なのか)が表示されます。

2-4.出荷伝票照会

出荷伝票照会のトランザクションコードを使用して、出荷伝票を照会します。

この画面では、単一の出荷伝票を照会することができます。

この画面では、以下の主な機能が提供されます。

-出荷伝票 ID を入力し、出荷伝票を選択します

-選択した出荷伝票の、伝票フローを表示します

-選択した出荷伝票の、ヘッダデータを表示します

-選択した出荷伝票を、梱包します

-出荷伝票変更ボタンを押下して、出荷伝票を編集できるようになります

2-5.出荷伝票取消

上記の出荷伝票登録で、誤って出荷伝票を登録してしまった場合などに、この出荷取消の画面で取り消すことができます。

画面上で取消対象の出荷伝票を入力することで、出荷伝票を取り消すことができます。

ただし、既に請求伝票が作成されている場合など、後続の伝票が存在する場合は、後続の伝票の取消を先に行う必要があります。

3.請求伝票

請求伝票について解説します。

3-1.請求伝票登録

請求伝票登録画面を用い、前提となる出荷伝票番号を入力し、得意先への請求を行うための請求伝票を登録することができます。

受注伝票のメニューから「請求伝票」を選ぶことでも登録画面に遷移できます。

請求日付は、出荷伝票をもとに自動的に提案されます。

請求伝票登録画面にはほとんど入力項目がなく、請求日付が転記日付になります。

また、請求伝票と同時に、売掛となる会計伝票が同時に作成されます。

この会計伝票がFIモジュールと連携し、後続として入金・消込処理がなされます。

・条件タブ

請求する金額およびその内訳が確認できる価格決定表が表示されます。

この画面で、請求すべき金額に誤りが無いかを確認します。

3-2.請求伝票変更

請求伝票変更画面では、請求伝票の価格や数量に間違いがあったときに使用します。

得意先からの指摘や、自社内での気づきで請求伝票を変更します。

上述で変更とは書きましたが、正確には、変更ではなく、修正の差分の伝票を追加で登録します。

これは一度登録・保存した請求伝票を自由に修正するのは、監査上不適切であるという考えに基づき、

修正分の請求伝票を追加で登録となっております。

3-3.請求伝票照会

請求伝票照会画面では、一度登録した請求伝票について、請求伝票番号を入力することで、

請求日などの内容を照会することができます。

3-4.請求伝票取消

上記の請求伝票登録で、誤って請求伝票を登録してしまった場合などに、この請求取消の画面で取り消すことができます。

画面上で取消対象の請求伝票を入力することで、請求伝票を取り消すことができます。

ただし、既にFIモジュール側で消込伝票が作成されている場合など、後続の伝票が存在する場合は、後続の伝票の取消を先に行う必要があります。

・請求伝票一覧

登録された請求伝票について、SAP標準で一覧画面が用意されています。

検索項目として、請求伝票番号など、複数の切り口で検索することができます。

・ブロック中請求伝票一覧

登録された請求伝票について、SAP標準で一覧画面が用意されています。ブロック中とは、受注伝票の登録時または変更時、

何らかの業務要件で請求伝票の登録をストップしたいとき、後続の請求伝票登録時にはブロックをかける設定ができます。

そのブロックにより、止められた請求伝票を一覧で表示することができます。

検索項目として、請求伝票番号など、複数の切り口で検索することができます。

4.SDモジュールの主要なマスタ

SDモジュールのマスタについて説明します。マスタの設定をすることで、受注、出荷、請求のトランザクションデータの登録が可能になります。

SDで用いるマスタは、主に以下の5つになります。

1つ目はBPマスタ(得意先マスタ)、2つ目は品目マスタ、3つ目は得意先/品目情報レコード、4つ目は条件マスタ、5つ目は出力マスタです。

これら1つ1つ掘り下げて説明してきます。

4-1.BPマスタ(得意先マスタ)

