【中小企業のSAP】中小企業は在庫管理でリスク軽減!ビジネスチャンスを逃さないためには
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【コラム監修者 プロフィール】
クラウドコンサルティング代表取締役 岸仲篤史
新卒でSAPジャパン株式会社に入社。
SAPジャパン在籍中にCOコンサルとして従事したことで、会計コンサルの面白さに目覚め、
大和証券SMBC株式会社 投資銀行部門、新日本有限責任監査法人、アビームコンサルティングにて、
一貫して約10年間、会計金融畑のプロフェッショナルファームにてキャリアを積む。
その後、2017年クラウドコンサルティング株式会社を設立し、SAPフリーランス向けSAP free lanceJobsを運営し、コラムの監修を手掛ける。
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はじめに
中小企業がSAPを活用する方法は様々ありますが、その中でも取り入れてもらいたいものは在庫管理に関わるものです。
経営者の皆さんの中には、思ったより在庫が余っている、注文を受けたのに在庫がなく出荷できないという経験をした人がいるでしょう。
中小企業の経営において、このような状況は事業運営に悪影響を与える可能性があります。SAPを活用して状況を適切に把握し、可能な限りリスクヘッジできるようにしていきましょう。
1.中小企業の在庫管理に役立つSAPのモジュール
まずは、具体的にどのモジュールを利用して、在庫管理を効率化すればよいかを解説します。
1-1.SAP Inventory Management(在庫管理)
IMは在庫の入出庫管理に役立つモジュールです。
中小企業においては、在庫の保管や出荷のプロセスを標準化したり自動化したりすることに役立ちます。
例えば在庫が増減する際に、製品に記載されているバーコードを読み取れば、それにより在庫の状況をリアルタイムに監視できるでしょう。
データをSAPに反映させることで、どの製品の在庫があるのかなどを簡単に把握できるのです。
手動で在庫の情報を入力するとミスが起きがちですが、バーコードの読み取りなどデジタル的な情報と連携すれば、ミスは軽減されます。
また、SAPでダッシュボード機能を準備すれば一目で把握できるようになります。
加えて、後ほど解説する生産管理のモジュールと連携すれば、在庫の不足を解決するための発注などもスムーズに進められるはずです。
在庫の過不足は中小企業にとって大きな痛手となりかねないため、これを解決するための重要な方法と考えましょう。
他にも、更なる活用として、在庫量の管理なども考えられます。
一定の水準を下回ったならば、SAPから発注を促す仕組みとするのです。
これも在庫の過不足を可能な限り回避するために役立つものです。
1-2.SAP Warehouse Management(倉庫管理)
EWMは在庫を倉庫に抱える場合どこにどの製品があるかを明確にするものです。
上記のモジュールでは、在庫の存在は認識できるものの、それぞれのロケーションについては把握できません。
そのため、出荷に際して、ピッキングに時間を要するなどのトラブルを起こす可能性があります。
しかしEWMで保管位置などを管理しておけば、このようなトラブルを回避できるようになるのです。
加えて、受注内容を踏まえて、ピッキングリストを作成することもできます。
一般的に中小企業では、注文内容を人間が確認し、それを手動でピッキングすることが多いでしょう。
しかし、SAPを活用すれば、受注内容を登録するだけでピッキングリストを自動的に作成できます。
しかも、受注内容を登録しておけば、顧客への請求書作成などにも利用が可能です。
複数の用途にデータが連携されることは、SAPならではの特徴ともいえます。
1-3.SAP Materials Management(資材管理)
MMはサプライヤーからの発注を自動的に受付し、購買依頼や発注書の発行作業などを効率化できます。
これらの作業は人間が対応することが多いですが、SAPを導入すれば、少ないインプットで済みます。
また、現在はAIの活用が広がっていて、購買履歴を活用した最適な発注タイミングの案内なども実現できるようになりました。
他にも、上記のように在庫をリアルタイムで反映できるため、それを踏まえた資材管理ができます。
例えば、完成品の在庫が減少したならば、中間品を準備できるように原材料を発注するなどです。
在庫状況をリアルタイムに反映できるため、在庫の過不足というリスクを最小限に抑えられます。
1-4.SAP Production Planning(生産計画)
生産計画のモジュールであるPPと在庫管理を統合することで、必要な資材をスムーズに供給できます。
生産計画に基づいて、必要な資材を自動的に発注できるようにすれば、原材料不足による生産の停止などを回避できるでしょう。
また、AIを活用した生産計画を立てれば、人間が検討するよりも正確に効果的な計画を立てられる可能性があります。
