SAPのデータ活用はチャットボットへ!利用例や適している理由を解説
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【コラム監修者 プロフィール】
クラウドコンサルティング代表取締役 岸仲篤史
新卒でSAPジャパン株式会社に入社。
SAPジャパン在籍中にCOコンサルとして従事したことで、会計コンサルの面白さに目覚め、
大和証券SMBC株式会社 投資銀行部門、新日本有限責任監査法人、アビームコンサルティングにて、
一貫して約10年間、会計金融畑のプロフェッショナルファームにてキャリアを積む。
その後、2017年クラウドコンサルティング株式会社を設立し、SAPフリーランス向けSAP free lanceJobsを運営し、コラムの監修を手掛ける。
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はじめに
SAPのデータは様々な形で活用されるようになっていて、その中にチャットボットの作成があります。
近年は多くの企業がチャットボットを導入していて、業務の効率化に役立てている状況です。
チャットボットの作成方法はいくつもありますが、SAPのデータを利用すれば「データに基づくチャットの回答」を実現できます。
実際、チャットボットの作成にSAPのデータを活用した事例があるため、その内容などを踏まえて解説します。
1.そもそもチャットボットとは
チャットボットは、自然言語処理技術を活用し、ユーザーの質問に自動で回答するプログラムです。
さまざまな状況で利用されますが「顧客サポートの自動化」「FAQの回答提供」「商品やサービスに関する情報提供」などに用いられます。
また、SAPのデータをチャットボットに統合することで、顧客や従業員からの問い合わせに対して、パーソナライズされた情報を素早く提供するなどの活用も可能です。
2.SAPのデータを活用したチャットボットの例
SAPには大量のデータが保存されているため、様々なチャットボットを作成できます。
今回は、どのようなチャットボットを作成できるか、イメージしやすいものをピックアップしました。
2-1.顧客サービスチャットボット
顧客からの問い合わせを自動的に処理し、適切な回答を示したり担当者へ連携したりするチャットボットです。
一般的にチャットボットといえば、こちらをイメージする人が多いでしょう。
事前に大量のデータを学習し、それを踏まえて適切な判断を下します。
チャットボットの構築にあたっては 顧客の購買履歴、注文データ、サポートチケット情報などの活用が可能です。
共通の回答として事前に学習しておくものもあれば、その都度データを参照するものもあります。
パーソナライズに利用するものと、チャットボットの実装そのものに利用するものは使い分けが必要です。
2-2.従業員サポートチャットボット
従業員のHR関係の問い合わせに、自動的に対応するチャットボットの構築が可能です。
変動するデータに対応できるため、様々な機能を実装できるでしょう。
例えば、休暇の残り日数を確認したり申請したりする作業をチャットボットに集約できます。
事前にやり取りの選択肢を用意しておき、それに沿って操作することで、スムーズにプロセスを進められるのです。
チャットボットを実装する際は、SAPのHRモジュールに格納されているデータを活用すれば良いでしょう。
それぞれの従業員に適した情報を提供できるチャットボットならば、業務を大きく効率化できます。
2-3.在庫管理チャットボット
在庫管理の問い合わせやサプライチェーンに関する問題について、リアルタイムで情報を提供するチャットボットです。
現状、このような作業は人間が対応することが多いですが、チャットボットにすれば負荷を軽減できます。
特にSAPには在庫管理やサプライチェーンの情報が多くあり、簡単に活用できることが特徴です。
例えば、MMモジュールやSCMモジュールのデータを活用すれば、在庫レベルや注文状況、納期情報など素早く提供できます。
最新情報を素早く反映させることも可能です。
3.SAPのデータが適している理由
続いては、チャットボットの作成にSAPのデータが、なぜ適しているのかを解説します。
3-1.豊富なデータ量
豊富なデータが保存されていて、チャットボットの作成に流用しやすいため、利用される機会が増えています。
社内にあるどのシステムよりも、SAPに多くのデータが保存されているでしょう。
SAPは「基幹システム」と呼ばれるものに分類され、多くの情報が集約されます。
