SAPの業界別ソリューション②「銀行業界」
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【コラム監修者 プロフィール】
クラウドコンサルティング代表取締役 岸仲篤史
新卒でSAPジャパン株式会社に入社。
SAPジャパン在籍中にCOコンサルとして従事したことで、会計コンサルの面白さに目覚め、
大和証券SMBC株式会社 投資銀行部門、新日本有限責任監査法人、アビームコンサルティングにて、
一貫して約10年間、会計金融畑のプロフェッショナルファームにてキャリアを積む。
その後、2017年クラウドコンサルティング株式会社を設立し、SAPフリーランス向けSAP free lanceJobsを運営し、コラムの監修を手掛ける。
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はじめに
今回はSAPの業界別ソリューションの2回目として「銀行業界」を紹介します。
1.クラウドバンキングなどビジネスモデル変革を支援
SAPの銀行業界向けソリューションは、デジタル変革とリスク管理を支援し、顧客体験の向上や業務の効率化に役立ちます。
主なソリューションは以下のとおりです。
・Cloud for Banking (C4B):クラウドバンキングの導入をサポート
・Omnichannel Banking Cloud:複数チャネルを統合し、顧客とのエンゲージメントを強化
・SAP Datasphere:ミッションクリティカルなビジネスデータを必要な場所で提供し、ハイブリッド環境とクラウドバンキング環境のデータへのアクセスをシンプル化
・SAP Signavio Process Transformation Suite:銀行業界のビジネスプロセス変革を支援
ぞれぞれ具体的に見ていきましょう。
2.Cloud for Banking (C4B)
Cloud for Banking (C4B) は、金融機関などが、法定通貨やデジタル通貨、トークン、ロイヤルティポイントなど、あらゆる「通貨」タイプの取引を管理できるようにする次世代のウォレット型ソリューションです。
2-1.即時に口座を割り当て
法定通貨、デジタル通貨、ロイヤルティ プログラムのポイントなどのさまざまな通貨、およびグリーン エネルギーやカーボン フットプリントのトークンなどの新しいタイプの通貨での取引を管理するために使用できます。
2-2.使用されているアカウントにのみ費用がかかる
必要に応じてアカウントへのアクセスを許可し、アクティブに使用されているアカウントに対してのみ料金を支払うことができます。
柔軟なサブスクリプション プランが用意されており、成長を最大限にサポートできます。
2-3.取引への理解
高度なトランザクション スクリーニングと機械学習機能を備えた Account as a Service (ACAS) は、
支出分析のためのトランザクションの自動分類に役立つだけでなく、KYC および AML コンプライアンスにも役立ちます。
2-4.既存の決済レールを統合
決済レールの統合はコストと時間がかかります。
しかし決済レールの統合により、リスクや高額な初期費用をかけずに、さまざまなグローバル決済ネットワークにすぐに参加できるようになります。
2-5.ITの複雑さを軽減
Account as a Service のオープンアーキテクチャにより、スケーラブルで安全なインフラストラクチャを提供しながら、サードパーティアプリケーションとの統合が簡素化されます。
インメモリデータベースを使用して、リアルタイム分析を「オンザフライ」で実行できます。
3.Omnichannel Banking Cloud
完全にレスポンシブなオープンバンキングプラットフォームを介して、販売とリアルタイムマーケティングを統合した、小売、ビジネス、包括的な銀行機能の強力なセットを顧客に提供します。
3-1.スムーズな統合により総所有コストを削減
このプラットフォームは、SAP Transactional Banking ServicesなどのCX ソリューションとすぐに統合できます。
銀行は技術的な環境をシンプルにできるほか、市場投入までの時間を短縮し、TCO を削減しながら顧客に完全な E2E 金融サービスを提供できるようになります。
3-2.チャネルをパーソナライズする
エンドユーザーは、アカウントのニックネームやお気に入り登録、オンラインアクセスの有効化、不正行為防止のためのアカウントレベルの取引制限の設定など、アカウント設定をカスタマイズできます。
銀行は、顧客セグメントごとに画面のレイアウトやテーマをカスタマイズします。
3-3.個人の財務管理を自動化
バックエンドシステムから取得されたトランザクションをリアルタイムで分類する高度な MLアルゴリズムを使用します。
