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SAPのサービス群「RISE with SAP」「GROW with SAP」をおさらい

はじめに

ここ数年でSAPはクラウド化を推進するサービス群を拡充させてきました。

その代表格が「RISE with SAP」と「GROW with SAP」です。

SAP ERP業界に身を置く方ならば、一度はこれらの名称を耳にしたことがあるかと思います。

今回は、今後のSAP ERP業界の中心となる「RISE with SAP」「GROW with SAP」について解説します。

 

 

 

1.2つのサービス「RISE with SAP」「GROW with SAP」とは?

SAPのサービス群「RISE with SAP」と「GROW with SAP」は、企業のDXを支援するためのソリューションセットです。

ソリューションセットとは、簡単に言えば単一で提供されるサービスをひとまとめにして提供する形態のこと。

まず簡単に2つのサービス群の概要と違いを理解しておきましょう。

 

 

1-1.RISE with SAP

RISE with SAPは、企業がクラウド移行とDXを加速するための包括的なサービスパッケージです。

2021年に導入され「ビジネストランスフォーメーション・アズ・ア・サービス」として、SAPのS/4HANAクラウドERPを中心に、さまざまなツールやサービスを統合しています。

 

主な特徴:

・クラウドへの移行: 企業がオンプレミスからクラウドへの移行をシームレスに行えるよう支援する。

・ビジネスプロセスの最適化: 業務プロセスの再設計や最適化を通じて、効率を向上させる。

・テクニカルサポート: SAPのクラウドインフラストラクチャ、セキュリティ、コンプライアンスをサポートする一連のツールを提供。

・選択の自由: パートナーエコシステムを活用して、任意のクラウドプロバイダー(AWS、Azure、Google Cloudなど)での導入が可能。

 

RISE with SAPは、DXに向けたワンストップソリューションとして設計されており、既存のシステムをモダンなクラウドベースのシステム移行するためのサポートを提供します。

 

主な機能(サービス)

・SAP S/4HANA Cloud:

SAPの次世代ERPであるS/4HANAのクラウド版が中心に位置します。

 

・SAP Business Technology Platform (BTP):

アプリケーションの開発、拡張、データ統合、分析、AIを支援するためのプラットフォーム。

 

・ビジネスプロセスインテリジェンス:

SAP Signavioを用いたビジネスプロセスのモデリング、分析、最適化。

 

・インフラストラクチャ管理:

SAPが提供するクラウドインフラの完全管理サービス、セキュリティ、システム運用、技術的サポートなどが含まれます。

 

・セキュリティおよびコンプライアンス:

サイバーセキュリティ、データ保護、グローバル規制の遵守を確保するための包括的な管理。

 

・SAP Business Network:

パートナーやサプライヤーとのコラボレーションを促進するビジネスネットワーク機能。

 

 

1-2.GROW with SAP

GROW with SAPは、中小企業や成長企業向けに設計されたクラウドERPソリューションです。

2023年に導入され、企業の成長段階に応じた柔軟なERP導入を念頭に置いているようです。

 

主な特徴:

・迅速な導入: GROW with SAPは、成長企業が迅速にクラウドERPを導入し、業務のデジタル化を促進することを目指しています。

 

・スケーラビリティ: 企業の成長に合わせてERPシステムをスケールアップ可能で、企業が直面するビジネスニーズの変化に柔軟に対応。

 

・コスト効率: 成長段階に応じた柔軟な価格設定と、クラウドベースの提供により、初期コストを抑えながら高機能なERPシステムを導入できる。

 

GROW with SAPは、特に成長企業が短期間でクラウドERPの恩恵を受け、競争力を高めるための強力なサポートを提供します。

どちらかといえば中小企業やスタートアップ企業のように「イニシャルコストを抑えてSAPを利用したい」という層向けのようですね。

 

主な機能(サービス)

・SAP S/4HANA Cloud, Public Edition:

中小企業向けのクラウドERPソリューションで、グローバルベストプラクティスを活用して業務を標準化し、効率化を図ります。

 

・SAP Business Technology Platform (BTP):

データの統合、アプリケーション開発、プロセス自動化をサポートするプラットフォーム。企業の成長に応じた柔軟な拡張が可能です。

 