利用の仕方によって多少変化しますが、最もデータが集約されているアプリケーションといっても過言ではないはずです。
一般的に、企業に関する情報は、全てSAPに集約されていると考えられます。
結果、チャットボットの作成に必要なデータをSAPから簡単に収集できるのです。
例えば、販売、購買、在庫、顧客管理、人事など多種多様なデータがSAPには保存されています。
これらのデータから、チャットボットの作成に必要なものを抜き出すことで、より正確な回答のできるチャットボットの生成が可能です。
3-2.リアルタイムな情報範囲
現在の主流である「SAP S/4 HANA」は、データをリアルタイムに収集していることが特徴です。
データベースへ素早く情報を反映できる仕組みがあるため、チャットボットもこれを活用しやすくなっています。
例えば、在庫数を確認するチャットボットの場合、SAPのデータを活用すればリアルタイムに状況を把握できます。
反映までに時間がかかると、判断ミスなどが生じる可能性がありますが、リアルタイムに反映されれば可能性は下がるのです。
「大量のデータが瞬時に反映される」というSAPの特徴が、チャットボットの運用にプラスの影響を与えてくれます。
3-3.パーソナライズの実現
SAPは、顧客との取引情報など、個々に異なるデータも保存されています。
そのため、これらの情報を活用することで、チャットボットのパーソナライズが可能です。
例えば、利用者のIDから過去の取引を検索し、それらについての問い合わせか確認する仕組みを実装できます。
利用者に入力させる部分を少なくし、ユーザビリティを向上させるのです。
また、入力間違いによる作業効率の低下なども防げます。
なお、パーソナライズを実現できれば、マーケティング活動を支援することも可能です。
過去の購入情報から、興味を持ちそうな新製品を提案するなどが考えられます。
3-4.ビジネスプロセスの統合
SAPに組み込む形でチャットボットを構築すれば、一連のビジネスプロセスを構築できます。
それぞれを個別に運用すると、担当者の負荷が高まりますが、集約した仕組みとすることで、少ない負荷でデータの活用が可能です。
例えば、SAPのデータを活用する際に、別のチャットボットツールを利用するとデータの連携などしなければなりません。
しかし、SAPで完結するような作りにすれば、同じデータベースを活用できます。
構築や運用が簡単になり、操作などビジネスプロセスも簡略化できることが魅力です。
4.SAP Conversational AIの活用
SAP社は、チャットボットを作成するためのソリューションとして「SAP Conversational AI」を提供しています。
そのため、SAPのデータを活用する際は、こちらのソリューションを軸に考えて良いでしょう。
すべてをSAPのソリューションに揃えることで、スムーズに構築したり運用の手間を削減したりできます。
SAP Conversational AIを利用することで、SAPソリューションとAPIで簡単に接続できます。
チャットボットの運用には、データ連携が必要となるため、実装の手間がかからない点はメリットです。
また、チャットボットに必要なデータを学習させる際も、同じくSAPソリューションならば簡単にデータ活用できます。
ただ、注意点としてアップデートが続いているソリューションであり、部分的に日本語に対応していません。
概ね日本語でも利用できますが、言語面では注意しておきましょう。
場合によっては、内部的に翻訳を組み合わせて、日本語と英語を変換しなければなりません。
なお、チャットボットのイメージとは異なりますが、SAP Conversational AIを利用すればSAPの起動や停止なども実行できます。
「社内で利用する業務効率化のためのチャットボット」を構築したいならば、SAPを操作するAPIも実行できるようにすれば良いでしょう。
まとめ
SAPのデータを活用して、チャットボットを構築できることについて解説しました。
基幹システムとして大量のデータが保存されているため、活用することでスムーズに実装が可能です。
一般的には、チャットボットの構築に向けてデータ収集が必要ですが、SAPのデータを活用すればこの手間がなくなります。
また、チャットボットからSAPのデータを参照できるようにすると、リアルタイムに応答内容を変化させられます。
例えば、常に変化する在庫数を正確に解凍できるようになるのです。
SAP S/4 HANAは、情報のリアルタイムな反映を得意としているため、SAPの強みをチャットボットの構築や運用にも活かせるのです。