2025年or2027年問題とSAP人材の確保について
INDEX LINK
はじめに
レガシーシステムから発生するリスクが「2025年の崖」という言葉で表現されるようになったのは、2018年頃からだと思います。今、この2025年の崖は「2027年の崖」と言い換えられつつ、日本企業全体のリスクとして知られるようになりました。2025年・2027年の崖問題は、SAP業界とも非常に関係が深い話題です。そこで、こうした問題と人材確保について、問題を整理してみました。
1.迫るEOS 2025(2027年)問題の本質
そもそも論として、「2025年(2027年問題)」の出所を確認しておきましょう。2025年の崖という言葉は、2018年に経済産業省が公表した「DXレポート~ITシステム2025年の崖の克服とDXの本格的な展開」※1という資料が初出です。非常に有名な資料ですので、ご存じの方も多いかと思います。
この資料では、「日本のデジタル変革は遅れている」「遅れている原因(足枷)としてレガシーシステムがある」という点を中心に報告が行われており、レガシーシステムの更新期限として「2025年」という具体的な数値が登場するわけです。
1-1.SAP ERPのEOSとシンクロする「○○年の崖」問題
国が公表する資料で具体的な数値を決め打ちするケースは珍しいのですが、この2025年という数値がSAP ERP6.0のEOSと重複することに気が付いた方は多いと思います。ちなみにSAP社がERP6.0の一部についてEOSを2027年まで延長すると、この問題は2027年の崖と表現されるようになりました。
もちろん、経済産業省では民間企業であるベンダーが提供する製品のEOSのみが、日本企業のデジタル変革を妨げている、とは書いていません。あくまでもきっかけやリスク要因のひとつとして、図に含めている程度です。
しかし、SAP業界の方であれば、SAP ERPが大企業を中心に非常に広い範囲で浸透していることをご存じのはずです。こうした企業では、SAP ERP6.0の終焉が「レガシーシステムのリスク」であるとも言えるわけです。
1-2.レガシーの更新は結局「人手の問題」?
このようにレガシーシステム(≒SAP ERP6.0までのシステム)が足かせになる一方で、これらを適切に更新し、運用していく人材も不足しているようです。前述のDXレポートでは、2025年の断面で「IT人材不足」が最大43万人まで進むと指摘しています。
もう少し具体的な数値を調査してみると、みずほ情報総研が作成した需給ギャップの数値が見つかります。
出典:- IT 人材需給に関する調査 - https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf
この数値は、単純に人材の需給のほかに、IT需要や生産性の上昇率を加味した試算結果のようです。2025年の断面で見ると、IT需要の伸びが最も小さい状況でも生産性が伸びなければ、人材は不足してしまうことになります。(赤枠部分)
逆に生産性が1.84%以上に伸びれば(緑枠)、需給ギャップはゼロもしくはマイナス(人材過剰)になるわけですが、そもそも生産性を伸ばすための施策でもあるレガシーシステムの更新作業で、人材が余ることは考えにくいでしょう。特に育成が難しいSAP人材については、引き続き人手が不足すると考えられます。
このように単純なIT人材の需給ギャップから見ても、2025年・2027年の崖を回避するためのリソースは足りないと言わざるを得ません。
2.Slerは「人出し」を辞めたいのか?
SAP ERPを導入・運用しているのは比較的規模の大きな事業会社、もしくはそれに付随するユーザー系企業です。こうした企業では、内部の人材として情シスや運用担当を確保しているものの、開発・カスタマイズ・その他技術的要素を含む作業に対応できる人材を常駐させていないケースが大半です。したがって、一定以上の規模の改修やバージョンアップ作業などではプロジェクトを組成し、外部から人材を調達します。この人材調達を支えていたのがSIerのような、SAP専門の部隊をもつ企業群です。
しかし、このSIerも近年は「人材を貸す」ことを控える傾向があるようです。つまり、従来型の「技術者を派遣して顧客の要求を満たす」というビジネスモデルの継続が難しいようなのです。その理由としては「SAP人材として若手が育ちにくい」「技術者を長期間拘束されると回転率が悪くなり、収益が悪化する」などが挙げられるとのこと。
実際に都内のあるSlerに話を聞く機会があったのですが、自社でもSAP人材などIT人材の確保・育成が難しく、従来型の「人を出すビジネス」から「テンプレ型の機能群を売る(もしくは貸す)」形態への移行を検討しているとのことでした。
SAP業界の具体的な例で言えば、「業界別テンプレート」や「独自開発の汎用モジュールをセットで売る」といった形態が多いように思います。
例えば、以前ならSAP ERPに自社独自のワークフロー機能を追加したい場合、SIerから技術者を数人派遣してもらってチームを組成し、ABAPでの開発とテスト・UATなどを経て完了するといった手法が一般的でした。いわゆるSIerが提供するアドオン開発のサービスです。しかし、近年はあらかじめ作っておいた「アドオン汎用モジュール」と「アドオン画面」と多少のカスタマイズをセットにして売る、といった形態に移行しているようです。
こうすることでSIerは、自社の技術者を長期間拘束されることがなくなり、新たなサービスの開発を進められるようになります。また、人材不足から収益が悪化するリスクも低減できるわけです。
これらSIerが提供するサービスの変化も、SAP業界における人材不足、さらには育成と調達の難しさを反映していると考えられないでしょうか。
3.フリーランス人材の有効活用こそ活路
以前に比べるとSAP ERPのプロジェクトはかなり短期・小規模になってきているものの、やはり常駐して作り込んでくれる技術者は欲しいのが実情ではないでしょうか。実際に2025年・2027年の崖を回避するために、今から動き出すという企業も少なくありません。こうした企業は、急ピッチでカスタマイズ・アドオン開発を進めたいというのが本音だと思います。
そこで、フリーランス人材に目を向けてみてください。SAP業界は人材単価が高いことも相まって、もともとフリーランスの優秀な人材が多いです。もし、フリーランス人材を確保し、独自のチームとして組成することができれば、人材不足に悩まされることもなくなります。
ただし、優秀なフリーランス人材は数が限られているうえに、高い確率でどこかのプロジェクトに参画しているものです。したがって、人材の動きを正確に把握できる企業から情報を得るべきでしょう。
また、フリーランス人材側も、事業会社やベンダーとのつながりをもつ紹介企業から案件情報を得ることで、自分のキャリアパスや報酬への欲求を満たすことができます。個人で営業できるならばそれに越したことはありませんが、やはり営業や折衝を外部委託できるというのは、フリーランスにとってとても効率の良いことなのです。
フリーランス人材の活躍は、2025・2027の崖問題を解決するカギになると考えられます。もし人材確保でお悩みであれば、事業会社・ユーザー系企業・SIerとフリーランスをつなぐ当社のサービスを、検討してみてはいかがでしょうか。