「SAP ERPエンジニアが初めてSAPを学んだら」No.14 SAPエンジニアとしてFIT&GAP実施時に困ったこと
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1.はじめに
SAP Freelance Jobs運営事務局です。
この度、ERPエンジニアがSAPを初めて学び、資格取得するまでの学び・実施内容の第14回となります。
毎回記載しておりますが、国内にSAPエンジニアが多くいるとはいえ、どのように学び成長出来たかの記事はあまり存在しません。最新テクノロジーへの関心よりSAPの学習を始める方もいるかもしれませんが、多くの方が学習を始めるきっかけとして、導入コンサルタントやエンジニアとなる・もしくは自社導入・運用を実施する為に学習を始めているかと思います。本記事は、SAPの学習を実施したERPエンジニアが、実際にF&Gを実施する上で困った点を紹介します。経験豊富なコンサルタントであればほとんど解決可能な事象であり、SAPを学習することにより、ノウハウを保持したコンサルタントの価値を改めて認識することとなりました。
ご自身がSAPコンサルタントやエンジニアを目指す方、また自社内にSAPエンジニアを育成したい方には有益な記事になっておりますので、是非最後までご一読頂けますと幸いです。
2.SAP S/4 HANA のF&Gで困った事
筆者はSAP S/4 HANAの販売管理領域(SD)でF&Gを進めていますが、以下の点に困っています。
・初期構築方法が不明
・機能の全容を把握できない
・他社事例があるのか不明。検討した設定方法・運用方法が一般的か分からない
・設定・運用定義資料が用意されていない
・F&Gに時間がどのくらいかかるか推測できない
・学習していない業務領域への影響が分からない
3.初期構築方法が不明
筆者は、SAP S/4 HANA 販売管理領域(SD)の資格を取得しておりますが、現時点で初期構築方法まで把握が出来ていないです。どのようなマスタ・パラメータが必須か分かっていないです。SAP社より用意されているトレーニングは受講していますが、ビジネスプロセスの紹介や特定機能の使用方法を解説したトレーニングとなっており、初期構築に特化したトレーニングは、用意されておりませんでした。結果として、初期構築時に何が必要なのか不明となっています。
4.機能の全容を把握できない
SAP社より用意されたトレーニングは、上述の通りビジネスプロセス紹介・特定機能の使用方法解説となっています。すべての機能やマスタ・パラメータは、紹介されておりません。今までSAP講師から紹介頂いた資料や市販されている日本語での書籍いずれも全ての機能やマスタ・パラメータの記載はされておらず、機能の全容を把握することが困難です。
5.他社事例があるのか不明であり、検討した設定方法・運用方法が一般的か分からない
SAPは、パラメータ設定により、非常に細かな制御が可能となっています。受注伝票から販売伝票にどのような項目をコピーするか、どのような価格条件を使うか、マスタでどのような項目を表示・非表示とするか非常に柔軟に設定可能です。柔軟な設定は可能ですが、この設定が一般的かどうかはわかりません。システム導入時に良くある話ですが、設定をすることにより別の考慮事項が、実は潜んでいる可能性もあります。他社事例があれば事前に考慮事項を確認可能ですが、事例が無ければ考慮事項を事前に確認出来ないことがあり、テスト時に発覚することになります。SAP社では、SAP S/4 HANAを導入している企業は把握していますが、どのような運用をしているかは、各導入支援企業と導入機能にて認識しており、実際の運用方法は、入手し辛い情報となります。
6.設定・運用定義資料が用意されていない
システム導入において多くの資料を作成するのですが、最低限の資料としてマスタ・パラメータの設定定義やどのような機能を使用するか運用定義資料を作成することが多いです。SAP社より提供されている資料は機能の概要説明となっており、システム導入に用いる資料と異なっています。初めてF&Gを実施する際にはこれらを作成する必要が出てきます。
7.F&Gに時間がどのくらいかかるか推測できない
上述の通り資料を一から作成が必要であり、尚且つどのような機能があるのか・他に必要な考慮事項が無いか調査が必要となります。これらは、初の作業となり、どのくらい時間を要するか推測が非常に難しいです。
8.学習していない業務領域への影響が分からない
SAP S/4 HANAは、同じ情報を複数回入力しないよう各業務領域やマスタが連動して動作をしています。販売管理領域で出庫処理を実施すると、会計伝票が自動で作成されています。このように各業務領域に自動で連動をしてくれる為、どのような影響があるか事前に把握が必要となります。SAP S/4 HANA販売管理の各トレーニングでもどのような業務領域と連動するか概要の説明はありますが、詳細な説明は、各業務領域のトレーニングにて確認が必要となっています。その為、特定業務領域だけを学習していたとしても、他業務領域への影響が把握できない為、運用や設定を定義する際に困ることとなります。
9.おわりに
今回は、SAP未経験のERPエンジニアがF&Gを実施する上で困った事を紹介しました。記載した内容はいずれも経験豊富なコンサルタントであればほとんど解決可能な事象となります。
本連載では、各ソリューションの概要や研修受講状況や学習方法・ERPエンジニアの所感を紹介していきましたが、今回で最終回となります。
皆様が今後の学習をしていく上で是非参考に頂けると幸いです。また、実際に導入検討時には、個人の学習のみで対応できない範囲がありますので、コンサルタントと協力しながら進めて頂くことを推奨致します。