SAP Sustainabilityとは?サステナビリティに対応するソリューションを紹介
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【コラム監修者 プロフィール】
クラウドコンサルティング代表取締役 岸仲篤史
新卒でSAPジャパン株式会社に入社。
SAPジャパン在籍中にCOコンサルとして従事したことで、会計コンサルの面白さに目覚め、
大和証券SMBC株式会社 投資銀行部門、新日本有限責任監査法人、アビームコンサルティングにて、
一貫して約10年間、会計金融畑のプロフェッショナルファームにてキャリアを積む。
その後、2017年クラウドコンサルティング株式会社を設立し、SAPフリーランス向けSAP free lanceJobsを運営し、コラムの監修を手掛ける。
https://www.facebook.com/atsushi.kishinaka#
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はじめに
企業の持続可能性への取り組みは、社会的責任を果たすだけでなく、競争力を高める重要な戦略となっています。
SAPでも、企業が環境負荷を削減しながらビジネス成長を実現するためのサステナビリティ関連ソリューションを提供しています。
サプライチェーンの透明性から炭素排出量の管理、持続可能な製品設計まで、幅広い分野で活用できるこれらのツールは、未来に向けた経営の中核となりそうです。
今回は、SAPが提供する主要なサステナビリティソリューションについて、それぞれの特徴や機能を詳しく解説します。
1.SAPが提供する「SAP Sustainability」
SAPは、企業が持続可能性を重視したビジネスモデルを実現するために、さまざまなサステナビリティ関連ソリューションを提供しています。
これらのツールは、環境負荷の軽減、透明性の向上、規制遵守、持続可能な製品設計を支援します。
それぞれのソリューションについて以下に詳しく解説します。
1-1.SAP Green Token
SAP Green Tokenは、サプライチェーン全体での透明性を向上させるためのソリューションです。
特に、原材料の追跡や持続可能な供給の証明に役立ちます。
サプライチェーンを通じて原材料の「起源」や「持続可能性に関する証明」をブロックチェーン技術で記録します。
例えば、再生可能エネルギーやリサイクル材料が製品にどの程度含まれているかを可視化します。
規制対応や消費者への透明性の提供、持続可能なサプライチェーンの構築に寄与するソリューションですね。
1-2.SAP Responsible Design & Production
SAP Responsible Design & Productionは、持続可能な製品設計を支援するツールです。
製品ライフサイクル全体での環境負荷を考慮し、持続可能な設計と生産を促進します。
また、製品に使用される素材やパッケージングの環境影響を分析し、持続可能な設計の推奨を提供します。
さらに拡張生産者責任(EPR)などの規制に対応するデータ収集をサポートします。
規制遵守を容易にし、製品設計段階での環境負荷削減の実現に貢献するようです。
1-3.SAP Sustainability Data Exchange
SAP Sustainability Data Exchangeは、持続可能性に関連するデータの共有プラットフォームです。
企業間でのサステナビリティ情報の透明性を高め、取引先間での協力を促進します。
このソリューションはいわゆる「データの互換性」を保つものです。
サプライヤーやパートナーとサステナビリティデータを共有するための標準化されたフォーマットを提供します。
データは製品ごとのカーボンフットプリントや規制対応状況などを含みます。
サプライチェーン全体での持続可能性評価を効率化し、企業間の信頼性を向上させるための取り組みですね。
1-4.SAP Sustainability Control Tower
SAP Sustainability Control Towerは、企業全体のサステナビリティパフォーマンスを可視化し、分析するためのダッシュボードツールです。
温室効果ガス排出量、エネルギー消費、水資源使用量など、持続可能性に関するデータを統合して分析します。
各種KPI(Key Performance Indicator)を設定すれば、企業目標に対する進捗状況をリアルタイムでモニタリングできるため、
サステナビリティソリューション全体の司令塔となる機能ですね。
想定している利用者は主に経営層で、持続可能性の目標を具体的に管理し、戦略的な意思決定をサポートします。
1-5.SAP Sustainability Footprint Management
SAP Sustainability Footprint Managementは、製品や企業全体の炭素フットプリントを計測・管理するためのツールです。
