基本機能編:SAPでできること_【第2回】SAPで組織のデータを一元管理!事例やメリットを解説
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【コラム監修者 プロフィール】
薮内貴之
SAPベーシスを中心に、SAP導入やインフラ・インタフェース設計を担当。
大手企業のベーシスから出荷まで幅広く支えつつ、周辺システムの設計や運用サポートを経験。
現在は単純なSAPのみならずAWSなどクラウドのインフラを含めてサポート。
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はじめに
営業・在庫・経理など、部門ごとにデータが散在していると、意思決定の遅れや二重入力のリスクを招きます。
実際、このような課題に直面している担当者も多いのではないでしょうか。
改善策を探している方も少なくないはずです。
解決方法はさまざまありますが、その中でもSAPのERPモジュールを活用したデータ基盤の構築が効果的です。
リアルタイムで更新・可視化できる環境を整えることで、データ入力や出力の手間を大幅に軽減できます。
今回は、組織がSAPを用いてデータを一元管理する仕組みと、その活用方法について解説します。
1.SAPは組織のデータを一元管理できる
近年、多くの企業で問題となっているのが「データのサイロ化」です。
例えば営業、経理、人事、生産などの部門がそれぞれ異なるシステムを利用しているケースです。
この状態では情報の整合性が取れず、データ更新の遅延や入力ミスが発生しやすくなります。
結果として、経営層が求める正確な情報が得られず、意思決定が遅れる事態を招いてしまうのです。
この課題を解決するソリューションとして注目されているのがSAPです。
SAPは世界中の大手企業から中堅・中小企業まで幅広く導入されているERPの代表格であり、一つのシステム上であらゆる部門のデータを一元的に管理できます。
統合された環境では、どの部門でも同じ情報をリアルタイムに活用でき、企業全体の生産性向上が期待できるのです。
2.SAPによる情報一元管理の仕組み
具体的にSAPでどのようにデータを一元管理するのか、三つの観点から解説します。
2-1.データの統合的な管理
SAPは「モジュール」と呼ばれる仕組みで構成されており、それぞれが部門ごとの業務領域をカバーしています。
代表的なものは次のとおりです。
・FI(Financial Accounting:財務会計):仕訳・決算・財務諸表作成などを統合的に管理
・CO(Controlling:管理会計):原価計算や予算管理を通じて経営をサポート
・SD(Sales and Distribution:販売管理):受注から出荷、請求までの販売プロセスを統括
・MM(Materials Management:在庫・購買管理):購買発注や在庫管理を効率化
・PP(Production Planning:生産管理):生産計画や進捗をリアルタイムに管理
・HR(Human Resources:人事管理):採用から給与計算、勤怠管理まで社員情報を一元化
これらのモジュールは一見独立しているように見えますが、実際には共通のデータベースに紐付けられています。
イメージとしては以下のとおりです。

そのため、相互にデータを参照でき、ある部門で入力した情報は自動的に他部門へも反映されます。
結果として、整合性を維持したまま業務を進めることが可能です。
2-2.リアルタイムでのデータ更新と可視化
従来のシステムでは、データ集計や更新に時間を要し、月末や四半期になってようやく経営数値を把握できる状況に陥りがちでした。
これに対してSAPでは、入力したデータが即座に反映されます。
つまり、最新の情報に基づいたリアルタイムでの経営判断が実現できるのです。
データフローの一例を挙げると以下のようになります。

特にクラウド対応のSAP S/4HANAでは、メモリ型データベースを採用し、膨大なデータ処理を高速化しています。
従来のSAPERPと比較しても、格段に迅速な処理や分析を行える点が大きな強みといえるでしょう。
2-3.一元管理されたデータの可視化
SAPには標準でレポーティング機能やダッシュボードが備わっています。
これを活用することで、統合されたデータをグラフや表形式で直感的に可視化できるのです。
経営層だけでなく現場の担当者も必要な指標をすぐに確認できるため、日常的な業務改善に役立ちます。
さらに、SAP内部での処理にとどまらず、外部のBIツールとも容易に連携可能です。
これにより、経営分析や需要予測といった多様な活用方法が広がり、データドリブンな経営を強力に支援する基盤となります。
3.SAPを活用したデータ関連業務の改善事例
SAPを活用したデータ関連業務の改善事例を紹介します。
3-1.事例1:販売と在庫の一元管理
ある製造業では、販売部門と在庫管理部門が別システムを利用しており、販売データと在庫データの乖離が頻発していました。
結果として在庫切れの商品を受注してしまい、納期遅延や顧客クレームにつながる問題が生じていたのです。
そこでSAPを導入し、販売管理(SD)と購買・在庫管理(MM)を連携させました。