顧客のオンラインプロファイル、収入/支出の傾向、予測に基づいて、適切な製品を推奨します。
3-4.銀行口座を持たない人々のために包括的な銀行サービスを支援
Omnichannel Banking Cloudは、クローズドループウォレットを提供します。
クローズドループウォレットとは、特定の支払い手段のみを受け入れる仕組みです。
顧客の携帯電話番号に登録されるアカウントは、日常の費用のための流動資金の維持、友人や家族への送金、ロイヤルティポイントや特典ポイントの蓄積に使用されます。
3-5.アプリケーションUXを差別化
コーディングや開発作業を経ることなく、特定の顧客グループを対象とした画面UIの変更が可能です。
また、本番環境へのリアルタイムに展開するための環境も用意されます。
4.SAP Datasphere
SAP Datasphere は、データプロフェッショナルに対し、柔軟で拡張性の高いデータアクセスを提供する機能です。
4-1.信頼性の高いデータへのアクセス
セマンティック定義と関連付けを自動的に再利用し、価値実現までの時間を短縮します。
SAP Datasphere のナレッジグラフを使用して、隠れたインサイトやパターンを発見できます。
また、SAP アプリケーションのミッションクリティカルなデータとメタデータへの直接接続が可能です。
さらにSAP Datasphere の分析モデルを使用して、SAP アプリケーションのセマンティック定義と関連付けを再利用します。
4-2.データアクセスが簡易に
データの場所を問わず、ハイブリッド環境とクラウド環境のデータにアクセスできます。
SAP Datasphere の「スペース」を使用して、さまざまな業務のデータを整理し、ユーザーフレンドリーなアクセスを実現します。
またSAP Datasphere, BW ブリッジでの SAP BW コンテンツの再利用も可能です。
4-3.データ連携の強化
データフェデレーション機能またはデータ複製機能を使用してソースを統合し、種類の異なるデータやリアルタイムデータを調和します。
SAP と SAP 以外のデータを組み合わせて利用できるほか、数千ものプロバイダーによる信頼性の高い業界データでデータプロジェクトを強化します。
5.SAP Signavio Process Transformation Suite
SAP Signavio Process Transformation Suiteは、企業がビジネスプロセスの理解、改善、変革を行うための統合プラットフォームです。
以下の主要な機能が含まれています。
5-1.プロセス分析とマイニング
プロセス分析機能は、現実のプロセス実行状況を詳細に把握し、改善のためのデータドリブンなインサイトを提供します。
プロセスマイニングを通じて、実際のワークフローを可視化し、効率化やコスト削減のポイントを見つけるのに役立ちます。
組織はプロセスのボトルネックや非効率なフローを特定し、戦略的な改善を行うことが可能です。
5-2.プロセスモデリングとジャーニー設計
SAP Signavioでは、プロセスやカスタマージャーニーのモデリングツールが備わっていて、顧客やサプライヤーの視点からのプロセス設計が行えます。
業務の流れを標準化しつつ、ステークホルダーと視点を共有できるため、迅速で一貫したプロセス変革が実現します。
また、変更の影響をシミュレーションすることで、プロセスの再構築が業務に与える影響を事前に予測できます。
5-3.プロセスガバナンスと自動化
プロセスガバナンス機能により、ビジネスプロセスが規制の要件に適合するような管理が可能です。
プロセスに対する定期的なレビューを実施し、プロセスの成熟度や関連性を維持するためのワークフローが整備されています。
また、「SAP Build Process Automation」との統合により、ノーコードでの自動化が可能です。
5-4.プロセスコラボレーションと変革管理
ビジネスプロセスの共有や協業を促進するために、プロセス関連のコンテンツを部門間で共有しプロセスの透明性を高める仕組みが提供されます。
プロセスの実行方法を標準化し、組織全体で一貫したビジネス戦略を実現することが可能です。
5-5.バリューアクセラレーターとAI
AIを活用した「バリューアクセラレーター」機能は、事前に構成されたモデルやテンプレートを使用し、プロセス改善を加速するための最適な手法やKPIを提供します。
従来のプロセス改善にかかる時間やコストを削減し、変革への迅速な対応が可能となります。
まとめ
SAPの銀行業界向けソリューションでは、主にクラウドバンキング提供、データアクセスの合理化、ビジネスプロセス変革などが目玉になっています。
これらの機能はSAP S/4 HANA Cloudの財務会計機能との連動も可能です。
いずれも旧来のSAP ERPには無かったソリューションですから、スキル研鑽の一環として知識を定着させておきたいですね。