「SAP SDモジュールとは」No.3 その他トランザクション、カスタマイズ
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1.はじめに
第2回では、SDモジュールの出荷伝票と請求伝票、マスタついて説明しました。
第3回では、その他トランザクションの説明と、カスタマイズについて説明していきます。
2.その他トランザクション
SDモジュールでは、これまで説明した、受注、出荷、請求以外にも、以下のような伝票の入力が可能になっています。
・引合伝票
引合(ひきあい)伝票とは、顧客からの見積依頼の情報をデータ化した伝票のことです。
引合伝票の構造は、受注伝票と同じくヘッダ・明細・納入日程行の3階層構造になっております。
引合伝票と見積伝票には『代替明細』という機能があります。
・引合伝票登録
引合伝票登録では、新規で引合伝票を登録することができます。基本的には受注伝票と同じ入力が可能です。
・引合伝票変更
登録した引合伝票番号を入力し、引合伝票の変更を行うことができます。
具体的には、数量、金額の訂正や、テキスト項目の訂正等ができます。
・引合伝票照会
登録した引合伝票番号を入力し、引合伝票の照会を行うことができます。
・見積伝票
見積(みつもり)伝票とは、顧客からの見積依頼の回答の情報データ化した伝票のことです。
見積伝票の構造は、受注伝票と同じくヘッダ・明細・納入日程行の3階層構造になっております。
見積伝票と見積伝票には『代替明細』という機能があります。
見積伝票は、引合伝票、別の見積伝票からコピーしての参照登録が可能になっております。
・見積伝票登録
見積伝票登録では、新規で見積伝票を登録することができます。基本的には受注伝票と同じ入力が可能です。
・見積伝票変更
登録した見積伝票番号を入力し、見積伝票の変更を行うことができます。
具体的には、数量、金額の訂正や、テキスト項目の訂正等ができます。
・見積伝票照会
登録した見積伝票番号を入力し、見積伝票の照会を行うことができます。
・分納契約
分納契約とは、得意先と締結する販売契約伝票です。
固定の期間内で複数回に分けて商品を納入する契約で、期日ごとの予定数量が決まっている場合に分納契約を使用します。
出荷予定日に達すると、出荷予定(納入日程行)に対して設定されている数量分の出荷伝票を作成できます。
・分納契約登録
分納契約登録では、新規で分納契約を登録することができます。ヘッダ部分と明細部分の入力が可能です。
・分納契約変更
登録した分納契約番号を入力し、分納契約の変更を行うことができます。
分納契約の登録時から、一部の項目の訂正等ができます。
・分納契約照会
登録した分納契約番号を入力し、分納契約の照会を行うことができます。
・分納契約一覧
登録した分納契約を一覧画面で照会することができます。
・基本契約
基本契約とは、得意先と締結する販売契約伝票です。
固定の期間内で複数回に分けて目標金額、または目標数量に達するまで受注を行う契約がある場合に使用します。
そして、都度、契約伝票を参照して受注伝票を登録します。
基本契約伝票を参照して登録された受注伝票について、リリース受注と呼ばれます。
・基本契約登録
基本契約登録では、新規で基本契約を登録することができます。ヘッダ部分と明細部分の入力が可能です。
・基本契約変更
登録した基本契約番号を入力し、基本契約の変更を行うことができます。
基本契約の登録時から、一部の項目の訂正等ができます。
・基本契約照会
登録した基本契約番号を入力し、基本契約の照会を行うことができます。
・基本契約一覧
登録した基本契約を一覧画面で照会することができます。
3.販売伝票タイプのカスタマイズ
販売伝票タイプとは、受注伝票の種類、項目を定義するキーとなる項目です。
それぞれの販売伝票タイプにより何が行われるかを理解し、業務ユーザとどのように販売伝票タイプを使い分けるか検討していくものになります。
ここでは、どのような販売伝票タイプがあるか、それぞれどのようなコントロールがされるかを解説していきます。
・販売伝票の構造
販売伝票は、<ヘッダ> → <明細> → <納入日程行>という3階層の構造になっています。