S/4 HANAでは、得意先も仕入先もBPマスタとして扱い、管理されるようになりました。

BPマスタでは、BPロールにより、得意先なのか仕入先なのかのロール設定を定義します。

1つのマスタで、得意先、仕入先などと複数のロール付与が可能です。

例えば、A123株式会社という会社があるとして、受注に用いる得意先、購買に用いる仕入先としても同じコードで管理できます。

そして、同じコードの中で、仕入先ロール、得意先ロールというように、ロールでデータを分けることができるようになっています。

SDモジュールで使用可能にするには、ビジネスパートナー、得意先、FI得意先の3ロールを割り当てることは最低限必要です。

・ビジネスパートナーロール

ビジネスパートナーロールでは、会社名・住所など、他ロールでも共通して使用する項目を設定します。

・得意先

営業所・通貨・出荷条件(海路・陸路・空路など)・出荷プラント・取引先機能・販売エリア等、受注・出荷・請求のトランザクションの元となる項目を設定します。

・FI得意先

統制勘定コード(売掛金勘定)や支払条件(いつまでに支払いしてもらうか)など、請求処理に使用する項目をマスタで設定します。

4-2.品目マスタ

品目マスタは、販売する品目(製品や商品)に関する設定をします。

販売品目の場合、以下のビューのうち、※1~※3の「販売ビュー」の拡張(設定)が必要です。

※製品の場合はMRP・作業計画、商品の場合は購買管理 の拡張(設定)も必要です。

・ビュー

-基本データ1

-基本データ2

-販売:販売組織1 ※1

-販売:販売組織2 ※2

-販売:一般/プラント ※3

-購買管理

-MRP1

-MRP2

-MRP3

-MRP4

-作業計画

-プラント/保管場所1

-プラント/保管場所2

-会計1

-会計2

-原価1

-原価2

 

※1 販売:販売組織1

販売組織1ビューでは、販売エリア単位で設定が可能です。

主に、販売単位、出荷プラント、品目グループ、税分類、販売ステータスなどを設定します。

・販売単位

基本数量単位(原価計算の単位)と異なる場合、販売時に用いる単位を設定します。(例:原価計算はKG、販売はPCでしている場合、”PC”と設定)

・出荷プラント

出荷するプラントを設定します。

・品目グループ

製品の品目グループを設定します。分析時など、品目グループでサマリできます。

・税分類

製品の税分類を設定します。(税10%、輸出の場合は非課税など)

・販売ステータス

販売中止、販売中などのステータス管理をし、販売可・不可の制御をします。

 

※2 販売:販売組織2

販売組織2ビューでは、販売エリア単位で設定可能です。

主に、品目価格設定グループ、品目階層、明細カテゴリグループなどを設定します。

・品目価格設定グループ

複数の品目の価格が同じ場合、同じ値を設定(品目価格設定グループを用いることにより、価格マスタのメンテナンスを共通化できます。)

・明細カテゴリグループ

受注伝票の品目の処理方法を制御(受注生産の場合は受注在庫で管理、無償なら価格設定なし、などがあります。)

・品目階層

品目のグルーピングに使用します。分析時など品目グループでサマリなどができます。

※3 販売:一般/プラント

販売:一般/プラントビューでは、出荷プラント単位で設定ができます。

主に、利用可能在庫確認、輸送グループ、積載グループなどを設定します。

・利用可能在庫確認

受注品目の納入日付に対し、在庫の有無チェック機能の制御があります。(日別所要量は汎用在庫に対して確認、個別所要量は受注在庫に対して在庫確認)

・輸送グループ

輸送経路を決定するための条件になります。

・積載グループ

出荷ポイントを決定するための条件になります。

4-3.得意先/品目情報レコード

得意先/品目情報レコードは、得意先×品目の組み合わせでマスタ設定をします。

使い方は、製品Aを 得意先B、得意先C それぞれに販売する場合、得意先/品目情報レコードにて、

得意先B× 製品A の設定

得意先C× 製品A の設定

が可能です。

主に、得意先品目コード、得意先品目テキスト、出荷プラント、最小納入数量、分割納入区分、

分割最大回数、過少納入許容範囲、過剰納入許容範囲、過剰納入無制限フラグを設定します。

4-4.条件マスタ(販売価格)

条件マスタとは、販売価格を設定するマスタになります。

例えば、製品Aを 得意先B、得意先C それぞれに販売する場合、

得意先B×製品A ⇒ 1,100円 / PC

得意先C×製品A ⇒ 1,120円 / PC

といった設定ができます。

また、価格に加え、運賃、追加料金/値引き、税の設定もします。

追加料金/値引きに関して、スケールを使用し、パーセント or 数量依存 or 金額依存にて、金額増減が可能です。

例えば数量依存の場合、100 PC以上お買い上げの場合、-5% 、1,000 PC以上お買い上げの場合、-10%

といった価格のスケール設定が可能です。

通常、価格はある日を境に、変更されます。

例えば、今年の12/1 までは、1,100円。 来年1/1 からは、1,120円。 といった設定をします。

そのため、条件マスタには有効期限を保持しています。

4-5.出力マスタ

SDの伝票(受注伝票・出荷伝票・請求伝票)に、それぞれ出力機能が用意されています。

出力マスタとは、出力のタイミング(即時、時間起動など)、出力方法(印刷、EDI、メールなど)、出力先(外部システム、FAX、プリンタなど)といった制御が可能です。

受注・出荷・請求とそれぞれに出力マスタの設定が可能で、トランザクションコードもそれぞれ1つずつ分かれています。

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