「SAP ERPエンジニアが初めてSAPを学んだら」No.11 SAP未経験のERPエンジニアがSAPで使い辛いと感じる点とその解消方法
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1.はじめに
SAP Freelance Jobs運営事務局です。この度、ERPエンジニアがSAPを初めて学び、資格取得するまでの学び・実施内容の第11回となります。
毎回記載しておりますが、国内にSAPエンジニアが多くいるとはいえ、どのように学び成長出来たかの記事はあまり存在しません。SAPを初めて操作をする際、多くの人が色々違和感を抱くのですが、その違和感は使い続ける内に徐々に意識しなくなります。当SAPエンジニアも当初操作した際に違和感を抱きましたが、それをどのように改善したのか記載します。既に習熟したSAPエンジニアでは挙がらない事項も初心者ならではの観点で記載しております。
これからご自身がSAPエンジニアを目指す方、また自社内にSAPエンジニアを育成したい方には有益な記事になっておりますので、是非最後までご一読頂けますと幸いです。
2.SAP S/4 HANAで使い辛い・違和感を抱く点
筆者がSAP S/4 HANAで使い辛い・違和感を抱く点は大きく4つに分類されます。
①独特のUI
②機能の豊富さによる分かり辛さ
③他にない操作性
④調査の難しさ
以降、それぞれの詳細と解消方法を記載します。
①SAP S/4 HANA 独特のUI
SAP S/4 HANAはかなり独特のUIです。SAPがドイツで開発された為か、日本や米国で開発された仕組みと比較するとかなり独特です。中でも、筆者が大きく戸惑ったのは仕組みにより登録ボタンが異なる点と、日付や金額の表示方法でした。
仕組みにより登録ボタンが異なる点ですが、SAP GUIと呼ばれるクライアントソフトであれば、保存もしくは実行によりほとんどの処理が登録されます。この保存・実行とどちらで登録処理を実施すべきか最初は戸惑いました。また、SAP GUIとSAP Fioriにより保存・実行ボタンの配置場所が全く異なり、それも戸惑いました。これらは操作し始めて3か月経過した今時点では慣れてきており、繰り返し続けることにより違和感を解消できると感じます。
また、日付の表示や金額のマイナス表記も当初は違和感を抱きました。日付は『28.10.2022』のように日本と逆の表示になっています。金額は『100-』と末尾に付記されています。日付についてはユーザープロファイル設定より表示方法を日本で通常使用する『2022.10.28』の順番に表示変更可能です。金額は標準機能では実施不可能ですが、ABAPにより開発をする場合には『-100』と表示を変更可能です。
②SAP S/4 HANA機能の豊富さによる分かり辛さ
SAP S/4 HANAは本当に多様な業務プロセスに対応しており、設定も豊富です。それは非常にメリットも大きいですが、最初の内はどのメニューを使用するのか、またどの項目に入力する必要があるのか戸惑いました。
メニューが多い点ですが、各ユーザーにどのメニューを表示すべきか権限設定が可能です。権限設定を未実施の場合、本当に豊富なメニューが表示される為、是非実施すべきです。また、自分用のショートカットをメニューに追加する機能をSAP GUI、SAP Fioriどちらも保持しているので、頻繁に使用する機能をショートカット登録することで使いやすくなります。さらに、SAP GUIでは各メニューがトランザクションコードというコードにより起動可能です。例えば、受注伝票登録を実施する場合には左上に表示されているコマンドフィールドにVA01と入力することで起動が可能です。
また、入力項目が多い点は、ユーザープロファイル設定での初期値設定・コピー管理のパラメータ設定により同様の内容を何度も入力することを防ぐことが出来ます。
③SAP S/4 HANAの他にない操作性
SAP S/4 HANAは上述の通りドイツで最初に開発された為か、日本やアメリカの製品とUIだけでなく操作性も異なります。例えばWindowsでは、マウスのドラッグアンドドロップで文字を範囲選択できるソフトがほとんどです。一方、SAP GUIの一部画面ではCtrl+Yにより文字を範囲選択する仕組みとなっています。
また、日本のERP製品と比較した場合、用意されている帳票が少ないことに驚きます。例えば日本の販売管理システムであれば、受注登録の結果を受注伝票のような帳票で印刷可能なソフトが多いです。SAPでは最低限の帳票のみ用意されており、帳票はアドオンとなることが多いです。在宅勤務が増える中で管理部門も紙の印刷は減っていますが、紙を多く用いている場合には要注意です。
上記は設定でも回避は出来ない為、何度も操作をして慣れる必要があります。
④SAP S/4 HANAの調査の難しさ
SAP S/4 HANAで何かエラーが発生した場合や、新しい機能を使いたい場合に困ることがあります。日本での技術情報が限られている場合や、問い合わせでもすぐに回答が得られないことがあります。ですが、日本語では中々意図した情報にたどり着くことが出来ない場合でも、英語で検索した際には多くの情報を得ることが出来ます。操作時に困った場合には、是非英語で検索を実施しましょう。
その他権限で許可されているのであれば、トランザクションコードSE16にて直接データテーブルを照会することも調査に非常に活用出来ます。SAPに慣れてくると、画面だけでなくデータがどのように格納されているか確認することでエラー解決できることもある為、未使用の方は使ってみて頂けたらと思います。
3.おわりに
今回はSAP未経験のERPエンジニアがSAPで使い辛いと感じる点とその解消方法を紹介しました。記載した内容はSAP S/4 HANAを操作する方は誰でも抱く内容になっているかと思います。
最後に、SAP構築時に必ずオススメしたい内容として、練習用の環境を用意することです。違和感は操作を続けることで解消される内容も多いですが、操作可能な環境が無い限りそれも実施できません。SAPを導入する規模の会社ではほとんど用意されているかと思いますが、仮に用意されていない場合にはコンサルタントと相談して必ず用意をしましょう。
次回以降も、各ソリューションの概要や研修受講状況や学習方法・ERPエンジニアの所感等を紹介していきます。