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【2024年】SAPのデータ連携はどうすべき?SaaSなど周辺との連携を解説
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【コラム監修者 プロフィール】
クラウドコンサルティング代表取締役 岸仲篤史
新卒でSAPジャパン株式会社に入社。
SAPジャパン在籍中にCOコンサルとして従事したことで、会計コンサルの面白さに目覚め、
大和証券SMBC株式会社 投資銀行部門、新日本有限責任監査法人、アビームコンサルティングにて、
一貫して約10年間、会計金融畑のプロフェッショナルファームにてキャリアを積む。
その後、2017年クラウドコンサルティング株式会社を設立し、SAPフリーランス向けSAP free lanceJobsを運営し、コラムの監修を手掛ける。
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はじめに
SAPは単体でも活用できるアプリケーションではありますが、他のSaaSやオンプレミスのアプリケーションなども組み合わせて利用している企業も多いでしょう。
特に、あとからSAPを導入した場合は、周辺システムとしてSaaSなどが残っているはずです。
このような状況下で意識すべきは「SAPへのデータ連携をどう設計すべきか」です。
SaaSとSAPを独立して運用することは望ましくないため、可能な限り連携することを考えます。
今回はデータ連携における課題とその解決法を解説します。
1.SAPとのデータ連携で抱える課題
SAPの中でも主にSAP S/4HANAやSAP S/4HANA Cloud Public Editionへデータ連携する際の課題について考えていきましょう。
1-1.レガシーシステムの修正
SAP S/4HANAを導入するような企業であっても、レガシーシステムが残っていること多々あります。
例えば、仕入れを管理するための独自システムが残っているのです。
また、レガシーシステムすらないような環境では、Excelで個人が管理しているようなこともあります。
このようなシステムを利用している場合、SAPへのデータ連携で根本的な修正が必要です。
場合によっては修正が負担になりすぎ、データ連携を実現できないかもしれません。
このレベルについては、DX化など根本的な解決が求められます。
1-2.データ品質
データを連携する際は、データの品質を整えなければなりません。
SAPが取り込む前に加工できますが、可能な限り送信側で整えたほうが良いでしょう。
例えば、データの英数字に全角と半角が入り混じっているならば、これらを揃えるように加工すべきです。
データ品質の確保は重要であり、質の悪いデータは統合システムにエラーや不整合を引き起こす可能性があります。
1-3.異なるデータ連携仕様
特にSaaSを使用している場合は、それぞれが異なるデータ連携仕様を持っている可能性があります。
例えば、CSVでファイルを出力することのできない仕組みもあれば、APIでデータを連携できることもあるでしょう。
どのような設計となっているかによって、データ連携の難易度は大きく変化します。
2.SAPのデータ連携をスムーズに進めるためのポイント
これからSAP S/4HANAなどを導入して、存分に使いこなしたいと考えるならば、データ連携について以下のポイントを意識しましょう。
2-1.データ品質の確保
統合前にデータをクリーニングし、統一することが重要です。
データ品質を向上させるためには、データクレンジングツールやデータの確認作業を導入し、重複データやエラーを除去します。
また、データの整合性を確保するために、データガバナンスフレームワークを設定し、定期的なデータ監査を実施できると理想的です。
ただ、対応すればするほどコストが高まるため、システム的にカバーする取り組みを意識すると良いでしょう。
2-2.統合ツールの活用
最新の統合ツールやミドルウェアを活用することで、異なるデータ形式やAPIをサポートし、統合の複雑さを軽減します。
SAPのソリューションには、いくつかの統合ツールが存在するため、これらを積極的に活用すると良いでしょう。
具体的なツールについては、以下で解説します。
また、統合ツールをうまく活用することで、リアルタイムデータ統合や複雑なデータフローの自動化が可能となるでしょう。
手動でのデータ処理を減らすことでミスがなくなり、効率的かつスムーズなデータ統合を実現します。
2-3.データガバナンスの強化
データ連携を成功させたいと考えるならば、データガバナンスを強化しておくべきです。
データガバナンスとは、SAP S/4HANAなどと連携するシステムのデータ入力ルールを統一させることを指します。
例えば「氏名にアルファベットが含まれる場合は半角で入力する」などです。
これによって、データの入力形式が違うことによる、データ連携のトラブルを防ぎやすくなります。
なお、データガバナンスに力をいれるならば、ルールを守れているか確認する作業も重要です。
例えば、誤った入力を見つけた場合、入力ルールが周知されているかを確認するなどが考えられます。
3.SAP S/4HANAへデータ連携する3つのソリューション
SAP S/4HANAと他のSaaSソリューションをデータ連携するために利用できる主要なSAP製品は以下のとおりです。
3-1.SAP Integration Suite
SAP Integration Suiteは、クラウドベースの統合プラットフォームです。
主に、SAPシステムと他のサードパーティシステムを接続するためのソリューションを提供してくれます。
プラットフォームを活用することで、事前構築された統合シナリオ、API、コネクタなどを活用して、ビジネスプロセスの自動化やデータ連携を迅速に実現できます。
特に、リアルタイムのデータ統合や大規模なデータ処理に適しているため、SAPに大量のデータを連携したい場合におすすめです。
3-2.SAP Data Intelligence Cloud
SAP Data Intelligence Cloudは、分散されたデータの接続や検索、統合、オーケストレーションまでを実現できるデータ管理ソリューションです。
プラットフォームとしてはデータ連携だけを意識したものではありませんが、異なるデータソースからのデータをスムーズに連携できます。
また、重要な部分として、データカタログ化、機械学習モデルの実行、データフローの自動化をサポートしていることが挙げられます。
単なるデータの集約にとどまらず、集約したデータの再利用も実現できるのです。
データ連携の目的ともいえる「大量のデータを迅速に分析し、ビジネスインサイトを得る」ということを実現できます。
3-3.SAP Datasphere
SAP Datasphereは、分散するシステムのデータを仮想的に統合できるソリューションです。
一般的に、データ統合といえば物理的にデータをコピーするなどの作業が必要ですが、こちらではそのような作業は必要ありません。
データを相互に接続する形式で連携(正確には参照)することで、どのようなデータが格納されているかを素早く確認できます。
事前にコピーなどする必要がないため、導入時のリードタイムが短いことが特徴です。
まとめ
SAP S/4HANAなど新しいSAPが活用されるようになってきましたが、その反面でデータ連携が課題になりがちです。
特に、SAP以外にSaaSなどのツールを業務に取り入れていると、データが点在してしまいます。
この状態では、思うようにデータ活用できず、データドリブンな経営を実現できません。
しかし、SAP製品を使用することで、SAP S/4HANAと他のSaaSソリューション間のデータ連携を効率的に実現できます。
ただ、それぞれのソリューションには特徴があるため、特定のニーズや用途に応じて選択することが重要です。
詳細な情報や具体的な導入事例については、SAPの公式ドキュメントやサポートも参照してみましょう。