生産管理の効率化が重要!?実現するためのモジュールとフローを解説
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はじめに
中小企業では、業務の拡大とともに生産管理や在庫管理が複雑になりがちです。
それまでは人間の力で管理できているものでも、少し規模が大きくなるだけで限界を感じてしまうでしょう。
このような状況において、業務をサポートしてくれるのがSAPです。
「SAPは大規模な生産管理をサポートしている」と思われがちですが、中小企業でも活用できる機能がいくつもあります。
今回は、SAPが中小企業の生産管理に、どのような効果をもたらしてくれるのか解説します。
1.SAPにおける生産管理
SAPには重要な機能がいくつもあり、生産管理はその中のひとつです。
まずは、生産管理とはどのような機能であるのか簡単に理解しておきましょう。
1-1.生産管理はSAPのPPモジュール
SAPにはいくつもの機能があり、それらの機能がモジュールと呼ばれる単位で分割されています。
中小企業でSAPを導入する場合は、必要な機能に絞って導入するケースが一般的でしょう。
この中で生産管理を担っているのが、PPモジュールと呼ばれるものです。
SAPのPPモジュールでは、以下のとおり、生産管理に関連する幅広い業務を実現できます。
・生産指示
・生産工程
・生産管理
・生産実績の計上
・原価の算出や管理
中小企業でもこのような機能を導入することで、効率よく業務を推進できるようになるのです。
1-2.生産管理とMES
中小企業でSAPの生産を議論すると「MES」というキーワードがよく出現します。
こちらは、厳密には生産管理の一部です。
MESは「Manufacturing Execution System」の頭文字をとったもので、製造実行システムと呼ばれます。
製造工程を可視化するなどして、業務効率の向上を図るためのものです。
また、管理者がそれぞれの担当者へ指示を出すためにも利用されます。
SAPにおいては、生産管理システムの一部としてMESが提供されている状況です。
中小企業でも、PPモジュール全体やMESを活用することによって、短時間で生産管理の効率化を実現できます。
生産管理の観点に絞ると、SAPを導入する大きなメリットであると考えてよいでしょう。
2.SAPによる生産管理業務の改善
上記で解説したとおり、SAPを導入することで、中小企業でも生産管理業務を改善できます。
続いては、具体的にどのようなケースで、SAPが役立つのか紹介します。
2-1.リソースの適切な活用
中小企業がSAPを導入することで、リソースを適切に管理できるようになります。
ここでのリソースとは、製造や会社経営に必要な「ヒト・モノ・カネ・時間」などの要素です。
人によって捉え方は若干異なりますが、これらを適切に活用できるようになると考えましょう。
製造業においては、これらを適切に管理することが何よりも大切だと考えられています。
リソースを無駄なく活用し、製造を効率化しなければ、生き残っていけないのです。
特に、中小企業は体力が少ない状態であるため、効率の悪い活用は避けなければなりません。
なお、日本の製造業ではSAPのようなシステムではなく、担当者や職人の「勘」に頼っている部分がありました。
長年、製造業に携わっている職人などが需要の予測を立て、それに沿って製品などを生産していたのです。
また、製品のクオリティを高めるための施策も、人間の手に頼っている部分がありました。
しかし、時代の変化によって、このような製造業は他国に遅れを取っています。
IT化を進めなければ、効率よく製品を製造できない状況なのです。
結果として、SAPのようなシステムによる生産管理の効率化が、中小企業でも求められています。
2-2.需要の予測
これから製品がどの程度必要とされるのか、需要の予測にSAPが役立ちます。
現在のSAPにはAIが導入されているため、これを利用することで需要の予測ができるのです。
これまでのデータをSAPに保存しておく必要はありますが、分析の対象となるデータさえあればあとは自動的に処理してくれます。
このような需要の予測は、人間が担当しているケースが多くありました。
皆さんの環境でも、経営者の経験などを踏まえて需要を予測しているのではないでしょうか。
中小企業では、経験に頼って需要を予測する状況がまだまだ続いています。
しかし、このような需要の予測は的中しないことも多く、需要と供給に応えられていない状況です。
適切な予測さえ立てていれば生産計画に反映できるものが、予測できていないことで手遅れになってしまいます。
このようなことを頻発させると、勝機や商機を逃してしまいますが、SAPならばこの状況を改善できるのです。
2-3.属人化の排除
上記で解説した内容を含め、日本の製造業では「属人化」が課題になるケースが多くあります。
特定の担当者だけが知っている知識や経験に依存してしまい、別の担当者には置き換えできなくなってしまうのです。
このような業務が増えると、新人の育成ができないなどの問題が起きてしまいます。
中小企業においては、このような属人化が起きやすく、生産管理に支障をきたすことがあるぐらいです。
例えば、リーダーしか理解していないことがあり、その人が休暇を取得すると業務が進まなくなることがあります。
リソースの少ない状況で、このような無駄が生じると、大きなインパクトを与えるのはいうまでもありません。
SAPに限った話ではありませんが、システム化によって属人化の排除が期待できます。
