「AIファースト」と「スイートファースト」とは？SAPが掲げる新たな方針
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【コラム監修者 プロフィール】
クラウドコンサルティング代表取締役 岸仲篤史
新卒でSAPジャパン株式会社に入社。
SAPジャパン在籍中にCOコンサルとして従事したことで、会計コンサルの面白さに目覚め、
大和証券SMBC株式会社 投資銀行部門、新日本有限責任監査法人、アビームコンサルティングにて、
一貫して約10年間、会計金融畑のプロフェッショナルファームにてキャリアを積む。
その後、2017年クラウドコンサルティング株式会社を設立し、SAPフリーランス向けSAP free lanceJobsを運営し、コラムの監修を手掛ける。
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はじめに
SAPは、企業のデジタル変革を加速するために、「AIファースト」と「スイートファースト」という2つの新たな方針を打ち出しました。
これら2つの方針は、ビジネスの自動化やデータ分析を推進すると同時に、SAPソリューションの統合を強化し、効率的なシステム運用の実現を目的としています。
近年の企業環境では、AIの活用が業務プロセスの最適化に不可欠となりつつあります。
また、過度なカスタマイズがDX（デジタルトランスフォーメーション）の障害となるケースも増えており、SAPは標準機能を活かしたシステム運用を推奨しています。
この新しい方針は、SAP導入企業だけでなく、SAP業界で働くコンサルタントやエンジニアにも大きな影響を与える可能性があります。
本記事では「AIファースト」と「スイートファースト」の具体的な内容や必要とされる背景、そして日本のSAP業界への影響について解説します。
1.AIファーストとスイートファーストとは
SAPは近年、「AIファースト」と「スイートファースト」という2つの重要な方針を掲げています。
これらの方針は、企業のDX加速し、SAPの提供するソリューションの競争力を高めることを目的としています。
AIファーストとは、SAPの製品やサービスのあらゆる領域でAI（人工知能）を中心に据える戦略を意味します。
SAPは、ビジネスプロセスの自動化や高度なデータ分析を可能にするために、AIを組み込んだ新機能を提供することを優先しています。
特に、SAP Business AIを活用し、業務の効率化や予測分析、意思決定の最適化を進めることで、企業の競争力向上を支援するようです。
一方、スイートファーストは、SAPのソフトウェアスイート（S/4HANA、SAP BTP、SuccessFactorsなど）の統合を強化し、標準機能の活用を最優先にする方針です。
従来、SAP導入企業の多くはカスタマイズを重視し、個別の業務要件に対応する形でシステムを構築してきました。
しかし、SAPは「スイート全体の統合性を最大限に活かすことが、DX（デジタルトランスフォーメーション）成功の鍵」と考え、標準機能を活かした運用を推奨しています。
2.なぜ2つのファーストが必要とされるのか
SAPが「AIファースト」と「スイートファースト」の両方を掲げる理由は、現代の企業が直面する課題を解決するためです。
企業は、急速に進化する市場環境の中で、迅速な意思決定と業務の効率化を求められています。
2-1.AIファーストで生産性を向上
まず、AI技術の進化により、企業の業務プロセスは大きく変化しています。
従来は人手で行われていたデータ分析や判断業務も、AIによる自動化が可能になっています。
この流れに対応するため、SAPは「AIファースト」のアプローチを採用し、各製品にAI機能を組み込み、企業の生産性向上を支援しています。
実際に2024年後半からは「SAP Business AI」の最新機能、生成AIアシスタントの「Joule」などAI関連機能を強化。
特にJouleの進化は目覚ましく、開発者やコンサルタントの知見を提供するなど、SAPシステムの導入・運用全体にAIを行き渡らせることが可能になっています。
2-2.スイートファーストで複雑性に対抗
一方で、企業がDXを推進する中で、システムの複雑化が大きな課題となっています。
特に、過度なカスタマイズは、システムのアップグレードや統合を困難にし、DXの妨げになることが指摘されています。
そのため、SAPは「スイートファースト」の方針を掲げ、標準機能を活かしたスムーズなシステム運用を推奨しているのです。
このアプローチにより、企業は保守コストの削減、迅速なイノベーションの適用、シームレスなシステム統合を実現できます。
AIの活用による自動化・効率化と、スイート全体の標準機能を活かすことで柔軟性と持続可能性を確保することが、SAPの目指す新しい方向性といえます。
3.日本のSAP業界に対する影響は？
SAPの「AIファースト」と「スイートファースト」の方針は、日本のSAP業界にも大きな影響を与えると考えられます。
まず、「AIファースト」の影響として、SAPコンサルタントやエンジニアには、AIに関する知識やスキルが求められるようになるでしょう。
従来のERP導入・運用だけでなく、AIを活用したデータ分析や自動化の提案が重要な役割となります。
特に、SAP Business AIを活用した業務プロセス最適化や予測分析の導入支援が新たなビジネスチャンスとなるでしょう。
次に、「スイートファースト」の影響として、SAP導入プロジェクトの進め方が大きく変わる可能性があります。
従来の日本企業では、業務要件に合わせたカスタマイズを重視する傾向が強く、SAPの標準機能をそのまま活用するケースは少数派でした。
しかし、SAPがスイート全体の統合を最優先する方向性を打ち出したことで、今後は「カスタマイズを最小限に抑え、標準機能を活かす」という、Fit to Standardのアプローチが主流になる可能性があります。
その結果、SAPコンサルタントや導入担当者には、SAPの標準機能を深く理解し、業務に最適な形で適用するスキルが求められます。
また、オンプレミスからクラウドへの移行を進める流れの中で、システムのシンプル化とクラウド活用の加速を促す要因となるでしょう。
まとめ
SAPが掲げる「AIファースト」と「スイートファースト」は、企業のDX推進を加速させる重要な戦略です。
AIを活用した業務の自動化と、標準機能を活かした統合的なシステム運用は、今後のSAP導入の基本方針となるでしょう。
この変化は、SAP業界で働くコンサルタントやエンジニアにとっても、新たなスキル習得の機会を意味します。
AI技術に関する理解を深めることはもちろん、SAPの標準機能を最大限に活用するための知識がこれまで以上に求められます。
特に、日本のSAP導入プロジェクトでは、これまでの「カスタマイズ重視」から「標準機能活用」へとシフトする流れが強まることが予想されます。
これからのSAP業界で活躍するためには、従来のERP導入スキルに加え、AIを活用した業務改革や、SAPのクラウドソリューションを理解することが不可欠です。
今後のキャリアを見据え、「AIファースト」「スイートファースト」の方針に沿ったスキル研鑽を進め、SAPのスペシャリストとしての価値を高めていきましょう。