結果、受注成立のタイミングで在庫数が自動更新される仕組みが整ったのです。
これにより在庫状況をリアルタイムに把握でき、欠品や過剰在庫のリスクを大幅に抑制できるようになりました。
最終的には、顧客満足度の向上と在庫コストの削減を同時に実現できています。
3-2.事例2:経理部門のデータ一元管理
別の企業では、経理部門が複数システムからデータを収集・集計し、手作業で財務諸表を作成していました。
データ量の増加に伴い不整合や入力ミスが多発し、決算に膨大な時間を要するという課題があったのです。

SAPの導入後は、販売・購買・人事などの情報が自動で財務会計(FI)に集約されるようになっています。
結果、二重入力や照合作業がほぼ不要になりました。
決算処理にかかる時間は半分以下となり、経理担当者は分析や戦略立案にリソースを割り当てられるようになっています。
最終的には経営判断のスピードが向上し、組織全体の意思決定が迅速化したのです。
4.SAPでデータを一元管理することで得られるメリット
データを一元管理する方法はいくつもありますが、なかでもSAPを採用する利点を整理します。
4-1.データの一貫性と正確性
SAPという単一基盤に業務データを集約することで、情報の一貫性と正確性を保ちやすくなります。
部門ごとに異なるシステムを使うと、同じ情報でも数値や処理が食い違い、不整合を招きがちです。

同一システム上で入力すれば、入力ルールや重複排除を徹底できるでしょう。
結果、全社で整合の取れたデータを収集・活用可能できる環境が整います。
これが正確なレポート作成や経営分析に直結するのです。
4-2.業務効率の向上
共通データベースに入力を集めることで、部門間で同じ情報を二重入力する無駄がなくなります。
手作業の集計や照合の大幅な削減につながるのです。
入力や集計に割いていた時間は、高付加価値の業務へ振り向けられるようになります。
これが積み重なれば、業務全体の効率が向上するメリットを生み出します。
4-3.迅速な意思決定と柔軟な対応
市場の変化に機敏に対応するには、リアルタイムな情報が不可欠です。
SAPなら、販売・生産・財務などの最新状況を即時に把握でき、データドリブンな意思決定を後押しします。
さらに、シミュレーション機能を活用すれば、将来シナリオの検討が容易です。
これを活用することで、柔軟な戦略立案を実現できるでしょう。
4-3.コスト削減
全社的なコストの削減にSAPが役立ちます。
在庫の最適化やプロセス効率化により、保管・人件費などを圧縮できるからです。
加えて、システムを一本化することで重複投資を回避し、ITコストの最適化を実現するという意味合いもあります。
なお、SAPは比較的、初期投資の高いソリューションに該当します。
そのため、短期的にはコストを負担しなければなりません。
しかし、中長期では高い投資対効果が見込めるはずです。企業経営を力強く支える選択といえるでしょう。
まとめ
SAPによるデータ一元管理は、単なるシステム導入にとどまりません。
企業の業務効率化や競争力の強化を牽引する中核的な仕組みです。
販売と在庫の統合、経理データの集中管理などを通じて、リアルタイムかつ整合性のあるデータ活用が実現できます。
「SAPを導入している企業」という点は、競合他社と比較して大きな武器になるでしょう。
一方で、効果を最大化するには自社の業務フローに適合させたSAP設計が不可欠です。
やみくもに導入するのではなく、Fit/Gapの検討や運用ルール・KPIの設計、段階的なロールアウトを計画しなければなりません。

導入から活用まで確実に進めたい場合は、SAPコンサルタントなど専門家の支援を活用することが得策です。
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