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「SAP FI概要の教科書」No.4 AA編

■はじめに

前回はFIモジュールの概要として、FI-AP(債権管理)の機能を7つご紹介させていただきました。最終回の今回は、FIのサブモジュールであるAA(固定資産管理)について概要を説明いたします。

■FI-AAの全体概要

1.AAの管理対象

AAモジュールでは、有形固定資産や建設仮勘定に限らず、無形固定資産や繰延資産を管理することも出来ます。少額資産の管理も、圧縮記帳も管理可能です。償却費計算(償却記帳プログラム)では、定率法、定額法等で計算を行うことが出来ます。償却資産税申告書の作成、”別表16”の作成機能も標準で提供されています。個々の資産はSAPでは資産マスタというマスタに登録します。資産マスタでは棚卸情報、ロケーション情報、コストセンタ(費用負担部門)等の情報を管理します。複数の償却領域で資産管理を行っている場合、それぞれに異なる償却方法や耐用年数を指定することも可能です。
一括処理機能も備えており、資産マスタ項目の一括変更や一括除却を行うことが出来ます。

2.償却領域

資産ごとに複数の簿価を管理することが出来ます。会計用、税法用、償却資産税用、IFRS用などと用途ごとに償却領域を定義し、それぞれの償却領域に、異なる取得価額や償却額を管理させることができます。
以下の例では、税法上耐用年数15年の固定資産を、会計上は10年で償却した際の10年目の数値を示しています。会計上は償却最終年度のため、備忘の1円が簿価となっています。税法上はまだ償却の途中です。その差を償却領域03で管理しています。償却領域04では償却資産税用の減価率に基づいた計算を行っており、償却領域01や02と異なる数値を管理しています。
このように用途に応じて償却領域を定義し、それぞれで異なる金額、計算を行わせることが出来ます。

3.資産マスタ

資産マスタには様々な項目が標準で用意されています。項目はその内容によってグルーピングされ、それぞれタブ画面に表示されます。特徴は、時間依存タブ、償却領域タブです。時間依存タブには原価センタ項目やロケーションに関わる情報等が表示されます。例えば「償却費の負担部門(原価センタ)が去年まではAだったが、組織変更に伴いBに変わった」というように、いつからいつまではどこの原価センタ、いつからはこの原価センタ、といった情報の持ち方をします。償却領域タブでは、償却領域ごとに耐用年数、償却方法、償却開始日などを管理します。

4.資産クラス

資産マスタを登録する際には資産クラスを指定します。資産クラスとは資産を種類別に分けたもので、資産クラスによって資産取引時の勘定科目や、資産マスタの番号範囲等が決まります。
例えば資産クラス「建物」で登録された資産マスタで取得取引を転記すると、勘定設定で設定した貸借対照表勘定(「建物」)の残高を更新します。償却費を計上した際には、勘定設定の内容に従い、「減価償却費-建物」、と「減価償却累計額-建物」の残高を更新します。

5.資産取引の記帳

取得、除却、売却などの取引を入力します。固定資産では、資産の取得、売却、除却(廃棄)等の取引を区別するために、伝票入力時に取引タイプを必ず入力します。例えば取得の取引タイプは100、前年度以前に取得した資産の売却は210です。取引タイプは一通り標準で用意されていますし、必要に応じカスタマイズで追加定義することも出来ます。
固定資産モジュールには固定資産専用の伝票入力機能が用意されており、「ノートパソコン/仕入先A」と仕訳入力を行います。取得の転記を行うと、資産マスタにある「資産取得日」が自動設定されるとともに、償却開始日が自動的に判定され資産マスタにセットされます。売却や除却の取引を転記すると、資産マスタの「除却日」が自動設定され、追加の仕訳が登録できない制御がかかるようになります。

6.建設仮勘定経由の資産計上

FI-AAでは、建設仮勘定を経由した資産計上を処理することも出来ます。建設仮勘定を表す資産マスタを登録(勘定科目「建設仮勘定」を更新する資産クラスを割り当てる)し、取得にかかる費用をこの資産マスタに対して何度も転記し、取得費用を積み上げます。
建設仮勘定の残高を固定資産に振替える際に、決済規則を登録します。建設仮勘定残高は、この決済規則に登録された比率と振替(決済)先に基づいて資産計上が行われます。
建設仮勘定は資産マスタで管理することも、内部指図を使って管理することも可能です。

7.償却記帳

償却費計算と、償却費計上を行うプログラムのことです。毎月実行するケースがほとんどかと思いますが、月次・四半期・半期・年度末の設定が可能となっています。償却記帳プログラムの実行により、償却費の計算と仕訳転記が行われます。仕訳は、資産クラスによって決まった勘定設定のカスタマイズ内容に基づき、償却費勘定と償却累計額勘定が決定され、FI伝票が転記されます。また、償却費の負担部門として資産マスタに設定した原価センタ(あるいは内部指図等の原価コレクタ)がFI伝票の償却費の明細に自動的にセットされ、管理会計側にもリアルタイムで連携します。
償却記帳プログラムはテスト実行が可能なので、事前に確認することが出来ます。

8.資産台帳帳

固定資産関係のレポートが標準で用意されています。資産台帳レポートもあります。資産台帳バージョンによって表示レイアウトを定義します。レポート上をクリックすると、資産マスタや取引にドリルダウンすることも可能です。レポートの実行パラメータでレポート対象の償却領域を指定し、ソートバージョンで表示のソート順(原価センタ順、勘定設定/資産クラス順等)を指定します。レポート結果をエクセルにダウンロードすることも可能です。

9.日本要件への対応

償却資産税レポートは古くから標準機能として提供されていましたが、別表16も標準機能として提供されています。減損会計、減価償却の税制変更は平成19年、23年とありましたが、その都度Noteによって対応内容が提供されてきています。
税制改正時等は、Note等を通じSAP社の対応方針や対応方法が示されるので、適宜確認が必要です。

■おわりに

これまで、FIモジュールの概要として、FI-GL、AP、AR、AAと4回に分けてサブモジュールをご紹介してきました。概要レベルでのご紹介となりましたので、イメージが湧きにくい箇所もあると思いますが、まずはそれぞれのモジュールでの「出来ること」やERPの特徴である「リアルタイム性」について掴んでいただければと思います。
次回は、FIモジュールの組織と仕入先マスタ、得意先マスタ(BPマスタ)についてご紹介させていただきたいと思います。

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