SAP BTP(SAP Business Technology Platform)でデータ活用!機能や活用イメージについて解説
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【コラム監修者 プロフィール】
クラウドコンサルティング代表取締役 岸仲篤史
新卒でSAPジャパン株式会社に入社。
SAPジャパン在籍中にCOコンサルとして従事したことで、会計コンサルの面白さに目覚め、
大和証券SMBC株式会社 投資銀行部門、新日本有限責任監査法人、アビームコンサルティングにて、
一貫して約10年間、会計金融畑のプロフェッショナルファームにてキャリアを積む。
その後、2017年クラウドコンサルティング株式会社を設立し、SAPフリーランス向けSAP free lanceJobsを運営し、コラムの監修を手掛ける。
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はじめに
SAPには大量のデータが蓄積されるため、これを活用してデータドリブンな経営を実現することが求められます。
データを分析するなど活用することが、SAPの良さをさらに引き出す行為だといっても過言ではないでしょう。
これを実現する方法のひとつとして、SAPが開発するSAP BTPがあるため、今回は全体としての機能やその中でも注目したいデータ活用について解説します。
1.SAP BTP(SAP Business Technology Platform)とは
SAP BTP(SAP Business Technology Platform)とは、SAP社が提供するクラウドベースの「テクノロジープラットフォーム」です。
データとアナリティクス、人工知能、アプリケーション開発、自動化、統合の機能が集約されていて、SAP S/4 HANAなどと組み合わせて利用することで効果を発揮してくれます。
例えば、SAP BTPを導入することで、アプリケーションの開発や実行、データの管理や分析など、個々のソリューションでは難しいことでも一括で実現が可能です。
ノーコードでデータ活用を実装することも可能であり、多くの機能が最初から用意されています。
なお、SAP BTPは2017年から2021年までSAP Cloud Platform(SAP CP)と呼ばれていました。
こちらが機能拡張されたものであるため、過去に利用した経験があるならば、スムーズに利用できるかもしれません。
2.SAP BTPを構成する5つの領域
SAP BTPは、ひとつのソリューションとして提供されていますが、5つの領域に分かれています。
データ活用にあたっては、これらの領域を理解することが重要であるため、まずは理解を深めておきましょう。
2-1.アプリケーション開発と自動化
ノーコード・ローコード開発の機能が搭載されているため、アプリケーション開発を効率化できます。
SAPデータを活用するツールをドラッグ&ドロップで簡単に実装できるのです。
また、JavaやJavaScript向けに最適化されたコード開発ツールも存在するため、これらを利用することで求めるアプリケーションを実装することもできます。
また、生成AIを活用した開発の自動化も支援していることが特徴です。
専門的な分野についてのプログラミングはSAPユーザにとって難しい場合がありますが、その点をカバーしてくれます。
2-2.拡張計画および分析
SAPに保存されているデータを活用して、事業の拡張計画を立てたり、計画の立案に向けた分析が可能です。
データに基づいた分析を実施することによって、ベストプラクティスを意識しながら事業を推進できます。
財務計画、サプライチェーン計画、要員計画などを統合して、データに基づいた総合的な判断を下せることが特徴です。
例えば、SAP S/4HANA Cloud と SAP Analytics Cloudを活用すれば、売上実績を分析してレベルの高い事業計画を立案できます。
財務部門の担当者が人手で分析する必要はなく、事前に用意されたアルゴリズムに沿って自動的に分析できるのです。
適切なアルゴリズムを選択した分析により、市場で優位性を確保できるでしょう。
2-3.データとアナリティクス
SAPデータを解析するソリューションも用意されているため、SAPに保存されているデータはもちろん、SAP以外に保存されているデータも組み合わせた活用ができます。