生産計画の正確性は、在庫の数に繋がり、顧客への納品タイミングにも影響します。
常に適切な在庫を保つことで、納期遅延などによる販売機会の損失を防げるようになるでしょう。
2.中小企業にSAPを導入した在庫管理の効率化フロー
具体的に中小企業がSAPを導入すると、どのような在庫管理のフローになるか、イメージを解説します。
2-1.購買
最初に担当者が需要を予測して、必要な資材や製品の発注計画を立案しなければなりません。
必要に応じて、SAPに蓄積されたデータをAIに分析してもらい予測に役立てると良いでしょう。
その結果はMMモジュールに連携することによって発注計画の効率化などを実現できます。
また事前に設定しておけば、MMモジュールからサプライヤーに対して発注書を自動的に送付することも可能です。
2-2.入荷管理
サプライヤーから商品が届いたならば、入荷検品を実施しなければなりません。
何かしら問題が含まれている可能性もあるため、所定のルールに従って実施しましょう。
検査した結果は、IMモジュールを使用して、在庫データとして登録することが重要です。
加えて、EWMを利用して検品後の商品を倉庫内の適切な場所に配置して記録しましょう。
特に大量の商品を管理する場合は、人間では記憶できなくなってしまいます。
EWMを利用しない中小企業も見受けられますが、できるだけロケーション管理も実施すべきです。
2-3.在庫管理や出庫管理
IMモジュールを利用すれば、在庫の状況がリアルタイムに監視できます。
受注を受けた際は、情報を登録し、在庫の変化を確認しましょう。
また、監視機能を活用して在庫数が少なくなった場合はアラートを出す仕組みもおすすめします。
受注が入った際はEWMモジュールを活用してピッキングリストを作成し従業員がスムーズに業務を遂行できるようにしましょう。
商品が多い場合はピッキング作業だけでも膨大な時間を費やすことになりかねません。
ピッキングが完了した後は出荷指示を出さなければなりません。
IMモジュールで出荷指示書を作成できるため、それを利用して出荷作業を進めましょう。
また実際に出荷した後は在庫データを更新しなければ、整合性が取れなくなってしまいます。
なお、データを活用した業務の効率化は在庫管理や出庫管理だけではなく、働き方改革にもつながります。
近年は働き方改革が重視されているため、働きやすい環境作りにもEWMモジュールは役立ってくれるのです。
3.中小企業がSAPを導入する際の注意点
SAPは在庫管理の効率化に役立ちますが、以下の注意点も考慮しなければなりません。
3-1.業務フローの明確化
事前に業務フローを明確に定めておくことが重要です。
SAPは業務フローに沿って設定されるため、何かしら曖昧な部分があると、設定ミスが起きる可能性があります。
結果、業務に支障をきたすことになりかねません。
例えば、在庫数を自動的に連携するのではなく、担当者が内容を確認してから連携する仕組みを導入したいことがあるでしょう。
この場合は、上記で解説したように、自動的にデータを連携する仕組みでは不都合が生じる可能性があります。
途中で担当者が入力したり承認したりする仕組みを採用しなければなりません。
これは一例ですが、SAPが標準で定める業務フローは、全ての中小企業に最適であるとは限りません。
場合によっては部分的に見直す必要があるため、まずは現在の業務を洗い出すことを考えるべきです。
ただ、必ずしもSAPを現在の業務に合わせる必要はありません。
逆にSAPの業務フローに現在の業務フローを合わせるという選択肢もあります。
中小企業の場合は、関係者が少なく意見調整や見直しが実施しやすいため、これも検討してみましょう。
3-2.担当者の教育
SAPを使いこなすためには、担当者へ教育しなければなりません。
部分的に専門的な知識が必要となるため、事前に使い方などを学んでおかなければスムーズに活用できないでしょう。
SAP独自の考え方などが存在するため、それらを明確に理解してもらうことが重要です。
ただ、実際に利用しなければ、慣れない部分も大きいと考えられます。
そのため、ある程度の教育が完了すれば、実際に使ってもらうようにしましょう。
最初はトラブルが生じるかもしれませんが、長い目で見ると導入の価値は高いはずです。
中小企業では利用者が限られるため、教育にコストを掛けすぎるよりも、導入してから理解してもらうほうが良いこともあるのです。
まとめ
中小企業の在庫管理にSAPが役立つことも解説しました。
SAPは大規模な企業の在庫管理というイメージがあるかもしれませんが、中小企業の在庫管理にも十分に役立ちます。
近年は中小企業向けのSAPが登場しているため、それを活用して、在庫管理を実現しましょう。
なお、今回は理想的なSAPモジュールの使い方を解説しましたが、企業の規模によっては使いこなせないかもしれません。
そのため、状況に応じて必要なモジュールを見極めることや、工夫することも求められます。