SAP Fieldglassとは?需要増が見込まれる外部人材管理ソリューション
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【コラム監修者 プロフィール】
クラウドコンサルティング代表取締役 岸仲篤史
新卒でSAPジャパン株式会社に入社。
SAPジャパン在籍中にCOコンサルとして従事したことで、会計コンサルの面白さに目覚め、
大和証券SMBC株式会社 投資銀行部門、新日本有限責任監査法人、アビームコンサルティングにて、
一貫して約10年間、会計金融畑のプロフェッショナルファームにてキャリアを積む。
その後、2017年クラウドコンサルティング株式会社を設立し、SAPフリーランス向けSAP free lanceJobsを運営し、コラムの監修を手掛ける。
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はじめに
日本のIT業界は伝統的に社外の人材を有効活用する風潮があります。
常駐型の開発チームやSES契約など、ほかの業界に比べても社外の人材が多く活躍していますよね。
近年は人手不足の影響から、IT業界以外でも複数の企業から人材を集めるケースが増えています。
そこで必要とされているのが人材管理ツールです。
多種多様な契約形態・働き方の人材を一括で管理できるツールは、労務管理のコストを低減するとともに、人材管理の効率化をもたらします。
SAPにも人材管理ツール「SAP Fieldglass」があります。
日本ではあまり知られていませんが、今後は活用シーンが増えるかもしれません。
今回は、SAPの人材管理ツール「SAP Fieldglass」について解説します。
1.SAP Fieldglassとは?
SAP Fieldglassは、企業が外部人材やサービスプロバイダーを効率的に管理するための人材調達・管理ソリューションです。
外部人材の活用が増える現代のビジネス環境において、契約社員、フリーランス、サービスプロバイダーを包括的に管理するためのプラットフォームとして提供されています。
主な機能は以下のとおりです。
1-1.外部人材管理
SAP Fieldglassは、派遣社員、フリーランス、コンサルタント、その他の外部人材を一元的に管理する機能を提供します。
契約の発注、報酬の設定、労働時間の追跡、支払い管理などの効率化につながります。
1-2.サプライヤー管理
外部サービスのサプライヤーとの連携を効率化し、契約やパフォーマンス、コスト管理をサポートします。
サプライヤーとの関係を最適化し、コスト効率の向上を図ることが可能です。
1-3.コスト管理と透明性
外部人材にかかるコストを正確に把握し、予算管理を効率化します。
リアルタイムにコストの透明性を高め、コスト削減の機会を発見しやすくなります。
1-4.コンプライアンスの強化
法規制や内部ポリシーに沿った外部人材管理が求められる中、SAP Fieldglassは、法令遵守を支援し、リスクの軽減を図ります。
これには、労働法やデータ保護規制への準拠も含まれます。
1-5.データ分析とレポート
外部人材の使用状況、コスト、パフォーマンスなどのデータを収集し、詳細なレポートやインサイトを提供します。
これにより、企業は戦略的な意思決定を支援するデータドリブンなアプローチを実現できます。
2.SAP Fieldglassを使うことのメリット
SAP Fieldglassを導入することで、以下のようなメリットが得られます。
2-1.迅速な優秀人材の確保
市場の需要に応じた最適な人材を素早く見つけることができ、意思決定ウィザードやAIを活用して、候補者の分類や比較が迅速化されます。
適格な人材を迅速に採用できることは、SAP Fieldglassのもつ最大のメリットのひとつです。
最新バージョンの「Contingent Workforce Management」では、AIを活用したオンデマンドでの採用候補者選出にも対応。
PCおよびモバイルデバイスから採用候補者をチェックできるため、人材採用のコストを大幅に削減できるとのこと。
また、カスタムテンプレートを使用して、職務記述書や資格、報酬単価をあらかじめ設定可能です。
これらの機能により、人材調達プロセスが標準化され、効率化が進みます。
2-2.統合されたシステムによる効率化
社内ERPとのシームレスな統合により、プロセスとデータが一元化されます。
SAP S/4 HANAとの連携も可能で、可視性やコラボレーションが向上します。
これにより、全体的な業務管理が強化されます。
2-3.支払いと評価プロセスの合理化
仮の請求書の自動作成機能や、評価・フィードバックツールにより、支払いの正確性が向上し、今後の採用活動に役立つデータが蓄積されます。
2-4.高度なデータ分析によるパフォーマンス向上
要員データを詳細に分析することで、パフォーマンスの向上や戦略的な意思決定が可能になり、企業の価値を最大化します。
3.SAP Fieldglassの導入が向いている企業は?
一般的には、複数の国や地域での外部人材管理が必要な企業にとって、SAP Fieldglassは強みを発揮するようです。
特にプロジェクトベースの業務の場合、短期間のプロジェクトに外部の多様な人材を招くようなケースでは、人材管理が煩雑になりがちです。
IT業界や建設業界、製造業などで多く見られるケースですが、報酬や人気の細かい設定や契約形態の把握など、SAP Fieldglassで出来ることはたくさんあります。
日本市場には2018年ころから参入しているようで、日本特有の36協定などにも対応。
近年、加速している多様な働き方に対応できるソリューションとして、今再び見直されているという話も聞こえてきます。
一見するとグローバル企業向けのソリューションなのですが、国内では製造業の分野で活用事例があるようです。
例えば国内のある製造業の事例。
製造業に属する企業A社では、働き方改革関連法案などに関連した人材・労働に関する法制度への対応、さらには社会的な人材不足と賃金上昇によって、外部人材の調達を管理する基盤を必要としていたとのこと。
同社では、拠点ごとに外注の運用・管理が異なり、発注や管理のノウハウは現場に依存していた状態でした。
さらに紙の請求書で取引が行われ、業務内容と報酬支払の紐づけが煩雑になりやすい状況だったそうです。
これらをコンプライアンスやコスト管理の課題として認識していたため、Fieldglassの導入に踏み切りました。
導入後は、業務委託や派遣など多様な契約形態の人材調達・管理を一元化しつつ、支出内容や外部人材単価の可視化が進んだとのこと。
外部人材の活用に関する意思決定の強化、コストの適正化などを進めているようです。
4.SAP人材も知っておくべきSAP Fieldglass
SAP Fieldglassは、SAPソリューションの中で、どちらかといえばマイナーな存在です。
しかし、人材確保に苦心する企業が増えている今、コスト削減やコンプライアンスの強化、透明性の向上などを実現するソリューションとしては、非常に魅力的な機能を持っています。
我々SAP ERPの人材も、ひととおりの基礎知識は身に着けておきたいですね。