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「SAP MMモジュールの教科書」No.1 MMで使用する主要トランザクション

1.はじめに

SAP MMモジュールの教科書と題して、数回に渡りMMモジュールについてご紹介いたします。今回は第1回目になるため、MMモジュールで使用する主要なトランザクションを購買業務フローに沿って紹介します。

2.MMモジュールとは

はじめにMMとは、Material Managementの略で、購買管理や在庫管理のすべての業務に対応するモジュールです。MMモジュールでの購買業務とは、一般的に購買依頼から発注、入庫、請求書照合までのプロセスのことを指します。

3.購買業務の流れ

主要トランザクションのご紹介する前に、まずは一連の購買業務を簡単にご説明します。

一般的に調達のフローは、購買依頼からスタートします。購買依頼とは、購買部門に対して調達を依頼する行為です。通常、購買部門は独断で調達行為をすることはできません。他部署やMRP(所要量計算)などから特定の品目を特定数量調達するよう依頼があります。購買部門は、この依頼をもとに指示された数量および納期で調達を行います。

見積依頼・更新とは、購買発注前に事前に仕入先に見積もりを行う行為です。任意のプロセスであるケースが多いですが、購買依頼上で仕入先の指定がなかった際などに、事前に複数の仕入先に価格や納期を確認し、発注前に仕入先を検討・決定するプロセスです。

仕入先から調達を行う際に、特定の期間のみ通常と異なる条件や価格で取引することがあります。Sap上でこのようなシナリオを想定しているのが上の図にある『購買契約』です。特定の期間のみ有効な条件は、SAPでは『購買契約』として保持することが可能です。

購買発注は、正式に仕入先に発注するプロセスで、発注書を送付します。仕入先が下請法に該当する場合、正式な発注をせずに口答などで事前に納入準備をしてもらうことは禁止されています。このように発注は、業務観点からも重要なプロセスとなります。

入庫は、発注した商品や部品が納入された際の処理になります。入庫を行うことで、在庫が計上されます。つまり、会計仕訳が立ちます。また、会計の観点のみならず、在庫計上のタイミングは業務観点からも重要なプロセスです。例えば、下請法に該当する仕入先の場合、納入されてから60日以内に代金を支払わなければなりません。入庫タイミングは、支払いなどの後続の購買業務にも影響することに留意する必要があります。また、輸入の場合は、契約によって在庫の所有権の移転タイミングが異なります。そのため、契約に応じて適切に在庫計上処理を行わなければなりません。

請求書照合は、仕入先からの請求書と発注内容が一致しているかを確認するプロセスです。請求書照合という呼称はSAP独自の呼び方ですが、一般的な購買業務です。照合の結果、差異がなければ債務を計上します。取引量が多い企業では、仕入先から受領した請求書を1件ずつ確認することは困難なため、発注側から仕入先に検収通知書を送付するケースが多くあります。

4.主要トランザクション

主要トランザクションについて解説します。

4-1.購買依頼

購買依頼とは、購買部門以外の部署で商品や部品が必要な際に、購買部門に調達の依頼を行う通知を指します。そのため、登録者は購買部門以外の他部署になります。購買依頼を登録する際は、調達して欲しい品目、発注数量、納入期日を入力します。購買発注部門は、あくまでも指示された品目を指示された納入期日までに指定数量を調達することが業務であるため、何をいつまでにいくつ必要であるかは、依頼する部署が指定しなければなりません。仕入先の指定がある場合も購買依頼に入力することが可能です。

また、上記は調達を依頼する部署がマニュアルで購買依頼を登録することを想定していますが、SAPの機能であるMRP(所要量計算)により購買依頼を自動で生成することもできます。MRPを実行することで、受注伝票や製造計画と在庫や調達状況を照合し、新たに調達が必要な品目を特定し、必要となる数量や納入期日を算出して、購買依頼が生成されます。MRPにより生成された購買依頼の納入期日は、リードタイムなどを加味して自動で算出された日付になります。なお、MRPを使用する場合は、毎度手動で行うのではなく、バッチ処理とするのが一般的です。

購買依頼には承認機能もあり、カスタマイズで設定することで、上長の承認プロセスを踏むことができます。

購買依頼に関連するトランザクションコードは以下になります。

 

機能名 トランザクションコード
購買依頼登録 ME51N
購買依頼変更 ME52N
購買依頼照会 ME53N
購買依頼承認 ME54N
購買依頼一括承認 ME55

4-2.見積依頼

見積依頼は、購買依頼上で仕入先の指定がなかった際などに、購買発注登録前に事前に価格や納期を確認するためのトランザクションです。見積依頼では、仕入先コードや見積もりの有効期限、見積もりをとる品目、その品目が必要となる日付などを入力します。品目や必要となる日付の情報は、購買依頼から引き継ぎます。

見積依頼に関連するトランザクションコードは以下になります。

 

機能名 トランザクションコード
見積依頼登録 ME41
見積依頼変更 ME42
見積依頼照会 ME43

4-3.見積更新

仕入先から見積回答を受領した際に、見回答内容を登録するトランザクションです。見積更新では、見積日付、見積数量、単価を入力します。こうして更新された見積の内容は、SAP標準機能でもレポートで参照することが可能です。複数の仕入先に見積の依頼をしている際は、この比較レポートを使用し、最適な仕入先を決めることが可能です。

なお、見積依頼には変更のトランザクション(ME42)が存在しますが、これは見積依頼の登録内容を変更する際に使用します。見積回答の更新は見積更新のトランザクションを使用する必要があります。