多くの機能があるため、SAPにデータを集約できることが理想的ではありますが、そうではなくともSAP BTPで処理することが可能です。
また、「SAP HANA Cloud」にデータを集約することで、ペタバイトスケールのデータ量でも適切に処理できます。
大量のデータを活用しようとすると、尋常ではないリソースが必要になる場合がありますが、SAP HANA Cloudはメモリ効率を最大限意識しているため、データ解析を支援してくれるのです。
また、人間がデータ解析するだけではなく、AIを活用したプランニングやアナリティクスなども用意されています。
このようなSAP BTPを支援するソリューションと組み合わせることで、事業で蓄積したデータをより活用できるようになるでしょう。
2-4.統合
SAP Integration Suiteなど、SAPを含めたシステム全体を統合するソリューションが用意されています。
クラウド上のSAPにオンプレミスのデータを統合することによって、全てのデータを踏まえたデータ活用が可能となるのです。
SAPの仕様に合わせてデータを連携することはもちろん、オンプレミスからのデータを受け付けるために、独自のAPIを開発することもできます。
また、一昔前のデータ統合ソリューションとは違い、現在は定期的かつ自動的に情報の連携が可能です。
常に最新の情報に基づいたデータ活用ができるため、データの陳腐化によるトラブルなどが生じることはありません。
例えば、データ活用しようとして取り込んだデータ内容が1ヶ月前のものであり、現在と売上額が大きく異なるような状況は避けられます。
2-5.人工知能
SAPはビジネスに特化したAIをいくつも展開しています。
業務ごとのAIが用意されていることで、どのような業務に従事している従業員でも、AIを活用しやすくなっています。
全てのAIがデータ活用に繋がるわけではありませんが、SAP BTPの特徴には違いないためこの点は理解しておきましょう。
例えば、経理や財務のAIは請求書のデータを自動的に処理したり、過去の傾向から不正を検知したりできます。
前者についてはDXに近い部分がありますが、後者についてはAIがデータを活用するからこその機能です。
人間では気づけないような不正でも、AIが大量のデータを分析し傾向をつかんでおけば、不自然な部分から検知できてしまいます。
他にも、サプライチェーンのAIや調達・購買のAI、セールスやマーケティングのAIなどが開発されています。
それぞれのAIにおいて、SAPに保存されているデータを分析させるなどして、人間には難しい分析や予測などを支援してくれるのです。
3.注目は「データとアナリティクス」
カバーされている領域の中でも、注目しておきたいのはデータとアナリティクスです。
SAP BTPがこちらの領域もカバーしていることで、データドリブンな環境づくりに必要なツールを、SAP社が提供しているものに集約できます。
例えば、複数のデータソースから経営戦略を立てるためには、それぞれのデータをデータウェアハウスなどに集約し、別のツールで分析する必要がありました。
個別に、データ加工やツールの導入が発生するため、手間のかかる作業であったのです。
SAPにデータが集約されているといえども、分析や解析作業には工夫が求められていました。
しかし、SAP BTPならばそのような課題を一気に解決できます。
また、注目しておきたいポイントとして、インターフェースを構築しやすいことが挙げられます。
近年は、多くのシステムやツールがクラウド化されているため、思うようにデータを連携できないことが課題になりがちです。
しかし、SAP BTPはSAPのクラウド上で動作するソリューションであり、各種SAPのサービスやデータベースと簡単にインターフェースを構築できます。
まとめ
SAPのデータ分析に役立つSAP BTPを紹介しました。
データ収集やデータ分析、解析に役立つツールはいくつか存在し、それらの中でもSAPが公式で提供しているソリューションであることが特徴です。
SAP以外のデータとも親和性が高く、周辺システムを含めてデータ活用を実現できます。
また、データ活用のために、独自に必要なアプリケーションを開発することが可能です。
ノーコード開発に対応しているため、SAPのエンドユーザーなど、エンジニアでなくてもデータ活用できます。
これからの時代は、データに基づいた判断が必要となるため、積極的にSAP BTPを活用できるようになってみましょう。