・SAP Activate手法:

ERP導入を迅速化するためのフレームワーク。導入の各フェーズにおいて、ベストプラクティスを提供します。

 

・コミュニティと学習プラットフォーム:

GROW with SAPを活用するユーザーやパートナーが交流し、知識を共有するためのプラットフォーム。オンライン学習リソースやサポートが提供されます。

 

 

 

2.「RISE with SAP」と「GROW with SAP」の違い

さて、このように似た内容の2つのサービス群ですが、端的に言うと以下のような違いがあります。

 

 

2-1.ターゲット企業の規模感

最もわかりやすい違いは、ターゲットとする企業の規模です。

ざっくりいうとRISE with SAPが大企業向け、GROW with SAPが中堅中小企業向けですね。

 

RISE with SAP:高度な財務管理機能を必要とする大企業向け

GROW with SAP:新規でSAP ERPを導入する中堅・中小企業

 

 

2-2.SAP S/4HANA Cloudのエディション

2つ目の違いは、コアとなるERPのエディションです。

RISE with SAP:SAP S/4HANA Cloud Private Edition またはSAP S/4HANA Cloud Public Editionから選択可能

GROW with SAP:SAP S/4HANA Cloud Public Editionのみ

 

RISE with SAPは複数のエディションからコアERPを選ぶことができるので、柔軟性の面ではGROWより上です。

GROWのほうは簡易版…というと雑すぎるのですが、やはりRISEに比べると機能面では融通が利きにくいでしょう。

とはいえ、どちらもBTPが利用可能ですし、SAP S/4HANA Cloud Public Editionについては2022年10月からABAPを使った拡張開発も可能になりました。

もともとPublic Editionの人気が高かったことが原因のようですね。

こうした事情を踏まえると大企業でもGROW with SAPを選択する余地が出てきます。

 

 

2-3.レガシーERP(SAP ECC)からの移行方式

3つ目の違いは、レガシーERP、つまりSAP ECCからの移行方式です。

 

RISE with SAP:グリーンフィールド(リビルド)方式 or ブラウンフィールド(コンバージョン)方式を選択可能

 

GROW with SAP:新規で構築するグリーンフィールド(リビルド)方式のみ

 

RISEのほうは大企業が「オンプレのECC」から「クラウドのS/4 HANA」へ移行することを念頭に置いている模様。

グリーンフィールド・ブラウンフィールドのどちらが良いかはケースバイケースですが、日本企業の場合は後者を選択する場合が多そうです。

 

 

2-4.GROW with SAPではSAP社の導入方法論 「SAP Activate」への準拠が必須

また、違いというよりも注意点ですが、GROW with SAPではSAPが掲げる独自の導入方法論「SAP Activate」を採用することが必須になっています。

SAP Activateは以下5つの主要ステップから構成されていて、SAP固有の難解さやプロジェクトの煩雑さを解消するためのフレームワークです。

Discover(構想)

Prepare(準備)

Explore(評価)

Realize(実現)

Deploy(デプロイ)

 

SAP Activateの詳細については割愛しますが、導入のフレームワークが決められているというのはメリットでもあり、デメリットでもあります。

実際にSAP Activateに準拠したプロジェクトに参画した方の話を聞く機会がありましたが、「フレームワークとして成立しているが実情に沿っていない」といった言葉がありました。

また、プロジェクトのスタイルがアジャイルなので、従来のウォーターフォール式の方法論に慣れ親しんだユーザーは違和感を覚えるのかもしれません。

 

一応、SAP指定のツールを活用してプロジェクトの進捗を俯瞰し、リアルタイムに状況を把握できるので、慣れてしまえば楽かなという印象ではあります。

 

 

 

まとめ

今回は、SAPの主要なサービス群「RISE with SAP」「GROW with SAP」について紹介しました。

どちらもクラウド移行を念頭においたサービス群で、SAPはこれらの活用を強く推奨しています。

ユーザー側からはたびたび不満や反発の声が聞こえてきますが、これからはこの2つがスタンダードになっていくでしょう。

我々SAP人材も、2つのサービス群についてより深い理解が求められると思います。

2つのサービスの動向は常にチェックしておきたいですね。

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