SAPならば、より細かい部分まで管理できるようになるため、より属人化を排除できるのです。
3.中小企業がSAPで生産管理を効率化するまでの流れ
SAPを導入すると、どのように生産管理を効率化できるのかが気になるでしょう。
簡単に、効率化に向けた流れを解説します。
3-1.SAPの導入やデータの登録
SAPで生産管理を効率化するためには、導入からデータの登録までを済ませなければなりません。
導入の詳細については割愛しますが、必要なモジュールを選択して、業務に併せた設定を済ませます。
SAPコンサルタントなどを活用して、スムーズに導入を進めるケースが一般的です。
また、中小企業向けの「SAP Business One」など、小規模なSAPを導入するケースもあります。
導入が完了したあとは、生産管理を効率化するためにデータの登録が必要です。
現時点で何かしらのシステムを導入していたならば、そのシステムから情報を移行しなければなりません。
このようなデータの移行についても、SAPコンサルタントなど専門家の支援を受けるとスムーズです。
また、既存のシステムが無く紙などで運用している情報は、手動で入力しなければなりません。
内容に誤りがあると、SAPを導入しても生産管理の効率が下がるため、正確性を意識することが大切です。
もし、データ量が多く業務に支障があるならば、外注する選択肢もあります。
なお、ある程度のデータが無ければ、分析が難しくSAPの生産管理を活かしきれないかもしれません。
ただ、そのような場合でもSAPを継続的に利用すれば、データが集約され、最終的には生産管理の効率化へと繋げられます。
3-2.所要量の決定
データの登録さえ完了していれば、その内容から生産計画を立てられるようになります。
「所要量」をベースに生産計画を立てる仕組みであるため、まずはこれを定めていきましょう。
この所要量について、SAP導入以前は担当者の経験などで決定されていたはずです。
しかし、これでは正確な予測ができないことを解説しました。
そのため、同様の決め方を採用するのではなく、SAPに登録したデータを分析して決定するようにしましょう。
特にSAPのようなデータに基づいて所要量を決定すれば、需要予測をより正確に立てられます。
どの製品をどのタイミングに出荷するかが明確になり、そこから逆算して生産計画を立てられるようになるのです。
中小企業は、ここで失敗すると大きな痛手となるため、まずはSAPに頼るようにしましょう。
3-3.MRPによる詳細化
SAPを活用することで、資源所要量計画(MRP)を算出できるようになります。
これを算出することで、原材料の調達タイミングや中間製品の生産目標などを明確にできるのです。
特に、原材料の調達については、不足があると計画が破綻してしまいます。
自社だけではカバーできない部分であるため、正確な算出が重要です。
また、資源所要量計画の算出にあたっては「現在の在庫数」や「リソースの状況」などを加味できます。
SAPにはこれらの情報が集約されているため、これを活用することで、より正確な計画を立てられるのです。
時には、在庫が思ったよりも多く、生産量を抑える必要があるかもしれません。
また、この逆も十分にありえるでしょう。
なお、計画を立てるためには機械の稼働率や従業員の勤務状況などを考慮しなければなりません。
特に、複数の製品を製造していると機械や担当者が不足してしまう可能性があります。
このような状況を防ぐために、生産管理を実施する際は、生産に関するすべての情報をSAPに登録することが求められます。
3-4.購買依頼
製品の製造量が決定すれば、原材料などの調達が必要となるはずです。
そのため、新規に購入するものについてはSAPを利用して購買依頼を出しましょう。
製造部門の依頼を購買担当者が確認し、承認などを経て正式な発注へと進みます。
ただ、中小企業の場合は人数が少ないことから、別の人ではなく製造担当者が兼務していることもあるでしょう。
購買依頼を出して、その後、仕入先から納品されればSAPで在庫管理ができます。
中小企業では「どの在庫がどの程度あるのか把握できない」という事態に陥ることがありますが、このようなこともなくなります。
原価管理が厳密になり、コストの圧縮にも繋がるのです。
3-5.製造指図
必要なモノや情報が揃ったならば、あとは工場の担当者に製造指図を出すだけです。
中間製品や最終製品の製造図を発行し、実際に行動してもらうようにしましょう。
これが遅れると、製造全体が滞ってしまいます。
時には、生産が間に合わない原因となりかねないため、購買が完了したならばすぐに指示します。
なお、SAPは管理者が利用するだけではなく、工場の現場でも利用することが可能です。
端末を設置しておくと、製造指図の情報が連携され、それを踏まえて製造を開始できます。
端末の設定は必要となりますが、製造の開始にあたって連絡する人は必要なく、リソースの効率的な活用を実現可能です。
まとめ
中小企業でSAPを導入すると、生産管理の効率化に役立つことを解説しました。
人間が対応している業務が多い業界ですが、SAPを導入することでシステム化できます。
また、データに基づいた生産の予測を立てられるなど、人間が考えるよりも正確な情報を得ることが可能です。
また、SAPにデータを集約することで、生産管理だけではく原価管理や調達・購買の管理も実現できます。
これらも手続きが多く、中小企業では負担になりやすい部分ですが、SAPを導入することで課題を一気に解決できるはずです。