見積更新に関連するトランザクションコードは以下になります。

 

機能名 トランザクションコード
見積更新 ME47
見積照会 ME48
見積価格比較 ME49

4-4.購買契約

購買契約とは、特定の期間のみ有効な特別な条件の取引を登録するトランザクションです。購買契約は特定期間の発注の条件を保持する目的であるため、各納入期日や数量などの情報は保持しません。

購買契約には、基本契約と分納契約の二種類存在します。分納契約とは、特定の期間の間に品目を複数回に分けて納入をしてもらう契約で、納入期日ごとに数量が決められている契約です。また、基本契約には、数量契約と金額契約の二種類の契約タイプがあります。

なお、購買契約の条件で今度も継続的に実施する取引をする場合は、取引内容を購買情報マスタに登録し、今後は購買情報マスタを参照して購買発注を行うことが可能です。

 

機能名 トランザクションコード
購買基本契約登録 ME31K
購買基本契約変更 ME32K
購買基本契約照会 ME33K
購買分納契約登録 ME31L
購買分納契約変更 ME32L
購買分納契約照会 ME33L

4-5.購買発注

購買発注を登録するトランザクションです。購買発注は、マニュアルで入力することもできますが、購買依頼や購買契約などを参照して登録することも可能です。通常の購買業務では、購買部門の担当者が購買発注を一から登録するのではなく、購買依頼を購買発注に変換するのが一般的です。

なお、ここで登録する購買発注は、様々な目的に使用することができます。自社の製造で使うための直接材の購買や、販売する商品などの在庫目的での購買はもちろん、サービス発注を登録することも可能です。

また、購買発注にも種類があり、仕入先に構成品を支給する『外注』、モノを自社に入庫するのではなく仕入先から得意先などの第三者へ直接発送する『 仕入先直送』などの特殊な調達も登録可能です。

ここで登録した情報が発注書やEDIを通して仕入先に連携されます。

購買依頼同様、購買発注もカスタマイズで設定することで、上長の承認プロセスが必要となります。

購買発注に関連するトランザクションコードは以下になります。

 

機能名 トランザクションコード
購買発注登録 ME21N
購買発注変更 ME22N
購買発注照会 ME23N
購買発注承認(個別) ME29N
購買発注承認(一括) ME28

4-6.入庫

SAPで入庫処理を行うトランザクション 『MIGO』 とは在庫の移動やステータスを管理するトランザクションです。購買業務では入庫処理や返品時などの出庫処理時に使用します。これらの処理は、通常、購買発注や仕入先からの出荷通知を参照して行います。購買発注や出荷通知を参照することで、購買発注と入庫実績の紐づけがされ、各購買発注の納入状況を把握することができます。なお、入庫処理を行うと入出庫伝票が生成され、在庫の数量の計上や原価の更新などが行われます。

このMIGOでは、『移動タイプ』 という3桁の数字によって在庫の移動を管理しています。移動タイプは在庫管理の根幹で、様々な制御を行っている重要な要素です。例えば、移動タイプ ’101’(発注入庫)は、購買発注した品目の入庫を意味しており、通常の購買業務での入庫は、この ’101’ を使用して処理されます。なお、移動タイプは必ず取り消し用のコードが用意されています。’102’(発注入庫取り消し)は、’101’ で処理した入庫を取り消す際に使用されます。移動タイプはSAP標準で多くの数が用意されていますが、要件などの必要に応じてカスタマイズで追加することが可能です。

また、入庫処理がされると会計仕訳が立つので、会計伝票が生成されます。なぜ自動で勘定が決まり、仕訳が立つのでしょうか。それは、上述した通り移動タイプが影響しています。この自動勘定設定は、カスタマイズで定義しているのですが、移動タイプ、プラント、品目の3つの組み合わせで勘定が決まる仕組みになっています。

入出庫に関連するトランザクションコードは以下になります。

 

機能名 トランザクションコード
入出庫 MIGO

4-7.請求書照合

請求書照合は、仕入先から受領した請求書の内容や価格などの正確さを確認する業務です。請求書照合のトランザクション『MIRO』で、仕入先から受領した請求書の金額を入力します。購買発注と照合され、差異がなければ請求書照合が完了します。請求書照合が行われると、仕入先に対して債務が計上されます。

大きな企業になると取引量が膨大になるため、このMIROを使用して1件ずつ請求書照合を行うことは困難です。その際、仕入先から請求書を受領して確認するのではなく、自社から仕入先に検収通知を送る場合は、ERSと呼ばれる自動請求書照合(トランザクションコード:MRRL)を使用します。

請求書照合に関連するトランザクションコードは以下になります。

 

機能名 トランザクションコード
請求書照合 MIRO
自動請求書照合 MRRL

5.最後に

本記事では、一般的な購買業務のプロセスとMMの主要トランザクションについてご説明しました。SAPを導入するにあたり、実際の業務を理解し、各業務がSAPでどのように実現されるのか繋がりを理解することが重要です。SAPでどのようなことが実現可能かは分からないけれど業務の知識は豊富である、もしくは、SAPには詳しいけれど業務の理解がないといった偏った知識では、コンサルタントとして最適な提案ができなくなっていまいます。こちらの記事では、一般的な購買業務の概要とSAPの各トランザクションをご説明しているので、SAPプロジェクトでMM領域をご担当される方々のお役に立てますと幸いです。

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