ヘッダ:明細 = 1:N、 明細:納入日程行 = 1:N で紐づけることができます。
・販売伝票の制御
販売伝票タイプでは、以下のような制御ができます。
-販売エリア
取引可能な販売エリアを制御します。
例えば、製品部門:Z2 は、流通チャネル:Y2のみとする といった制御をすることができます。
-番号範囲
販売伝票タイプごとに、伝票の番号範囲を指定することができます。
番号範囲指定には、「内部採番(システム自動採番)」「外部採番(マニュアル採番)」の2種類があります。
例えば、標準受注は、1000000000-2999999999、クレジットメモは、4000000000-4999999999、
デビットメモは、5000000000-5999999999 といった設定をします。
-チェック
得意先/品目情報マスタの読込、与信限度額に到達していないか(与信限度内か)のチェックができます。
-初期値設定
転記日付などの日付、出荷伝票タイプ・請求伝票タイプの設定ができます。
出荷ブロック・請求ブロックによる後続プロセス実行可否制御
(受注登録時は、出荷不可にし、マニュアルでブロックを外すようにする必要があるよう、制御するなど)ができます。
-価格決定表
条件(価格構成)を制御できます。
例えば、価格に、単価、配送料、消費税、何らかの手数料を含める といった制御ができます。
-取引先決定表
受注先・出荷先・請求先・支払人などの取引先を自動提案するかしないか制御することができます。
例えば、無形のソフトウェアの場合、出荷はないので、出荷先をセットしないように制御するなどです。
-出力決定
伝票の出力方法を制御できます。
例えば、販売伝票タイプによっては、伝票をプリンタに即時で印刷する といった制御をするなどです。
-与信管理
与信チェックをするかどうかの制御ができます。
-不完全決定表
伝票で未入力NG項目のチェックができます。
未入力NG項目がある場合、保存させるかエラーとするかの制御をすることができます。
例えば、消費税が未入力の場合、不完全伝票とし、保存時にエラーとさせる などです。
-出荷計画
出荷計画を実行するかどうかの制御ができます。
4.明細カテゴリのカスタマイズ
明細カテゴリは、受注明細レベルの制御をする項目で、以下のようなことが制御できます。
・後続プロセスの制御
後続の伝票について、システム上のプロセスの流れを制御できます。
例えば、(通常販売)受注→出荷→請求、(クレジットメモ)受注→請求、(デビットメモ)受注→請求 と定義するなどです。
・ビジネスデータのヘッダ・明細の整合チェック
伝票ヘッダレベル、伝票明細レベルでのビジネスデータ(流通チャネル・製品部門など)が異なってもよいかチェックできます。
・価格設定
価格設定の実施をするかしないかの制御ができます。
・納入日程行
納入日程行の有無を設定できます。
・出荷設定
通常の在庫から出荷するか、受注在庫から出荷するかの設定ができます。
・請求設定
請求処理の実施有無 および請求方法の設定ができます。
請求ブロックの有無を制御できます。
5.納入日程カテゴリのカスタマイズ
納入日程カテゴリは、受注納入日程行レベルの制御をする項目で、以下のようなことが制御できます。
・出荷関連
出荷ブロックの有無を設定できます。
・移動タイプ
出荷時の移動タイプを設定できます。
・発注関連
個別購買発注の場合、購買発注タイプ・発注明細カテゴリ・勘定カテゴリの設定ができます。
・利用可能在庫確認
利用可能在庫を確認し、在庫の引当をするかしないか設定ができます。
・不完全チェック
必須項目のチェックをし、未入力の場合、不完全伝票とすることができます。
・所要量転送
所要量転送をするかしないか設定できます。
6.伝票タイプ・カテゴリの割当カスタマイズ
明細カテゴリは、以下4つの項目をキーに設定することができます。
※販売伝票タイプへの明細カテゴリの割当
・販売伝票タイプ
・明細カテゴリグループ
・明細用途
・上位明細の明細カテゴリ
4項目をキーに、「自動提案による明細カテゴリ」と「マニュアル指定可能による明細カテゴリ」を設定します。
・明細カテゴリへの納入日程カテゴリの割当カスタマイズ
納入日程カテゴリについて、明細カテゴリを販売伝票タイプへの割当と同様に、キー項目単位で割当設定をします。