このソリューションでは、製品ライフサイクル全体の温室効果ガス排出量を詳細に計測し、
データをもとに排出削減計画を立案、報告書形式で規制対応を行えます。
炭素排出量の削減努力を強化し、カーボンニュートラル目標への達成を支援します。
1-6.SAP Green Ledger
SAP Green Ledgerは、環境負荷の財務的影響を可視化し、環境と財務データを統合して管理するソリューションです。
持続可能性に関するデータを財務データとリンクさせ、企業の環境目標達成に向けた経済的な影響を評価します。
例えば、温室効果ガス排出量削減のための投資対効果(ROI)を計測し、持続可能性と収益性の両立を目指した経営判断をサポートします。
2.SAP S/4HANAとSAPのサステナビリティソリューションの関係性
SAPのサステナビリティソリューションは、ERPシステムであるSAP S/4HANAを中核として設計されており、
企業の持続可能なビジネスモデルの実現をサポートします。
2-1.SAP S/4HANA: サステナビリティ管理の中核
SAP S/4HANAは、企業のビジネスプロセスを統合的に管理するクラウドベースのERPソリューションです。
サステナビリティ関連データの収集、管理、分析を効率化する「共通のデータ基盤(common sustainability data foundation)」を提供します。
企業全体での環境データの一元管理が可能となり、以下のようなサステナビリティソリューションとの連携が実現します。
2-2.各サステナビリティソリューションとS/4HANAとの連携
・SAP Green Token
サプライチェーンデータをS/4HANAと連携させることで、原材料の追跡と透明性を実現します。
これにより、サプライチェーン全体での持続可能性を評価できます。
・SAP Responsible Design & Production
製品ライフサイクルデータをS/4HANAで管理することで、設計から生産までの一連のプロセスにおけるサステナビリティを可視化します。
・SAP Sustainability Data Exchange
S/4HANAに蓄積された環境データを外部パートナーやサプライヤーと共有することで、エコシステム全体でのサステナビリティを推進します。
・SAP Sustainability Control Tower
S/4HANAに蓄積されたデータをリアルタイムで分析し、温室効果ガスの排出量やエネルギー消費量を経営層が即座に把握できるようにします。
・SAP Sustainability Footprint Management
S/4HANAに記録された原材料データや製造プロセス情報をもとに、精密な炭素フットプリントを計算します。
・SAP Green Ledger
S/4HANA内の財務データと環境データを統合することで、持続可能性への取り組みを収益性や費用対効果の観点から評価できます。
2-3.BTP(Business Technology Platform)上でS/4 HANAと連携
これらSAPのサステナビリティソリューションは、BTP(Business Technology Platform)に置かれ、S/4HANAと連携するようです。
また、一部はBusiness Network上でも動作するようですね。
・BTP(Business Technology Platform)
S/4HANAで蓄積されたデータを高度に分析・活用するためのアプリケーション開発やAI機能を提供します。
これにより、データ活用の柔軟性が向上します。
・Business Network
サプライチェーン全体でのデータ共有や持続可能な取引を推進するネットワークです。
S/4HANAで管理されたデータを活用して、外部との協力を促進します。
3.SAP Sustainabilityに対応した資格はある?
このようにSAPは、企業の持続可能性を推進するための多様なソリューションを提供しています。
そこで気になるのが認定資格ですよね。
一般的なロジ系・会計系のモジュールにはそれぞれ認定資格が設けられていますが、サステナビリティ関連ソリューションに資格は存在するのでしょうか。
結論から言うと、SAPのサステナビリティ関連ソリューションに特化した認定資格が発行されているかどうかについては、現時点で明確な情報がありません。
しかし、SAPの学習プラットフォームであるSAP Learning Hubを活用することで、
サステナビリティ関連ソリューションに関する最新の学習リソースやトレーニングを受けることが可能です。
まとめ
SAPのサステナビリティ関連ソリューションは、環境負荷の削減、規制対応、透明性の向上、
持続可能な製品設計など、企業が持続可能な成長を目指すための包括的なツール群です。
企業は環境面と経済面の両立を図りながら、サステナブルなビジネスモデルを構築することが可能になります。
日本でも徐々に導入が進みそうですから、我々SAP人材も知識をつけておく必要がありそうです。