納入日程カテゴリは、以下2つの項目をキーに設定します。
・明細カテゴリ
・MRPタイプ(品目マスタ(MRP1)にMRPタイプを指定)
2項目をキーに、「自動提案による明細カテゴリ」と「マニュアル指定可能による明細カテゴリ」を設定します。
7.SD伝票フローとコピー管理のカスタマイズ
SDモジュールのトランザクションは、<受注> → <出荷> → <請求> という3つのメインプロセスの順番に流れていきます。
このとき、<受注> → <出荷> → <請求>と、伝票の内容が引き継がれる必要があります。
(出荷伝票や請求伝票を登録する度に、都度マニュアルで得意先・品目・数量などを入力する必要があるとすると、入力ミス・手間が発生するため)
伝票の内容を引き継ぐために、SDモジュールには「コピー管理」という機能・設定があります。
ここでは、伝票フローとコピー管理について解説していきます。
・伝票参照の伝票登録と伝票フロー
前提として、受注伝票・出荷伝票・請求伝票は、他の販売管理伝票を参照し、伝票登録が可能とします。
パターンと考えられるケースとして、以下があります。
・受注伝票 → 受注伝票
再受注の場合、過去の受注を参照し登録することが考えられます。
・請求伝票 → 受注伝票
請求後に、返品のための返品受注を登録することが考えられます。
・受注伝票 → 出荷伝票
これはオーソドックスなパターンで、受注から出荷するための出荷伝票登録の流れです。
・受注伝票 → 請求伝票
出荷が伴わないデビットメモ・クレジットメモの受注伝票から請求伝票登録する場合が考えられます。
・出荷伝票 → 請求伝票
これはオーソドックスなパターンで、出荷から請求するための請求伝票登録の流れです。
・請求伝票 → 請求伝票
請求後に、請求取消時に使用することが考えられます。
・コピー管理
SDモジュールの伝票は、基本的に伝票参照で伝票登録し、伝票がつながっていくため、前の伝票の情報を引き継ぐ必要があります。
SAPでは、「コピー管理」という機能を使って、前の伝票情報を引き継ぐ設定を行います。
・コピー管理のパターン・設定イメージ
コピー管理は、参照伝票登録のパターンごとにトランザクションコードが用意されており、それぞれ設定していきます。
受注伝票 → 受注伝票・・・VTAA
請求伝票 → 受注伝票・・・VTAF
受注伝票 → 出荷伝票・・・VTLA
受注伝票 → 請求伝票・・・VTFA
出荷伝票 → 請求伝票・・・VTFL
請求伝票 → 請求伝票・・・VTFF
コピー管理設定のポイントは、以下2点です。
・コピーを可とするFrom伝票タイプ・To伝票タイプ同士で設定します
・ヘッダ・明細・納入日程行 各レベルで設定します
・コピー条件・データ転送
設定画面では主に「コピー条件」「データ転送」の2つについて設定します。
コピー条件:伝票コピー時に、コピーしてもよいかの項目チェックの制御をします。
データ転送:参照伝票からデータのコピー方法を指定します。
-コピー条件
コピー元・コピー先の販売エリアが同じか、得意先が同じか、拒否理由が入っていないか、
ステータスが完了になっているか などのチェックを行います。
-データ転送
コピー元の値をそのまま設定、新規で値を設定、などのコピー方法を指定します。
8.価格決定のカスタマイズ
価格は、次の4つのカスタマイズによって決定されます。
・価格決定表
価格を決定する「条件タイプ」の組合せを設定します。
例えば、条件タイプ:価格、値引%、運賃、消費税 を価格決定表として設定などです。
・条件タイプ
価格、値引、追加料金、運賃などの価格要素を設定します。
条件タイプごとにマニュアル入力可否が設定可能で、「検索順序」を紐づけることもできます。
・検索順序
価格マスタからどのキー項目を基準に検索するか設定します。
例えば、①得意先・販売組織・流通チャネル・製品部門・品目 から検索(第1優先)、②プラント・品目 から検索(第2優先)
などの設定ができます。
・条件テーブル
「検索順序」で指定するキー項目の組合せを設定
上記の通り、SDモジュールでは受注、出荷、請求のそれぞれについて、細かなカスタマイズが可能になっています。